レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

認知症

認知症は二つあるいはそれ以上の認知機能の低下と定義され、覚醒や注意ではなく機能の障害を呈する 認知能力の低下は、出生時から存在し子供の時に症状が確認されその後終生みられる intellectual disability(知的障害)(以前はmental retardation (精神遅…

虚血性心疾患

Stable Ischemic Heart Disease Stable ischemic heart disease(虚血性心疾患)は多くの国で死亡原因の第一位であり、多大な医療費を要し、米国では年間およそ数千億ドルにものぼる(1) 酸素需要と血液供給の不均衡によって起こる虚血性心疾患は通常medium…

明日からできる医師の働き方改革

日米両国で臨床に携わって感じていることを端的に言うと アメリカで働くのは楽である これは限られた経験に基づく個人的な見解ではあるが、経験者に確認すれば多少の同意を得られるのではないかと思っている もちろん働き始めた時は吐きそうになるくらい緊張…

Preventing Firearm-Related Death and Injury

米国において銃器に関連した死および傷害はpublic healthに関わる重大な問題である。データが利用できる最近10年、2008年から2017年の間で米国における銃器に関連した死亡者数は342439人であり、第二次世界大戦中の銃創による米国人死亡者数をも上回る。また…

高血圧

近年高血圧治療に関するいくつかの新しいガイドラインが発表された(1, 2, 3)。新しいガイドラインでは最近の臨床試験やアップデートされたエビデンスに基づき、かなりの変更が含まれている(1, 2, 3)。いくつかの問題に関するガイドライン間での相違は大…

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ

更新の確認で送られてきた軍病院の卒業名簿に書かれている各学年の卒業後の進路を何気なく眺めていたら、まさにそんな気分になった 滑り込みでなんとか場末の病院(なんて言ったら怒られそうだけど)に拾ってもらえた身にはなんだかとても眩しいものに見えた…

不安障害

不安はストレス下では適切な反応であるが、生活機能に障害をきたしたりコントロールできない状態は病理学的なものと捉えられる generalized anxiety disorder(GAD:全般性不安障害)はプライマリケアで見られる最も多い不安障害で、米国成人のおよそ4〜7%…

避妊

米国における全ての妊娠の45%は意図しない、あるいは予定の時期からはずれたものと報告されている 意図しない妊娠は生殖に関わる健康格差の指標でもある。なぜならこれらは有色の女性や国の定めた貧困レベル以下の人たちにより多くみられ、偏りのある社会経…

SMAP理論

新専門医制度に変わると自分はどこに入れてもらえるのだろうか、などと考えるこの頃だが、少し前までであれば「一般内科医」と言えばよかったのかもしれない。循環器や消化器などのサブスペシャリティを持たず内科一般の疾患に対応するとされる医師だ 今まで…

関節リウマチ

関節リウマチは慢性全身性疾患で米国成人の0.5〜1%、およそ150万人が罹患している(1) 女性により多くみられ、全ての年齢で起こるが50〜60歳が発症のピークである 症状は左右対称性の疼痛、腫脹が手指、手首、足、膝などに多関節炎としてみられるが、他の関…

在宅高齢者の転倒予防

転倒は70歳以降10歳毎にその発生率が2倍に増えていく 転倒は意図しない傷害による死亡の3番目に高い原因である(1) 転倒は高齢者の非致死的および致死的傷害の最も多い原因である(2, 3) 傷害に至らない転倒であっても、機能低下、精神的ストレス、自立…

非アルコール性脂肪肝疾患

Nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD)は肥満の増加に伴って非常にその数が増え、現在では米国および世界で最も多い慢性肝疾患となっている(1) 病理学的にNAFLDは80%以上の患者にみられるnonalcoholic fatty liver(NAFL)(あるいはisolated hepatic…

Clostridioides difficile Infection

1978年までにClostridioides difficile(以前のClostridium difficile)が抗菌薬に関連しておこる下痢のもっとも多い原因として確立された(1) 2011年の米国におけるC difficileの発生数はおよそ453000、それに関連する死亡数は29300であった(2) C diffic…

Parkinson病

Parkinson病はアルツハイマー病に次いで二番目に多い神経変性疾患である(1)。長らく運動系の障害と考えられてきたが、感覚、感情、認知、自律神経系にも影響する非運動系の症状も有する 年齢とともに罹患率が増え、65歳以上の1%、80歳以上の3%で疾患が認め…

医師として成長し続ける方法

研修医などの若手が己の研鑽に熱心なのはそれほど珍しいことではないが、それをその後も長く維持し続けることはなかなか大変だと思う 大きな声では言えないが、一度免許を取って研修さえ終了してしまえば、究極それ以上自分をアップデートしなくても働き方さ…

帯状疱疹

水痘を発症するvaricella zoster virusに感染したことのある全ての人が帯状疱疹を発症する可能性がある 米国の人口のおよそ95%がvaricella zoster virusに潜伏感染している。三人に一人が帯状疱疹を発症し、年齢とともにその頻度が増える 脊髄後根神経節ある…

当たり前のことを当たり前にやれ

昔上司によく言われた言葉だ 最近その大切さが多少分かるようになった気がする

心不全

心不全の罹患率は年齢と共に増え、lifetime riskは20〜45%にのぼる 時代とともに診断後の生存率は改善しているが、依然死亡率は高いままである。およそ50%の人が診断5年後には死亡している 心室不全はEFの低下した心不全(HFREF/systolic dysfunction)とEF…

大腸憩室炎

大腸憩室炎の多くは50歳以上の患者で見られるが、若い人にも増えてきている 大腸憩室を持つ大部分の人は無症状であり、1〜4%の人で憩室炎を発症する(1) そのうちおよそ20%の患者が10年以内に一回あるいはそれ以上の再発を繰り返す(2) 大腸憩室炎は合…

治療のゴールに関する会話のガイド

重篤な患者は治療ゴールと予後に関する話し合いを家族を交えて行うことをためらう場合がある。しかし多くの場合、医師とはその話し合いをしたいと考えている(1) 多くの医師と家族は治療のゴールに関する話を始めることを患者の希望を取り去ることだと間違…

緩和ケア

緩和ケアは慢性で治癒が困難である重篤な疾患に罹患した患者のQOLを改善し症状を和らげることを目的としている。ただそれは必ずしも治療オプションがなく、予後が限られていることを意味しているわけではない(1)。緩和ケアは重篤な疾患によってもたらされ…

蜂窩織炎・皮膚軟部組織感染症

皮膚軟部組織感染症の頻度は近年落ち着いたものの依然高く、尿路感染症の2倍、肺炎の10倍である(1) 皮膚軟部組織感染症 蜂窩織炎 (cellulitis) 丹毒 (erysipelas) 毛嚢炎 (folliculitis) せつ (furuncle) よう (carbuncle) 皮下膿瘍 (cutaneous abscess…

脂質異常症

脂質異常症は動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease (CVD))の主要なリスクファクターである 生活習慣の改善はtotal cholesterol, HDL, LDL, triglycerideに良き影響を及ぼすためAHA (American Heart Association)はすべての成人に…

Acute Kidney Injury

急性腎障害 Kidney Disease Improving Global Outcomes (KDIGO) 基準 Cre上昇 ≧ 0.3mg/dL(48時間以内)or Cre ≧ baselineから1.5倍(7日以内)or 尿量< 0.5ml/kg/h 6時間以上 KDIGO staging Stage 1: Cre上昇≧ 0.3mg/dL or 1.5-1.9 times baseline or 尿< 0…

尿路感染症

尿路感染症には一般的に以下のものが含まれる 無症候性細菌尿、急性単純性膀胱炎、再発性膀胱炎、カテーテル関連無症候性細菌尿、カテーテル関連尿路感染症、前立腺炎、腎盂腎炎 尿路感染症のリスクは男性より女性の方が、特に閉経前の方が高い。他には糖尿…

インフルエンザ

インフルエンザAはウイルス表面の2つの主な糖タンパクに基づいてサブタイプに分類される(H: hemagglutinin (16種類), N: neuraminidase (9種類), H1N1, H3N2が人でよく流行する)。遺伝子が比較的不安定で流行しやすい インフルエンザBはAに比べ多様性が少…

肥満

肥満の割合はアメリカおよび世界中で過去40年間劇的に増え、そして現在も多くの国で増加し続けている 多くの肥満関連疾患は脂肪組織の代謝の影響に起因している (肥満関連疾患:多数 (他:心房細動、うっ血性心不全、深部静脈血栓、悪性疾患(大腸癌、閉経…

喫煙

米国において1965年以降タバコの使用数は半分以下に減っているが依然予防できうる死の原因第1位である(1) 多くの医師が喫煙治療に関する適切なトレーニングを受けておらず、多くの患者が禁煙に関する援助を受けていない 喫煙者は非喫煙者に比べ10年以上寿…

アルコール摂取

Alcohol Use Disorder(アルコール使用障害)で治療適応を有する患者のうち実際に治療を受けているのは4%以下である(1) アルコール乱用は予防できうる死の原因の第3位にあたる(2) 低量のアルコール摂取が虚血性心疾患や虚血性脳疾患の発症予防に有効で…

閉塞性睡眠時無呼吸

繰り返す上気道閉塞による酸化ヘモグロビン飽和度低下や生理的ストレスによって血圧上昇や心血管疾患が引き起こされる(1) 閉塞性無呼吸を示唆する症状を呈する患者のうち実際に評価され治療されているのは50人に1人のみである(2) 外来では全ての患者…