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レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

平均在院日数を短くする方法

アメリカの病院で働き始めて最初に驚くのは患者の入院期間が短いことだ

半分以上は入院翌日、少なくとも二日以内には退院している印象である

一週間なんて入院していたらかなり長い感がある

 

科や病院の種類による平均入院日数の違いはあるだろうが、他の国と比べても最も短い部類に入るそうだ

 

保険にからむ経済的な理由による所が最も大きいのだろうが、その目的のために病院全体として良くも悪くも本気で入院期間を短くする努力を行っている印象だ

 

その取り組みの一部として重要だと感じるものにMultidisciplinary conferenceがある

多職種合同で患者一人一人をディスカッションするミーティングだ

以前の職場で行われていたもので、アメリカ全体の事は把握していないが、おそらく多くの病院で行われていると想像する

 

そのミーティングは主に以下のようなメンバーで構成されている

 

リーダー看護師、ケースマネージャー、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、理学療法士、言語療法士、病棟医

 

毎朝そのスタッフたちの前で順番に研修医が入院担当患者一人一人の現状、診療方針、今後の見通し、などをプレゼンしていく

 

それに対し患者毎にそれぞれのスタッフの立場から質問、意見、指示が出されていく

 

「退院後のサービスは必要でないか」

「短期リハビリ入所が必要か評価するため理学療法士コンサルトの指示を出してください」

「この薬とこの薬は相互作用があるので変更できないか、腎機能が下がっているので投与量を~に減量してください」

「低栄養状態なので補足の栄養剤を処方してください」

「誤嚥が確認されたので食事形態を~に変更してください」

 

このような多角的アプローチによって診療の質を維持していく

 

このミーティングは患者ケアを向上させる事に貢献しているのだが、ただそれのみでなく研修医のトレーニングの一環としても重要なものであると感じる

 

ややもすると研修医の初期の頃は患者診療のタイムラインの、全体でなく一点のみ、例えば診断や治療選択などにだけ意識が向いてしまう事が起こりがちだが、このミーティングを通して入院から退院、退院後に患者はどこでどのような生活になるか、という流れを学ぶことができる。その流れを把握していないとプレゼンができないからだ

 

そして何よりこのミーティングの良い所は多職種のスタッフと日々顔を合わせられる事だ。病院の規模にも依存することだが、医師は指示を出したっきり現場で何が行われているか分からずとも仕事が進んでいってしまいうる。直接話をしてタイムリーに状況を把握できることで診療プランを修正したり、不適切な指示を減らすことができる。また顔と顔が見える関係をつくることでお互い遠慮しあって診療に役立つ意見が交換しづらいような事が起こるのを減らせる可能性が生まれる

 

 

などと、とても意義あるものなのだが、これは特別アメリカだけで行われているものではないだろう

 

重要な事は、このミーティングが毎朝行われ全ての患者がディスカッションされる、ということだ

 

これには多くの人の時間と労力を要するが、それに見合うだけのものがある印象だ

 

 

このようにmultidisciplinary conferenceは意義あるものなのだが、個人的にはこのミーティングに毎朝研修医として参加する事が、特に最初の頃は、ただただ苦痛であった

 

ミーティングを仕切っているケースマネージャーにつるし上げられるからだ

 

ケースマネージャーというのは、入院中から退院後のケアまでが円滑に進むように全体をコーディネートする役割を担うのだが、多くの場合はもともと看護師だった人がなるポジションだ

 

この立場にある人がミーティング中終始「入院期間を少しでも短くしろ」と鬼の形相で迫ってくるのだ

 

「なんでまだ入院が必要なのか」

「診療になんの進展もないがこの週末はいったい何をしていたのか」

「その検査をなぜ待つ必要があるのか、退院させて外来でできないのか」

「なんでその検査が昨日行われなかったのか、何故その時に検査室に連絡して確認しなかったのか」

「コンサルタントの医師はなぜまだ患者を診ていないのか、連絡したのか」

「午前中の何時までに必ず退院指示を出せ」

「その抗菌薬静注はあと何日必要なのか、それならPICC lineに変えて外来で続けろ」

 

 

退院を決めたり、診療方針を変えたりの最終判断をくだすのは研修医でなく上の医師なので「直接そっちに言ってくれよ」と感じながら、このサンドバッグ状態にひたすら耐えるのだ

 

そのうち慣れて心の中で(知るか、ボケェッ!)と思って穏やかに聞けるようになるまではただただアワアワするしかないのだ

 

と、研修医にとってはあまり心地の良いものではないのだが、でもやはり日々これだけ発破をかけられると、どうしたって入院期間を短くするために努めざるを得なくなるのだ

 

この働きかけが入院期間を短くする事にかなり貢献している印象だ

 

まあ他にもソーシャルワーカーがとても迅速で入院初日からすぐリハビリやナーシングホームが必要そうだと判断したら虱潰しに連絡を取り始める、などと多くの職員が入院期間を短縮しようという意識を共有している感じがある

 

これらはほんの一部なのかもしれないが、入院期間を短くすることに本気で取り組む事が手放しで良い事かどうかは分からないが、自分たちも一緒に生き残っていくためにせざるを得ない事なのだろう。やると決めたら徹底的にやる姿勢は参考にはなると感じる

 

 

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