レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

深夜に専門医に電話で相談する時の心得

 

仕事とはいえ真夜中に宅直の専門医に電話をかける事は決して心浮かれる作業ではない。ましてや相手がおっかない医師である場合ならなおさらだ

 

もちろん睡眠を中断させられる側の方が辛いのだが

 

そのストレスを少しでも増幅させないために、せめて相談する側の電話でのプレゼンテーションをマシなものにする必要がある

 

これは研修医の時からの自分の課題である

 

今もまだ良きプレゼンの方法を模索中だが、現時点で大切だと考えている事は以下のことだ

 

 

① 自分が何を相談したいのか明確にする

② 相手が何を知りたいかを想像する

 

 

 

自分が何を相談したいのか明確にする

 

言うなれば当たり前のようだが、自分が研修医の時はこの事も曖昧なまま上司に相談していた事を思い出す。患者の症候やデータを羅列してどうしたらいいかの対応を乞う。いわば丸投げである

 

相談する前に一度自分で具体的に何を相談したいのか問うてみる

 

それが分かっていないと緊張や恐怖でテンパっている事も加担して、いきなりフルのケースプレゼンテーションを始めてしまうのだ

 

「〇〇先生、お忙しいところすいません。相談したい患者がいるのですがよろしいでしょうか。高血圧、2型糖尿病の既往のある62歳男性が胸痛で来院しました。胸痛の性状は~」

 

といった具合に

 

 

まず具体的に何を尋ねたいかを冒頭で伝える

 

たとえば胸痛の患者であれば

 

「入院中に胸痛を発症して急性冠症候群を疑う患者がいます。カテが必要かどうか、必要なら緊急ですべきか、あるいは待機的でいいかの判断をご相談させていただきたく電話させていただきました」

 

これは相手が何を知りたいかにも繋がるが、最初に要点を伝えておく事で相手がその後に続くプレゼンテーションを聞く際の注意点もはっきりしやすくなる

 

 

続けてプレゼンを始めるのだが、相手が何を知りたいかを想像して行なっていく

 

たとえばこの胸痛の患者に関して専門医は何を知りたいだろうかと考えた際に現在の自分が思いつくのは主に以下のようなものだ

 

 

・急性冠症候群と考える根拠

・鑑別疾患の可能性が低いと考える根拠

・緊急でカテをすべき条件を有しているか

・risk stratification

・カテが可能かどうか

・現在の治療

 

 

これらの事項を入れる事を意識しながらプレゼンを行なう

 

 

「77歳男性、腹痛を主訴に来院、CTにて胆嚢壁肥厚を伴う胆石を認め、手術目的に昨日入院。本日深夜0時ごろベッド上安静中に胸痛出現、発症は緩徐、左上腕に放散痛を伴う左胸部全体の圧迫感、発汗、軽度の呼吸困難感を伴いました。症状はニトロ舌下で改善、胸痛持続時間は15分、発症後に採取した最初のトロポニンは陰性、心電図はI, aVL, V3-6でSTがダウンスロープに低下、入院時の心電図と明らかな変化を認めます。胸部エックス線上、気胸・縦隔拡大認めず、悪性疾患や血栓症の既往なく低酸素血症・頻脈も認めません。現在血行動態は安定、心不全を疑う兆候なし、胸痛もなし、明らかな心雑音も聴取せず、洞調律を維持しています。リスクファクターは糖尿、高血圧、喫煙で、年齢、心電図変化よりTIMI score 3点と評価、腎機能低下なく、Full codeで本人はカテも含めて積極的治療を望んでいます。現在の治療はニトロ舌下一回投与後、アスピリン325mg、アトロバスタチン80mg投与、血圧152/84、脈拍78でメトプロロール25mg経口6時間毎で開始し、ヘパリン持続静注を開始しようと考えています。入院時からの絶食を継続、心電図・トロポニンを継時的にフォローしていきます。夜間緊急でカテをする必要はないのではないかと考えていますが、いかがでしょうか。また2剤併用抗血小板剤ですが、房室ブロック等なく、明らかな出血リスクも認めず、朝外科医に胆摘の時期について確認する予定ですが、投与はどうしたらよろしいでしょうか」

 

 

 

 

プレゼンテーションを聞けばその人のレベルが分かると言われるように、これは一朝一夕に上手くなるものではないと考える

 

ましてや経験も少なく先の見通しも分からない研修医の初期の段階で卒なくプレゼンをこなすのは至難の業だと体験をもって実感している

 

少しでも万全に近づくよう準備してからプレゼンしたいと思いつつも、臨床の現場では必ずしもその猶予がない事が多々ある

 

大切なことは今の時点でできる精一杯のプレゼンをして、抜けたり怒られて指摘された事を次回に活かせるようにすればよいのである

 

仮に自分が相談される側だったとしたら、どうやってその判断をするかを症例を振り返りながら学習する

 

この作業を積み重ねていく事によって少しでもマシなプレゼンテーションができるようになる

 

そう自分に言い聞かせつつ今夜も恐怖に震えながらおっかない先生に電話相談させていただくのである

 

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