レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

市中肺炎

 

・肺炎球菌ワクチンの適応

65歳以下で慢性呼吸器疾患を有する(COPDは含まれるが喘息は適応でない)

  

 

・慢性疾患を持つ高齢者は呼吸器症状がない場合がある

(倦怠感、転倒、食思低下、意識障害などで受診した高齢者の鑑別疾患として考慮する必要がある)

 

 

・血液培養は必ずしも全ての患者で採取しない方が良いかもしれない(1, 2)

(低リスク患者では偽陽性の確率が真陽性の確率を上回り、入院期間を延長させたり、バンコマイシン投与が増える可能性がある)

(以下の場合、血液培養採取が推奨される:ICU入院、白血球減少、アルコール乱用、重度慢性肝疾患、無脾症、胸水、肺炎球菌尿抗原陽性)(1)

 

 

 ・初回胸部X線写真は陰性であることがある

(胸部X線写真が陰性でも病歴や身体所見で肺炎を示唆する可能性が高い場合は治療を開始し、フォローアップ胸部X線写真を行う)

 

 

・入院時に陰影を確認できた場合、入院中あるいは退院前にルーチンでフォローアップの胸部X線写真を撮る必要はない

(治療反応不良あるいは悪化する場合精査が必要である)

 

  

・プロカルシトニン値測定が抗菌薬使用のガイダンスに有用であるかもしれない

(プロカルシトニン値が0.25μg/L以下の時に抗菌薬投与を控えたグループは通常の臨床に基づいて抗菌薬を投与したグループに対して有害事象や死亡率に有意差がなかった)(3)

 

 

・治療開始48〜72時間後に改善を認めない場合は通常細菌感染でない可能性(結核、ウイルス、真菌)あるいは非感染性肺疾患(閉塞性細気管支炎、器質化肺炎、過敏性肺炎、間質性肺炎、肺癌、癌性リンパ管症、気管支肺胞癌、リンパ腫、うっ血性心不全等)の可能性を検討する

(感染症科コンサルト、あるいは呼吸器内科コンサルトして気管支鏡検査を検討) 

 

 

・治療に一旦反応した後に悪化する場合は肺塞栓症、抗菌薬起因腸炎、膿胸、髄膜炎、心内膜炎等を鑑別疾患として考慮する

 

 

・重症度判定を参考に外来治療、一般病棟入院、ICU入院の判断をする

(PSI と CURB-65を比較したスタディでは 両方で低リスク患者を正確に予測し、またハイリスク患者においてはCURB-65の方が死亡率予測により優れた結果を示した)(4)

 

 

・ICU入院基準

◆ 人工呼吸器治療

◆ 敗血症性ショック 

◆ 以下の項目を三つ以上満たす場合

呼吸数30/分以上、PaO2/FIO2 ratioが250以下、多葉肺炎、意識障害、BUNが20mg/dL以上、白血球数4000以下あるいは100000以上、体温36度以下、多量輸液を必要とする血圧低下 

 

 

・喀痰量が1日30mlを超える場合は呼吸理学療法が有効であるかもしれない(5)

 

 

・外来抗菌薬選択

<薬剤耐性肺炎球菌、グラム陰性菌のリスクがない場合>(*)

▶︎ アジスロマイシン500mg 初日1回、250mg 1日1回4日間、あるいは、500mg 1日1回3日間

あるいは

▶︎ ドキシサイクリン 100mg 1日2回5日間

 

<薬剤耐性肺炎球菌あるいはグラム陰性菌のリスクがある場合>(*)

▶︎ 2剤併用(βラクタム剤とマクロライドあるいはドキシサイクリン)

◎ βラクタム剤(下記のうちどれか一つ)

- アモキシシリン1g 1日3回

- アモキシリンクラブラン酸(オーグメンチン)2g 1日2回

- セフポドキシム(バナン)200mg 1日2回

- セフロキシム(オラセフ)500mg 1日2回

(プラス)

◎ マクロライドあるいはドキシサイクリン(投与量は上記に同じ)

投与期間は5日間 

 

 

あるいは

 

▶︎ レボフロキサシン(クラビット)750mg 1日1回5日間

 

 

・外来でフォローする際の患者に対する指示

以下のいずれかの場合は医師に報告するように指示

◎ 治療開始48時間以降に体温が38.2度を超える、あるいは37.2度を下回らない場合

◎ 1日1〜2L以上の水分摂取を目指し、それが達成できない場合

◎ 胸痛、重度あるいは増悪する呼吸困難感、意識障害を認める時

治療効果が良好な場合は10〜14日後に再受診するよう指示

 

 

・治療開始から最低1ヶ月は間隔をあけてフォローアップ胸部X線写真を行う

(改善しない陰影は肺癌、炎症性疾患、非通常感染症等である可能性がある) 

 

  

・一般病棟入院抗菌薬選択①

<多剤耐性菌リスクがない場合>(*)

▶︎ βラクタム+マクロライドあるいはドキシサイクリン

- セフトリアキソン(ロセフィン)1〜2 gram 1日1回

- セフォタキシム(セフォタックス)1〜2 gram 8時間毎

- アンピシリンスルバクタム(ユナシン)1.5〜3 gram 6時間毎

(プラス)

マクロライドあるいはドキシサイクリン

(重症肺炎でない場合は経口投与可) 

 

あるいは

 

▶︎ 抗肺炎球菌キノロン

- レボフロキサシン750mg 1日1回

- モキシフロキサシン400mg 1日1回

 

(薬剤耐性肺炎球菌が疑われる場合はセフトリアキソンあるいはセフォタキシムが好ましい)(6)

  

・QT延長を認める場合はマクロライドやキノロンでなくドキシサイクリンを選択する

 

 

・一般病棟入院抗菌薬選択②

<医療介護関連肺炎で多剤耐性菌リスク有の場合>(*)

● 非重症肺炎で多剤耐性菌リスクが2つ以上の場合 

あるいは

● 重症肺炎で多剤耐性菌リスクが一つ以上の場合

▶︎ 緑膿菌二重カバー  +  MRSAカバー が必要になるかもしれない

 

(医療介護関連肺炎は多剤耐性菌のリスクが高いと考えられ、院内肺炎と同様に対応することが推奨されていたが、いくつかのスタディから必ずしもそうでないことが明らかになり、不必要な広域抗菌薬暴露および薬剤耐性菌発生を防ぐ目的もあって2016年のIDSA/ATS院内肺炎ガイドラインからは医療関連肺炎の項目が除外された。よって医療介護関連肺炎における多剤耐性菌をカバーする抗菌薬の選択はケース毎に検討されるべきとされている)

 

 

・救急外来受診4時間以内に抗菌薬を開始する

 

 

・ICU入院抗菌薬選択

<緑膿菌リスクファクターなし>(*)

◎ セフトリアキソン あるいは セフォタキシム

(プラス)

◎ アジスロマイシン あるいは 抗肺炎球菌キノロン(レボフロキサシン、モキシフロキサシン)

 

(ICU入院患者ではβラクタム・マクロライド併用投与の方がβラクラム・キノロン併用に比べ死亡率が低い傾向にあった)(7)

 

 

<緑膿菌リスクファクターあり>(*)

▷ 緑膿菌二重カバー

 

◎ 抗緑膿菌βラクラム(セフィピーム、ピペラシリンタゾバクタム、イミペネム、メロペネム)

(プラス)

◎ 抗緑膿菌キノロン(シプロフロキサシン、高用量レボフロキサシン(750mg))

 

あるいは

 

◎ 抗緑膿菌βラクタム

(プラス)

◎ アミノグリコシド(ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン)

(プラス)

◎ マクロライドあるいは抗肺炎球菌キノロン

 

 

・市中MRSA肺炎が疑われる場合はリネゾリド、あるいはバンコマイシン投与を追加する(*)

(人工呼吸器治療を要する、あるいは敗血症性ショックの場合は投与)

(壊死性肺炎の場合はリネゾリド、あるいはバンコマイシン + クリンダマイシンを投与する。バンコマイシンのみではトキシン産生を抑制しないため)(8)

 

 

・重症肺炎で全身性の炎症が強い場合はステロイド投与が有効であるかもしれない

(重症肺炎でかつ入院時CRPが15mg/L以上の場合、メチルプレドニゾロン0.5mg/kg 12時間毎 5日間投与した場合、投与しなかったグループに比べ死亡率に有意差はなかったものの、治療失敗率は有意に低かった)(9) 

 

 

・抗菌薬を静注から経口に変更するタイミング

 発熱がないことが8時間以上あけて2回確認され、かつ経口薬内服が可能な場合

(早くて入院から24〜48時間以内、少なくとも入院3日目までに半数の患者で変更可能である)

 

 

・原則培養結果に基づいて経口薬を選択するが、培養結果が得られなかった場合で、βラクタム・マクロライド併用治療に反応が良好であった時はマクロライド単剤経口薬に変更可能である

 

 

・経口薬に変更でき次第退院が可能である

(経口薬に変更したその当日に退院させた場合、変更後1日入院継続して経過を診たグループに比べ、死亡率および再入院率に有意差はなかった)(10)

 

 

 

 

* ペニシリン・薬剤耐性肺炎球菌リスクファクター

65歳以上、3ヶ月以内のβラクタム剤治療、免疫抑制治療(コルチコステロイドを含む)、複数の慢性疾患の既往(心・呼吸器・肝・腎疾患)、アルコール依存、悪性疾患、無脾症、デイケアセンターの子供への曝露

 

* グラム陰性菌リスクファクター

nursing home 在住、慢性心・呼吸器疾患、複数の慢性疾患の既往、最近の抗菌薬使用

 

*  多剤耐性菌リスクファクター(緑膿菌、他のグラム陰性菌、MRSA等)

最近の入院、最近の抗菌薬投与、functional status不良、免疫抑制

 

* 緑膿菌リスクファクター

器質的肺疾患(気管支拡張症)、コルチコステロイド使用(プレドニゾン10mg/day以上)、1ヶ月以内の1週間以上の広域抗菌薬使用、低栄養、最近の入院、免疫抑制(HIV、好中球減少、臓器・血液幹細胞移植等)

  

* MRSAリスクファクター

ESRD、IV drug乱用、インフルエンザ罹患、3ヶ月以内の抗菌薬使用(特にキノロン)、MRSAキャリア、グラム染色で示唆する所見、壊死性あるいは空洞性の肺炎、膿胸

 

 

 

 

 

1. Infectious Disease Society of America. Infectious Disease Society of America/American Thoracic Society consensus guidelines on the management of community-acquired pneumonia in adults. Clin Infect Dis. 2007;44 Suppl 2:S27-72

 

2. Metersky ML, Predicting bacteremia in patients with community-acquired pneumonia. Am J Respir Crit Care Med. 2004;169:342-7

 

3. Upadhyay S, Biomakers: what is their benefit in the identification of infection, severity assessment, and management of community-acquired pneumonia? Infec Dis Clin North Am. 2013 27:19-31

 

4. Aujesky D, Prospective comparison of three validated prediction rules for prognosis in community-acquired pneumonia. Am J Med. 2005;118:384-92

 

5.  Graham WG, Efficacy of chest physiotherapy and intermittent positive-pressure breathing in the resolution of pneumonia. N Engl J Med. 1978;299:624-7

 

6.  Lujan M, Prospective observational study of bacteremic pneumococcal pneumonia: Effect of discordant therapy on mortality. Crit Care Med. 2004;32:625-31

 

7.  Sligl Wl, Macrolides and mortality in critically ill patients with community-acquired pneumonia: a systematic review and meta-analysis. Crit Care Med 2014;42:420-432

 

8.  Micek ST, Pleuropulmonary comlications of Panton-Valentine leukocidin-positive community-acquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus: Importance of treatment with antimicrobials inhibiting exotoxin production. Chest. 2015;128:2732-8

 

9.  Torres A, Effect of corticosteroids on treatment failure among hospitalized patients with severe community-acquired pneumonia and high inflammatory response: a randomized clinical trial. JAMA 2015;313:677-686

 

10.  Nathan RV, In-hospital observation after antibiotic switch in pneumonia: a national evaluation. Am J Med 2006;119:512.e1-7

 

 

 

 

 

 

From IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

6 October 2015 Volume 163 Number 7

 

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