心房細動
・自覚症状は動悸や胸痛が比較的若い患者で多い一方、高齢者では倦怠感や呼吸困難感が多く認められる(1)
・日常的に症状を有する患者では診断にホルター心電図で十分なことが多いが、発症の頻度が少ない場合は1ヶ月モニターしても見逃す事もあり得る
・原因不明の脳梗塞では診断によって抗凝固療法が適応となる心房細動有無の評価のために埋め込み型モニターがより多く使用されるようになってきている(2)
・新規発症の心房細動を評価する場合、血液検査(電解質、甲状腺機能、腎機能、肝酵素)、便潜血反応、経胸壁心エコー等を評価する。また誘引となる急性疾患を見逃さないように注意する(心筋梗塞、肺血栓塞栓症、甲状腺機能亢進症等)
・心房細動治療の目的は症状緩和、塞栓症予防、心筋症予防の主に三つである
・WPW症候群を伴う心房細動では房室伝道が極めて速くなり得るため、緊急でcardioversionを要する事が多い
・入院適応
- 診断不明瞭あるいは不安定な不整脈の時
- 急性心筋梗塞、意識障害、非代償性心不全、血圧低下等を合併している
- 血行動態は安定していても症状が非常に強い
- 待機的cardioversionを行う時
- 塞栓症のリスクが非常に高く抗凝固療法を緊急で開始する時
- 特定の治療薬を開始する場合にモニターを要する時
・rhythm control よりも rate control が治療の主流であるが、若い患者や症状が強い患者では rhythm control を考慮する事が妥当とされる
(特に初回発症で症状を有する若年患者では 洞調律復帰後に抗不整脈投与なしで洞調律を維持できる事が多いので rhythm control が好まれる事が多い)
・rate control の目標は110 beats/min以下である(3)
・rate control の第一選択薬はβブロッカーあるいは非ジヒドロピリジンCaチャネルブロッカーである
・ジギタリスは運動に伴う頻脈を抑制せず、また心不全で交感神経が緊張している状況では効果が低い
・アミオダロンが rate control に使われる事があるが、副作用が多いため、他の薬剤が使用できない時に考慮される(4)
・アミオダロン以外の rhythm control 薬は一般的には効果が同等とされており、副作用等に基づいて選択される
(虚血性心疾患、構造的心疾患や重度の心不全がない場合はフレカイニドやプロパフェノンが有効とされる。ソタロールはβブロッキング作用を有するが、多少のnegative inotropic activity を持ち、QT延長のリスクがあるため入院でモニタリングを行いながら導入される)
・ドロネダロンはアミオダロンに比べ抗不整脈効果が弱く、また非代償性心不全および慢性心房細動では禁忌とされている(5)
・CHA2DS2-VASc scoreが塞栓症リスク評価のスタンダードである
・CHA2DS2-VASc score2点以上のすべての心房細動患者で抗凝固療法が推奨される
(0点では不要である。1点の時は必須ではないがアスピリンあるいは抗凝固療法を考慮する事が妥当とされている)(6)
・アスピリンによる塞栓症予防のエビデンスは弱く、full dose (325mg/day) でのみ認められる(6)
・4つの全ての非ビタミンK依存経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)が人工弁を持たない心房細動患者の塞栓症予防に対しワーファリンに劣らない代替薬として承認されている(7, 8, 9, 10)
・非ビタミンK依存経口抗凝固薬は人工弁患者では禁忌である(11)
・非ビタミンK依存経口抗凝固薬は僧帽弁狭窄症以外での生体弁患者には使用できる
(7, 8, 9, 10)
・イダルシズマブがダビガトランに対する特異的中和剤として承認されている(12)
・アンデキサネットα がリバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン の中和剤としてFDAで承認審査を受けている(13)
・症状が強い発作性あるいは慢性心房細動患者で薬剤治療に失敗した場合はアブレーション治療が考慮される(6)
・アブレーション後の長期予後に関する質の高いデータは得られていないのが現状である
・治療成功後に抗凝固療法が不要になるという患者の期待に基づいてアブレーション療法を選択すべきでない
(現在のところ、いかなるrhythm control 治療も塞栓症リスクを減らす事を示した信頼できるデータが得られていない)
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インザクリニック
アナルズオブインターナルメディシン
2017年3月7日