レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

肥満

 

肥満の割合はアメリカおよび世界中で過去40年間劇的に増え、そして現在も多くの国で増加し続けている

 

 

 

多くの肥満関連疾患は脂肪組織の代謝の影響に起因している

(肥満関連疾患:多数

(他:心房細動、うっ血性心不全、深部静脈血栓、悪性疾患(大腸癌、閉経後乳癌、子宮癌、)、逆流性食道炎、びらん性胃炎、尿路結石、タンパク尿、慢性腎臓病、前立腺肥大、偏頭痛、インフルエンザ悪化、等)

 

 

 

肥満と死亡率の相関関係は J 型カーブを呈し、BMI 20.0~24.9kg/m2(標準体重)で最も低いと伝統的にはされてきた

 

 

 

最近の97の試験のメタアナリシスではBMI 25.0~29.9kg/m2の方が標準体重よりわずかばかり死亡率が低いことが示され(1)、肥満と死亡率の相関関係は議論の余地を有している

 

 

 

overweight(体重過多:BMI 25.0~29.9kg/m2)あるいはクラス1肥満(BMI 30.0~34.9kg/m2)が死亡率増加に関係するか否かに関わらず、それらのグループは2型糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸および心血管疾患などの合併疾患の発症に強く関連している

 

 

 

重度肥満に対して肥満治療手術を受け、初期の体重から15~25%低い体重を維持したグループでは全ての原因による10年後死亡率を29%減少させたことが示された。主には心血管疾患および癌関連による死亡率の減少よるものであった(2)

 

 

 

肥満予防に関する有効な行動には、食べ物のラベルを読む、一回に食べる量を減らす、果物・野菜を食べる(5 servings per day)(*)、適量の線維をとる(25g/日)、運動(45~60分/日)、仕事でのストレスを減らす(3)、車通勤の制限(4)、適度な睡眠(6~9時間)(5)などがある

 

(*)1 serving:

生野菜1カップ、調理された野菜1/2カップ、野菜ジュース3/4カップ、中等のリンゴ・バナナ・オレンジ 、缶詰あるいは調理された果物1/2カップ、フルーツジュース3/4カップ

 

 

 

 

内科医は時に患者の内服薬を確認することによって肥満予防に介入できる場合がある(体重増加に関連する薬剤(★))

 

 

 

 

計120877人を12~20年追跡した3つのコホート試験を組み合わせた結果から最も強く肥満と関連を示したものはポテトチップス、じゃがいも、赤みの肉、加糖飲料の摂取であり、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、ヨーグルトの摂取は逆の相関を示した(6)

 

 

 

 

肥満の親しい友人あるいは家族がいる場合は肥満のリスクが 上がる可能性が示唆されている(7)

 

 

 

BMIを使って肥満の診断を行うことが推奨されている

overweight:  25.0~29.9kg/m2

class 1:  30.0~34.9kg/m2

class 2:  35.0~39.9kg/m2

class 3:  40.0kg/m2以上

(class 3の名称は以前使われていたmorbid obesityからextreme or severe obesityに変更された)

 

 

 

東アジアでは糖尿病のリスクはBMI 23kg/m2以上から増加する(中国人、日本人他)

 

 

 

中心性肥満は糖尿、高血圧のような肥満関連疾患のリスクを高める内臓肥満によく相関している。ウエスト周囲径は中心性肥満に関しBMI以上に情報を提供する

 

 

 

医師はoverweight およびclass 1肥満の患者においてウエスト周囲径を測定すべきである

(BMI 25kg/m2以下あるいはclass 2以上の肥満においてはウエスト周囲径がリスクに関するさらなる情報をもたらす事はない) 

 

 

 

ウエスト周囲径は腸骨稜上で通常呼吸の呼気後に測定する

男性では88cm以上、女性では100cm以上がウエスト周囲径上昇とされる

 

 

 

患者は治療者が「肥満」という単語よりも、「体重」(あるいは weight problem)という言葉を使うことを好むことがスタディから示されている

 

 

 

治療者は「今日は体重に関してお話してもいいですか」という問いから開始する

(「減量する必要がある」と、多くの場合患者が既に自覚していることを単に言われるよりも、上記のように切り出すことによって患者の懸念に関する話をする機会を与える事ができる)

 

 

「現体重の5~10%減量するだけで合併するコンディションをかなり改善する可能性があります」 という説明によって患者に体重節制に関する希望を与える可能性がある

(患者は25%あるいはそれ以上減量しなければ成功でないと考えている場合が多い)(8)

 

 

 

肥満に関する治療には生活習慣改善、薬物治療および手術療法がある

(推奨されるアルゴリズムでは生活習慣改善は BMI 25kg/m2 以上から、薬物治療はBMI 30kg/m2 以上で生活習慣改善だけでは十分な減量ができない場合(合併疾患を有する場合は 27kg/m2 以上から)、手術療法はBMI 40kg/m2 以上から(合併疾患を有する場合は 35kg/m2 以上から)考慮する必要がある、とされている)(9)

 

  

 

カロリー制限が生活習慣改善による減量の鍵になる

(患者は摂取カロリーを500~1000kcal/日 減らす方が同等量のカロリーを運動によって消費するよりもかなり容易であると多くの場合感じる(およそ500ccの加糖飲料を2回控えるか、およそ8km歩くか、の選択において))

 

 

 

典型的には患者の1日必要摂取カロリーを計算し、そこから 500~1000kcal 差し引いたカロリー摂取を行い、週ごとにおよそ 0.5~1kg の減量を目指していく

 

 

 

カロリー摂取の処方は患者が正確にカロリー摂取量を測定できるという推測に基づいて行われるが、肥満患者は1日カロリー摂取量をおよそ40%少なめに評価することがスタディから明らかにされている(10)

 

 

 

この結果に基づいて113.6kg以下の患者では1200~1499kcal/日、113.6kg以上の患者では1500~1800kcal/日の目標カロリー摂取量が処方される

(患者の1日カロリー摂取量の過小評価を考慮した処方)

 

 

食事療法には低脂肪ダイエット、低炭水化物ダイエット、Meal-replacement diet(シェイク、meal bars)など様々なものがあるが、多くのスタディにおいて長期的には主要栄養素量が異なるダイエット間でも同等の減量を達成することが示されている。よってfederal dietary guidelinesに従ったダイエットが推奨される(11

 

 

 

運動は減量維持においてより重要な意味を持つ

 

 

 

週に275分(およそ1日40分)の運動を継続できる場合、長期的に減量した体重を維持できる可能性が非常に高くなる

 

  

 

減量した体重を維持する事は難しい

6ヶ月のプログラムを終えた患者の平均で減量した体重の三分の一が翌年の間に再度増加することが示されている。以前はこの体重の再増加は古い習慣への後退が原因だと考えられていたが、最近の研究では1年間で十分な減量を達成した後でも空腹を促すホルモン(ghrelin)が上昇したままである事や、満腹感を司るホルモン(leptin, amylin)が依然低下したままである事が明らかになり(12)、つまり生理的に体重再増加に向かう仕組みになっている事がわかった

 

 

 

 

FDAの承認を得ている肥満治療薬にはPhentermine,  Diethylproprion,  Benzaphetamine,  Phendimetrazine,  Phentermine-topiramate,  Lorcaserin,  Orlistat がある

 

 

Phentermine

米国において最も多く処方されている。交感神経刺激作用があるため血圧、脈拍のモニターが必要である(心血管疾患既往、コントール不良高血圧、緑内障、甲状腺機能亢進症、drug abuseでは禁忌)。短期間の使用が承認されている(12週間)

(他の交感神経刺激剤(Diethylproprion,  Benzaphetamine,  Phendimetrazine)の使用頻度は低い)

 

 

Phentermine-topiramate

2剤をそれぞれ単剤投与に比べ減量して組み合わせたもので、それぞれの副作用を減らす意図でつくられた薬剤。topiramateはてんかん治療薬で副作用の一つに体重減少がある。現在承認されている薬剤中で最も減量効果が高い(最初の体重の8~11%減量)。副作用は感覚低下、口腔乾燥、便秘、不眠がある。禁忌はphentermineと同じで、かつ尿路結石(topiramate)が含まれる。またtopiramateは妊娠においてcategory Xとされている

 

 

Lorcaserin

5HT2C受容体のアゴニストで食欲を制御する。セロトニン製剤を服用中の患者では注意が必要である(SSRI, SNRI)。重度の鬱および心血管疾患の既往では禁忌である

 

 

Orlistat

腸管での脂肪吸収の抑制によって減量効果を発揮する。プラセボに比べ3~4%の体重減量を認める(lorcaserinと同等)。市販薬としても利用できる。副作用には脂肪便や脂溶性ビタミン欠乏などがある

 

 

 

 

 

減量手術は BMI 40kg/m2 以上、あるいは BMI 35kg/m2 以上で少なくとも一つ以上の体重関連疾患を有する(2型糖尿、睡眠時無呼吸、重度の関節疾患、等)場合は一般的に適応となる。またlaparoscopic gastric bandingも BMI 30kg/m2 以上で2型糖尿を有する場合は施行がFDAで承認されている

 

 

 

米国で最も一般的に行われている減量手術は次の三つである

Adjustable gastric banding

Roux-en-Y gastric bypass

Sleeve gastrectomy(胃の75%を切除)

(すべて腹腔鏡下で可能な手術である)

 

 

 

減量手術は重度の肥満において最も効果の高い治療である

Randomized trials のメタアナリシスでは手術一年後における効果は gastric banding,  gastric bypass,  sleeve gastrectomy においてそれぞれ BMI が2.4kg/m2,  9.0kg/m2,  10.1kg/m2 減少したことが示された(13)

 

  

 

multicenter cohort studyでは減量手術を受けた患者において4.3%は少なくとも重大な合併症が認められた(死亡、深部静脈血栓症、再手術、failure to be discharged from the hospital)。また30日死亡率ではgastric banding,  laproscopic gastric bypass,  open gastric bypass においてそれぞれ、0%,  0.2%,  2.1% であった(14)

 

  

 

 

 

 (★)グルココルチコイド(prednisone)、糖尿病薬剤(insulin, sulfonylureas, thaizolidindiones, meglitinides)、第一世代抗精神病薬(thioridazine)、第二世代抗精神病薬(risperidone, olanzapine, clozapine, quetiapine)、神経疾患薬(carbamazepine, gabapentin, lithium, valproate)、抗ヒスタミン薬(特にcyproheptadine)、抗うつ薬(paroxetine, citalopram, amitriptyline, nortriptyline, imipramine, mirtazapine)、ホルモン製剤(progestins, 特にmedroxyprogesterone)、βブロッカー(特にpropranolol)、アルファブロッカー(特にterazosin)

 

 

 

 

1. Flegal KM, Association of all-cause mortality with overweight and obesity using starndard body mass index categories: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2013;309:71-82

 

2. Sjostrom L, Swedish Obese Subjects Study. Effects of bariatric surgery on mortality in Swedish obese subjects. N Eng J Med. 2007;357:741-52

 

3. Brunner EJ, Prospective effect of job strain on general and central obseity in the Whitehall II Study. Am J Epidemil. 2007;165:828-37

 

4. Lopez-Zetina J, The link between obesity and the built environment. Evidence from an ecological analysis of obesity and vehicle miles of travel in California. Health Place. 2006;12:656-64

 

5. Patel SR, Short sleep duration and weight gain: a systematic review. Obesity (Silver Spring). 2008;16:643-53

 

6. Mozaffarian D, Changes in diet and lifestyle and long-term weight gain in women and men. N Engl J Med. 2011;364:2392-404

 

7. Christakis NA, The spread of obesity in a large social network over 32 years. N Engl J Med. 2007;357:370-9

 

8. Foster GD, What is a reasonable weight loss? Patients' expectations and evaluations of obesity treatment outcomes. J Consult Clin Psychol. 1997;65:79-85

 

9. Munro JF, Comparison of continuous and intermittent anorectic therapy in obesity. Br Med J. 1968;1:352-4

 

10. Lichtman SW, Discrepancy between self-reported and actual caloric intake and exercise in obese subjects. N Engl J Med. 1992;327:1893-8

 

11. Sacks FM, Comparison of weight-loss diets with different compositions of fat, protein, and carbohydrates. N Engl J Med. 2009;360:859-73

 

12. Sumithran P, Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss. N Engl J Med. 2011;365:1597-604

 

13. Padwal R, Bariatric surgery: a systematic review and network meta-analysis of randomized trials. Obes Rev. 2011;12:602-21

 

14. Flum DR, Longitudinal Assessment of Bariatric Surgery (LABS) Consortium. Perioperative safety in the longitudinal assessment of bariatric surgery. N Engl J Med. 2009;361:445-54

 

 

 

 

In The Clinic 

Annals of Internal Medicine

3 September 2013 Volume 159 Number 5