レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

米国臨床留学直前に教わった大切にしていきたい事

 

アメリカでは自分の加入している医療保険と契約を交わしている医者の中からしか外来主治医を選べない仕組みになっている

 

与えられたリストの中から家に近いという理由だけで選んだクリニックに現在通っているのだが、多分たまたまなんだろうが、そこは医者がコロコロ変わるのである

 

通い始めて三年目なのだが、主治医が既にもう三人目である

 

年に一回健診で受診するだけだから別に大して困らないのだが、いちいち自分で新たな主治医をセットアップしなければならないのがただ面倒なのである

 

先日主治医が移動になったとの通知を受けて「またかよ~」なんて文句を言いながらその手続きをしていたのだが、その時ふと思い出したことがあった

 

渡米する直前の強く印象に残った事だ

その時はひたすら当直のバイトをしていた時期だった

ただの自業自得なのだが移動に次ぐ移動で経済的に大変な事もあって、連日夜勤に明け暮れていた

 

出発の一週間くらい前だっただろうか、その日は自分が以前研修医の時に働いた病院で当直をしていたのだが、救急外来で診療をしているとふと昔お世話になった先生が通りかかって顔を出してくれた

 

その時診察していた患者さんの主治医がたまたまその先生だったのだが、腹痛で受診し不安そうな表情を浮かべていた患者さんが先生の顔を見た途端に明るい顔に変わった

 

「あぁ、〇〇先生~」

「〇〇さん、どうしたの?」

 

状況をプレゼンすると、先生が診察をされ、叮嚀にその患者さんに説明をしてくれた

 

夜9時前くらいだっただろうか、その先生はかなりのベテランで年齢も六十近かったんじゃないかと思うが、そんな時間まで働いているのもそうだが、主治医とはいえ勤務時間外にも関わらず、患者さんの不安を受け止め、対応される

 

その真摯な姿に深い感銘を受けた

 

ボクは黙ってその状況を傍で見ていただけだったのだが、患者さんの表情を見ていて如何に先生のことを信頼しているかがよく伝わってきた

きっと長い間先生はその人を診てこられて築かれた信頼なのだろうと想像した

 

それを見ていて自分がとても恥ずかしい気持ちになった

 

ボクはもう十年以上医者をやっているが、いまだ一人の人を診続けてそんな信頼関係を築いた事がない

 

転々と働く場所を変えてきたからだ

そして今からまた移動しようとしていた

 

ボクはその当時アメリカに行ける事が決まってウェーイ!ってなっていた時だった(今だって多少なっているが)

そんな調子に乗っていた自分の頭を強く殴られたような感覚になった

 

 

スキルアップのために様々な場所で経験を積む事は意味があるだろうし、ボクもそうしてきて良かったと思っている

 

ただ診られる側からすればやはり、あまり短期間で人が変わってしまうと辛いものもあるだろうと感じる

 

 

その場所に居続けて、そこにいる人たちを診続ける

 

 

人の信頼もそうだが長い間続けることによってはじめて出来る事もあるだろうと思う

自分の都合だけで生きている訳ではないので難しい時もあるが、一人の人を診続けて顔を見せただけで安心してもらえるような信頼関係を築く

 

自分もいつかそんな医者になりたいと思った出来事だった

 

    

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