Clostridioides difficile Infection
1978年までにClostridioides difficile(以前のClostridium difficile)が抗菌薬に関連しておこる下痢のもっとも多い原因として確立された(1)
2011年の米国におけるC difficileの発生数はおよそ453000、それに関連する死亡数は29300であった(2)
C difficile感染の発症数、重症度、死亡数の上昇はribotype 027株(以前のNAP1/BI/027)の流行に大きく関連しており、その株は2000年初期に現れ、結果カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいてoutbreakが認められた(3, 4, 5)
この株はfluoroquinoloneに高い耐性を持ち、以前C difficileでは多くなかった二元毒素を産生し、またtoxin Aおよびtoxin Bも他の株に比べ非常に多く産生する(15〜20倍)(4)
この株は周産期の女性や子供を含むリスクの確立されていない人への市中感染にも関連が認められている(6)
2007年から2010年の間イギリスにおけるribotype 027の有病率が55%から22%へと大きく減少した。これはfluoroquinolone使用の減少に付随しており、その減少がC difficileの発生率および死亡率の減少に大きく関連すると考えられている(7, 8)
他の株ribotype 078の発生も報告されており、この株はribotype 027と同等の重症度を持ち、若いpopulationへ感染し、より市中感染に関連している(9, 10)
予防
C difficileの人から人への伝染は糞口経路で起こる。人との直接の接触、汚染された環境・器具への暴露、colonizeされた医療従事者の手への接触などを介して獲得される(11)
感染リスクは入院患者の方が非常に高いが、人口10万人に対し51.9件の市中感染も認められている(6)
医療関連でcolonizationされた者および感染者への暴露が最も多い市中感染の原因と考えられている。限られたスタディではC difficileの汚染が確認された外来における医療環境も市中の感染源であることが示唆されている(12, 13)。スタディでは市中C difficile感染者のおよそ82%が近日に外来医療施設を訪れていたことが確認されている(13, 14)
12週間以内に救急外来で治療を受けたことも市中感染に大きく関連することが確認されている(抗菌薬治療を受けたかに依存)(13, 14)
家庭環境における人、ペット、農場家畜の間での伝染も記録されている(15, 16)
売られている肉や野菜からの菌の分離も報告されている(17)が、いずれの製品も市中感染のリスクとしては確認されていない(13)
C difficileは芽胞を形成し胃内の酸性環境でも生存できる
無症候性colonizationは急性期病院の患者の3〜18%で認められ、その獲得は入院期間の長さに強い関連性を示している(18)
長期施設入居者の4〜20%が菌を保持している(19)
outbreak時には長期施設入居者における無症候性colonization率は51%にまで登ることが報告されている(20)
市中におけるcolonization率はおよそ2〜10%とされている(18)
colonizationが確立されると、特定の因子によって病気の発症が促される
抗菌薬による腸内菌バランスの崩壊が最も多い原因であり、投与期間の延長および複数の抗菌薬使用がリスクを高める
特定の抗菌薬への暴露が耐性株の選別を促し、C difficile流行の原因となる。過去のclindamycin耐性株("J strain")のoutbreakは主にclindamycinの使用によってもたらされ(21)、ribotype 027の発生は主にfluoroquinoloneの使用に起因している。およそ全ての抗菌薬が腸内菌バランスの崩壊に対するリスクを有しているが、C difficile感染に関連している他の抗菌薬としては第三・第四世代cephalosporinおよびcarbapenemがある (5)
化学療法治療薬も同様の影響を持つかもしれない(22)
プロトンポンプ阻害剤やH2受容体ブロッカーもある役割を果たしているとのデータも報告されているが、依然議論は続いている(5, 23, 24)
手術、浣腸、便軟化剤、経腸栄養などの消化管の操作も起因するファクターであるとの報告もある(25, 26, 27)
好中球減少や進行したHIV感染などの免疫に関わる特定の状態も発症に起因するかもしれない。また高齢、衰弱、重篤な他の疾患への罹患などもリスク上昇に関連するとされている(5, 28)
感染を減らす方法は?
C difficile予防の最も重要な手段は抗菌薬使用の制限、特にリスクの高い特定のクラスの抗菌薬使用を控え、手袋、ガウン、手指衛生などの感染予防策を遵守することである。さらに日々環境の清掃および消毒を行うことも大切である
医師は微生物学者、感染症専門家、薬剤師、感染予防専門家、病院疫学者、病院管理者共同でデザインされた抗菌薬管理プログラムへ参加しなければならない。リスクの高い抗菌薬使用の制限から医師の抗菌薬治療のモニターおよびフィードバックまでの様々な方法が取られる。プロトコールでは尿路感染症や肺炎などの特定の感染症や状態に対する抗菌薬使用の改善にフォーカスすることも重要である
大きな教育病院の老年科サービスにおいて21ヶ月2期間で行われたprospective controlled, interrupted time-series studyでは適切なnarrow-spectrum抗菌薬使用へのフィードバックを含む抗菌薬処方プロトコールの導入の前後におけるC difficileの感染率が評価された。抗菌薬ポリシー導入後では、C difficile感染発症の有意な減少が認められた(incidence rate ratio, 0.35; P=0.009)(29)
市中感染の増加も認められるため、外来における抗菌薬使用もC difficile感染へ大きく寄与すると考えられることから、そのプロトコール使用も感染予防のターゲットとなるかもしれない
C difficileに感染した入院患者では下痢が止まった48時間後まで個室に隔離しなければならない(5, 30)
通常感染予防には患者接触の前後における厳格な手指衛生、接触予防にはC difficile感染患者のケアあるいは体液への暴露の可能性がある場合は廃棄できる手袋、ガウンを使用することが含まれる
石鹸による手洗いの方がアルコールによる手指消毒よりもC difficileのアルコールに高い耐性を持つ芽胞の除去に対し効果が高いことを複数のスタディが示している(31, 32)
しかし、アルコール消毒と比較して、石鹸による手洗いの方がC difficileの感染率を減らすことは証明されていない(33, 34)。さらにはアルコールが他の細菌に対して通常認める3〜4-log reductionが、石鹸を使った手洗いではC difficile芽胞に対する同等の減少が達成されない(35)。したがって、手袋の使用がC difficile伝染予防の最も重要な手段である。Infectious Diseases Society of America(IDSA)とSociety for Healthcare Epidemiology of America(SHEA)のガイドラインでは手袋を破棄した後の石鹸による手洗いを、アルコール消毒よりも推奨している(5)
診断
以下のリスクファクターを確認しなければならない
・抗菌薬使用(clindamycin, cephalosporin, carbapenem, fluoroquinoloneらが最も強く関連するが、他の全ての抗菌薬もリスクとなる。また投与期間と抗菌薬の投与数でリスクが上昇する)
・抗腫瘍薬使用
・入院あるいは長期施設滞在(入院あるいは長期施設滞在歴のない市中感染も頻度が増えている)
・高齢
・基礎疾患(悪性疾患、腎不全、衰弱)
・消化管操作(手術、経腸栄養、浣腸、(PPI/H2Bも関連するかもしれない))
C difficileによる抗菌薬関連性下痢は抗菌薬投与中、あるいは投与後すみやかに発症することが一般的であるが、発症が抗菌薬投与の数ヶ月後まで認められる場合もある。三日以上入院している患者ではC difficileが腸管病原菌として最も多くなる(36)
腹痛を伴う、あるいは伴わない下痢(24時間以内に3回以上)を認める患者、特にリスクファクター(最近の抗菌薬使用、入院、高齢など)を有し、他の明らかな原因(48時間以内の下剤使用など)を認めない場合はC difficile感染を考慮する必要がある。嘔気、嘔吐、発熱はよく見られるが、認めない場合もある。身体所見は感染の期間および重症度に依存して変わる
Clostridioides difficile感染の臨床所見と合併症
Asymptomatic carrier
下痢:なし
他の症状:なし
身体所見:正常
下部消化管内視鏡および他の所見:正常
Simple antibiotic-associated diarrhea
下痢:軽度
他の症状:全身症状は通常認めない
身体所見:正常
下部消化管内視鏡および他の所見:正常
Early colitis
下痢:多量
他の症状:嘔気、食思低下
身体所見:軽度発熱、軽度の腹部圧痛を認める場合もある
下部消化管内視鏡および他の所見:非特異的な発赤
Pseudomembranous colitis
下痢:多量
他の症状:嘔気、倦怠感、腹部不快
身体所見:発熱(時に高熱)、腹部圧痛、腹部膨満
下部消化管内視鏡および他の所見:偽膜形成(隆起した黄色プラーク)、白血球上昇(左方移動を伴い50000/μL以上かもしれない)
Fulminant colitis
下痢:通常多量で重度(イレウスあるいはtoxic megacolonでは欠如する場合もある)
他の症状:嘔気、腹部不快あるいは腹痛
身体所見:toxic appearance、発熱(通常高熱)、腹部膨満、圧痛、腹膜刺激兆候
下部消化管内視鏡および他の所見:重篤な患者では下部消化管内視鏡は禁忌、類白血病反応(50000/μL以上)、放射線画像では大腸拡張、腸管壁肥厚あるいは穿孔などが見られるかもしれない
診断検査として、cell culture cytotoxicity neutralization assay(CCNA)、toxigenic culture、toxin A and B enzyme immunoassays(EIAs)、nucleic acid amplification tests(NAATs)、glutamate dehydrogenase (GDH)などがあるが、どの検査が最も適しているとされるものはない
CCNAは感度94-100%、特異度97%であるが、結果が出るまでに24〜48時間かかり、またその検査にはtissue culture laboratoryが必要となるが、ほとんどの病院には存在しない
Toxigenic cultureはCCNAよりも感度が高いが、incubationに少なくとも48時間はかかり、かつ分離された菌がtoxigenic strainかどうかの確定にさらなる検査が必要となる
多くのcommercial toxin EIAsが利用可能であるが、感度がキット毎に大きく異なる
いくつかのNAATsが利用可能であり、toxin EIAsより感度が高い。しかしpositive predictive valueが検査前確率に依存して低いかもしれない(5)
Enzyme-linked immunosorbent assays for GDHは非常に感度が高いが特異度は高くない。それはGDHがtoxigenic strainとnontoxigenic strainの両方に認められるためである
C difficile感染診断にmultistep algorithmの使用を推奨している機関もある(GDH plus toxin EIA, GDH plus toxin EIA with NAAT confirmation if results are discordant, NAAT plus toxin EIA)(5)
適切な患者(3回以上の下痢、24時間以内の下剤使用なし、等)へのみ検査が限られるような臨床アプローチではNAATのみ、あるいはmultistep algorithmが、toxin EIAのみの検査よりも推奨される。C difficileの検査基準が設けられてない場合には、toxin EIAがmultistep algorithmの一つとして、NAATのみの検査よりも推奨される(5)
便検査
Cell culture cytotoxicity neutralization
Detects:主にtoxin B(toxin Aもある程度検知)
Advantages:感度と特異度が非常に高い
Disadvantages:tissue culture facilityが必要
Toxin enzyme immunoassay
Detects:toxin A and B
Advantages:迅速(2-6時間)、簡易、特異度が非常に高い
Disadvantages:他の検査ほど感度が高くない
Glutamate dehydrogenase enzyme immunoassay
Detects:glutamate dehydrogenase(bacterial enzyme)をtoxigenicとnontoxigenicのC difficile両方で検知
Advantages:迅速、低価、簡易、感度が高い
Disadvantages:特異度が低い
Toxigenic culture
Detects:toxigenic C difficile
Advantages:感度が高い、strain typingが可能
Disadvantages:嫌気性培養が必要、2-5日要する、特異度が低い
Nucleic acid amplification test
Detects:C difficile toxin genes
Advantages:感度が高い
Disadvantages:特異度が低い
他の診断検査としてはsigmoidoscopyあるいはcolonoscopyによる直接の観察がある。黄色の粘膜プラークあるいは”偽膜”の存在はC difficile関連下痢の可能性を高く示唆する。toxin testが陰性の場合に下剤処置なしでのflexible sigmoidoscopyで十分に診断が確定できる場合が多い(37)。しかし、sigmoidoscopyはcolonoscopyなら診断可能なより近位の病変を見逃す場合がある(38)。また直接観察することの限界としてはC difficile感染では重症感染マーカーである偽膜を形成しない場合も多くあることであり、その場合はtoxin testingあるいは他の検査によってのみ診断する必要がある
他の検査も診断を補助したり、重症度や合併症の評価に有用であるかもしれない
1病院にて12年間1721人のC difficile感染患者を評価したretrospective studyより白血球上昇(20000/μL以上)あるいはクレアチニン上昇(2.0mg/dL以上)の場合の30日死亡率が25.5%であったと報告されている(39)
C difficile感染にて集中治療を要した患者において評価されたretrospective observational cohort studyでは乳酸値が5mmol/L以上であることが30日死亡率の独立した予測因子であるとしている(40)
C difficile感染では画像検査において腸管粘膜肥厚など腸炎を示唆する所見が認められるかもしれない(41)。またtoxic megacolonや穿孔などの合併症も検知できるかもしれない
同じ下痢のエピソード中(7日以内)に便検査を繰り返すことは避けるべきである。もし治療が成功して下痢が止まった後のC difficileの再発を疑う場合は、検査の中にtoxin検知検査を入れる必要がある。経験的治療は推奨されない。また無症状の患者に検査をすべきではない
血液検査および他の検査
Complete blood count
感度:なし
特異度:なし
comments:重度の患者では白血球50000/μL以上になるかもしれない
Blood urea nitrogen and creatinine
感度:なし
特異度:なし
comments :重症の場合は脱水やアシドーシスをきたすかもしれない
Cell culture cytotoxicity neutralization assay
感度:94-100%
特異度:97%
comments:tissue cultreは通常の病院検査室では利用できない、結果に24〜48時間要する
Enzyme-linked immunosorbent assay
感度:43-99%
特異度:84-100%
comments:広く利用可能、迅速
Glutamate dehydrogenase
感度:88-100%
特異度:76-97%
comments:広く利用可能、迅速
Nucleic acid amplification tests
感度:77-100%
特異度:91-100%
comments:広く利用可能、迅速
Culture
感度:100%
特異度:100%(toxin産生が他の試験で確認された場合)
comments:数日要する
Plain abdominal films
感度:なし
特異度:なし
comments:toxic megacolonを示唆する大腸拡張や穿孔を示唆するfree airが認められるかもしれない
Computed tomography
感度:なし
特異度:なし
comments:腸管粘膜肥厚、toxic megacolonを示唆する大腸拡張、穿孔を示唆するfree airが認められるかもしれない
Lower endoscopy for C difficile
感度:なし
特異度:なし
comments:C difficileを強く疑う偽膜が認められるかもしれない
治療
もし他の状態からの回復がリスクに晒されないのであればC difficile感染の全ての患者において抗菌薬中止を検討すべきである。軽度の下痢、正常あるいは正常に近い白血球数、正常クレアチニン値で重症感染あるいは合併症のリスクが少ない場合は抗菌薬中止のみで回復するかを数日間観察してよいかもしれない
10年間のprospective studyで908人のC difficile感染患者を評価した結果、135人(15%)が抗菌薬の中止のみで改善を認めた(42)
抗菌薬をすみやかに中止することに加え、輸液投与および電解質異常を補正する必要がある。治療抗菌薬の腸管内での拡散およびtoxinの排泄を障害するため蠕動運動抑制剤は避けるべきである
IDSA/SHEAガイドラインが改定され、成人における初回C difficile感染ではmetronidazoleではなく、vancomycinあるいはfidaxomicinを投与することが推奨されている(5)
重症の定義は様々であるが、IDSA/SHEAガイドラインのminimum criteriaでは白血球数が少なくとも15000/μL以上あるいはクレアチニン値が1.5mg/dL以上とされている(5)
軽症、中等症、重症(劇症ではない)の場合はvancomycin 125mg経口1日4回、あるいはfidaxomicin 200mg経口1日2回、それぞれ10日間投与が推奨される
もし上記のいずれの薬剤も利用できない、あるいは禁忌の場合はmetronidazole 500mg経口1日3回10日間投与が重症でない時のみ代替薬として使用可能である。ただしmetronidazoleを頻回に使用、あるいは投与期間が延長する場合は不可逆的な神経毒性のリスクがあることを留意しなければならない
劇症の場合(血圧低下、ショック、イレウス、toxic megacolon(注1))はvancomycin 500mg1日4回を経口、あるいは経鼻胃管投与する必要がある。イレウス、あるいは他の原因で薬剤の腸管内散布が障害される場合はvancomycin 500mgを生食100mlに入れ6時間毎に直腸投与を行うことを考慮しなければならない。metronidazole 500mg静注8時間毎投与を劇症型に、特にイレウスを伴っている場合は追加しなければならない(5)
metronidazoleがC difficile感染治療の主要薬剤の一つとして使用されてきたが、2000年以来、いくつかのrandomized placebo-controlled trialsにおいて経口vancomycinの方がより有効であることが確認された。150人の軽症あるいは重症の感染を評価した一つのスタディでは、全体としての治癒率がvancomycin 97%であったのに対し、metronidazole 84%であった(P=0.006)。重症感染においてはvancomycin 97%、metronidazole 76%であった(P=0.02)(43)
Fidaxomicinが2つのrandomized placebo-controlled trialsにおいてvancomycinと比較評価された。最初のスタディでは臨床的治癒率においてfidaxomicinがvancomycinに対し非劣勢であることが確認された(modified intention-to-treat analysis(88% vs 86%), protocol analysis(92% vs 90%))(44)。再発感染に対しvancomycin で治療された患者に比べfidaxomicinによって治療された患者の数の方が有意に少なかった。二番目のスタディでも臨床的治癒率においてfidaxomicinがvancomycinに対し非劣勢であることが確認された(modified intention-to-treat analysis(88% vs 87%), protocol analysis(92% vs 91%))(45)
vancomycinに類似するglycopeptideであるteicoplaninがvancomycinと同等あるいはより有効であることが示されたが、米国では利用できない(46)
nitazoxanide, bacitracin, fusidic acid, tigecycline, rifampin, rifaximinなども研究されているが、データは限られている
治療戦略
<1> 全ての患者において可能なら抗菌薬の中止あるいは投与の修正を行う
<2> 重症度の評価(劇症か、そうでないか)(注2)
<2-1> 劇症の時
vancomycin 500mg 1日4回経口あるいは経鼻胃管投与
(イレウスの場合は直腸投与を検討)
かつ metronidazole 500mg 静注8時間毎
hemodynamic support、外科的評価(subtotal colectomyを検討)
感染症科・消化器内科コンサルトを検討
<2-2> 劇症でない時(軽症、中等症、重症)
<2-2-1> 初回感染
vancomycin 125mg経口1日4回 あるいは
fidaxomicin 200mg経口1日2回
軽症あるいは中等症の時で上記薬剤使用不可の時
metronidazole 500mg経口1日3回
便の回数、体温、腹部診察を毎日評価(白血球数も必要に応じて)
・改善を認める場合は10日間抗菌薬治療
・改善を認めない場合は他の疾患の評価、投与量の最大化および投与方法の最適化、投与期間を14日間に延長することを検討(特にmetronidazoleの場合)
<2-2-2> 2回目の感染(初回の再発)
vancomycin 125mg経口1日4回10日間投与(metronidazoleが初回感染で投与された時)
あるいは
vancomycin漸減投与(初回感染でstandard regimenが使用された場合)
125mg経口1日4回10〜14日間、続いて
125mg経口1日2回1週間、続いて
125mg経口1日1回1週間、続いて
125mg経口2〜3日に1回2〜8週間
あるいは
fidaxomicin 200mg経口1日2回10日間(初回感染でvancomycinが投与された時)
<2-2-3> 3回目以降の感染
vancomycin漸減投与
あるいは
vancomycin125mg経口1日4回10日間、続いてrifaximin400mg経口1日3回20日間
あるいは
fidaxomicin200mg経口1日2回10日間
あるいは
fecal microbiota transplantation(通常、再発のエピソードが3回以上の時)
軽症から重症の初回Clostridioides difficile感染治療薬
Vancomycin
Dose:125mg経口1日4回10日間
Side effects:まれ、vancomycin耐性腸球菌を誘導、腎毒性、耳毒性
Benefits and Notes:軽症から重症に投与推奨、劇症型および再発では異なる投与量
Fidaxomicin
Dose:200mg経口1日2回10日間
Side effects:ほとんど吸収されない
Benefits and Notes:軽症から重症の初回および再発感染で推奨
Metronidazole
Dose:500mg経口1日3回10日間
Side effects:少ない、痙攣や末梢神経障害、アルコールと併用でdisulfiram-like reaction、味覚障害
Benefits and Notes:軽症から中等症の代替薬、静注薬は劇症あるいは経口投与ができない患者に使用
劇症Clostridioides difficile感染治療薬
Vancomycin with metronidazole
Dose:vancomycin 500mg経口あるいは経鼻胃管投与1日4回(イレウスの場合は経直腸投与を検討)、metronidazole 500mg静注8時間毎
Side effects:上記に同じ
Benefits and Notes:劇症C difficile感染は血圧低下、ショック、イレウス、toxic megacolonとして定義される
Clostridioides difficile感染にactivityを有する他の薬剤
Nitazoxanide
Dose:500mg経口1日2回10日間
Side effects:消化器症状
Benefits and Notes:vancomycinやmetronidazoleとの効果の比較検討が限られている
Rifaximin
Dose:400mg経口1日3回10日間
Side effects:ほとんど吸収されない
Benefits and Notes:再発感染に対するvancomycin投与後の追加薬としてのデータは限られている、高度の抵抗性獲得の可能性
Tigecycline
Dose:50mg静注1日2回10日間
Side effects:消化器症状
Benefits and Notes:効果をサポートするデータはcase reportやsmall case seriesに限られている
Bacitracin
Dose:25000 IU経口1日4回10日間
Side effects:腎毒性や神経毒性のリスク、消化器症状や消化吸収不良
Benefits and Notes:metronidazoleやvancomycinに劣る、臨床エビデンスは限られている
モニター
発熱の改善、排便回数の減少、便の性状の改善、腹部所見の正常化、脱水からの回復、検査所見や白血球上昇の改善などをフォローする必要がある。症状が改善した場合、便の再検査をする必要はない(症状が改善した後でも通常C difficileの検査は陽性となる)。無症候性キャリアに対して治療を行う必要はない(5)。治療に成功し下痢が止まった患者が症状を再発する場合は再度便検査を行う必要がある
Probiotic
いくつもの形態のprobioticsがC difficile腸炎の治療薬として提案されてきた。前提として非病原性の酵母や細菌が消化管に再生息してC difficileの成長を抑制するとされてきたが、まだ結論は出ていない
C difficile感染に対するprobioticsの効果を評価したsystematic reviewによって大きさと質が見合うと認められたスタディは4つだけであった。そのうちの一つの試験ではvancomycin治療にsaccharomyces boulardiiを追加投与した場合、有意差をもって再発率が低下したと報告されているが、著者はprobioticsを推奨するにはエビデンスが不十分であると結論し、またexpert panelによって出されたガイドラインでは免疫不全患者に対するS boulardii fungemiaの投与に対する注意を警告している(47)
抗菌薬治療を受けている患者のC difficile感染予防にprobiotics投与を推奨するガイドラインは存在しないが、いくつかのmeta-analysesでは非免疫不全者で重度に衰弱していない患者に対する短期の投与は安全で効果的かもしれないと報告している(48, 49)。一つのスタディでは入院患者でC difficile感染のリスクの高い患者に対してprobiotics投与の考えられる利益とリスクを説明すべきであるとしている(48)
初期治療に反応しない場合
改善を認めない、または最初の改善の後に悪化を認める場合は他の疾患あるいは併発疾患の有無、あるいは他の原因を再評価しなければならない(持続する発熱や白血球上昇は他の感染症合併の可能性、治療抵抗性の下痢は経腸栄養に起因する場合など)。他の原因や診断が確認されない場合は抗菌薬の投与量および投与方法を最大化あるいは最適化する必要がある。vancomycin経口投与が大腸に到達することを阻害するイレウスがある場合はmetronidazole静注投与やvancomycin経直腸投与を検討する必要がある。特にmetronidazoleで治療されている場合は投与期間を14日間に延長する必要があるかもしれない。劇症C difficile感染でvancomycinとmetronidazoleに反応しない場合はtigecyclineやimmunoglobulin静注などが使われる場合があるが、データは限られている(5)。外科的治療が有効な場合もある
入院
重症、合併症、あるいは外来治療が適切でない時、脱水、内服薬摂取不能、腹膜炎を示唆する所見、toxic megacolon、sepsis、あるいは他の合併症などを有する時は入院治療の適応となる。あるいは重症のリスクがある、クレアチニン上昇、類白血病反応、高齢などの場合も入院が考慮される
ICU入院
重症、septic shock、toxic megacolon、腹膜炎、血圧低下を伴う重度の脱水、臓器障害などを認める状態不安定な時はICU入院が必要になる
外科的治療
腸管穿孔の場合は外科的治療が必要になる。またtoxic megacolon、急性腹症、septic shock(特に乳酸値が上昇)などを認める患者では外科的治療による利益があるかもしれない。全ての内科的治療に失敗した場合も外科的治療が有効であるかもしれない。C difficile感染の外科的治療として現在推奨されているのはsubtotal colectomyである。より侵襲が少なく大腸を保存する方法としてvancomycin順行性洗浄を併用するloop ileostomyが代替手段としてあるが、よりデータが必要である(5)
再発時の対応
初期治療に反応した後に症状を再発する場合は感染の再発、あるいは他の株による新たな感染であることが考えられる。いずれにせよ診断および治療は同じである。IDSA/SHEAのガイドラインでは初回再発時の治療オプションは初回感染時の治療に依存するとしている(5)。初回感染時にmetronidazoleで治療された場合はvancomycin経口10日間投与が推奨される。初回感染時にvancomycin経口10日間投与が行われた場合はvancomycin漸減投与あるいはfidaxomicin経口10日間投与が推奨される。
2回目以降の再発感染ではvancomycin漸減投与、vancomycin standard courseの後にrifaximinを追加投与、fidaxomicin standard courseなどが行われる。しかしこれらの治療法のエビデンスは限られている
fecal microbiota transplantation(FMT)は適切な治療後に少なくとも3回以上の再発を認める患者に推奨される。健常ドナーからの糞便を注入投与することで難治性感染の治療に成功したとのcase reportsやsmall case seriesがある(50, 51)。2013年から2016年にかけて少なくとも5つのrandomized controlled trialsが発表された。その中でvancomycinとFMT、FMT自家移植、凍結した糞便 vs 新鮮な糞便、colonoscopy vs 経鼻胃管による投与、などが評価された(52, 53, 54, 55, 56)。多くのrandomized studiesで報告されたFMTの効果は非randomized reportsに比べ低かった。しかし、これは患者選択や以前の抗菌薬投与などのファクターに起因しているかもしれない。現在のデータではFMTは短期間では安全で、軽度から中等度の多くのadverse eventsはself-limitedであるとされている。今日までに報告されているFMTの感染合併症は稀であるが、長期の感染あるいは非感染合併症は不明である
human monoclonal antibodyであり、C difficile toxin Bに結合するbezlotoxumabが18歳以上でC difficile治療を受けている患者の再発リスクを減らす目的に使用することが米国において2016年に承認された(57)。bezlotoxumabは静注投与で、C difficile治療の抗菌薬を投与中にのみ併用投与されなければならない
注1
Toxic megacolon診断基準(UpToDate)
・レントゲン上大腸拡張所見(大腸最大径6cm以上)
かつ
・下記のうち少なくとも3つ以上
38度以上の発熱
脈拍120/分以上
neutrophilic leukocytosis>10500/μL
貧血
かつ
・下記のうち少なくとも1つ以上
脱水
意識障害
電解質異常
血圧低下
注2
Clostridioides difficile感染重症度(expert opinion)(UpToDate)
・非重症感染:白血球15000/μL以下かつクレアチニン1.5mg/dL以下
・重症感染:白血球15000/μL以上かつ / あるいはクレアチニン1.5mg/dL以上
・劇症感染:血圧低下、ショック、イレウス、megacolon
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インザクリニック
アナルズオブインターナルメディシン
2018年10月2日