甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は甲状腺が末梢組織の需要に見合うだけの十分な甲状腺ホルモンを産生できない状態である
原発性甲状腺機能低下症は甲状腺自体の疾患による甲状腺不全を指し、全ての甲状腺機能低下症の99%以上を占める(1)
原発性甲状腺機能低下症は基準範囲よりも甲状腺刺激ホルモン(TSH: thyroid-stimulating hormone)が高く、サイロキシン(thyroxine: T4)が低い場合に顕性と定義される。潜在性甲状腺機能低下症は機能不全がより軽度で、TSHが軽度から中等度上昇するが、T4が正常範囲にあるものとされる
顕性甲状腺機能低下症の有病率はアメリカでは0.3〜3.7%、ヨーロッパでは0.2〜5.3%である(1, 2)
甲状腺機能低下症の有病率は年齢とともに上がり、女性、他の自己免疫疾患を有する、ダウン症候群、ターナー症候群などでより多く認められる(1)
潜在性甲状腺機能低下症はより有病率が高く、およそ3〜15%とされている(3)
アメリカにおける成人の原発性甲状腺機能低下症の最も多い原因は慢性リンパ球性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、放射性ヨウ素アブレーション、甲状腺摘出術、高量の頭頸部放射線治療などである
世界においては地域に起因する重度のヨウ素欠乏が最も一般的な原因である(1)
非自己免疫性浸潤疾患(アミロイドーシス、ヘモクロマトーシス)も頻度は少ないが原因となる
多くの薬剤が甲状腺機能を障害し、原発性甲状腺機能低下症の原因となる(4)
甲状腺機能低下症は3つのタイプの破壊性甲状腺炎の回復期にも一時的に認められる;出産後甲状腺炎、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎
中枢性甲状腺機能低下症(二次性甲状腺機能低下症)は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモンと、または甲状腺刺激ホルモンの産生を障害する視床下部あるいは下垂体疾患によって起こる(1, 5)。最もよくみられる原因は腫瘍、手術、放射線治療、出血、感染、浸潤性疾患、外傷性脳損傷、薬剤などである(4, 5)
スクリーニング
リスク
原発性甲状腺機能低下症のリスクが上がるのは、甲状腺ホルモン不全の症状がある、甲状腺腫、甲状腺疾患あるいは治療歴、1型糖尿病、副腎不全、セリアック病、尋常性白斑、などの自己免疫性疾患、などを有する場合である
薬剤で原発性甲状腺機能低下症のリスクを高めるものは、アミオダロン、ヨウ素サプリメント、リチウム、インターフェロンα、免疫チェックポイント阻害剤(イピリムマブ、ニボルマブ)、アレムツズマブなどがある(4)
中枢性甲状腺機能低下症のリスクを高めるのは、下垂体手術、放射線治療、外傷性脳損傷や、グルココルチコイド、ドパミン、オクトレタイド、ベクサロテン、ミトタンなどの薬剤である(4)
上記のリスクを有する患者をスクリーニングすることは適切である。しかし、すべての人をルーチンにスクリーニングすることは推奨されてない。無症状で軽度の甲状腺機能低下症を診断することおよび治療することに利益があることを示すエビデンスが不十分であるからだ。にもかかわらず特定のスクリニーングの推奨が学会毎に大きく異なっている(1, 6, 7, 8)
血清TSH測定が甲状腺機能低下症の検知に最も適する方法であり、99%以上の甲状腺機能低下症が原発性であり、TSH上昇が最初の血液検査異常として認められる(1)。中枢性甲状腺機能低下症が疑われる場合は、TSH産生が正常に行われないため血清free T4の測定が適切となる
診断
症状
甲状腺機能低下症の患者が経験する症状は多くが非特異的で、甲状腺機能低下症以外でも起こるものが多い
1997年のスタディでは顕性甲状腺機能低下症の患者がよく経験するのは、皮膚乾燥(76%)、寒冷不耐性(64%)、肌荒れ(60%)、眼瞼浮腫(60%)、発汗低下(54%)、体重増加(54%)、感覚異常(52%)、cold skin(50%)、便秘(48%)であるとされた(9)
2014年のスタディでは倦怠感(81%)、皮膚乾燥(63%)、呼吸困難(51%)、情動不安定(46%)、便秘(39%)が多いと報告された
甲状腺ホルモン不全の程度が上がるにつれて症状の数およびその重症度が上がる傾向があるが、 生化学的値の異常が強い場合でも無症状あるいは症状が軽度である患者も見られる
甲状腺機能低下症の患者は精神科疾患と診断され、抗うつ剤、抗不安剤、抗精神科剤などで治療されることが多く見られる(10)
高齢者の患者では典型的な症状が少ない傾向で、その世代では倦怠感や衰弱などが最も目立つ特徴がある(11)
中枢性甲状腺機能低下症では原発性と症状が同様であるが、視床下部ー下垂体疾患の症状や兆候が認められるかもしれない。腫瘍による症状、他のホルモンの過剰あるいは不全、感染、炎症などである(5)
身体所見
身体所見も同様に非特異的な傾向があり、わずかか、あるいは欠如する場合もある
最もよく認められるのは粗い肌、皮膚乾燥、脱毛、眼瞼浮腫、嗄声、動作緩慢などである(9, 12)
深部腱反射遅延は典型的身体所見であり、myoedema(筋腫脹)も時折見られる
甲状腺腫、あるいは甲状腺摘出後の手術痕なども重要なサインである
一般血液検査異常も診断的ではないが、甲状腺機能低下症を示唆するものがある;低ナトリウム血症、大球性貧血、クレアチニンキナーゼ上昇、などがよく見られる所見である
甲状腺機能低下症はすべての脂質とリポ蛋白質(総, LDL, HDL, TG, lipoprotein)上昇を伴う混合型高脂血症の原因ともなる(13)
閉塞性無呼吸もおよそ30%の顕性甲状腺機能低下症患者に認められたと報告されている(14)
血液検査
血清TSH測定が原発性甲状腺機能低下症を最もよく検知する試験である
TSH高値はほとんどの場合が原発性甲状腺機能低下症であり、それが正常の場合は甲状腺機能が正常であることを強く示唆する
TSHは日内変動があり、午後の遅い時間および夜間に最も高くなる(1)
年齢が上がることも、甲状腺機能が正常に見える人の自然なTSH上昇との関連が認められている(15)
TSHの上昇が認められれば、free T4とともにTSHを再測定して顕性(free T4低値)あるいは潜在性(free T4正常)甲状腺機能低下症が存在するか評価する必要がある
多くの状況では甲状腺機能低下症の患者においてtotal T3あるはfree T3を測定する必要はない。甲状腺機能低下症患者では脱ヨウ素酵素活性によって循環しているT3は比較的よく保たれているからである。したがってT3測定を行ってもTSHとfree T4によって得られる甲状腺機能低下症の重症度に関する追加的な情報が提供されることはない
抗甲状腺ペルオキシダーゼ(anti-TPO)抗体と抗サイログロブリン抗体の存在は甲状腺機能不全の原因が橋本甲状腺炎であることを示す。しかし成人における甲状腺機能低下症は医原性あるいは薬剤性でない場合はほとんどが橋本甲状腺炎であるため米国甲状腺学会(American Thyroid Association)と米国臨床内分泌学会(American Association of Clinical Endocrinologists)は甲状腺抗体の測定を推奨していない(6)
甲状腺超音波検査は橋本甲状腺炎では通常低信号パターンを示す(1)が、触診あるいは他の画像検査によって偶然1つあるいはそれ以上の結節を認める場合以外は甲状腺機能低下症において甲状腺画像検査は推奨されない
中枢性甲状腺機能低下症の診断は原発性に比較して難しくなる
TSHが低値あるいは正常低値で甲状腺機能低下症症状を認める患者、特に視床下部ー下垂体疾患を有する患者においてfree T4低値が確認されれば中枢性TSH不全が示唆される(1, 5)
中枢性甲状腺機能低下症とnonthyroidal illness syndromeを鑑別することは困難である。その場合はtotal T3とreverse T3(RT3)の測定が有用であるかもしれない。TSHは通常両者において低値あるいは正常低値であるが、中枢性甲状腺機能低下症ではT4がT3に比較してより低値であり、RT3も低値である一方で、nonthyroidal illnesssではT3がT4に比べ低値でありRT3が上昇する傾向にある
非甲状腺疾患の回復期にはTSHが軽度に上昇することが見られるかもしれない(16)。もしTSHが軽度上昇している患者で最近病気になったり入院したことがある場合はTSHを6〜8週間後に再度評価する必要がある
潜在性甲状腺機能低下症
潜在性甲状腺機能低下症ではTSHが上昇しfree T4あるいはtotal T4が正常範囲にある(1, 3)
TSH上昇は血清T4濃度が正常より低値であることを示唆する。上昇したTSHが甲状腺を刺激し、代償して適切な量に近い甲状腺ホルモンを産生しようとする
潜在性甲状腺機能低下症が顕性甲状腺機能低下症に進展するのはおよそ2〜6% of patients per yearである(3)。進展率は抗TPO抗体陽性(2〜3倍)およびTSHがより高値でfree T4がより低い患者で高くなる(3)
TSH上昇が7mU/L以下までの患者の46%までにおいて2年以内にTSHが正常化することは留意しておく必要がある(3)
潜在性甲状腺機能低下症は無症状あるいは非特異的症状であることが多い。一つのスタディではTSHが4.1〜9.9mU/Lにある患者942人、TSHが10mU/L以上の患者70人、甲状腺機能正常のコントロール群8334人を比較した結果、health-related QOL scoreが甲状腺機能低下症と正常グループ間で有意差が認められなかった(17)
潜在性甲状腺機能低下症はたとえ無症状であっても、冠動脈疾患、心不全、死亡率のリスク上昇と、特に比較的若い患者(65歳以下)でTSHが10mU/Lである場合は、関連がある可能性がある。逆に高齢(65歳以上)で特にTSHの上昇が軽度(<10mU/L)の場合はそのリスクが小さい、あるいはないことをスタディが示している(1, 3)。さらには軽度のTSH上昇は高齢者の機能的利益との関連があることを示すエビデンスもある(18)
治療
Lサイロキシン(LT4: L-Thyroxine)が多くの患者において効果的かつ安全に症状を軽減し生化学値を正常化するため甲状腺機能低下症の治療として選択される(1, 6, 19, 20)。十二指腸で吸収された後、循環に入ったLT4が末梢組織脱ヨウ素酵素によってT3に変換され、その率は各組織の代謝必要量によって制御される(1, 21)
LT4投与量は比較的健康な顕性甲状腺機能低下症の成人患者においては1.6mcg/kg/dayである(1, 6, 19, 20)
lean body mass(BMIを24〜25kg/m2とした場合の身長から導かれる体重)は実際の体重に比較して投与必要量を推測するより良い指標となる(22)。例えば、67インチ(170cm)で190パウンド(86kg)の女性はBMIが24kg/m2であるとした場合のlean body weightは153パウンド(70kg)となり、彼女のlean mass body投与量(1.6mcg/kg)は112mcg/dとなり、実体重から計算された場合は137mcg/dとなる
比較的若い患者で冠動脈疾患の既往がない場合は初回フル投与量によく耐容し、通常甲状腺機能低下症による症状が速やかに改善する
LT4治療開始後、TSHは6〜8週間後に測定し、通常6〜8週毎に12.5〜25mcg/d単位で変更してTSHが正常範囲になるように調整する
TSH目標値を達成するためのLT4投与量は甲状腺摘出術既往の患者や小児おいて比較的高くなる傾向がある(1)
60歳以上の高齢者や冠動脈疾患の既往のある場合は比較的低量のLT4(25〜50mcg/d)から開始し、TSH目標値に到達するまで6〜8週毎に12.5〜25mcg/d単位で調整を行う。急なフル投与や急速に投与量を増やした場合に起こり得る不整脈や虚血性イベントを防ぐ目的でこの低量開始によるアプローチは好まれている(1, 6, 19, 20)
LT4は食事摂取の1時間前あるいは4時間後に水とともに摂取される必要がある。また鉄剤、カルシウム、大豆サプリメントから少なくとも4時間ずらして摂取しなければならない。代替としては最後の食事から2〜3時間あけた睡眠前に服用する方法もある(1, 6, 19, 23)
もし服用できなかった場合は翌日に2投与量まとめて服用することができ、その後通常量を再開できる。もし2回服用できなかった場合は2投与量を2日間服用し、その後通常量を再開することが可能である
潜在性甲状腺機能低下症の治療適応
軽度の潜在性甲状腺機能低下症の患者は症状が軽度でTSH上昇が少ない場合にはLT4治療によって症状が改善しないかもしれない(1, 3)。高齢者で行われた2つのRCT(65歳以上(24)と80歳以上(25))では軽度の潜在性甲状腺機能低下症に対するLT4治療によって甲状腺による症状あるいは倦怠感の改善が認められず、secondary outcome(血圧、体重、腹囲径、握力)に対する利益も認められなかった。しかし症状が比較的強く、TSHが10mU/L以上であった場合には治療による利益があるようであった(1, 3, 6, 19, 26)
潜在性甲状腺機能低下症に対するLT4治療によって冠動脈イベントおよび死亡率を減らすかを評価した十分なRCTが行われていない(1, 3)
1つのコホート研究では比較的若い患者では心血管疾患に対する利益が認められたが、高齢者では認められなかったと報告されている(27)。他のスタディでは高齢者の潜在性甲状腺機能低下症に対するLT4治療が死亡率上昇との関連を認めたとも報告されている(28)
したがってガイドラインでは潜在性甲状腺機能低下症に対する治療は患者毎に決めることを推奨している(6, 19, 26)
70歳以下でTSHが10mU/L以上の場合はLT4治療を強く考慮する必要がある
70歳以上でかつ、あるいはTSHが10mU/L以下の場合は、症状の有無、甲状腺腫の有無、TSH上昇の程度、TPO抗体、妊娠の希望、心血管疾患リスクファクター、冠動脈疾患、心不全などを考慮に入れて患者毎に決定する必要がある
3〜6ヶ月以内に症状に対する利益が明らかにならない場合、あるいは重大な副作用を認める場合は治療を中止する必要がある
治療を行わないことを決定した場合は症状およびTSH値を6〜12ヶ月毎にモニターし、症状が出る、あるいは悪化する場合、またTSHが10mU/Lを超える場合は治療を開始する必要がある(1, 3, 19, 26)
甲状腺ホルモン投与の有害事象は稀で、薬剤が過剰に投与された場合のみに起こりえる。TSH値を抑制するLT4投与は不安、倦怠感、過剰発汗、動悸、振戦、不眠などを起こすかもしれない。慢性的な甲状腺ホルモンの過剰暴露は心房細動および高齢者や閉経後患者の骨粗鬆症による骨折リスクを上昇させる(29)
モニター
甲状腺ホルモン投与を受けている患者では受診毎に甲状腺ホルモン不全あるいは過剰の症状および兆候、薬剤のアドヒランス、併用薬剤、TSH値を評価する必要がある
甲状腺機能低下症患者では関連する症状の改善とTSH値が甲状腺ホルモン投与必要量のガイドとなる
TSHは正常下垂体機能においては甲状腺ホルモンの状態の最も正確で客観的な指標となる(1, 3, 6, 19)
TSHは治療開始後6〜8週毎に評価され、LT4投与量をTSH値が正常範囲になるまで調整する必要がある。その後TSHを3〜6ヶ月後に評価し、以降年に1回測定する
TSH値が正常範囲外になる場合はLT4投与量を6〜8週毎に12.5〜25mcg増減してTSHが目標値に到達するように調整する(1, 6, 19)
米国におけるTSHの正常範囲は多くのラボで0.45〜4.5mU/Lである
LT4治療を受けている患者のTSH目標値を正常下限に設定する治療家もいる。しかしこの治療法は実証されておらず、よくデザインされたRCTで評価された結果、TSH目標値を正常範囲下限に設定する治療は、中央あるいは上限に設定することに比べ、LT4治療を受けている患者の症状または認知機能を改善しないことが確認されている(30, 31)
逆に甲状腺摘出後の末梢における甲状腺ホルモン活性のバイオマーカーはTSH値を0.03〜0.3mU/Lに保った場合に術前の値に最も近くなることが報告されている(32)
TSHが正常上限あるいはわずかに正常値よりも高い範囲にあることが高齢者(65〜70歳以上)の長寿および良い運動機能に関連する可能性も示唆されている(1, 18)
したがってガイドラインではTSH目標値を多くの患者では正常下限におくことをサポートしておらず、70〜80歳以上の患者では4.0〜6.0mU/Lを目標とすることを推奨している(19)
中枢性甲状腺機能低下症はTSHを正常に産生できないため、LT4治療反応のモニターにTSHを使ってはならない。代わりにfree T4をモニターし正常上限に維持される必要がある(1, 5)
入院
粘液水腫性昏睡の治療には入院が必須であり、重度の甲状腺機能低下症で服薬ができない場合も入院が考慮され、LT4が経鼻あるいは静注投与(経口投与量の75%量)される
粘液水腫性昏睡は非代償性甲状腺機能低下症としても知られ、甲状腺機能低下症の極度の症状として発症する生命危機に関わる状態である。不適切に治療された、あるいは未治療の甲状腺機能低下症の高齢者に、寒冷暴露、感染、外傷、手術、心筋梗塞、心不全、肺血栓塞栓、脳卒中、呼吸不全、消化管出血、中枢神経抑制剤の使用などの発症を促すイベントが起こった時に発症することが多い(1, 33, 34, 35, 36)
最初に報告された当初は粘液水腫性昏睡の死亡率は100%とされたが、適切に治療された場合の予後は大きく改善し、現在の死亡率は0〜45%の範囲にあるとされる(1, 33)
診断は主に臨床所見に基づく。最も特徴的な所見は低体温、徐脈、低呼吸である。心嚢液、胸水、腹水、イレウス、尿閉もよく見られる。中枢神経症状には痙攣、昏迷、昏睡が含まれる。深部腱反射は欠如あるいは遅延する。甲状腺機能低下症の皮膚変化および毛髪の変化もよく見られる。甲状腺腫や甲状腺摘出術痕は診断の助けとなる
貧血、低ナトリウム血症、低血症、コレステロール上昇、クレアチニンキナーゼ上昇もよく認められる血液検査所見である
TSH値は非常に高くなり、T4とT3は非常に低くなることが多い。しかし粘液水腫性昏睡はTSH上昇あるいはT4/T3不全の程度に基づいて診断することはできない
診断を促進するための粘液水腫性昏睡スコアリングシステムが発表されている
Myxedema Coma: Clinical Feature Scoring System
体温
>35℃(0)
32−35℃(10)
<32℃(20)
中枢神経症状
なし(0)
傾眠/嗜眠(刺激で覚醒し、合目的行動も可能)(10)
昏朦(覚醒はしているが浅い眠りに近い状態)(15)
昏迷(強い刺激で覚醒、発語ははっきりしない)(20)
痙攣/昏睡(強い刺激にもほとんど反応がない)(30)
消化器
食欲不振/疼痛/便秘(5)
蠕動運動低下(15)
麻痺性イレウス(20)
起因となるイベント
あり(10)
心血管
心拍≧60拍/分(0)
心拍50〜59拍/分(10)
心拍40〜49拍/分(20)
心拍<40拍/分(30)
他の心電図異常(10)
心嚢液/胸水(10)
肺鬱血(15)
心拡大(15)
血圧低下(20)
代謝異常
低ナトリウム血症(10)
低血糖(10)
低酸素血症(10)
高二酸化炭素血症(10)
GFR低下(10)
粘液水腫性昏睡を促すイベント
寒冷暴露
感染、外傷、手術
脳卒中
心筋梗塞
肺血栓塞栓
糖尿病性ケトアシドーシス
薬剤(中枢神経抑制)
スコア
≦24:粘液水腫性昏睡でない可能性が高い
25〜59:粘液水腫性昏睡の可能性
≧60:粘液水腫性昏睡の可能性が高い
初期治療のゴールは欠乏した甲状腺ホルモンプールの急速な補充である。正常では体内に貯留されている総T4量はおよそ1000mcg(500mcgが甲状腺にあり、500mcgが残りの体内にある)である。稀な状態でもあるため異なる甲状腺ホルモン補充法を比較したRCTがない。当施設ではローディング投与として300〜500mcgのLT4を初日に静注投与を行い、以降、経口摂取が可能になるまで経口投与量(服用量あるいは1.6mcg/kg/d)の75%量を1日1回静注投与を行う。LT4静注投与に反応を示さない場合は、5mcgのLT3を4〜6時間毎に静注投与することが考慮されるかもしれない。LT4/LT3混合静注投与を推奨する専門家もいる。比較的低いLT4ローディング投与量(200〜300mcg)と10mcg LT3静注投与を行い、以降LT4 100mcg 1日1回静注投与およびLT3 10mcgを8〜12時間毎静注投与を行う(19, 36)。他の治療にはストレス量のグルココルチコイド投与、バイタル維持および酸素化のサポート治療、発症を促進する状態の治療などが含まれる
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アナルズオブインターナルメディシン
インザクリニック
2020年7月7日