レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

関節リウマチ

 

関節リウマチは慢性全身性疾患で米国成人の0.5〜1%、およそ150万人が罹患している(1)

 

女性により多くみられ、全ての年齢で起こるが50〜60歳が発症のピークである

 

 

症状は左右対称性の疼痛、腫脹が手指、手首、足、膝などに多関節炎としてみられるが、他の関節でもおこりえる。単関節炎あるいは少関節炎(4つ以下)でおこる場合もある

 

間質性肺疾患、心膜炎、胸水、気管支拡張症などの他の臓器障害を発症することがある(明らかな関節炎が認められない場合もある)。関節リウマチはおそらく免疫調節不全によるいくつかの疾患群を包含する臨床症候群であり、治療が行われなければ慢性炎症および不可逆的な関節あるいは臓器障害に至る

 

 

以前は関節リウマチは進行性で生命予後が悪い病態だったが、この過去20年間で長期予後が改善した(2, 3, 4)。この改善はおそらく早期の診断、不可逆的な関節および臓器障害の発症前からの積極的な治療、従来の治療薬およびdisease-modifying antirheumatic drugs(DMARDs)の普及およびその治療薬オプションの増加によって可能となった慢性炎症のコントロールに基づいている(5)

 

 

 

Risk Factors

関節リウマチの原因はわかっていないが、進行を促すリスクファクターが確認されている。HLA-DRB1は知られている中で最も強い遺伝的リスクファクターである(6, 7)。seropositiveである関節リウマチの生活習慣リスクファクターで最も確立されているのが喫煙である(8)。BMIの上昇、低量アルコール摂取、不健康な食事、歯科的不衛生、社会経済的に低い状態なども関節リウマチの罹患に影響している可能性がある(9, 10, 11, 12)。男性に比べ女性の方がリスクが高いことより、生殖および閉経などの因子が関わっている可能性も示唆されている(13, 14)。家族歴がある場合、個人のリスクが3倍に増えるが、多くの患者では家族歴が認められない(15)

 

 

 

 

Diagnosis

関節のこわばり、疼痛、腫脹が数週間以上持続する場合は関節リウマチの可能性を考慮しなければならない

 

疼痛は通常左右対称性で、多関節に認められるが、発症時には非対称性であったり、または少関節(2〜4つ)あるいは単関節のみに認められる場合もある

 

関節リウマチに特異的なものではないが、1時間以上持続し日中活動とともに改善する朝のこわばりを認め、左右対称性の関節腫脹が特徴的な症状である

 

滑膜炎の確認が関節リウマチの診断および治療の反応評価にとって重要である。滑膜炎は関節包の炎症として定義され、発赤、熱感、疼痛、腫脹を認めることが特徴的である。典型的には身体診察で確認されるが、所見がはっきりしない時は画像検査が有効な場合がある

 

関節痛は痛みとこわばりを認めることが多いが、必ずしも炎症性の関節炎によるものではない

 

滑膜炎と他の症状が6週間以上持続する場合は一過性で自然に改善するものではなく、進行性の病態になる可能性が高くなる

 

手指、手関節、足関節に認められる場合が最も多いが、非典型的な場合として膝などの大関節のみに認められる場合もある

 

遠位指節間関節は典型的には障害されず、dactylitis(指炎:ソーセージ様腫脹)も一般的には認められない。股関節を含むaxial skeleton(体軸にある骨格;頭蓋骨、脊椎、肋骨、胸骨など)は通常障害されないが、重度で長期間関節リウマチに罹患する場合、特に頚椎などに障害が認められる場合がある

 

身体所見では滑膜炎に起因する圧痛を伴う関節および軟部組織の腫脹が確認される。中・大関節では関節穿刺可能な明らかな関節液貯留が認められることもある。軽度の関節腫脹は、特に肥満や線維筋痛症などを伴っている患者の小関節などでは、わずかで認識しにくい場合がある

 

長期間の罹患でかつ適切な治療を受けていない場合は、手の尺側偏位やスワンネック、ボタンホール変形(PIP関節の伸展障害による屈曲位とDIP関節の過伸展を呈する状態)、膝や肘の屈曲拘縮、などを含む関節障害および変形などに発展する。しかし、これらの”古典的”変形はあまり見られなくなってきており、それは積極的な治療による疾患の活動性低下や寛解、およびより多くの標的治療薬が利用可能になったことによると考えられる

 

 

 

関節リウマチは全身性の炎症性疾患であり、関節以外の臓器障害や治療による副作用を合併する場合がある

 

皮膚

リウマチ結節、血管炎、潰瘍、neutrophilic dermatosis、治療関連皮疹、リンパ浮腫

 

角結膜炎(シェーグレン症候群)、上強膜炎、強膜炎、scleromalacia perforans

 

呼吸器

肺線維症、間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia、usual interstitial pneumonia、organizing pneumonia)、結節、胸水、胸膜炎、気管支拡張症、特発性器質化肺炎

 

循環器

早発性アテローム性動脈硬化・冠動脈疾患・末梢血管疾患、心膜炎、心嚢液、弁膜疾患、不整脈、伝導障害、心筋炎、心不全(preserved EF)、心結節

 

消化器

口腔乾燥、胃炎、消化性潰瘍(NSAIDs・グルココルチコイド)、口内炎、粘膜炎(methotrexate)

 

腎臓

糸球体腎炎(mesangioproliferative)、タンパク尿(稀にアミロイドーシス)、治療関連腎障害

 

肝臓

nodular regenerative hyperplasia、門脈線維症、治療関連肝炎・肝硬変

 

神経

頚椎亜脱臼・環軸椎不安定、末梢神経絞扼(手根管症候群)、mononeuritis multiplex(リウマチ血管炎)、brain nodule

 

血液

リンパ節腫脹、脾腫(Felty syndrome)、白血球減少(Felty syndrome)、リンパ腫、アミロイドーシス、クリオグロブリン血症、large granular lymphocyte syndrome

 

 

 

 

 

American College of Rheumatology(ACR)とEuropean League Against Rheumatism(EULAR)は不可逆的な関節障害が起こる前の早期の病態で関節リウマチを特定するための診断基準を作成している(16)。しかし、この診断基準は臨床のためよりもリサーチにおける患者分類のために作られている

 

 

ACR/EULAR 2010 Classification Criteria for Rheumatoid Arthritis

この診断基準は一つ以上の関節腫脹を有し、より可能性の高い他の診断が存在しない患者に限られるべきである

 

6点以上で関節リウマチと診断される

 

A. 関節(0ー5点)

身体診察にて関節の腫脹あるいは圧痛を認める

 

大関節:肩、肘、股関節、膝、足首

小関節:中手指節関節、近位指節関節、2〜4趾の中足指節関節、母指指節間関節、手関節

・1大関節:0

・2〜10大関節:1

・1〜3小関節:2

・4〜10小関節:3

・>10関節(少なくとも1以上の小関節):5

 

B. 血清学検査(0ー3点) 

低陽性(正常上限の1〜3倍)、高陽性(正常上限の3倍以上)

・RF・ACPA陰性:0

・RF低陽性あるいはACPA低陽性:2

・RF高陽性あるいはACPA高陽性:3

 

C. 急性期反応(0ー1点)

・CRP正常かつESR正常:0

・CRP上昇あるいはESR上昇:1

 

D.  症状の期間(0ー1点)

患者の自己申告による関節症状

・6週間以下:0

・6週間以上:1

 

ACPA:anticitrullinated protein antibodies、RF:rheumatoid factor

 

 

 

関節リウマチの可能性を示唆する三つのkey factorsは以下のものである;小関節の左右対称性の関節炎、ACPAあるいはRF陽性(正常上限の3倍以上)、症状が6週間以上

 

2010 ACR/EULARの診断基準はリサーチにおいては関節リウマチの合併症発症前の早期診断に有効であることが認められている。しかし、臨床においてはその診断基準を満たさなくても治療が必要となる患者がいるかもしれない。たとえば、慢性の単膝関節炎、RF・ACPA高陽性、急性反応の上昇している患者では診断基準は満たさないが、関節リウマチの治療が必要となる可能性がある。また、明らかな関節症状はないが間質性肺炎などの関節外症状が主な患者の場合なども同じである(17)。したがって医師は関節リウマチの診断および治療において自らの最良の判断を用い、診断が定かでない場合は専門家コンサルトを考慮すべきである

 

 

 

Differential diagnosis

Self-limited polyarthritis

病歴:左右対称性の関節炎、疼痛、朝のこわばり、倦怠感

身体所見:左右対称性の関節腫脹および圧痛

コメント:急性多関節炎の40-60%の患者は自然寛解の経過をたどる(ウイルス感染後)、通常8週間以内に消失する

 

線維筋痛症

病歴:広範囲の筋骨格痛、倦怠感、不眠

身体所見:関節および非関節部位の圧痛。腫脹は認めない

コメント:関節リウマチより頻度が高い(40〜60歳女性の5%に認められる)、20〜30%の関節リウマチ患者に合併

 

Erosive hand osteoarthritis

病歴:少関節炎、通常対称性

身体所見:遠位指節間関節かつ、あるいは近位指節間関節の骨増大および圧痛(Heberden's node/Bouchard's node)、中手指節関節は通常障害されない

コメント:手の重度の変形を認める場合があるが通常は関節リウマチに比べ機能が比較的温存される。関節リウマチでは遠位指節間関節は障害されない

 

強直性脊椎炎

病歴:主にaxial skeletonを障害、頸部痛や背部痛

身体所見:頸腰椎、股関節、肩、膝の可動障害、limited chest expansion

コメント:小関節よりも主にaxial skeletonや大関節を障害する

 

乾癬性関節炎

病歴:通常乾癬の既往があるが、関節炎が乾癬に先行する場合もある

身体所見:通常、末梢あるいはaxial skeletonを障害する単・少・多関節炎。乾癬性皮疹が頭部あるいは臀部にみられる

コメント:関節リウマチあるいは強直性脊椎炎に類似するかもしれない。関節リウマチに比べより遠位指節間関節の障害やdactylitisなどが認められる

 

反応性関節炎

病歴:axialあるいは末梢の炎症性関節炎。典型的にはウイルスあるいは細菌による消化管あるいは尿路の感染後に発症

身体所見:末梢あるいはaxial skeletonを障害する単・少・多関節炎

コメント:関節リウマチあるいは強直性脊椎炎に類似するかもしれない

 

リウマチ性多発筋痛症

病歴:50歳以上の患者に急性あるいは亜急性に発症する頸、肩、股関節の疼痛およびこわばり

身体所見:頸、肩、股関節のrotationが制限される

コメント:稀にremitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)syndromeでは遠位の関節も障害される

 

他の全身性のリウマチ性疾患

(SLE、成人発症Still病、若年性特発性関節炎、強皮症、多発性筋炎、リウマチ熱、全身性血管炎、ライム病、炎症性腸疾患、他の稀な疾患)

病歴:多くは対称性の多関節炎、疼痛、朝のこわばり、倦怠感を有する

身体所見:多くはaxialあるいは末梢の対称性の関節腫脹、圧痛を認める

コメント:診断が不明な場合はリウマチ専門家へコンサルトを検討

 

化膿性関節炎

病歴:外傷、他の感染の存在、gonococcalへの暴露があるかもしれない

身体所見:通常、単関節であるが、稀に一つ以上の関節を含む場合もある、腫脹、熱感、発熱を認める

コメント:疑えば菌血症および関節破壊への伸展を防ぐために緊急関節穿刺による診断が必要となる。general populationに比べ関節リウマチ患者により多く認められる

 

痛風

病歴:通常急性発症だが緩徐あるいは慢性の場合もある

身体所見:痛風結節。腫脹、発赤、単あるいは少関節炎

コメント:正確な診断には結晶の存在を確認する必要がある

 

Calcium pyrophosphate deposition・偽痛風・hydroxyapatite crystal arthritis

病歴:通常急性発症だが緩徐あるいは慢性の場合もある

身体所見:腫脹、発赤、単あるいは少関節炎

コメント:正確な診断には結晶の存在を確認する必要がある

 

悪性疾患に関連

病歴:様々な発症様式

身体所見:関節腫脹

コメント:腫瘍随伴症状として炎症性関節炎を認める場合がある。チェックポイント阻害剤などの免疫制御剤の副作用による関節炎

 

 

 

 

 

Laboratory studies

関節リウマチ患者の多くでESR、CRP、RF、ACPA、anticyclic citrullinated peptid(anti-CCP)などが上昇あるいは陽性となる。しかし、これらの検査の中で診断を除外できる程感度の高いものはなく、30%の患者では検査が陰性となる(18)

 

seropositive関節リウマチ(RFやACPAが陽性)はseronegative関節リウマチに比べより重篤な臨床経過をたどりやすい(19)

 

フィンランドとアメリカにおいて2500人以上の新規に診断された関節リウマチ患者において行われたobservational studyでは、44%の患者でESRが28mm/h以下、48%でCRPが正常値であった(18)。関節リウマチの初期症状を呈する患者でおこなわれた151のスタディのレビューでは、第二世代anti-CCP antibodiesとRFは同等の感度を認めた(67% vs 70%)が、第二世代anti-CCP antibodiesの方が特異度が高かった(96% vs 86%)(20)。anti-CCPとRFは両方感度が比較的低いため、陰性でも除外診断とならない

 

Laboratory 

ESR・CRP

全身性の炎症を検知し、ベースラインの確立に有用。しかし特異的でなく値が正常な関節リウマチ患者が存在する。2010 ACR/EULAR criteriaに含まれる

 

RF

関節リウマチ患者の50〜65%で陽性。他の疾患でも陽性になりうる(シェーグレン症候群、SLE、加齢、感染)。2010 ACR/EULAR criteriaに含まれる

 

Anticyclic citrullinated protein(anti-CCP)or  anticitrullinated protein antibodies(ACPA)

関節リウマチ患者の60〜70%で陽性。より特異的であるが陰性である患者も存在。他の全身性リウマチ性疾患、自己免疫性肺疾患、あるいは将来関節リウマチになるリスクのある人でも陽性になる場合がある。2010 ACR/EULAR criteriaに含まれる

 

Antinuclear antibody(ANA)

非特異的。陰性の患者も存在

 

Extractable nuclear antibodies(ENAs)・anti-double stranded DNA(anti-dsDNA)

SLEやシェーグレン症候群などの他の疾患の鑑別診断、あるいはそれらがオーバラップしている場合の診断に有用。関節リウマチによる二次性シェーグレン症候群の診断の補助

 

Hepatitis B surface antigen(HBsAg)、Hepatitis B surface antibody(HBsAb)、Hepatitis core andibody(HBcAb)

B型肝炎のスクリーニング。DMARDの選択にも影響。免疫のない患者ではワクチンも検討

 

Hepatitis C antibody

Hepatitis Cのスクリーニング。DMARDの選択にも影響

 

一般生化(クレアチニンも含む)

電解質、腎機能、ベースラインの評価。DMARDの選択にも影響

 

肝酵素(AST・ALT)

肝機能評価。ベースラインの評価。DMARDの選択にも影響

 

血算(分画)

ベースライン評価。血液疾患のスクリーニング

 

Creatinine kinase

筋炎のスクリーニング。ベースライン評価

 

TSH

自己免疫性甲状腺疾患のスクリーニング。関節リウマチと合併することが多い

 

Interferon-γ release assays(IGRAs)or purified protein derivative(PPD)

潜在性結核のスクリーニング。DMARDの選択にも影響

 

Commercial multi-biomarker disease activity assay

関節リウマチの活動性をモニターする場合に検討。診断および活動性のモニターに有用であるかの議論は続いている 

 

脂質・HbA1c

脂質異常症および糖尿病のスクリーニング

 

14-3-3η(14-3-3 eta)

RFとCCPが陰性の関節リウマチの診断の補助。有用性の議論は続いている 

 

関節滑液検査(血球数・分画、結晶、グラム染色、培養)

中・大関節に中等度から多量の液貯留を認める単・少関節炎などの非典型的な症状の場合は検討

 

他の検査

(interleukin-6、serum protein electrophoresis and immunofixation、angiotensin converting enzyme、25(OH) vitamin D、other vitamins、ionized calcium、uric acid、parathyroid hormone、other hormones、HLA-B27、other genetics、HIV antibody、parvovirus B19 antibody、Lyme antibody、other infection screens、other autoantibodies, etc.)

非典型的な症状やそれぞれ臨床的に示唆される患者では検討 

 

 

 

Imaging

単純X線検査(手、手首、足、障害を認める他の関節)

関節リウマチによるダメージを評価、ベースライン評価。手、手首、足の写真を症候や症状がない場合でも検討 

 

超音波検査

滑膜炎の評価、ベースライン評価、他の鑑別疾患の検知。関節穿刺の補助。多くのリウマチ専門医が超音波のトレーニングを受け、疾患の活動性モニターに利用 

 

MRI

滑膜炎の評価、ベースライン評価、他の鑑別疾患の検知。所見がはっきりしない滑膜炎および軟部組織の障害を検知

 

CT

骨びらんの評価。ベースライン評価。他の鑑別疾患の検知

 

胸部X線

DMARD治療開始前のベースライン評価。間質性肺疾患、胸水、結節、気管支拡張症などの呼吸器合併症および悪性疾患、結核などのスクリーニング

 

他の画像検査

(positron emission tomography、bone scan、dual-energy X-ray absorptiometry、musculoskeletal dual-energy computed tomography scan、abdominal ultrasound、transthoracic echocardiogram, etc.)

非典型的な症状やそれぞれ臨床的に示唆される患者では検討 

 

 

 

 

 

症状を有する関節のX線検査における変化(関節近接の骨減少、関節間隙狭小化、骨びらん)は関節リウマチの診断あるいは治療開始のために必要ではない。治療の主なゴールは数ヶ月から数年症状を有する患者に起こってくるそれらの変化を防ぐことである。関節リウマチは関節炎症が初期の段階で通常X線検査が正常、あるいは手や足のわずかな関節近接の骨減少を認める時期に診断されることが多い。それらの変化は手よりも先に足に起こる場合もある。たとえ症状がない場合でもスクリーニング、ベースラインの確立、あるいは他の鑑別疾患の評価のために足と手の単純X線写真をとることは理にかなっている

 

 

超音波検査とMRIは骨障害が起こる以前の軟部組織の炎症および滑膜炎 (特に腱滑膜炎)の検知において単純X線より感度が高いが、特異度は比較的低い

 

 

 

 

Synovial fluid

滑膜液を採取することは、特に多関節炎を認める患者の場合、関節リウマチの診断に必要ではない。 しかし、化膿性関節炎、痛風、他の疾患の可能性も考慮される場合は中あるいは大関節(膝、肩、足首、肘など)から採取しなければならない。化膿性関節炎は関節リウマチの患者においてより多く見られ、単関節炎で熱感、発赤、多量の関節液貯留、熱や血圧低下などの全身性の症状を認める場合は疑わなければならない

 

 

 

 

 

Treatment

 

薬物学的治療は炎症をコントロールし関節リウマチの活動性を低く抑える、あるいは寛解させることがゴールである。methotrexateがそのよく知られた有効性および安全性より関節リウマチの初期治療の主軸と考えられている。中等度から重度の病態において典型的にはmethotrexateが単剤治療薬として開始される。治療の反応が悪い場合はmethotrexateにその効果を増強させ、薬剤に対する抗体形成を減らす目的で他のDMARDsが追加(代替ではなく)される。軽度の関節リウマチでは時にhydroxychloroquineが初期治療薬として使われる場合もあるが、効果が悪い場合はmethotrexateなどの他のDMARDsを開始しなければならない

 

 

NSAIDsはその効果発現の速さより疼痛治療に屯用される。glucocorticoidsは効果発現の速さおよび疼痛・こわばり改善への有効性より、活動性が高い時期に"bridge therapy"として使われる場合がある。しかし長期使用による多くの合併症があるため、DMARDs治療によってglucocorticoidsを完全に撤退、あるいは最低必要量に保つ必要がある。過去には関節リウマチのステップアップ治療としてNSAIDsとglucocorticoidsから開始され、治療反応が悪い場合にDMARDsを後から開始していたが、初期からDMARD治療を開始する方法に比べ効果が劣ることをデータが示している(21)

 

 

ガイドラインでは疾患の活動性を低く保つあるいは寛解を、適切な活動性の評価法を用いながら目指すことを推奨している(22, 23, 24)。関節リウマチの活動性を評価し治療決定を補助するさまざまな活動性評価法が確立され、その有効性が認められている。広く普及しているのがDisease Activity Score 28(DAS28)(25)で、28箇所の関節(手指(10 x 2)・手首(2)・肘(2)・肩(2)・膝(2))の圧痛および腫脹、患者の全身状態の自己評価、急性反応(CRP or ESR)からなる指標で成り立っている。Simplified Disease Activity Index(SDAI)はDAS28に類似しているが、計算がより簡易で血液検査が利用可能であればよりリアルタイムに利用可能である(26)。Clinical Disease Activity Index(CDAI)は関節の圧痛・腫脹と患者の自己評価を使うが血液検査は必要でない(27)。Routine Assessment of Patient Index Data 3(RAPID3)は患者の自己評価のみを使うため、遠隔での使用も可能で、モニターおよび治療決定の補助に容易に利用可能である(28)。超音波検査やMRIなどの画像検査を活動性モニターの指標に組み込むかのリサーチが続いている(29)

 

 

 

関節リウマチの活動性評価方法

関節圧痛の数(✳︎):DAS28(◯)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(X)

関節腫脹の数(✳︎):DAS28(◯)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(X)

医師による全身評価 :DAS28(X)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(X)

ESR or CRP:DAS28(◯)CDAI(X)SDAI(◯)RAPID3(X)

患者による全身評価:DAS28(◯)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(◯)

患者によるの機能評価:DAS28(X)CDAI(X)SDAI(X)RAPID3(◯)

患者による疼痛評価:DAS28(X)CDAI(X)SDAI(X)RAPID3(◯)

 

(✴︎)圧痛・腫脹を評価する関節(28関節):手指(10 x 2)・手首(2)・肘(2)・肩(2)・膝(2)

 

 

関節リウマチの活動性分類

高(治療強化が強く必要):DAS28 >5.1、CDAI >22、SDAI >26、RAPID3 >12

中(治療強化を強く考慮):DAS28 3.2〜5.1、CDAI 10.1〜22、SDAI 11.1〜26、RAPID3 6.1〜12

低(治療強化を検討):DAS28 2.7〜3.2、CDAI 2.9〜10、SDAI 3.4〜11、RAPID3 3.1〜6

寛解:DAS28 ≦2.6、CDAI ≦2.8、SDAI ≦3.3、RAPID3 ≦3

 

 

 

 

関節リウマチの活動性評価は客観的データを提供し長期予後を改善する。しかし、ある患者では主観的な疼痛の申告や活動性の関節リウマチに関係ない関節の圧痛(関節破壊による疼痛や圧痛、線維筋痛症、併存する変形性関節症、腰痛、鬱、ストレス、不眠など)などにより活動性を有ると間違って分類される場合がある。反対に、治療の強化が必要であるにも関わらず関節リウマチの活動性が低いと分類されてしまう場合もある(足優位の炎症性関節炎、難治性の単関節炎など)。したがってこれらの評価法は治療の補助に役立つが、それぞれの臨床シナリオに則して治療決定が行われる必要がある

 

 

Traditional DMARDs

 

Methotrexate

関節リウマチと診断された多くの患者の第一選択薬がmethotrexateであり(典型的には1mg dailyで開始)、葉酸と共に投与される(30)。低用量(≦ 25mg/week)では通常白血球や血小板は減少しない。methotrexateで治療されるおよそ半数の患者ではX線上での進行がわずかに、あるいは認められずに抑えられるが、30%の患者ではDMARDsの追加が必要になる(31)。典型的な投与量は週10〜25mgである。副作用の嘔気、下痢、口内炎、脱毛、服用後倦怠感は高用量の葉酸投与(あるいはleucovorinに変更してmethotrexate投与8〜12時間後に投与)、methotrexateの1日投与量を分割投与、皮下注に変更、耐用できる最大投与量に減量する、ことなどによってコントロールできるかもしれない。methotrexateの長期投与は安全で多くの患者で耐用できる(32)。methotrexateには催奇形性作用があるため妊娠可能な女性では避妊薬の使用あるいは産科への紹介が必要になる

 

Hydroxychloroquine

hydroxychloroquineは軽度の関節リウマチ患者に、あるいはSLEなどとオーバラップしている場合に投与される場合がある。単剤投与では中等度から重度の症状をコントロールできないが、他のDMARDsに部分的に反応を示す患者に追加投与することが有効な場合がある。hydroxychloroquineは穏やかな抗炎症作用を有するが、感染のリスクを上げず、耐用性は良好である。重篤な副作用には失明に至る網膜症があるが、比較的稀で投与が5年以上の場合に限られる(33)。他の稀な副作用には色素沈着や皮疹がある。妊婦への投与も可能であるとされている

 

Sulfasalazine 

sulfasalazineはtraditional DMARDの一つでmethotrexateに耐用できない、あるいは禁忌の患者での投与が考慮される。臨床試験では投与1年後の効果はmethotrexateと同等であったが(34)、長期の効果では劣る(35)。副作用は嘔気、下痢、肝酵素上昇などがあるが、これらは投与量に依存しているかもしれない

 

Leflunomide

leflunomideはtraditional DMARDの一つで単剤薬としてmethotrexateの代替、あるいは他のtraditionalあるいはbiologic DMARDsと併用投与として使用される。副作用は嘔気、下痢、肝酵素上昇などがある。leflunomideはおそらく催奇形性があり、比較的半減期が長いので(定常状態に到達してから2年後まで血中に確認された患者も存在)、将来妊娠を希望する可能性の女性では避けるべきである

 

三剤治療

三剤治療とはmethotrexate、hydroxychloroquine、sulfasalazineの併用治療である。leflunomideやazathioprineなどの他のtraditional DMARDsがsulfasalazineやmethotrexateの代わりに投与される場合もある。三剤治療はmethotrexate単剤治療に反応が不良の場合に考慮される。三剤治療はbiologic DMARDsとmethotrexateの併用治療に比べ、費用対効果が高く(36)、効果も同等であるかもしれない。しかしbiologic DMARDsに比べ使用される頻度は低い(37)

 

353人の関節リウマチ患者で行われたrandomized controlled trialでは三剤治療およびetanerceptとmethotrexateの併用治療が比較検討された(38)。24週間後の活動性、X線上での進行、health-related qualith of lifeは両グループ間において同等であった

 

 

 

Biologic DMARDs

およそ30〜50%の患者がtraditional DMARDsに十分な反応を示さない。methotrexateの単剤治療あるいは他のtraditional DMARDsとの併用治療開始2〜6ヶ月後に効果が不十分であった場合biologic DMARDsを考慮する必要がある(22, 23)。現在使用されているbiologic DMARDsは全て炎症あるいは免疫経路に対する抗体からなり、静注あるいは皮下注投与される。biologic DMARDsの開発は過去20年間における関節リウマチ治療の大きな伸展をもたらしている

 

U.S. Food and Drug Administrationは10のbiologic DMARDsを関節リウマチの治療薬として承認している。それらは5つの異なる作用機序を有している。infliximib、etanercept、adalimumab、golimumab、certolizumab pegolはTNF-αを阻害するモノクローナル抗体あるいは受容体阻害剤である。さらなる炎症あるいは免疫経路をターゲットにするbiologic agentsにはT-cell receptor CTLA4(adatacept)、B-cell marker CD20(rituximab)、interleukin-6 recptor(tocilizumabとsarilumab)、interleukin-1 receptor(anakinra)がある。これらbiologic DMARDsのクラス間での効果にはわずかな違いがあるかもしれないが、個人の反応は大きく異なりえる。現在、methotrexateに反応が不良である患者には禁忌でない限り(心不全など)、最初のbiologic DMARDとしてTNF-α阻害剤が開始される場合が多い。biologic DMARDsは、それ同士の併用投与はできないが、その効果を高め、また抗薬剤抗体の産生を減らすためにtraditional DMARDs、特にmethotrexateなどと併用投与されることが多い

 

全てのbiologic DMARDsは免疫機能に影響を与え、よく見られる感染(肺炎、蜂窩織炎、尿路感染など)や比較的少ない感染(結核、真菌感染など)の両方のリスクを高める。biologic DMARDsはactiveで重篤な感染症が起こっている場合は中止しなければならない。結核およびウイルス性肝炎のスクリーニングは薬剤開始前の全ての患者で必須である。禁忌でない限りインフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹のワクチンを受けるべきである。帯状疱疹に対するワクチンが考慮されるべきだが、biologic DMARDが開始された後では生ワクチンを投与してはならない

 

スウェーデンで悪性疾患の既往がありTNF-α阻害剤を開始された467人の関節リウマチ患者に対して行われたobservational studyでは、同等の悪性疾患の既往を有し、マッチしたコントロール患者2164人と比較検討された(39)。悪性疾患の再発において両グループ間における違いは認められなかった。この結果より、たとえ悪性疾患の既往がある患者においても、biologic DMARDsの長期における安全性に対し好ましいエビデンスが示された

 

 

NSAIDs

関節リウマチ患者においてNSAIDsは疼痛およびこわばりのコントロールに使用される。disease-modifying作用は有していないと考えられているが、およそ半数の患者において屯用投与、時に定期投与されている。症状のコントロールには有用であるが、長期心血管、腎、消化管リスクがある事はよく知られている(40)

 

 

Glucocorticoid

glucocorticoidは関節リウマチの疼痛、こわばり、腫脹のコントロールに対し最も効果があると考えられているが、病態の進行を抑えることにおいては効果が劣る。感染、高血糖、高血圧、骨粗鬆症、体重増加、気分変調、睡眠障害などの副作用がよく知られている。glucocorticoidは関節リウマチの診断時あるいは活動性が高い時にDMARDsが開始される場合の"bridging" therapyとして投与されることが多い。ゴールはglucocorticoidを完全に撤退する、あるいは可能な限り低用量で使用することである。しかし、低用量のprednisone(≦ 5mg/day)は効果を有しながら副作用のリスクが比較的少ないかもしれない(41)

 

DMARD治療にもかかわらず、難治性あるいは再発性の関節炎を有する患者ではglucocorticoid関節内注射が付随治療として効果があるかもしれない。関節内注射は症状緩和の効果発現が早く、耐用性もよく、年に3〜4回以上行われなければ安全であると考えられている(42)。glucocorticoid関節内注射は他に比べ腫脹および圧痛が強い、1つあるいはそれ以上の中〜大関節に対し行われる

 

 

理学療法・作業療法

過去には関節リウマチに対するエクササイズに注意を提唱する医療者もいたが、適切にデザインされたプログラムは一般的に有効であると考えられている。理学療法士と作業療法士は日常生活のパフォーマンスが制限された関節リウマチ患者の機能を向上させうる

 

早期の関節リウマチ患者において行われたrandomized trialでは、有酸素運動フィットネスと筋力増強を目指すエクササイズプログラムによって2年後における筋力の強さおよび全体における活動性評価での改善が認められ、その効果はその後3年間維持された(43)。中等度の強度におけるエクササイズのために関節あるいは骨に障害が起こったというエビデンスは認められず、安全性が認められた

 

 

食事・ビタミン

食事が状態を改善したり、悪化させる重要なファクターであるという患者もいるが、ビタミン剤投与などが関節リウマチ患者の代替治療として有効であるというエビデンスは認められていない(44)。あるrandomized clinical trialではfish oilが病状初期においてある程度の有効性を認めることが示唆されている(45)。必要であれば患者に対し、DMARDs治療の補助療法として減量およびphysical fitnessの維持・改善を奨励するべきである(46)

 

 

 

予後

多くの患者においては関節リウマチはflaresのエピソードや長期の慢性炎症を特徴とする進行性の疾患である。薬剤投与を必要としなくなる長期の寛解を達成する患者は少ない。関節リウマチ患者は感染、骨粗鬆症、心血管疾患、呼吸器疾患、悪性疾患などの合併症リスクが高くなる(47, 48, 49, 50, 51)。全ての原因による死亡率はgeneral polulationに比較し50%高くなる(52)。しかし、この死亡率のギャップは改善してきているように見える(2, 4)。それは早期の積極的な治療、治療オプションの増加、および長期の炎症コントロールに基づいていると考えられる

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

1 January 2019

 

在宅高齢者の転倒予防

 

転倒は70歳以降10歳毎にその発生率が2倍に増えていく

 

 

転倒は意図しない傷害による死亡の3番目に高い原因である(1)

 

 

転倒は高齢者の非致死的および致死的傷害の最も多い原因である(2, 3)

 

 

傷害に至らない転倒であっても、機能低下、精神的ストレス、自立の喪失などをもたらし、老年症候群を悪化させうる(4)

 

しかしながら担当医と転倒についての話し合いをもたれる在宅高齢者は4人に1人のみである(5)

 

 

転倒リスクは介入の種類に依存して20〜40%減らすことが可能であることをエビデンスが示している(6)

 

 

医療従事者は転倒に関する一次的および二次的スクリーニングに対する努力を積極的に行い、エビデンスに基づいた適切な指示を提供する必要がある

 

 

 

Risk Factors

リスクファクターは修正可能なものと修正不能なもの、内因性と外因性に分類される(7)

 

転倒における内因性および外因性リスクファクター

内因性

:視力低下、黄斑変性症、緑内障、白内障、遠近調節機能低下、奥行知覚の低下、失明、網膜症

循環:徐脈、頻脈性不整脈、起立性低血圧、非代償性心不全

神経:認知症、Parkinson病、脳卒中、他の運動性疾患、末梢神経障害、歩行障害、バランス障害

泌尿:失禁、夜間頻尿

精神:不眠、睡眠障害、うつ病

筋骨格:変形性関節症、疼痛、下肢筋力低下、姿勢障害、バランス障害、柔軟性低下

 

外因性

薬剤:抗コリン剤、抗うつ剤、向精神薬、鎮静剤、ベンゾジアゼピン、オピオイド、降圧剤、α-and-β遮断剤、抗不整脈薬、4つ以上の薬剤服用

履物:backlessの靴およびスリッパ、ハイヒール、足の背部、土踏まず、あるいはかかとにサポートがない靴、底が重たい、あるいはつま先が狭い靴

環境: 濡れているあるいは滑りやすい床、手すりの欠如、平らでない床、床の敷物、弱い照明、階段の手すりがない、コードなどの通路の障害

 

 

転倒リスクは一つの因子あるいはいくつかの因子の累積によって推定される。独立した転倒リスク因子としては、転倒の既往(likelihood ratio(LR):3)、椅子から腕を使わずに立てない(LR:4)、遅い歩行(LR:2)、動作に問題があることを自覚している(LR:2)、向精神薬使用(LR:20)、認知症(LR:15)、Parkinson病(LR:5)、脳卒中(LR:3)などがある(8)

 

 

 

転倒のおよそ半数が傷害にいたり(9)、10%が重篤な傷害を起こす(4)

 

 

個々の因子および状況因子の両方の存在が転倒による重篤な傷害のリスクを予測する。重篤な傷害には、骨折、関節脱臼、関節内出血、重度の捻挫、頭部外傷による意識喪失および入院、縫合を要する裂創、入院を要するあるいは活動性低下をきたす内部損傷が含まれる(10)

 

個々の因子としては、女性、低体重(body mass index<22kg/m2)、認知機能低下、がある。状況因子としては、階段での転倒、displacing activity(ドアを開けたり、クローゼットに近づく時などの重心を移動させる動作)、身長と同じ、あるいはそれ以上の高さからの転倒、などが含まれる(10)

 

 

転倒に対する恐怖はその神経精神的重大さにて転倒のリスクを高め、機能低下をもたらす(11)

 

 

在宅高齢者で転倒歴のある21〜85%、転倒歴のない在宅高齢者の33〜46%が転倒に対する恐怖を報告している(12)

 

 

機能レベルでは転倒への恐怖は、姿勢の変化、バランスに対する自信の低下、活動を避ける、運動の低下などと関連を認める(13, 14)

 

 

転倒への恐怖自体が将来の転倒の大きな予測因子となる(15)

 

 

精神心理学的には、転倒に対する恐怖をもつ人は比較的に精神衛生が劣り、自立性が低く、健康に対する自己評価が低い 、とされている(16)

 

 

転倒への恐怖が活動性低下を導き、身体機能低下を促進する。この状況を認識することによって医療従事者が患者に対し転倒予防への努力を促し、自信を取り戻させ、結果以前に勤しんでいた活動を再開させることを可能にする

 

 

 

 

評価

 

転倒のスクリーニングはバランス、下肢筋力低下、歩行に関して自覚している情報を得ることから開始する

 

 

American and British Geriatrics Societies(AGS/BGS)のガイドラインでは65歳以上のすべての高齢者に対し一年毎に以下のことを尋ねることを推奨している;過去1年間のうちで2回以上転倒したか、転倒によって怪我をしたか、歩行あるいはバランスによる問題があるか(17)。これらの質問に対し一つでも「はい」と答えた患者ではさらなる評価が必要になる

 

 

 

プライマリケア医が転倒予防手段を取ることを助けるためにCenters for Disease Control and Prevention(CDC)がStopping Elderly Accidents, Deaths & Injuries(STEADI)tool kitを開発している(18)。それによると以下のkey questionsをスクリーニングとして尋ねることを提案している;過去1年間の間に転倒したか、立ったり歩いたりする時に不安定さを感じるか、転倒しないか心配になるか。またCDCは転倒リスクを減らすための介入による利益があるかを評価するスクリーニング質問事項を作成している。この計14点からなる"Stay Indepedent"質問事項は有効性が認められた転倒リスクの自己評価法として高齢者が自分で回答し、外来受診時に担当医が評価するものである(19)。質問事項のスコアが4点以上、あるいはSTEADI tool kitのkey questionsに一つでも該当すれば、患者は転倒のリスクがあるとされ、さらなる評価が必要になる

 

 

Stay Independent questionnaire 

・過去一年の間に転倒したことがある(2)

・杖や歩行器を使う、あるいは使うよう勧められている(2)

・歩行時に時おり不安定さを感じる(1)

・家の中を歩くときに安定のために家具などにつかまる(1)

・転倒するか心配になる(1)

・椅子から立ち上がる時に腕で押し上げる必要がある(1)

・歩道の縁石を上がることが困難な場合がある(1)

・トイレに急いでいく必要がある場合が多い(1)

・足の感覚が鈍い(1)

・内服すると立ちくらみや疲れやすくなる薬を服用している(1)

・睡眠剤や気持ちを安定させる薬を服用している(1)

・悲しかったり抑うつ気分になることが多い(1)

 

 

 

 

 

 

 

ガイドラインでは転倒の既往がある、あるいはなく、バランスや歩行に問題がある高齢者に歩行、下肢筋力、およびバランスの機能的評価を行うことを推奨している(17)

 

 

いくつかのfunctional performance testが転倒リスク評価として利用可能である。しかし、これらの多くは非実用的で多くのプライマリケアにおいては不必要である。したがってAGS/BGSとCDCは、転倒リスクを有し動作に問題のある高齢者を特定するためにTimed Up-and-Go(TUG)test、Thirty-Second Sit-to-Stand(STS)test、Four-Stage Balance testなどのようなシンプルなテストを行うことを推奨している

 

 

TUG testは歩行、バランス、調整、筋力を評価するもので、施行者に特別なトレーニングを必要とせず、5分間で行うことができる(20)。その転倒に対する予測能力と診断の正確性は中等度である(21)。テストを終了するのに12秒以上かかる高齢者は転倒のリスクがあり、20秒以上かかる場合はよりリスクが高くなる

 

  

 

STS testおよびFour-Stage Balance testは迅速で外来ベースで行われる、下肢の筋力およびバランスをそれぞれ測定するスクリーニングツールで、簡単に施行でき、TUG testを補足する有益な情報が得られる(22, 23)

 

 

 

AGS/BGSのガイドラインでは歩行あるいはバランス障害をもつ全ての人に転倒リスクの評価を行う必要があるとしている

 

 

 

Functional Tests

 

Timed Up-and-Go test

Description

運動、バランス、移動能力、転倒リスクを評価する。硬い背もたれの椅子から腕を利用して立ち上がり、10 feet(3m)歩行し、振り返り、戻って来て椅子に座る。普段から使用している場合は補助用具(杖、歩行器)を使って行う

Comments

転倒のハイリスクを示唆するカットオフスコアはpopulationに依存して変わる。特異度(60〜87%)の方が感度(31〜56%)より良い傾向にある

 

Berg Balance test

Description

14項目の客観的指標によって静的バランスを評価する(座る、立つ、移動、近づく、方向転換など)

Comments

このテストは他のテストに比べより時間を要し、実施にトレーニングを必要とする

 

Four-Stage Balance test

Description

静的バランスを評価する。対象者は四つの状態を順次行っていく;parallel stance(両足底が平行な状態で立つ)、semi-tandem(足底が縦方向にずれて立つ)、full tandem(足底が縦方向に一直線にして立つ)、single leg stance(片足立ち)。ゴールは支えなしに10秒間各状態を保持

Comments

一つのスタディでは転倒再発予測に対する感度45%、特異度74%であった。外来にて簡易に行える

 

Thirty-Second Sit-to-Stand test

Description

下肢筋力評価を行う。対象者は座位から腕を使わずに立ち上がる動作を30秒の間にできるだけ多い回数行う

Comments

正常値は性別および年齢に依存し、性別/年齢に基づく正常値を達成できない場合は転倒リスクがあるとされる。 年齢および性別に関わらず転倒予測のカットオフ値を11とした場合の感度は68%、特異度は54%であった

 

Dynamic Gait Index

Description

歩行中にexternal demandsが存在する時のバランス保持能力を評価する

Comments

施行者のトレーニングを必要としない。10分以内に施行可能。スコア19以上で転倒リスク予測の感度が59%、特異度が64%

 

Four-Square Step test

Description

前方、横方向、後方へステップする能力を評価する

Comments

テスト終了に15秒以上を要する場合転倒リスクがあるとされる

 

 

 

Clinical assessment

 

転倒リスクの評価には問題に焦点をあてた身体診察が必要になる。過去の転倒に関する記載は転倒の防止およびマネージメントの要の一つである(24)

 

転倒歴

症状(前駆症状):めまい、たちくらみ、動悸

場所:寝室、トイレ、浴室、屋外

時間: 食後、1日の時間帯、服薬時間との関係

活動:転倒時の状況;歩行時あるいは立ち上がった時

 

身体診察

頭部・眼・耳・鼻・咽頭:視力、周辺視野

循環器:orthostatic vitals、脈拍、リズム、雑音

神経:認知機能、感覚、深部知覚、バランス、運動機能、反射、小脳機能、歩行

精神:うつ病スクリーニング

筋骨格:立位の姿勢、関節可動域(特に下肢、頭部、頸部、体幹)、筋緊張、筋量、足および履物の評価

 

 

 

処方薬剤の評価は転倒リスクの評価における最重要事項の一つである。全ての薬剤について臨床的に必要かどうか再評価する必要がある。4剤以上の薬剤を服薬している事自体が転倒の独立したリスクとなる(25)。抗コリン剤や鎮静作用を有する中枢神経系に影響を持つ薬剤が転倒と最も強い関連を持ち、可能な限り漸減、減量あるいは中断すべきである(26)。これらの薬剤には向精神薬、三環系抗うつ剤、セロトニン再取り込み阻害剤、中枢作用性降圧剤、オピオイド、鎮静剤、非ベンゾジアゼピンおよびベンゾジアゼピン受容体阻害剤などが含まれる(27)

 

 転倒リスクを上げる薬剤

・向精神薬

・鎮静剤

・降圧剤(中枢作用性)

・利尿剤

・抗不整脈薬

・オピオイド

 

 

転倒リスクの評価に基づいて適切な血液検査と画像検査を選択する必要がある。検査にはヘマトクリット、TSH、ビタミンB12、25-hydroxyvitamin D、dual-energy x-ray absorptiometry(DEXA)scanningなどが含まれるかもしれない

 

 

 

 

転倒に対する恐怖を評価

転倒リスクを認める場合、機能低下の原因となる転倒に対する恐怖、およびその程度を評価する必要がある。その場合、long (16-item) or short (7-item) Falls Efficacy Scale-International (FES-I)を使用して評価することが可能である(28)。この評価によって着替え、食事準備、入浴などの日常動作中の転倒に対する本人の懸念を引き出すことができる。これは転倒に関連する機能低下を評価することで医療補助具、home safety評価、作業療法などから利益を得られる高齢者を同定することに有益である

 

 

 

Home safety assessment

機能評価および転倒歴から環境因子に問題がある可能性が考えられる場合は住居環境の改善や作業療法士への紹介が妥当となる(9)

 

Basic Home Safety Recommendation 

玄関:手すり、および適切な階段、適切な照明

台所:よく使用するものを届きやすい場所に配置、滑りにくいマット

トイレ・浴室:滑り止めを備えたマット、手すり、適切な照明

階段:散らかりを除去、手すり、階段の段ごとにカラーストリップを配置する

廊下:散らかりを除去、夜間の照明

 

 

 

 

 

Management

 

転倒予防のための様々な介入方法がある。その中で運動が最も強いエビデンスを持ち、転倒および転倒による傷害を減らすことが確認されている(6, 29)

 

 

転倒による傷害を減らすかどうかのエビデンスは欠如しているが、住居環境の改善も効果的である(29)。住居環境の改善は視力低下をもつようなハイリスクの人により効果をもたらす。住居環境改善は作業療法士によって行われる場合により有効であるようである(6)

 

 

 

中枢神経に作用する薬剤の中止あるいは減量は転倒を減らすことに有効性が認められている(6, 17)。多くの高齢者は薬剤と転倒の関連に無自覚であるが、一度アドバイスを与えられると服用する薬剤の数や用量を減らす提案を受け入れることが多い。リサーチでも高齢者の薬剤に対するそのような態度が確認され、医師からアドバイスを受けると68%が薬剤の使用を減らしたいと思い、92%が薬剤を中止したいと考える、と報告されている(30)。このスタディでは薬剤を減らすことの重要性、および高齢者における薬剤のリスクと害を医師自身が認識すべきことを強調している(27)。最近のリサーチでは高齢者における向精神薬使用減量の主なバリアとなっているのが医師の薬剤中止に対する消極的な姿勢である、と報告している(31)

 

 

Multifactorial intervention

計41596人の参加者を39の介入方法で評価した54のrandomized trialsにおけるcomprehensive systematic reviewおよびnetwork meta-analysis(29)からのエビデンスでは以下の組み合わせの介入が転倒に関する傷害を減らすと報告している;運動と視力評価およびマネージメント(OR, 0.17 [CI, 0.07-0.38])、運動と視力および住宅環境の評価とマネージメント(OR, 0.30 [CI, 0.13-0.70])、clinic-level quality improvement(医師への情報提供)とmultifactorial assessment and managementとビタミンDおよびカルシウム補足(OR, 0.12 [CI, 0.03-0.55])

 

 

 

Interventions for Fall Prevention and Their Evidence Ratings

筋力およびバランスエクササイズ

USPSTF: B AGS/BGS: A(効果的(16 trials))

 

太極拳 

USPSTF: B AGS/BGS: A(転倒のリスク減少(7 trials))

 

住宅環境改善

USPSTF: I* AGS/BGS: A(効果的(6 trials))

 

向精神薬の減量

USPSTF: I* AGS/BGS: B(2 positive trials) 

 

服薬数の減量および用量減量

USPSTF: ー  AGS/BGS: B 

 

起立性低血圧のマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: C

 

ビタミンD補足

USPSTF: D  AGS/BGS: B(効果は認められない(13 trials))

 

視力スクリニンーグおよびマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: I(Harmful effect in 1 trial)

 

聴力スクリニーングおよびマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: ー

 

足・履物のスクリーニングおよびマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: C(転倒のリスク減少(2 trials))

 

患者教育のみ

USPSTF: ー  AGS/BGS: D(1 negative trial)

 

carotid sinus hypersensitivityに対するcardiac pacing

USPSTF: ー  AGS/BGS: B(転倒のリスク減少(3 trials))

 

白内障手術

USPSTF: ー  AGS/BGS: B(1 positive trial)

  

multifactorial interventions

USPSTF: C  AGS/BGS: A(転倒の率を減らすがリスクは減らさない(19 trials))

  

AGS: American Geriatrics Society, BGS: British Geriatrics Society, USPSTF: U.S. Preventive Services Task Force

USPSTF Rating: A=recommended with high certainty of benefit, B=recommended with moderate certainty of benefit, C=selectively offer based on professional judgement and patient preference, D=recommended against based on moderate or high certainty of no benefit or that harms outweigh the benefit, I=insufficient evidence, I*=evidence report finding of insufficient evidence/not part of summary recommendation 

AGS/BGS Rating: A=strongly recommended, B=recommended, C=no recommendation, D= recommended against, I=insufficient evidence

 

 

 

 

 

認知症高齢者の転倒予防 

認知機能の低下した人は転倒および傷害のリスクが高いが、多くの介入がこの特定の集団を対象にしては試験されていない。運動は認知機能が軽度から中等度低下した在宅高齢者の転倒リスクを下げる効果があることが認められている(32)。しかし、認知症の人をエクササイズに従事させる時、無気力、抵抗、行動障害などが見られる場合がある。認知症のナーシングホーム居住者で行われたスタディでは日中および午後に下肢筋力の維持にフォーカスした立ち座りを繰り返す単純な動作を行うことによって移動の能力を維持することに効果的であったと報告されている(33)。自宅で暮らす進行した認知症の高齢者では自立した移動(ベッドへの出入り、トイレに座る・立ち上がる、車への出入り、など)を続けることは家で暮らし続けるために重要であり、また単純な運動を続けることよりも達成することが可能であるかもしれない。自宅で暮らすことを希望するが認知症および他の疾患にて転倒のリスクが高い高齢者をケアする家族へのアドバイスとして単純な立ち座りの動作を勧めることは実用的である

 

 

 

 

運動 

strength and balance exerciseは転倒および転倒による傷害予防に最も効果が認められている。そのようなエクササイズが持続されれば、転倒に対する恐怖も軽減できる可能性がある(34)。多くの高齢者は筋力とバランスを改善するためのエクササイズを行なっていない。転倒リスクの高い高齢者では最初の安全なアプローチとして理学療法士の一対一による運動指導を受け、その後準備ができれば地域のエキササイズクラスや家庭内でのエクササイズプログラムに移行していく事が可能である(35, 36)

Otago Exercise Program(35)で行われたtrialsでは、理学療法士や訓練された看護師によってエクササイズが実施された場合、バランスが改善し、転倒および転倒による傷害が35%減少したと報告されている(fall incidence rate ratio [IRR], 0.65[CI, 0.57-0.75], fall-related injury IRR, 0.65[CI; 0.53-0.81])

 

 

 

 

ビタミンDとカルシウム 

ビタミンDは筋力および機能の維持を助ける。しかし臨床ガイドラインによる転倒予防へのビタミンD3(cholecalciferol)投与に関する推奨は一致していない。AGS(17)とSTEADI initiative(18)では、ビタミンD欠乏はよく見られ、補足が安全で高価でないことより、中等量のビタミンD(800〜1000IU)を毎日投与することを推奨している。Cochrane CollaborationではビタミンD投与が全体としては転倒を減らさないが、ビタミンD値が低い場合は減らす可能性がある、としている(6)。U.S. Preventive Services Task Forceは転倒予防のために骨粗鬆症やビタミンD欠乏のない高齢者へのビタミンD投与をもはや推奨していない(37, 38)。この推奨は最近行われた高用量のビタミンD(500000IU/年一回)投与にて評価されたlarge trialの結果、市中在住のリスクを伴う高齢者において転倒および骨折のリスクが増えたことが認めらた、とのエビデンスに基づいている。しかし、多くの転倒リスクを有する高齢者は骨粗鬆症、ビタミンD欠乏、あるいはその両方を持つため、骨粗鬆症の治療を開始する前にカルシウムやビタミンDの値が十分であることを確認する事は重要である。したがってビタミンDの補足(800〜1000IU daily)は臨床的に合理的であり、professional societiesの推奨に一致している(17, 39, 40)

 

 

 

 

股関節プロテクター 

プラスチック製で硬いシールドのものや柔らかいパッドなどの股関節プロテクターが股関節骨折の予防に有効であるかのスタディが行われてきた。高齢者におけるおよそ全て(>99%)の股関節骨折は転倒に起因している。市中在住高齢者に股関節プロテクターを使用した三つのトライアルにおけるcochrane meta-analysisでは股関節骨折のリスクを減らすエビデンスは認められなかった(RR, 1.14[CI, 0.83-1.57])(41)。股関節プロテクターを装着すること自体が受け入れられづらく、体幹下部に装着しはずすことはチャレンジングである。ヘルメットや肘・膝のプロテクターなどの他の保護具におけるはエビデンスはわずか、あるいは欠如している

 

 

 

 

入院患者の転倒予防

入院中の高齢者は転倒のリスクに晒される。過去に転倒歴があり、いかなる理由による認知機能低下(せん妄、認知症)を認める高齢者は転倒のリスクが最も高い。入院患者の転倒による傷害のリスクを高めるファクターは、関節置換術(OR, 5.58[CI, 1.84-16.9])、向精神薬(OR, 2.23[CI, 1.39-3.60])、男性(OR, 2.08[CI, 1.28-3.45])、過去の転倒歴(OR, 2.08[CI, 1.12-3.85])などである(42)

 

入院中の転倒リスクを減らすことが確認された介入は、薬剤マネージメント、そして認知機能が低下していない患者においてはフォローアップを伴う患者教育であった(43)。 multifactorial interventionsが現在のエビデンスで支持されている(44, 45)

 

環境を一つのみ改善することによる利益は認められていない(低いベッド、ベッドサイドの”クラッシュ”マット、ベッドアラーム、床の素材を修正)。さらにはベッドサイドマットは歩行可能な患者においては転倒のリスクを上げる可能性がある。ベッド柵を評価したrandomized trialは行われていないが、それは抑制とみなされ、転倒予防として使用すべきではない

 

 

 

 

骨粗鬆症スクリーニング

転倒リスクのある多くの高齢者が認識されていない骨粗鬆症を認め、転倒による特定のタイプの骨折(股関節など)は圧倒的にこれらの患者に多く見られる。したがって転倒予防の一環として骨粗鬆症のスクリーニングを行う事は臨床上道理的である。スクリーニング方法としては骨密度を測るDEXA scanやFracture Risk Assessment Tool(FRAX)などを利用したclinical risk assessmentがある。U.S. Preventive Services Task Forceは65歳以上の全ての女性、およびリスクを有する65歳以下で閉経後の女性に骨密度を測定することを推奨している。男性のスクリーニングにおけるエビデンスは不十分であるが、一つ以上の骨粗鬆症リスクを持つ場合は検討すべきである(喫煙、androgen-deprivation therapy、過去あるいは現在のアルコール多飲、性線機能不全、コルチコステロイドや抗てんかん薬長期使用、など)。なぜなら男性における股関節骨折による死亡率が高いからである。T-scoreが - 2.5以下、あるいは - 2.5以上だがFRAX scoreがハイリスクを示唆する場合は治療オプションおよび生活習慣改善に関する話し合いがもたれるべきである

 

 

 

 

患者および家族へのカウンセリング

 

転倒に関する問題を自ら医師に相談してくる患者は少ない

 

患者が推奨された事を実行する事を受け入れること、また進んで取り組むことが必要であることを医療従事者側が認識することは重要である。患者がどんな事を行いたいかに関する開けた議論を持つ事は患者とパートナーシップを結んで現実的なプランを作成することにおいて必要不可欠である

 

リサーチでは医療従事者の推奨によって転倒予防の行動に患者が取り組むことを促すことが確認されている(46)。他には、リスクファクターに取り組むオプションを提供すること(コミュニティあるいは家庭でのエクササイズ)、肯定的な変化を推奨すること(以前に勤しんでいた活動に再び従事して自信を取り戻す事)、ネガティブなものの排除(敷物や背が空いた靴など)、生活が良くなる影響や楽しい活動に参加できる機会が増えることを強調すること(エクササイズクラスへの参加によって人とのコネクションが生まれる)、などである

 

歩行や上半身のストレッチ運動は転倒を予防しない事(47)、バランスの改善が転倒予防に必須であること(48)、効果を維持するためにはバランスエクササイズを立位にて少なくとも週3回以上行う必要があること、その効果が出るまでに数ヶ月かかること(50時間以上)(49)などを患者に知らせる必要がある。バランスエクササイズを継続することの重要性はどんなに強調してもし過ぎることはない。そしてのこの年齢群でそれを継続することが難しいことも認識する必要がある(本人や家族の病気、パートナー、兄弟、友人の死などの人生の急な変化によるストレス、など)。医師は受診のたびにエクササイズの状況を尋ねる必要がある。患者に日常のルーチンの中にエクササイズを組み込む事を提案することはエクササイズを長期継続するための実用的な方法である(歯を磨いている時に片足で立つ、など)(36)

 

環境リスクのマネージメントのために、患者と協力して危険な状況を認識すること、家族の協力を得ながら患者が受け入れそうな変化による改善を達成することが推奨される。危険な行動(食料品の入った複数の袋を運ぶこと、階段昇降時に手すりを使わないこと、など)を認識し、可能な方法(食料品の入った袋を一回に一つ運ぶ、建物の入り口で最も進入が容易な入り口を見つける、など)を推奨することも助けになる(50)

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

4 December 2018

 

 

 

 

 

 

 

非アルコール性脂肪肝疾患

 

Nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD)は肥満の増加に伴って非常にその数が増え、現在では米国および世界で最も多い慢性肝疾患となっている(1)

 

病理学的にNAFLDは80%以上の患者にみられるnonalcoholic fatty liver(NAFL)(あるいはisolated hepatic steatosis)と20%以下の患者にみられるnonalcoholic steatohepatitis(NASH)に分類される

 

肝脂肪変性が5%以上認められる場合にNAFLDと定義される。NAFLはNASHの病理診断に必要な特徴を欠くものと定義される(炎症、肝細胞風船様腫大、線維化を伴うあるいは伴わないhepatic injury)

 

 

NAFLDは現在米国において肝酵素異常の最も多い原因である。スタディでは米国の人口の30〜40%がNAFLDを持つと推定され、その大部分がNAFLで、残り5%がNASHに罹患しているとされている(2, 3)

 

NAFLDは特発性肝硬変の最たる原因である(2)

 

NAFLDを持つ患者は心血管疾患、悪性疾患、肝疾患の合併症などに起因する死亡率が高く(2)、その罹患者数の多さおよび合併症により医療経済的負担が非常に大きくなっている(4)

 

予後が異なるためNAFLとNASHを鑑別することは重要である。NAFLは無症候な経過をたどる一方で、NASHは線維化の進行、肝硬変、肝不全、肝癌へ発展するリスクを有する

 

NASHは線維化の進行が通常遅く、そのステージが一段階上がるのに数年を要することが多いが、5〜18%の患者では速い進行が認められると報告されている(3, 5)

 

 

NASHの患者の10〜30%だけが肝硬変に進展するが、NAFLDの高い罹患者数によりend-stage liver diseaseの治療に多くの医療資源を必要とすることになる

 

 

NASH肝硬変は現在肝臓移植の二番目に多い原因であり、2020年までには最たる原因になると予想されている(6)。よってNAFLDの診断および管理に精通することは重要となる

 

 

 

Definitions

NAFLD

Definition:アルコール多飲によらない脂肪肝疾患の総称

Prevalence:世界の人口のおよそ25〜52%(7)、 米国の人口の28〜46%(8)

 

NAFL

Definition:肝細胞障害(肝細胞風船様腫大)や線維化を伴わない5%以上の脂肪性変化

Prevalence:NAFLDの80%以上(7)

Prognosis:肝硬変に進展するリスクはわずか

 

NASH

Definition:線維化を伴う、あるいは伴わない炎症および肝細胞障害を伴う5%以上の脂肪性変化

Prevalence:NAFLDの20%以下、総人口のおよそ1.5〜6.45%(7)

Prognosis:11%の患者が15年かけて肝硬変に進展する(3)

 

NASH肝硬変

Definition:現在あるいは過去の病理学的肝臓脂肪を認める肝硬変

Prevalence:NASHの10〜30%の患者

Prognosis:31%の患者が8年かけて肝不全、7%の患者が6.5年かけて肝癌を発症する(3)

 

 

 

 

肥満、metabolic syndrome、脂質異常症、糖尿病はNAFLDの主要なリスクファクターである(9, 10)。他にはpolycystic ovarian syndrome、甲状腺機能低下症、閉塞性無呼吸、下垂体機能不全、性腺機能低下症、膵十二指腸切除、乾癬などがある(3)

 

 

PNPLA3の変異遺伝子であるI148MがNAFLDの重症度に関連を認める(11)。最近のスタディでは一親等にNASH肝硬変を認める場合は線維化の進展のリスクがNASHの家族歴を持たないコントロール群に比べ12倍高くなることが報告されたが、この関連の機序を裏付ける遺伝的あるいは環境的要因は確認されていない(12)

 

 

 

 

診断

NAFLDの診断は画像検査あるいは生検にて肝臓脂肪を確認し、かつ、アルコール多飲、他の脂肪肝の原因、および他の慢性肝疾患を除外する必要がある

 

NASHのスタディにおいてアルコール多飲の定義は男性では一週間に21 standard drink以上、女性では14 standard drink以上の飲酒を2年以上行うこととされている(13)。National Institute on Alcohol Abuse and Alcoholismではone standard drinkを14gの純アルコールを含む飲料としている(13)

(14g alcohol :5%ビール約350cc、12%ワイン約150cc、40%蒸留酒約45cc)

 

 

アルコール性肝疾患および非アルコール性肝疾患は同時に認められ、両者を鑑別することは難しい。alcohol liver disease-NAFLD index(ANI)は MCV、AST-to-ALT ratio、BMI、sex to predict the likelihood of alcoholic liver diseaseを変数として計算する。ANIが2.2以上の場合はアルコール性肝疾患の可能性が92.4%、- 2.2以下の場合はNAFLDの可能性が91.8%となる(14)

 

 

脂肪肝が代謝異常あるいは薬物に起因する場合はNAFLDと分類されない。例としてはrefeeding syndrome、トキシン暴露、重度の体重減少をきたす状態(空回腸バイパス術、胃バイパス手術、重度の飢餓)などである。薬物にはamiodarone、diltiazem、tamoxifen、steroid、highly active antiretroviral therapyなどがある(5)

 

脂肪肝をきたすalcoholic steatohepatitis、Wilson病、慢性C型肝炎などの肝疾患もNAFLDと分類されない

 

同時に存在しうる他の慢性肝疾患である、alcoholic liver disease、ヘモクロマトーシス、自己免疫肝炎、慢性ウイルス性肝炎、α1-antitrypsin deficiency、Wilson病、薬剤性肝障害なども除外する必要がある

 

 

 

Laboratory test

血液検査はNAFLDの診断に他のsteatohepatitisの原因や慢性肝疾患を除外するために必要である。comprehensive metabolic panel、アルブミン、プロトロンビン時間、血算にて線維化ステージを評価するnoninvasive scoring systemや肝硬変の予後を評価するModel for End-Stage Liver Diseaseの算定に使われる

 

血小板数減少は門脈圧亢進に対する感度が高いが特異度は高くない

 

NAFLDの血液検査所見は非特異的だが多くの場合AST-to-ALT ratioが1以下である。3分の1の患者でASTとALTが2〜4倍に上昇し、またALPが軽度上昇する。ビリルビン、アルブミン、プロトロンビン時間は正常、フェリチンが軽度に上昇する

 

抗核抗体やanti-smooth muscle antibodiesがlow titer(<1:320)で認められることも珍しくなく、あるスタディではNAFLDの20%で自己抗体が陽性であったと報告されている(5)

 

 3分の1の患者では肝酵素異常が認められず、たとえNASHに進展しても肝酵素値が正常である場合がある

 

 

 

Differential diagnosis

Alcohol liver disease

Work-up to help rule out disorder:病歴、AST-ALT ratio(>2)

Characteristics suggestive of disorder:アルコール歴、alcoholic liver disease/NAFLD index>2.2

 

ヘモクロマトーシス

Work-up to help rule out disorder:フェリチン上昇、transferrin saturation上昇、HFE gene検査

Characteristics suggestive of disorder:色素沈着、糖尿、睾丸萎縮、性欲低下、心拡大

 

慢性ウイルス性肝炎

Work-up to help rule out disorder:HCVAb、HBsAg、HBsAb、HBcAb

Characteristics suggestive of disorder:肝脂肪なし、リスクファクター:薬物静注、risky sexual behaviors、輸血

 

α1-Antitrypsin deficiency

Work-up to help rule out disorder:α1-Antitrypsin phenotyping

Characteristics suggestive of disorder:関連する肺病変、血管炎

 

自己免疫性肝炎

Work-up to help rule out disorder:抗核抗体、anti-smooth muscle antibody、血清IgG上昇

Characteristics suggestive of disorder:肝臓脂肪なし、他の自己免疫疾患の既往(1型糖尿病、Graves病、潰瘍性大腸炎)、肝酵素高値、グロブリン高値

 

Wilson病

Work-up to help rule out disorder:ceruloplasmin、尿中copper

Characteristics suggestive of disorder:若年、神経精神症状、Kayser-Fleischer rings

 

薬剤性肝障害

Work-up to help rule out disorder:AST、ALT、暴露歴

Characteristics suggestive of disorder:肝臓脂肪なし、薬剤開始後の肝酵素値上昇、薬物中止後に肝酵素値改善

 

 

 

 

 

画像検査

画像検査がNAFLDの診断のため肝脂肪の有無および線維化の評価目的に行われる。肝生検が原因診断および重症度評価のgold standardであるが、その手技は費用やsampling errorなどによって制限される。また侵襲的であり、出血あるいは死亡などの稀ではあるが重篤な合併症とも関連する。原因が明らかでない肝酵素値上昇の評価のため、またNAFLDを疑う場合の確認のために画像検査を行わなければならない

 

肝臓脂肪が33%を超える場合の超音波検査の感度は100%、CTでは93%であった(15)

 

MRI-derived proton density fat fraction(MRI-PDFF)は新たな画像診断法であり、肝全体のfat mappingを可能にし、その検査結果は肝生検に近似する(16) 。スタディではMRI-PDFFは肝脂肪の評価で肝生検より優れ(17)、より良くNASHを評価できる非侵襲的な画像に基づくバイオマーカーとして臨床試験での利用が増えてきている(18)

 

 

最初の画像評価にどの検査を選択するかは放射線被曝、施設のキャパシティ、BMI、費用などに基づいて判断される。NAFLDを疑う全ての患者に画像検査を行わなければならない。いつ画像検査を繰り返すかは線維化のステージおよび進行のリスクによって決定される。NAFLが確認された患者ではその緩慢で非進行性の自然経過に基づいて3〜5年後に画像検査が繰り返される。NASHが確認された患者では線維化のステージに基づいて検査間隔が決められる

 

 

Risk stratification for NAFLD progression(19)

Low-risk profile(フォローおよびリスクを再評価)

 BMI<29.9kg/m2

 Age<40歳

 糖尿病およびmetabolic syndromeを示唆する所見なし

Noninvasive fibrosis estimates:

 Fib-4<1.30

 APRI<0.5

 NFS<-1.455

 Fibroscan<5kPa

 

Intermediate-risk profile(肝生検を検討)

 BMI ≧ 29.9kg/m2

 Age>40歳

 metabolic syndromeを示唆する複数の所見

Noninvasive fibrosis estimates:

 Fib-4 1.30 - 2.67

 APRI 0.5 - 1.5

 NFS -1.455 - 0.675

 Fibroscan 6 - 11kPa

 

High-risk profile(肝生検あるいはMR elastographyなどの肝硬変確定検査を検討)

 AST > ALT

 血小板<150000

Noninvasive fibrosis estimates:

 Fib-4>2.67

 APRI>1.5

 NFS>0.675

 Fibroscan>11kPa

  

Fib-4:Fibrosis-4 index(age x AST / PLT x square root of ALT)

APRI:AST-platelet ratio index(AST / upper limit of normal AST / PLT / 1000 x 100)

NFS:NAFLD fibrosis score(-1.675 + 0.037 x age + 0.094 x BMI + 1.13 x IFG/diabetes (yes=1, no=0) + 0.99 x AST/ALT ratio - 0.013 x PLT - 0.66 x Alb)

Fibroscan:超音波を利用して組織の弾性を評価する検査

 

 

 

NAFLDの患者において線維化を確認し、そのステージを決定する事は予後および管理の指標として重要である。また線維化を確認することによってNASHの診断が確定できる。NASHの患者での線維化のステージが長期予後の最も確かな指標となる

 

 

 

Staging of liver fibrosis

F0:no fibrosis

F1:portal fibrosis without septa(線維性隔壁)

F2:few septa

F3:numerous septa without cirrhosis

F4:cirrhosis

 

 

 

 

線維化の程度の非侵襲的な評価方法として様々な画像検査が開発されてきた

 

Fibroscan(ultrasound-based transient elastography)はlow-amplitude shear waveを使って肝臓のstiffnessを評価する(20)

 

MR elastographyは軽度から進行した線維化の鑑別により感度が高く、病理学的検査によく相関する(21)。しかし費用、技術および施設のキャパシティに依存するため利用が限られる

 

 

 

 

重症度の評価および生検判断のガイドとなるRisk scoring systemとbiomarkers

バイオマーカーとrisk scoring systemがNAFLDの非侵襲的な診断および線維化のステージングために開発されてきた。cytokeratin-18の分解産物、CK-18M30がアポトーシスの循環マーカーであり、NASHの同定マーカーとして最も研究がされてきた。初期のスタディでは感度・特異度が高いとされたが、後期のmeta-analysisでは単独のNASH予測マーカーとしては感度・特異度ともに十分でないと評価された(22)

 

 

様々なrisk scoring systemがNAFLDの重症度評価のためにつくられてきた。NAFLD fibrosis score、Fibrosis-4 index、AST-to-platelet ratio index、血清バイオマーカー(Enhanced Liver Fibrosis score、FibroMeter、FibroTest、Hepascore)などがある。これらのテストは進行した線維化があるかどうかの評価に適しているが、中等度の線維化の鑑別には有効ではない

 

上記の中で年齢、BMI、高血糖、血小板数、アルブミン、AST-to-ALT ratioを臨床データとして使うNAFLD fibrosis scoreが肝臓に関する予後予測に最も有効であるとされている(23)。NAFLD fibrosis scoreのlow cutoff score - 1.455におけるnegative predictive valueは93%、high cutoff score 0.676におけるpositive predictive valueは90%とされている(24)

 

 

 

肝生検

肝生検は限界があるものの未だNAFLDの診断および予後評価のgold standardである。NAFLDの診断が不明な時、あるいは他の慢性肝疾患の可能性がある場合は肝生検を行わなければならない。強く自己抗体陽性を認める場合などは自己免疫肝炎を生検によって除外する必要がある。非侵襲的検査が脂肪肝と脂肪性肝炎を鑑別できない場合は生検を行わなければならない。何故ならNASHはより積極的な治療を必要とし、肝硬変の場合は肝癌のスクリーニングおよびより密なフォローアップが必要となるためである。画像検査は肝鬱血や強い炎症と線維化を鑑別することに最適の検査ではないため、このような状態の場合は生検を行う必要がある。NASH肝硬変への進展のリスクを臨床因子(年齢、BMI等)、血液検査risk score(Fibrosis-4 index、AST-to-platelet ratio index)および非侵襲的線維化測定を使って評価する。進展リスクがintermediate-risk profileあるいはhigh-risk profileの患者は生検を考慮する必要がある。特にMR elastographyやFabroscanなどが利用できない場合などである(19)

 

 

 

 

治療

NAFLDの治療薬としてU.S. Food and Drug Administration(FDA)に承認されたものはまだないが、現在いくつかの治療薬が治験の様々な段階にある。初期の段階におけるNAFLD治療は、進行の阻害、病態の後退、およびNAFLD患者の第一死亡原因である心血管疾患などの合併症管理にターゲットが向けられる。NASH肝硬変に進行した患者においては合併症のスクリーニングおよび肝不全の予防・治療にターゲットが移行する

 

 

 

 

 

減量と身体活動

減量はNAFLDを改善させる主要な治療法である。肝臓の病理学的改善は減量する体重の量に直接比例する

9.3%の体重を減量することによって生検によって確定されたNASHの病理学的所見を大きく改善した(25)。また体重減少によってMR spectoscopyによって確認されたNAFLDの改善を認めた(26)

 

生活習慣への介入として身体活動の推奨を行わなければならない。小さなトライアルでは週3回の有酸素運動が体重減少を達成しない場合ですら内臓脂肪および肝臓脂肪を減らすことが確認された(5)

 

 

 

 

 

食事調節

どのタイプの食事がNAFLDの病理学的改善に最適かの議論が続いている

 

6週間のcrossover studyでは同カロリーの低脂肪・高炭水化物食に対し、Mediterranean diet(オリーブオイル、全粒穀物、野菜、ナッツ、果物、ヨーグルト、魚など)の方が体重減少に差がなかったにも関わらずインスリン抵抗性および肝臓脂肪の改善により有効であることが認められた(27)。他のスタディでは2週間の低炭水化物食の方がカロリーを減らした食事より、体重減少が同等であったにも関わらず、より肝臓脂肪の改善を認めた(28)。限られたデータでは飽和脂肪酸および高フルクトースコーンシロップ摂取を減らし、オメガ3脂肪酸の補足および中等量のコーヒー摂取によって肝臓脂肪および線維化に効果がある可能性が示唆されたが、前向き試験によるデータが必要である(5)

 

 

 

薬物治療

 

NAFLDの治療に承認された治療薬はないが、いくつかの薬剤が臨床試験において脂肪性肝炎の改善に有効性を認めている

 

減量薬

NAFLDの病理学的改善には少なくとも9%の体重減少を達成する必要がある。

今日最も多く研究されている減量薬は可逆的な膵・胃リパーゼ阻害剤のorlistatである。しかし大きなスタディでは体重減少がプラセボと同等であった。胆汁鬱滞、胆石、および稀な肝障害の副作用が認められFDAによって注意勧告が出されている(5)。他の減量薬は研究されていない、あるいは副作用によってトライアルが中断されている(5)

 

インスリン感受性改善薬

metforminはNAFLDに関連する肝酵素値を下げ、インスリン抵抗性を改善するが、有意な病理学的改善を認めないためNASHの治療薬としては推奨されていない

PIVENS trialにおいてpioglitazoneが肝細胞風船様腫大は改善しないものの、肝臓脂肪、炎症、インスリン抵抗性および肝酵素値を有意に改善した(29)。主な副作用は3〜5kgの体重増加で治験患者の60〜70%で認められた

 

Vitamin E

Vitamin Eは比較的安全で安価である。肝臓における活性酸素の産生を減らし、酸化ストレスを減少させる

PIVENS trialではpioglitazoneを投与されたグループでは認められなかった肝臓脂肪の病理学的改善のprimary end pointに到達した(29)。Vitamin Eは脳梗塞のリスクを下げる可能性がある一方で、出血性脳卒中および前立腺癌のリスクを高めるかもしれない(3)

 

Lipid management

高脂血症はNAFLDの患者でよくみられ、脂質低下薬剤、主にスタチンはその効果が研究されてきた。pilot studyとlarge-scale trials両方で中等度の効果が確認されているが、肝酵素値および肝臓脂肪の改善に関しては評価されていない(5)。Ezetimibeは動物試験とsmall pilot tiralで病理学的改善が認められているが、large-scale basisでは研究されていない(30)

 

Cytoprotective agents

胆汁酸であるursodeoxycholic acid(UDCA)の試験結果は混在している。large placebo-controlled trialではプラセボに比較し、UDCAを投与されたNAFLDを持つグループにおいて改善は認められなかった(31)。しかし、続くトライアルではUDCAをVitamin Eと併用した場合に肝臓脂肪と肝酵素値の改善が認められた。続くトライアルではUDCAのある程度の効果が認められたものの、原発性硬化性胆管炎の患者において死亡率の上昇が認められた(5)。よってルーチンでの投与は推奨されない

 

Obeticholic acid

farnesoid X-receptor agonistであるObeticholic acidはphase 2b randomized clinical trialにおいて、プラセボに比べNASH患者の肝臓病理学的所見(肝臓脂肪、炎症、線維化)の改善が認められた。副作用は投与量に依存する掻痒感と脂質異常であるが、脂質異常はスタチンへの反応を認めた(32)。phase 3 clinical trialが進行中である

 

Elafibranor

Elafibranorはdual peroxisome proliferator-activated receptor-α/δ agonistであるが、phase 2b trialにおいてNASHの改善、線維化進行の阻害、および心血管代謝の改善を認めた。しかし可逆的で軽度のクレアチニン上昇との関連を認めた(33)。現在phase 3 clinical trialが進行中である

 

Cenicriviroc

C-C chemokine receptor type 2 (CCR2)とtype 5 (CCR5)は肥満関連のマクロファージの脂肪組織および肝組織浸潤を介在し、また肝星細胞の活性化に関連すると考えられている。この過程が慢性炎症、インスリン抵抗性および、それに続く線維化の原因となる。Cenicrivirocはdual CCR2/CCR5 antagonistの経口薬でNAFLDの活動性を抑えることがマウスモデルで確認されている(34)

 

Selonsertib

アポトーシスシグナルであるregulating kinase 1(ASK1)はserine/threonine kinaseであるが、それが抑制される時炎症および線維化を改善することがNASHの動物モデルで確認されている。Selonsertibはこの選択的酵素である。phase 2 trialにおいてMR elastographyおよび生検によって評価されたfibrosis scoreを少なくとも一段階改善し、アポトーシスと壊死の血清バイオマーカーも改善することが確認された(35)。phase 3 STELLAR trialが進行中である

 

 

 

Advanced Clinical Trials中のNAFLDに対する薬剤

 

Vitamin E

Dosage:800 IU daily

Mechanism of Action:抗炎症作用

Trial Phase:3

Key Clinical Trials:PIVENS trial(8)

Trial Outcome:NASHの統計的有意差を認める病理学的改善

Side Effects/Contraindications:前立腺癌および出血性脳卒中リスクの上昇

 

Pioglitazone

Dosage:30mg daily

Mechanism of Action:PPAR-γ agonist、糖および脂肪代謝、血管への影響、抗炎症作用

Trial Phase:3

Key Clinical Trials:PIVENS trial(8)

Trial Outcome:脂肪肝、炎症、インスリン抵抗性、肝酵素値の改善、統計学的には有意差を認めないNASHの病理学的改善

Side Effects/Contraindications:体重増加(3-5kg)、心不全患者では避けるべき、閉経後骨密度減少、膀胱癌リスクの上昇

 

Obeticholic acid

Dosage:25mg daily

Mechanism of Action:Farnesoid X-receptor agonist

Trial Phase:3

Key Clinical Trials:FLINT trial(32)

Trial Outcome:線維化を進行させずNASH activity scoreの2 points以上の改善を伴う肝臓病理学的所見を改善

Side Effects/Contraindications:掻痒感、脂質異常

 

Elafibranor

Dosage:120mg daily

Mechanism of Action:Dual PPAR-α/δ agonist

Trial Phase:3

Key Clinical Trials:RESOLVE-IT

Trial Outcome:in progress

Side Effects/Contraindications:軽度の可逆的なクレアチニンの上昇

  

Cenicriviroc

Dosage:≧20mg/kg daily

Mechanism of Action:CCR2/CCR5 inhibitor

Trial Phase :3

Key Clinical Trials:AURORA

Trial Outcome:in progress

Side Effects/Contraindications:さらなるスタディによる評価待ち

  

Selonsertib

Dosage:20mg daily

Mechanism of Action:ASK1 inhibitor

Trial Phase:3

Key Clinical Trials:The ASK1 inhibitor Selonsertib in Patients with NASH(35)

Trial Outcome:画像および生検における1段階以上の線維化の改善

Side Effects/Contraindications:さらなるスタディによる評価待ち

 

NGM282

Dosage:3 or 6 mg subcutaneous injection

Mechanism of Action:Fibroblast growth factor-19 agnonist

Trial Phase:2A

Key Clinical Trials:NGM282 for Treatment of NASH(36)

Trial Outcome:NASH患者の肝臓脂肪の急速で有意な減少

Side Effects/Contraindications:下痢、腹痛、嘔気

 

 

 

 

減量手術

減量がNASHの最も効果的な治療である。食事および運動にて少なくとも9%の減量を達成できない患者において減量手術が考慮される。randomized controlled trialは行われていないが、多くのスタディで60〜80%の患者において線維化の改善を含む著しいNASHの改善が認められている(2)。ただ代償性および非代償性肝硬変の患者においては減量手術を受けた場合死亡率の上昇が認められた(37)

 

 

NASH肝硬変

20%以上のNASH患者が肝硬変に進展する。そのうち45%の患者が10年以内に非代償性肝硬変を発症する(3)。診断時に上部内視鏡にて食道静脈瘤のスクリーニングを行わなければならない。6ヶ月毎に非代償性肝硬変の症状・所見、血液検査にて肝臓合成能(INR、アルブミン、ビリルビン)、および肝癌のスクリーニングのため腫瘍マーカーと併用して画像検査を行う必要がある

 

 

肝移植

NASH肝硬変は現在米国において肝移植適応の第二番目に多い原因となっている(6)。患者が非代償性肝硬変を発症したら移植チームに紹介しなければならない。肥満や他の合併症などにより、移植待機中に非代償性の症状を発症するリスクが高く、また移植の手技も技術的に困難であることが多い。これらの要素などにより移植後の合併症の頻度も高く、graft lossや移植後30日死亡率が比較的高い(2)。しかし移植1〜3年後の死亡率は他の原因による移植患者と同等となる。多くの患者が移植後5年以内に脂肪肝の再発を認めるが、graftが肝硬変になるのは5%だけである(38)。最近のスタディでは肝移植と同時にsleeve gastrectomyを受けた患者は効果的な体重減少と移植後のgraftの脂肪肝化や糖尿病などの代謝性合併症の頻度が低くなることが確認された(39)

 

 

モニタリング

全てのNAFLD患者は超音波、CT、MRIなどの画像検査による評価を行う必要がある。線維化の評価のため画像検査を繰り返さなければならない。これらの患者のモニタリングに関するガイドラインはないが、筆者たちはNAFLの患者に対し6ヶ月毎に肝酵素値を評価し、5年毎に超音波による画像評価を行なっている。血算を毎年行いfibrosis risk scoreを計算する。risk stratificationは専門家紹介のタイミングおよびフォローアップの強度を決定することに役立つ。

NASH患者ではlow-grade fibrosis(stage 1-2)の時は6ヶ月毎に肝酵素を測定、3 〜5年毎にelastographyによる線維化の再評価を行っている。もし線維化の進行が認められれば、再評価の間隔を1〜2年に短くする。肝硬変の患者では他の原因による患者と同様にスクリーニングおよび治療を行う

 

 

予後

多くのNAFLD患者(約80%)はNAFLで進行を認めず、肝臓に関して良好な経過をたどる。NASHを発症するのは20%以下の患者で、その10〜20%の患者が肝硬変に進展する。そのうち45%が10年かけて非代償性肝硬変となり、7%が6.5年で肝癌を発症する(5)。非代償性肝硬変の患者で最も多い症状は腹水であり、最も重要な死亡予測因子は腎不全である(40)

 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

6 November 2018

 

Clostridioides difficile Infection

 

1978年までにClostridioides difficile(以前のClostridium difficile)が抗菌薬に関連しておこる下痢のもっとも多い原因として確立された(1)

 

 

2011年の米国におけるC difficileの発生数はおよそ453000、それに関連する死亡数は29300であった(2)

 

 

C difficile感染の発症数、重症度、死亡数の上昇はribotype 027株(以前のNAP1/BI/027)の流行に大きく関連しており、その株は2000年初期に現れ、結果カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおいてoutbreakが認められた(3, 4, 5)

 

この株はfluoroquinoloneに高い耐性を持ち、以前C difficileでは多くなかった二元毒素を産生し、またtoxin Aおよびtoxin Bも他の株に比べ非常に多く産生する(15〜20倍)(4)

 

この株は周産期の女性や子供を含むリスクの確立されていない人への市中感染にも関連が認められている(6)

 

2007年から2010年の間イギリスにおけるribotype 027の有病率が55%から22%へと大きく減少した。これはfluoroquinolone使用の減少に付随しており、その減少がC difficileの発生率および死亡率の減少に大きく関連すると考えられている(7, 8)

 

 

他の株ribotype 078の発生も報告されており、この株はribotype 027と同等の重症度を持ち、若いpopulationへ感染し、より市中感染に関連している(9, 10)

 

 

 

 

予防

C difficileの人から人への伝染は糞口経路で起こる。人との直接の接触、汚染された環境・器具への暴露、colonizeされた医療従事者の手への接触などを介して獲得される(11)

 

 

感染リスクは入院患者の方が非常に高いが、人口10万人に対し51.9件の市中感染も認められている(6)

 

 

医療関連でcolonizationされた者および感染者への暴露が最も多い市中感染の原因と考えられている。限られたスタディではC difficileの汚染が確認された外来における医療環境も市中の感染源であることが示唆されている(12, 13)。スタディでは市中C difficile感染者のおよそ82%が近日に外来医療施設を訪れていたことが確認されている(13, 14)

 

 

12週間以内に救急外来で治療を受けたことも市中感染に大きく関連することが確認されている(抗菌薬治療を受けたかに依存)(13, 14)

 

 

家庭環境における人、ペット、農場家畜の間での伝染も記録されている(15, 16)

 

 

売られている肉や野菜からの菌の分離も報告されている(17)が、いずれの製品も市中感染のリスクとしては確認されていない(13)

 

 

C difficileは芽胞を形成し胃内の酸性環境でも生存できる

 

 

無症候性colonizationは急性期病院の患者の3〜18%で認められ、その獲得は入院期間の長さに強い関連性を示している(18)

 

 

長期施設入居者の4〜20%が菌を保持している(19)

 

 

outbreak時には長期施設入居者における無症候性colonization率は51%にまで登ることが報告されている(20)

 

 

市中におけるcolonization率はおよそ2〜10%とされている(18)

  

 

colonizationが確立されると、特定の因子によって病気の発症が促される

 

 

抗菌薬による腸内菌バランスの崩壊が最も多い原因であり、投与期間の延長および複数の抗菌薬使用がリスクを高める

 

 

特定の抗菌薬への暴露が耐性株の選別を促し、C difficile流行の原因となる。過去のclindamycin耐性株("J strain")のoutbreakは主にclindamycinの使用によってもたらされ(21)、ribotype 027の発生は主にfluoroquinoloneの使用に起因している。およそ全ての抗菌薬が腸内菌バランスの崩壊に対するリスクを有しているが、C difficile感染に関連している他の抗菌薬としては第三・第四世代cephalosporinおよびcarbapenemがある (5)

 

 

化学療法治療薬も同様の影響を持つかもしれない(22)

 

 

プロトンポンプ阻害剤やH2受容体ブロッカーもある役割を果たしているとのデータも報告されているが、依然議論は続いている(5, 23, 24)

 

 

手術、浣腸、便軟化剤、経腸栄養などの消化管の操作も起因するファクターであるとの報告もある(25, 26, 27)

 

 

好中球減少や進行したHIV感染などの免疫に関わる特定の状態も発症に起因するかもしれない。また高齢、衰弱、重篤な他の疾患への罹患などもリスク上昇に関連するとされている(5, 28)

 

 

 

感染を減らす方法は? 

C difficile予防の最も重要な手段は抗菌薬使用の制限、特にリスクの高い特定のクラスの抗菌薬使用を控え、手袋、ガウン、手指衛生などの感染予防策を遵守することである。さらに日々環境の清掃および消毒を行うことも大切である

 

 

医師は微生物学者、感染症専門家、薬剤師、感染予防専門家、病院疫学者、病院管理者共同でデザインされた抗菌薬管理プログラムへ参加しなければならない。リスクの高い抗菌薬使用の制限から医師の抗菌薬治療のモニターおよびフィードバックまでの様々な方法が取られる。プロトコールでは尿路感染症や肺炎などの特定の感染症や状態に対する抗菌薬使用の改善にフォーカスすることも重要である

 

 

大きな教育病院の老年科サービスにおいて21ヶ月2期間で行われたprospective controlled, interrupted time-series studyでは適切なnarrow-spectrum抗菌薬使用へのフィードバックを含む抗菌薬処方プロトコールの導入の前後におけるC difficileの感染率が評価された。抗菌薬ポリシー導入後では、C difficile感染発症の有意な減少が認められた(incidence rate ratio, 0.35; P=0.009)(29)

 

 

市中感染の増加も認められるため、外来における抗菌薬使用もC difficile感染へ大きく寄与すると考えられることから、そのプロトコール使用も感染予防のターゲットとなるかもしれない

 

 

C difficileに感染した入院患者では下痢が止まった48時間後まで個室に隔離しなければならない(5, 30)

 

通常感染予防には患者接触の前後における厳格な手指衛生、接触予防にはC difficile感染患者のケアあるいは体液への暴露の可能性がある場合は廃棄できる手袋、ガウンを使用することが含まれる

 

 

石鹸による手洗いの方がアルコールによる手指消毒よりもC difficileのアルコールに高い耐性を持つ芽胞の除去に対し効果が高いことを複数のスタディが示している(31, 32)

 

 

しかし、アルコール消毒と比較して、石鹸による手洗いの方がC difficileの感染率を減らすことは証明されていない(33, 34)。さらにはアルコールが他の細菌に対して通常認める3〜4-log reductionが、石鹸を使った手洗いではC difficile芽胞に対する同等の減少が達成されない(35)。したがって、手袋の使用がC difficile伝染予防の最も重要な手段である。Infectious Diseases Society of America(IDSA)とSociety for Healthcare Epidemiology of America(SHEA)のガイドラインでは手袋を破棄した後の石鹸による手洗いを、アルコール消毒よりも推奨している(5)

 

 

 

 

 

診断 

以下のリスクファクターを確認しなければならない

 

・抗菌薬使用(clindamycin, cephalosporin, carbapenem, fluoroquinoloneらが最も強く関連するが、他の全ての抗菌薬もリスクとなる。また投与期間と抗菌薬の投与数でリスクが上昇する)

・抗腫瘍薬使用

・入院あるいは長期施設滞在(入院あるいは長期施設滞在歴のない市中感染も頻度が増えている)

・高齢

・基礎疾患(悪性疾患、腎不全、衰弱)

・消化管操作(手術、経腸栄養、浣腸、(PPI/H2Bも関連するかもしれない))

 

 

 

C difficileによる抗菌薬関連性下痢は抗菌薬投与中、あるいは投与後すみやかに発症することが一般的であるが、発症が抗菌薬投与の数ヶ月後まで認められる場合もある。三日以上入院している患者ではC difficileが腸管病原菌として最も多くなる(36)

 

 

腹痛を伴う、あるいは伴わない下痢(24時間以内に3回以上)を認める患者、特にリスクファクター(最近の抗菌薬使用、入院、高齢など)を有し、他の明らかな原因(48時間以内の下剤使用など)を認めない場合はC difficile感染を考慮する必要がある。嘔気、嘔吐、発熱はよく見られるが、認めない場合もある。身体所見は感染の期間および重症度に依存して変わる

 

 

 

Clostridioides difficile感染の臨床所見と合併症  

Asymptomatic carrier

下痢:なし

他の症状:なし

身体所見:正常

下部消化管内視鏡および他の所見:正常

 

Simple antibiotic-associated diarrhea

下痢:軽度

他の症状:全身症状は通常認めない

身体所見:正常

下部消化管内視鏡および他の所見:正常

 

Early colitis 

下痢:多量

他の症状:嘔気、食思低下

身体所見:軽度発熱、軽度の腹部圧痛を認める場合もある

下部消化管内視鏡および他の所見:非特異的な発赤

 

Pseudomembranous colitis 

下痢:多量

他の症状:嘔気、倦怠感、腹部不快

身体所見:発熱(時に高熱)、腹部圧痛、腹部膨満

下部消化管内視鏡および他の所見:偽膜形成(隆起した黄色プラーク)、白血球上昇(左方移動を伴い50000/μL以上かもしれない)

 

Fulminant colitis

下痢:通常多量で重度(イレウスあるいはtoxic megacolonでは欠如する場合もある)

他の症状:嘔気、腹部不快あるいは腹痛

身体所見:toxic appearance、発熱(通常高熱)、腹部膨満、圧痛、腹膜刺激兆候

下部消化管内視鏡および他の所見:重篤な患者では下部消化管内視鏡は禁忌、類白血病反応(50000/μL以上)、放射線画像では大腸拡張、腸管壁肥厚あるいは穿孔などが見られるかもしれない

 

 

 

 

診断検査として、cell culture cytotoxicity neutralization assay(CCNA)、toxigenic culture、toxin A and B enzyme immunoassays(EIAs)、nucleic acid amplification tests(NAATs)、glutamate dehydrogenase (GDH)などがあるが、どの検査が最も適しているとされるものはない

 

CCNAは感度94-100%、特異度97%であるが、結果が出るまでに24〜48時間かかり、またその検査にはtissue culture laboratoryが必要となるが、ほとんどの病院には存在しない

 

Toxigenic cultureはCCNAよりも感度が高いが、incubationに少なくとも48時間はかかり、かつ分離された菌がtoxigenic strainかどうかの確定にさらなる検査が必要となる

 

多くのcommercial toxin EIAsが利用可能であるが、感度がキット毎に大きく異なる

 

いくつかのNAATsが利用可能であり、toxin EIAsより感度が高い。しかしpositive predictive valueが検査前確率に依存して低いかもしれない(5)

 

Enzyme-linked immunosorbent assays for GDHは非常に感度が高いが特異度は高くない。それはGDHがtoxigenic strainとnontoxigenic strainの両方に認められるためである

 

C difficile感染診断にmultistep algorithmの使用を推奨している機関もある(GDH plus toxin EIA,  GDH plus toxin EIA with NAAT confirmation if results are discordant, NAAT plus toxin EIA)(5)

 

適切な患者(3回以上の下痢、24時間以内の下剤使用なし、等)へのみ検査が限られるような臨床アプローチではNAATのみ、あるいはmultistep algorithmが、toxin EIAのみの検査よりも推奨される。C difficileの検査基準が設けられてない場合には、toxin EIAがmultistep algorithmの一つとして、NAATのみの検査よりも推奨される(5)

 

 

 

 

便検査

Cell culture cytotoxicity neutralization 

Detects:主にtoxin B(toxin Aもある程度検知)

Advantages:感度と特異度が非常に高い

Disadvantages:tissue culture facilityが必要

 

Toxin enzyme immunoassay

Detects:toxin A and B

Advantages:迅速(2-6時間)、簡易、特異度が非常に高い

Disadvantages:他の検査ほど感度が高くない

 

Glutamate dehydrogenase enzyme immunoassay

Detects:glutamate dehydrogenase(bacterial enzyme)をtoxigenicとnontoxigenicのC difficile両方で検知

Advantages:迅速、低価、簡易、感度が高い

Disadvantages:特異度が低い

 

Toxigenic culture

Detects:toxigenic C difficile

Advantages:感度が高い、strain typingが可能

Disadvantages:嫌気性培養が必要、2-5日要する、特異度が低い

 

Nucleic acid amplification test

Detects:C difficile toxin genes

Advantages:感度が高い

Disadvantages:特異度が低い

 

 

 

他の診断検査としてはsigmoidoscopyあるいはcolonoscopyによる直接の観察がある。黄色の粘膜プラークあるいは”偽膜”の存在はC difficile関連下痢の可能性を高く示唆する。toxin testが陰性の場合に下剤処置なしでのflexible sigmoidoscopyで十分に診断が確定できる場合が多い(37)。しかし、sigmoidoscopyはcolonoscopyなら診断可能なより近位の病変を見逃す場合がある(38)。また直接観察することの限界としてはC difficile感染では重症感染マーカーである偽膜を形成しない場合も多くあることであり、その場合はtoxin testingあるいは他の検査によってのみ診断する必要がある

 

 

 

 

他の検査も診断を補助したり、重症度や合併症の評価に有用であるかもしれない

 

1病院にて12年間1721人のC difficile感染患者を評価したretrospective studyより白血球上昇(20000/μL以上)あるいはクレアチニン上昇(2.0mg/dL以上)の場合の30日死亡率が25.5%であったと報告されている(39)

 

C difficile感染にて集中治療を要した患者において評価されたretrospective observational cohort studyでは乳酸値が5mmol/L以上であることが30日死亡率の独立した予測因子であるとしている(40)

 

C difficile感染では画像検査において腸管粘膜肥厚など腸炎を示唆する所見が認められるかもしれない(41)。またtoxic megacolonや穿孔などの合併症も検知できるかもしれない

 

 

同じ下痢のエピソード中(7日以内)に便検査を繰り返すことは避けるべきである。もし治療が成功して下痢が止まった後のC difficileの再発を疑う場合は、検査の中にtoxin検知検査を入れる必要がある。経験的治療は推奨されない。また無症状の患者に検査をすべきではない

 

 

 

血液検査および他の検査 

Complete blood count

感度:なし

特異度:なし

comments:重度の患者では白血球50000/μL以上になるかもしれない

 

Blood urea nitrogen and creatinine

感度:なし

特異度:なし

comments :重症の場合は脱水やアシドーシスをきたすかもしれない

 

Cell culture cytotoxicity neutralization assay

感度:94-100%

特異度:97%

comments:tissue cultreは通常の病院検査室では利用できない、結果に24〜48時間要する

 

Enzyme-linked immunosorbent assay

感度:43-99%

特異度:84-100%

comments:広く利用可能、迅速

 

Glutamate dehydrogenase

感度:88-100%

特異度:76-97%

comments:広く利用可能、迅速

 

Nucleic acid amplification tests

感度:77-100%

特異度:91-100%

comments:広く利用可能、迅速

 

Culture

感度:100%

特異度:100%(toxin産生が他の試験で確認された場合)

comments:数日要する

 

Plain abdominal films

感度:なし

特異度:なし

comments:toxic megacolonを示唆する大腸拡張や穿孔を示唆するfree airが認められるかもしれない

 

Computed tomography

感度:なし

特異度:なし

comments:腸管粘膜肥厚、toxic megacolonを示唆する大腸拡張、穿孔を示唆するfree airが認められるかもしれない

 

Lower endoscopy for C difficile

感度:なし

特異度:なし

comments:C difficileを強く疑う偽膜が認められるかもしれない

 

 

 

 

 

 

治療

もし他の状態からの回復がリスクに晒されないのであればC difficile感染の全ての患者において抗菌薬中止を検討すべきである。軽度の下痢、正常あるいは正常に近い白血球数、正常クレアチニン値で重症感染あるいは合併症のリスクが少ない場合は抗菌薬中止のみで回復するかを数日間観察してよいかもしれない

 

10年間のprospective studyで908人のC difficile感染患者を評価した結果、135人(15%)が抗菌薬の中止のみで改善を認めた(42)

 

 

抗菌薬をすみやかに中止することに加え、輸液投与および電解質異常を補正する必要がある。治療抗菌薬の腸管内での拡散およびtoxinの排泄を障害するため蠕動運動抑制剤は避けるべきである

 

IDSA/SHEAガイドラインが改定され、成人における初回C difficile感染ではmetronidazoleではなく、vancomycinあるいはfidaxomicinを投与することが推奨されている(5)

 

重症の定義は様々であるが、IDSA/SHEAガイドラインのminimum criteriaでは白血球数が少なくとも15000/μL以上あるいはクレアチニン値が1.5mg/dL以上とされている(5)

 

軽症、中等症、重症(劇症ではない)の場合はvancomycin 125mg経口1日4回、あるいはfidaxomicin 200mg経口1日2回、それぞれ10日間投与が推奨される

 

もし上記のいずれの薬剤も利用できない、あるいは禁忌の場合はmetronidazole 500mg経口1日3回10日間投与が重症でない時のみ代替薬として使用可能である。ただしmetronidazoleを頻回に使用、あるいは投与期間が延長する場合は不可逆的な神経毒性のリスクがあることを留意しなければならない

 

 

劇症の場合(血圧低下、ショック、イレウス、toxic megacolon(注1))はvancomycin 500mg1日4回を経口、あるいは経鼻胃管投与する必要がある。イレウス、あるいは他の原因で薬剤の腸管内散布が障害される場合はvancomycin 500mgを生食100mlに入れ6時間毎に直腸投与を行うことを考慮しなければならない。metronidazole 500mg静注8時間毎投与を劇症型に、特にイレウスを伴っている場合は追加しなければならない(5)

 

 

metronidazoleがC difficile感染治療の主要薬剤の一つとして使用されてきたが、2000年以来、いくつかのrandomized placebo-controlled trialsにおいて経口vancomycinの方がより有効であることが確認された。150人の軽症あるいは重症の感染を評価した一つのスタディでは、全体としての治癒率がvancomycin 97%であったのに対し、metronidazole 84%であった(P=0.006)。重症感染においてはvancomycin 97%、metronidazole 76%であった(P=0.02)(43)

 

 

Fidaxomicinが2つのrandomized placebo-controlled trialsにおいてvancomycinと比較評価された。最初のスタディでは臨床的治癒率においてfidaxomicinがvancomycinに対し非劣勢であることが確認された(modified intention-to-treat analysis(88% vs 86%), protocol analysis(92% vs 90%))(44)。再発感染に対しvancomycin で治療された患者に比べfidaxomicinによって治療された患者の数の方が有意に少なかった。二番目のスタディでも臨床的治癒率においてfidaxomicinがvancomycinに対し非劣勢であることが確認された(modified intention-to-treat analysis(88% vs 87%), protocol analysis(92% vs 91%))(45)

 

vancomycinに類似するglycopeptideであるteicoplaninがvancomycinと同等あるいはより有効であることが示されたが、米国では利用できない(46)

 

nitazoxanide,  bacitracin,  fusidic acid,  tigecycline,  rifampin,  rifaximinなども研究されているが、データは限られている

 

 

 

治療戦略

<1> 全ての患者において可能なら抗菌薬の中止あるいは投与の修正を行う 

<2> 重症度の評価(劇症か、そうでないか)(注2)

<2-1> 劇症の時

vancomycin 500mg 1日4回経口あるいは経鼻胃管投与

(イレウスの場合は直腸投与を検討)

かつ metronidazole 500mg 静注8時間毎

hemodynamic support、外科的評価(subtotal colectomyを検討)

感染症科・消化器内科コンサルトを検討

 

<2-2> 劇症でない時(軽症、中等症、重症)

<2-2-1> 初回感染

vancomycin 125mg経口1日4回 あるいは

fidaxomicin 200mg経口1日2回

軽症あるいは中等症の時で上記薬剤使用不可の時   

metronidazole 500mg経口1日3回

      

便の回数、体温、腹部診察を毎日評価(白血球数も必要に応じて) 

・改善を認める場合は10日間抗菌薬治療 

・改善を認めない場合は他の疾患の評価、投与量の最大化および投与方法の最適化、投与期間を14日間に延長することを検討(特にmetronidazoleの場合)

 

<2-2-2> 2回目の感染(初回の再発)

vancomycin 125mg経口1日4回10日間投与(metronidazoleが初回感染で投与された時)

あるいは

vancomycin漸減投与(初回感染でstandard regimenが使用された場合)

125mg経口1日4回10〜14日間、続いて

125mg経口1日2回1週間、続いて

125mg経口1日1回1週間、続いて

125mg経口2〜3日に1回2〜8週間

あるいは

fidaxomicin 200mg経口1日2回10日間(初回感染でvancomycinが投与された時)

 

<2-2-3> 3回目以降の感染

vancomycin漸減投与

あるいは

vancomycin125mg経口1日4回10日間、続いてrifaximin400mg経口1日3回20日間

あるいは

fidaxomicin200mg経口1日2回10日間

あるいは

fecal microbiota transplantation(通常、再発のエピソードが3回以上の時) 

      

 

 

 

軽症から重症の初回Clostridioides difficile感染治療薬  

Vancomycin

Dose:125mg経口1日4回10日間

Side effects:まれ、vancomycin耐性腸球菌を誘導、腎毒性、耳毒性

Benefits and Notes:軽症から重症に投与推奨、劇症型および再発では異なる投与量

 

Fidaxomicin

Dose:200mg経口1日2回10日間

Side effects:ほとんど吸収されない

Benefits and Notes:軽症から重症の初回および再発感染で推奨

 

Metronidazole

Dose:500mg経口1日3回10日間

Side effects:少ない、痙攣や末梢神経障害、アルコールと併用でdisulfiram-like reaction、味覚障害

Benefits and Notes:軽症から中等症の代替薬、静注薬は劇症あるいは経口投与ができない患者に使用

 

 

 

劇症Clostridioides difficile感染治療薬

Vancomycin with metronidazole

Dose:vancomycin 500mg経口あるいは経鼻胃管投与1日4回(イレウスの場合は経直腸投与を検討)、metronidazole 500mg静注8時間毎

Side effects:上記に同じ

Benefits and Notes:劇症C difficile感染は血圧低下、ショック、イレウス、toxic megacolonとして定義される

 

 

 

Clostridioides difficile感染にactivityを有する他の薬剤

Nitazoxanide

Dose:500mg経口1日2回10日間

Side effects:消化器症状

Benefits and Notes:vancomycinやmetronidazoleとの効果の比較検討が限られている

 

Rifaximin

Dose:400mg経口1日3回10日間

Side effects:ほとんど吸収されない

Benefits and Notes:再発感染に対するvancomycin投与後の追加薬としてのデータは限られている、高度の抵抗性獲得の可能性 

 

Tigecycline

Dose:50mg静注1日2回10日間

Side effects:消化器症状

Benefits and Notes:効果をサポートするデータはcase reportやsmall case seriesに限られている

  

Bacitracin

Dose:25000 IU経口1日4回10日間

Side effects:腎毒性や神経毒性のリスク、消化器症状や消化吸収不良

Benefits and Notes:metronidazoleやvancomycinに劣る、臨床エビデンスは限られている

  

 

 

 

 

モニター

発熱の改善、排便回数の減少、便の性状の改善、腹部所見の正常化、脱水からの回復、検査所見や白血球上昇の改善などをフォローする必要がある。症状が改善した場合、便の再検査をする必要はない(症状が改善した後でも通常C difficileの検査は陽性となる)。無症候性キャリアに対して治療を行う必要はない(5)。治療に成功し下痢が止まった患者が症状を再発する場合は再度便検査を行う必要がある

 

 

Probiotic

いくつもの形態のprobioticsがC difficile腸炎の治療薬として提案されてきた。前提として非病原性の酵母や細菌が消化管に再生息してC difficileの成長を抑制するとされてきたが、まだ結論は出ていない

 

C difficile感染に対するprobioticsの効果を評価したsystematic reviewによって大きさと質が見合うと認められたスタディは4つだけであった。そのうちの一つの試験ではvancomycin治療にsaccharomyces boulardiiを追加投与した場合、有意差をもって再発率が低下したと報告されているが、著者はprobioticsを推奨するにはエビデンスが不十分であると結論し、またexpert panelによって出されたガイドラインでは免疫不全患者に対するS boulardii fungemiaの投与に対する注意を警告している(47)

 

抗菌薬治療を受けている患者のC difficile感染予防にprobiotics投与を推奨するガイドラインは存在しないが、いくつかのmeta-analysesでは非免疫不全者で重度に衰弱していない患者に対する短期の投与は安全で効果的かもしれないと報告している(48, 49)。一つのスタディでは入院患者でC difficile感染のリスクの高い患者に対してprobiotics投与の考えられる利益とリスクを説明すべきであるとしている(48)

 

 

初期治療に反応しない場合

改善を認めない、または最初の改善の後に悪化を認める場合は他の疾患あるいは併発疾患の有無、あるいは他の原因を再評価しなければならない(持続する発熱や白血球上昇は他の感染症合併の可能性、治療抵抗性の下痢は経腸栄養に起因する場合など)。他の原因や診断が確認されない場合は抗菌薬の投与量および投与方法を最大化あるいは最適化する必要がある。vancomycin経口投与が大腸に到達することを阻害するイレウスがある場合はmetronidazole静注投与やvancomycin経直腸投与を検討する必要がある。特にmetronidazoleで治療されている場合は投与期間を14日間に延長する必要があるかもしれない。劇症C difficile感染でvancomycinとmetronidazoleに反応しない場合はtigecyclineやimmunoglobulin静注などが使われる場合があるが、データは限られている(5)。外科的治療が有効な場合もある

 

 

入院 

重症、合併症、あるいは外来治療が適切でない時、脱水、内服薬摂取不能、腹膜炎を示唆する所見、toxic megacolon、sepsis、あるいは他の合併症などを有する時は入院治療の適応となる。あるいは重症のリスクがある、クレアチニン上昇、類白血病反応、高齢などの場合も入院が考慮される

 

 

ICU入院

重症、septic shock、toxic megacolon、腹膜炎、血圧低下を伴う重度の脱水、臓器障害などを認める状態不安定な時はICU入院が必要になる

 

 

外科的治療 

腸管穿孔の場合は外科的治療が必要になる。またtoxic megacolon、急性腹症、septic shock(特に乳酸値が上昇)などを認める患者では外科的治療による利益があるかもしれない。全ての内科的治療に失敗した場合も外科的治療が有効であるかもしれない。C difficile感染の外科的治療として現在推奨されているのはsubtotal colectomyである。より侵襲が少なく大腸を保存する方法としてvancomycin順行性洗浄を併用するloop ileostomyが代替手段としてあるが、よりデータが必要である(5)

 

 

再発時の対応

初期治療に反応した後に症状を再発する場合は感染の再発、あるいは他の株による新たな感染であることが考えられる。いずれにせよ診断および治療は同じである。IDSA/SHEAのガイドラインでは初回再発時の治療オプションは初回感染時の治療に依存するとしている(5)。初回感染時にmetronidazoleで治療された場合はvancomycin経口10日間投与が推奨される。初回感染時にvancomycin経口10日間投与が行われた場合はvancomycin漸減投与あるいはfidaxomicin経口10日間投与が推奨される。

 

2回目以降の再発感染ではvancomycin漸減投与、vancomycin standard courseの後にrifaximinを追加投与、fidaxomicin standard courseなどが行われる。しかしこれらの治療法のエビデンスは限られている

 

fecal microbiota transplantation(FMT)は適切な治療後に少なくとも3回以上の再発を認める患者に推奨される。健常ドナーからの糞便を注入投与することで難治性感染の治療に成功したとのcase reportsやsmall case seriesがある(50, 51)。2013年から2016年にかけて少なくとも5つのrandomized controlled trialsが発表された。その中でvancomycinとFMT、FMT自家移植、凍結した糞便 vs 新鮮な糞便、colonoscopy vs 経鼻胃管による投与、などが評価された(52, 53, 54, 55, 56)。多くのrandomized studiesで報告されたFMTの効果は非randomized reportsに比べ低かった。しかし、これは患者選択や以前の抗菌薬投与などのファクターに起因しているかもしれない。現在のデータではFMTは短期間では安全で、軽度から中等度の多くのadverse eventsはself-limitedであるとされている。今日までに報告されているFMTの感染合併症は稀であるが、長期の感染あるいは非感染合併症は不明である

 

 

human monoclonal antibodyであり、C difficile toxin Bに結合するbezlotoxumabが18歳以上でC difficile治療を受けている患者の再発リスクを減らす目的に使用することが米国において2016年に承認された(57)。bezlotoxumabは静注投与で、C difficile治療の抗菌薬を投与中にのみ併用投与されなければならない

 

 

 

注1    

Toxic megacolon診断基準(UpToDate)

・レントゲン上大腸拡張所見(大腸最大径6cm以上)

 かつ

・下記のうち少なくとも3つ以上

  38度以上の発熱

  脈拍120/分以上

  neutrophilic leukocytosis>10500/μL

  貧血

 かつ

・下記のうち少なくとも1つ以上

  脱水

  意識障害 

  電解質異常

  血圧低下

 

 

注2    

Clostridioides difficile感染重症度(expert opinion)(UpToDate)

・非重症感染:白血球15000/μL以下かつクレアチニン1.5mg/dL以下

・重症感染:白血球15000/μL以上かつ / あるいはクレアチニン1.5mg/dL以上

・劇症感染:血圧低下、ショック、イレウス、megacolon

 

 

 

 

 

 

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Parkinson病

 

Parkinson病はアルツハイマー病に次いで二番目に多い神経変性疾患である(1)。長らく運動系の障害と考えられてきたが、感覚、感情、認知、自律神経系にも影響する非運動系の症状も有する

 

年齢とともに罹患率が増え、65歳以上の1%、80歳以上の3%で疾患が認められる(2)

 

原因はよく理解されていないが、遺伝的素因と環境要因に影響されていると考えられている。β-glucocerebrosidaseをコードしている遺伝子の変異は最も大きい遺伝的リスクファクターである(オッズ比>5)(3)。環境的リスクファクターとしては農薬への暴露歴、井戸水の摂取、農業従事、頭部外傷歴などがある(4)

 

 

 

Diagnosis

 

Parkinsonismとはbradykinesiaと安静時振戦あるいはrigidityを認める臨床症状を表した言葉である(5)。ParkinsonismはParkinson病、あるいは非典型的神経変性Parkinsonian disordersから神経変性疾患でない二次的な原因までを含む病的な状態によって起こされるものである

 

Parkinson病では振戦、bradykinesia、rigidityが片側から始まり、病期の進行とともに反対側へも広がるが、病期の全体を通して症状の非対称性は保たれる(5)

 

振戦の振動数は3〜7Hz(1Hz:1秒あたり1回)で安静時に認められる。上肢により顕著であるが、下肢、顎にもみられる。安静時振戦は手をいっぱいに広げたその数秒後に遅れて認められるが、essential tremorではその直後から認められる違いがある(6)

 

bradykinesiaは動作全体が遅くなること、反復運動疲労が特徴である。多くの患者がbradykinesiaを筋力低下、気だるさ、倦怠感と表現する。表情が乏しくなる、ボタンやタイピングなどの細かい動作が困難になる、書く字が小さくなる(micrographia)、寝返り、椅子から立ち上がったり、車から出ることが困難になる、歩幅が短くなる、足を引きずる、などの症状として現れる

 

rigidityは関節の受動運動に対する抵抗性として認められる。これは運動の速度や方向に依存しない(lead pipe rigidity)。時折cogwheelingとして知られる歯車様の抵抗を認める場合もあるが、この症状は一般的でも特異的でもない(5)。rigidityは体のどの部位にも認められる可能性があり、stiffnessや疼痛の原因となる

 

歩行やバランスの変化も認められる。典型的なParkinson病の歩行は短い歩幅、遅いペース、方向転換に複数回のステップを要する、ねこ背姿勢、腕振りの減少、等である。軽度の不安定性は早くから認められるが、著明な不安定性や初期5年以内での転倒は他の疾患の可能性を考慮する必要がある(4, 5)

 

 

医師は安静時振戦、動作緩慢、こわばり、歩行やバランスの変化を問診する必要がある。また表情の変化、声の大きさの低下(hypophonia)、書く字が小さくなること(micrographia)、そして、嗅覚の変化、便秘、起立時の立ちくらみ、抑うつ気分、不安、記憶低下、睡眠の変化などの非運動系の症状も確認する必要がある(7)

 

 

夢をみている間の通常の筋力麻痺が欠如し、夢を動作にうつしてしまうrapid eye movement sleep behavior disorderについても確認する必要がある。この症状は夢をみている間に叫んだり、蹴ったり、殴ったりする、と家族から報告されることが多い。この症状はParkinson病と診断される数年から十数年前まで先行して認められる場合がある(8)

 

Parkinsonismの原因となる薬剤の服用歴も確認する必要がある。抗精神薬(quetiapineとclozapineは除く)、ドーパミン抑制性の制吐剤、valproic acid、lithiumなどである(9)。家族歴、頭部外傷歴、農薬暴露歴も聞く必要がある

 

 

 

 

Parkinson病診断基準

 

Mandatory criteria

Parkinsonismはbradykinesiaと以下のうち一つを持つものとして定義される

・安静時振戦

・rigidity

 

Supportive criteria

・安静時振戦

・ドーパミン薬への反応

・治療薬剤に誘導されるdyskinesia

・嗅覚障害

 

Exclusion criteria

病歴

・ドーパミン剤への反応欠如(十分な投与量、適度な重症度)

・現在あるいは最近(6〜12ヶ月以内)のドーパミン抑制剤の投与

・Parkinsonismの原因となる他の疾患の診断(水頭症、脳炎、外傷、血管障害)

 

身体所見

・小脳症状(運動失調、dysmetria(運動距離測定障害))

・前頭葉性認知症や進行性失語を含む早期認知症

・核上性垂直注視麻痺(眼球上下随意運動の障害、反射による眼球運動は保たれる)

・Parkinsonismが下肢に限局

・皮質症状(失語(言語障害)、失行(習得されたタスクを行えない)、皮質感覚障害(light touchや痛みは感じるが、手に置かれた物体を認識できない))

 

画像検査

・normal functional imaging of presynaptic dopamine(dopamine transporter scan)

 

Red flags

・5年以上進行を認めない

・5年以上非運動系症状を認めない(嗅覚障害、便秘、REM sleep behavior disorder)

・対称性Parkinsonism

・早期の歩行障害(5年以内に車椅子)

・早期の頻発する転倒(3年以内)

・早期の重篤な自律神経障害(5年以内の起立性低血圧、尿失禁)

・早期の重篤な延髄障害(5年以内の理解困難なspeech、嚥下障害)

・吸気喘鳴

・錐体路症状(反射亢進、upgoing toe)

・早期の重篤な手や頸のdystonia(筋緊張異常)(10年以内)

 

 

exclusion crieteriaが一つでもあればParkinson病を除外。red flagsが1つか2つ認められても、supportive criteriaが1つか2つあれば相殺されるが、red flagsが3つ以上ある場合は診断が除外される(5)

 

 

 

 

 

身体診察

 

外眼運動、表情、声の大きさ、体幹・四肢運動の速度、筋緊張、歩行を評価(10)

 

振戦は手をひざの上において、あるいは仰臥位にて評価。頭の中で計算をさせる、あるいは歩行にて誘発される

 

bradykinesiaは人差し指と親指をタップさせる、手を開く・閉じる、腕を回内・回外させる、足を踏み鳴らす、などの反復運動をさせて評価する。運動のスピードや振幅が漸次減少するかを見る。スピードが減少せず緩慢さが一定の錐体路障害や筋力低下、あるいは小脳失調を示唆する運動リズム不和などとbradykinesiaを鑑別する必要がある

  

rigidityは四肢の受動運動によって起こり、反対側での反復運動を行うよう指示することでより症状が強調される。rigidityと鑑別されるべきspasticityは受動運動の方向や速度によって変わる違いがある

 

体幹の動きと歩行も評価する必要がある。腕を組んだまま椅子から立ち上がらせ、廊下を歩かせる。ねこ背姿勢、歩行、方向転換に何ステップ要するか、腕の振り、freezingするか、などを評価する。歩行時にだんだん加速して止まることが困難になるfestinationが認められる場合がある。pull testによって姿勢反射を確認する。検者は患者の後ろに立ち、患者の両肩を後ろ側に強く引くことでバランスを失わせるようにする。転倒しないように注意する必要があるが、正常の姿勢反射では姿勢の回復に2歩以上要しない

 

 

診断

病歴と身体診察によって診断される。最近Parkinson病の診断基準がMovement Disorder Society Task Force (5)によって改定された。まずbradykinesiaと安静時振戦あるいはrigidityの存在によって定義されるParkinsonismを確認しなければならない。Parkinsonismの存在だけではParkinson病とは診断できない。続いてsupportive criteriaとexclusionary criteriaを評価しなければならない。安静時振戦、ドーパミン剤への反応、治療薬誘導性dyskinesia、嗅覚障害からなるsupportive criteriaの有無を記載する。続いてexclusion criteriaとred flagsの欠如を記載する。exclusion criteriaが一つでもある場合、あるいはred flagsが3つ以上ある場合は診断が除外される。red flagsが1つや2つある場合でも同等のsupportive criteriaによって相殺される(5)

 

 

検査

所見が典型的でred flagsがない場合は追加の検査などは必要ないが、水頭症、びまん性血管疾患、腫瘍などの構造的疾患を除外するためにMRI検査が行われることが一般的である。特に症状が左右対称である、片側だけに限局している、下肢に限局してParkinsonismを認める、早期から起こる転倒、臨床経過が早い、などの場合は画像検査が重要になる(4)

 

positron emission tomography and single-photon emission computed tomography(SPECT)がParkinson病に典型的なpresynaptic dopaminergic systemの異常の検知に有効である。Parkinsonismとessential tremorが臨床的に鑑別が困難な場合に有効な123 I-ioflupane dopamine transporter SPECTがFDAに承認されている。この検査は非典型的神経変性ParkinsonismとParkinson病を鑑別することはできないが(11)、検査が陰性であった場合はParkinson病を除外診断できる(12)

 

Parkinsonismを認める患者が40歳以下であった場合は血清ceruloplasmin、24時間尿によるcopper level、眼科紹介にてKayser-Fleischer ringsの評価を行ってWillson病の鑑別を行う必要がある

 

 

 

鑑別疾患

 

神経変性性非典型的Parkinsonism

  

Lewy bodies dementia

central feature:認知症

core feature:Parkinsonism、認知機能の変動、幻視、REM sleep behavior disorder

診断にはcentral featureと二つのcore featureが必要

additional feature:Parkinsonism発症前あるいは発症一年以内に認知症発症、dopamine blockerに対しhigh sensitivity

possible diagnostic strategies:dopamine transporter SPECTの異常(Alzheimer病との鑑別を行う、Parkinson病とは鑑別できない) 

 

  

多系統萎縮症(multiple system atrophy)

core feature:自律神経障害、小脳性失調、Parkinsonism

additional feature:早い進行、早期から転倒、重度の自律神経障害(起立性低血圧、尿失禁)、対称性の運動障害、L-domaへの反応がない、あるいは限られる、REM sleep behavior disorder、中枢性無呼吸、吸気喘鳴、家族歴を認めない運動失調

possible diagnostic strategies:MRIで小脳あるいは橋の萎縮を確認できるかもしれない、dopamine transporter SPECT(他の失調性疾患との鑑別を行う、Parkinson病とは鑑別できない)

 

 

進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy)

core feature:外眼運動障害(垂直運動が限局あるいは緩慢)、姿勢不安定(早期から重度)、Parkinsonism(rigidity、freezing)

additional feature:早い進行、早期に後方への転倒、早期の構音障害と失語、早期の前頭葉認知症、対称性の運動障害、L-dopaへ治療抵抗性、顔面のdystonia(不随意で持続的な筋収縮)、驚いた表情、頸進展の不随意運動

possible diagnostic strategies:MRIで中脳萎縮を認めるかもしれない、dopamine transporter SPECT(Parkinson病とは鑑別できない)

 

 

大脳皮質基底核変性症(corticobasal degeneration)

core motor feature:非対称性のParkinsonism、dystonia、myoclonus(突発的に不随意運動を繰り返す)

core cortical feature:失行(以前に習得されたタスクを行えない)、皮質感覚障害、alien-limb phenomenon(四肢がさまよう)

(診断は1〜2つのcore motor featureと1〜2つのcore cortical featureが必要)

additional feature:左右での差が大きい、早い進行、四肢がdystonic postureで固定、L-dopaへ抵抗性、振戦は通常欠如、早期の認知機能障害(前頭葉タイプ)、臨床症状は大脳皮質基底核症状と呼ばれ、大脳皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、Alzheimer病などで認められる 

possible diagnostic strategies:MRIで頭頂葉の非対称性が認められるかもしれない

 

 

 

二次性Parkinsonism

 

血管性Parkinsonism

clinical characteristic:下腿のParkinsonismとして知られ、顔や上肢は比較的症状が少ない、ガニ股で遅く引きずる歩行、freezingや姿勢不安定性が認められる、錐体路症状(反射亢進、upgoing toes)も認められる

additional feature:びまん性の微小血管病変を認める患者で症状は徐々に進行、繰り返す脳梗塞患者で急に発症し、段階的に病状が進行、MRI正常にて除外診断

possible diagnostic  strategies:MRIにて大脳基底核、大脳半球、脳幹、びまん性白質血管病変などを含む脳梗塞の所見を認める

 

 

正常圧水頭症(normal-pressure hydrocephalus)

clinical characteristic:三徴は歩行障害(ガニ股、緩慢、magnetic gait(足の挙上低下)、freezing)、尿失禁、認知症である。三徴と画像検査にて診断が示唆されるが、過剰診断が多い、large-volume CSF除去試験にて確定診断はできないが、脳室腹腔シャント術への治療反応性の予測に使われる

additional feature:脳萎縮が水頭症と評価されうる。血管性あるいは非典型的神経変性性Parkinsonismも水頭症として誤診される場合がある

possible diagnostic  strategies:CTやMRIにて非閉塞性水頭症を検知し、びまん性の萎縮や血管病変を評価できる。CSF flow試験も診断に役立つかもしれない。large-volume (>30mL) CSF除去試験にて速やかな改善を認める

 

 

薬剤性Parkinsonism

clinical characteristic:現在あるいは最近(6〜12ヶ月以内)の特定の薬剤の使用歴(定型あるいは非定型抗精神薬(clozapineと低量のquetiapineは除く)、tetrabenazine、metoclopramide、prochlorperazine、valproic acid、 lithium、amiodarone)

additional feature:Parkinsonismを認める場合はドーパミン阻害剤を中止する必要がある、中止した後6〜12ヶ月間症状が持続あるいは悪化する場合は他の原因である可能性が高い

possible diagnostic  strategies:dopamine transporter SPECTが正常(この場合は滅多に適応とならないが抗精神薬が中止できないhigh-riskな精神疾患患者の場合は考慮される)

 

 

Toxin-or metabolic-related parkinsonism

clinical characteristic:マンガン、一酸化炭素、二硫化炭素、MPTP(methyl-phenyl-tetrahydropyridine)、シアン化物、などへの暴露、低酸素血症後、副甲状腺機能異常、などは全てParkinsonismに関連する

additional feature:稀なトキシンへの暴露歴あるいは特定の代謝性疾患の存在が診断の鍵となる

possible diagnostic  strategies:MRIが時に対称性の大脳基底核異常を認める

 

 

  

外傷後Parkinsonism

clinical characteristic:重度の頭部外傷による昏睡からの回復後すぐに認められる。また慢性外傷性脳症として知られる繰り返す脳震盪を経験した場合に遅れて発症することがあり、行動および認知機能の変化がみられる

additional feature:急性の場合は病歴が鍵となる。慢性外傷性脳症の診断基準は確立されていないが、行動、情動、認知に関わる症状がおこる

possible diagnostic  strategies:MRIは脳の急性障害を確認できるが、慢性外傷性脳症の所見は通常非特異的である

 

 

脳炎後Parkinsonism

clinical characteristic:通常特定のウイルス性脳炎の回復後にParkinsonismが認められる。oculogyric crisis(注視クリーゼ・眼球上転発作)や不規則な呼吸を認める

additional feature:典型的にはウイルス性脳炎後すみやかに認められる

possible diagnostic  strategies:MRIで時に大脳基底核両側性の障害を確認できる。急性期にはCSFにてウイルス性脳炎の所見を認める

 

 

 

腫瘍、感染、頭蓋内出血に関連するParkinsonism

clinical characteristic:腫瘍、侵襲的な感染、頭蓋内出血による障害が大脳基底核におよぶ事に関連する

additional feature:経過は通常、急性あるいは亜急性で、他の神経症状を呈する。免疫不全患者におけるHIV、トキソプラズマ、真菌などの感染でみられる。Creutzfeldt-Jakob病などでは亜急性の認知症とともに認められる

possible diagnostic  strategies:MRIにて大脳基底核、両側の白質、あるいはびまん性の構造変化が認められる。CSFにて悪性疾患、感染、Creutzfeldt-Jakob病などの所見を確認できる場合がある

 

 

 

 

Willson病 

clinical characteristic:若年発症(40歳以下)、不規則な安静時および動作性振戦、dystonia、構音障害、Parkinsonismを特徴とする進行性の運動性障害、認知機能異常も後期にみられ不可逆的な障害となる

additional feature:染色体劣性遺伝で神経症状が肝疾患に先行して認められる。40歳以下のすべての運動障害性患者でWillson病のスクリーニングを行う必要がある

possible diagnostic  strategies:血清ceruloplasmin、24時間尿によるcopper level、slit lamp examinationによるKayser-Fleischer ringsの評価を行う。肝生検が必要になる事は稀。遺伝子検査が可能であるがsensitivityは限られている

 

 

 

他の状態

 

essential tremor

clinical characteristic:上肢に認められる対称性の動作性振戦、頭部や声にも認められる場合がある。腕をいっぱいに伸ばしたすぐ後から認められる。書字や食事摂取へ影響する場合がある。安静時には認めず、bradykinesiaもない

additional feature:最もよくみられる振戦疾患。家族歴やエタノール摂取にて改善することがよくみられるが確定診断には必須でない

possible diagnostic  strategies:dopamine transporter SPECTが正常

 

 

 

dopa-responsive dystonia

clinical characteristic:足のdystoniaとして症状があらわれ、全体に広がる場合がある。Parkinsonismが著明になる時には低量のL-dopaに劇的で持続的な反応を示す

additional feature:染色体優勢遺伝で若年発症。小児や若年者に足のdystoniaを認めた場合は疑う

possible diagnostic  strategies:dopamine transporter SPECTが正常、遺伝子検査によるguanosine triphosphate cyclohydrolase Iあるいはtyrosine hydroxylase遺伝子の変異を確認

 

 

 

 

 

 

Treatment

 

exercise

exerciseは運動機能およびfunctional outcomesに利益があり、全ての患者に推奨される(13)。high-intensity resistance training、balance therapy、physical therapyなどの様々な方法があり、バランス障害、歩行のfreezing、stiffnessなどの特定の症状に対し効果が認められているが、どの方法が他より優れているということはない(13)。exerciseとphysical therapyが薬物治療にて改善しない歩行やバランス障害に対する治療の鍵となる。exerciseをやめると数ヶ月以内にその利益が失われる。 exerciseのneuroprotective roleが実験モデルから推定されているが、臨床的には証明されていない(14)

 

diet

Parkinson病において食事制限は推奨されていない。便秘を防ぐために十分な線維を、また骨粗鬆症予防のためにビタミンDおよびカルシウム摂取が推奨される。L-dopaを服用している場合は栄養アミノ酸の腸管吸収が競合阻害されるため、食事摂取の30〜45分前に服用しなければならない。Parkinson病の患者は体重減少のリスクがあるため、蛋白摂取制限は推奨されない

 

 

drug therapy

薬物治療は症状が機能的、職業的、あるいは社会的ゴールを障害し始めた時に開始することが推奨される。治療は対症療法的なものなので、症状が軽度で問題とならない場合は薬物治療を始める必要はない。将来、disease-modifying treatmentが利用可能になった場合は全ての患者に早期の治療開始が考慮される(15)

 

 

 

 

 

Dopamine agonist

pramipexole、ropinirole、rotigotine、apomorphine

mechanism of action:後神経節受容体でのドーパミン作用を促す

dosage:pramipexole 1.5-4.5mg/d in 3 divided doses、ropinirole 6-18mg/d in 3 divided doses、rotigotine 4-8mg/d once daily (patch)、apomorphine 2mg per dose 皮下注(off periodsに対するbridge)

adverse effect:嘔気、立ちくらみ、幻覚、眠気、睡眠発作、dyskinesia(舞踏病様不随意運動)、impulse control disorder、下肢浮腫、混乱、起立性低血圧、便秘

note:若年者での第一選択薬、L-dopaの投与量を抑えるための補助薬、apomorphineはrapid-onsetの注射薬で重度のoff periodsに対しレスキュー治療として使われる

 

 

L-dopa

mechanism of action:ドーパミン前駆体。通常aromatic amino acid decarboxylaseをブロックするcarbidopaと併用され、L-dopaの末梢での副作用を減らす

dosage:oral immediate-release carbidopa-L-dopa 10/100, 25/100, 25/250、初期量300-600mg/d in 3 divided doses、必要に応じて徐々に1800-2000mg/d in 3-6 divided dosesに増量

extended-release carbidopa-L-dopa 50/200mg once at night (L-dopa available in 95 to 245mg)、L-dopa量で850 to 2450mg投与

carbidopa-L-dopa enteral gel、portable infusion pumpで十二指腸内チューブを介して投与

adverse effect:嘔気、立ちくらみ、眠気、混乱、幻覚、投与開始数年後からdyskinesiaやwearing-off(薬が切れて症状が再発)がみられる

note:最も効果的な治療。65歳以上の患者の第一選択薬。若年者での第二選択薬。controlled-release carbidopa-L-dopaは夜間の症状を改善する。extended-release carbidopa-L-dopaとenteral gel formulationは運動機能が変動する患者での投与間でのwearing-offを減らす

 

 

 

carbidopa

mechanism of action:末梢酵素であるaromatic amino acid decarboxylaseをブロックし、末梢神経でL-dopaが分解されることを防ぎ、中枢神経でのL-dopaのbioavailabilityを高める

dosage:通常25mgのcarbidopaが100mgのL-dopaと併用される。L-dopaの末梢神経での副作用を防ぐために1日75-100mgが必要で、最大450mgまで投与される

adverse effect:なし

note:嘔気や立ちくらみなどのL-dopaの末梢神経での副作用を認める場合は追加のcarbidopaが処方される

 

 

 

抗コリン剤

trihexyphenidyl、benztropine

mechanism of action:線条体でのアセチルコリンをブロックする

dosage:trihexyphenidyl 3-12mg/d in 3 divided doses、benztropine 1-6mg/d in 2-3 divided doses

adverse effect:口腔乾燥、dry eye、排尿障害、便秘、混乱、記憶障害、立ちくらみ

note:振戦やrigidityを改善するがbradykinesiaに対する効果はない。70歳以上の高齢者では投与が制限される。膀胱機能不全や流涎では改善がみられる

 

 

amantadine

mechanism of action:グルタミン酸受容体をブロック、ドーパミン放出も促す

dosage:100-300mg/d in 1-3 divided doses

adverse effect:浮腫、網状皮斑、不眠、幻覚、混乱

note:dyskinesiaを改善、振戦にも効果があるかもしれない、高齢者では注意が必要

 

 

catechol-O-methyl tranferase inhibitor

entacapone、tolcapone

mechanism of action:末梢でのL-dopaの代謝を減少させることで中枢神経でのL-dopaのbioavailabilityを高める

dosage:entacapone 200mg(L-dopa投与毎に。最大1600mg/d)、tolcapone 300-600mg/d in 3 divided doses

adverse effect:dyskinesiaを増やすかもしれない、嘔気、tolcaponeは肝障害を起こしうる

note:L-dopaの効果および作用時間を増やす。entacaponeは尿の色をオレンジに変える。tolcaponeは肝障害のモニターが必要。opicaponeは肝障害を起こさず、wearing-offを改善することに効果的

 

 

MAO-B阻害剤

selegiline、rasagiline、safinamide

mechanism of action:MAO-B enzymeを阻害、神経節でのドーパミン作用を増強、safinamideはグルタミン酸放出を阻害

dosage:selegiline 5mg each morning and at noon、rasagiline 1-2mg once daily、safinamide 50-100mg once daily

adverse effect:嘔気、不眠、幻覚、稀にSSRIと併用でserotonergic crisis(見当識障害、混乱、発熱、振戦、myoclonus、下痢、紅潮)

note:rasagilineとselegilineは最初の単剤治療薬として、あるいはdopamine agonistあるいはL-dopaに追加投与される場合がある。wearing-offを改善するが、dyskinesiaを悪化させる可能性がある。safinamideは進行した病態で追加薬として使われ、dyskinesiaを悪化させることなくwearing-offを改善する

 

 

 

 

多くの患者でL-dopa投与開始数年後からwearing-off effect between doses(血漿濃度が低下して運動系症状が再発)やdyskinesia(血中濃度が最大になった時にみられる舞踏病様不随意運動)がみられるようになる。これらは病状の進行とドーパミン受容体の拍動的な刺激によっておこる(16)

 

 

 

 

 

治療薬調節

運動系症状の進行に基づき患者毎にドーパミン作動系治療薬を調整する必要がある

 

dyskinesiaが患者にとって問題とならない場合は治療を行う必要がない。治療が必要な場合はamantadineやclozapineなどが有効であるかもしれない(16)。dopamine agonistあるいはMAO-B阻害薬を使用している患者ではその投与量を減らすことでdyskinesiaが改善する。L-dopaの投与量を小さくし、投与間隔を短くすることでdyskinesiaを改善するかもしれない。しかしこの方法はwearing-offを悪化させる可能性がある(17)

 

 

次の薬剤投与までにwear offが認められる場合は、L-dopaの投与間隔を短くするか、その作用時間を延長するcatechol-O-methyl transferase inhibitors(entacapone, tolcapone, opicapone)やMAO-B阻害剤(rasagiline, safinimide)を追加投与する(17, 18)。dopamine agonistsの追加もwearing-offを改善する。しかしこれら全ての方法はdyskinesiaを悪化させうる。最近のstudiesにて抗てんかん薬zonisamideの追加治療がwearing-offを改善する効果が確認されたが、まだこの治療はoff-labelである(19)。MAO-B阻害とグルタミン酸放出阻害の新たな混合薬であるsafinamideはdyskinesiaを悪化させることなくwearing-offを改善させる(18)。重度の、あるいは突発性のwearing-offを認める患者ではdopamine agonist注射薬であるapomorphineがレスキュー薬として使われる。即効性があるが、効果は1時間だけである(20)

 

 

 

 

 

治療薬副作用の対応

 

嘔気はドーパミン作動薬でよくみられる副作用であるが、軽度の嘔気は通常耐性が獲得される。L-dopaが原因となる場合はcarbidopaを追加することで効果がみられる。嘔気が持続する場合はdomperidoneが効果的とされているが、FDAに承認されていない。metoclopramideやprochlorperazineなどのドーパミン阻害抗嘔気薬はParkinsonismを悪化させるので投与を避けるべきである

 

 

眠気もdopamine agonistを服用している患者でよくみられる。突発性で抵抗性の睡眠発作が認められる場合はL-dopaに変更すべきである

 

 

impulse control disorderはdopamine agonistの副作用として認められる。過剰なギャンブル、買い物、食事摂取、性行動は治療中の10-15%の患者で認められる(7)。患者は自ら告白することがないため、医師はこれらの症状について頻回に問診する必要がある。もしこれらの症状が問題となる場合は投与量を減らす、あるいは中止する必要がある。しかし、これらの対応は運動系症状を悪化させるので、L-dopaに変更する必要がある。impulse cotrolができない場合は手術療法も検討される場合がある

 

 

 

 

 

nonmotor symptoms

Parkinson病の非運動系症状は睡眠、情動、認知、消化器、自律神経等を制御する中枢の障害によっておこる。これらの症状は日常生活を阻害し、運動系症状以上にquality of lifeを低下させる(7) 

 

 

sleep 

nighttime sleep disorderdaytime hypersomnolenceがよくみられる。不眠は睡眠-覚醒サイクルの障害、薬剤、夜尿、運動系症状、あるいはrestless leg syndrome、睡眠時無呼吸、REM sleep behavior disorderなどのsleep disorderとの合併、など様々要因で起こる(21)。運動系症状がParkinson病によるものである場合はcontrolled-release L-dopa rotigotine patchなどの長期作用型ドーパミン作動薬を考慮する必要がある。restless leg syndromedopamine agonistL-dopagabapentinで効果が認められるかもしれない。REM sleep behavior disorderParkinson病でよくみられ、melatoninclonazepamなどに反応しうるが、鎮静作用で転倒のリスクとなるため高齢者では注意が必要となる。睡眠剤の効果に対するエビデンスは限られているが、不眠ではzolpidemeszopiclonetrazodonedoxepinなどが検討される(21)。日中の過剰の眠気にはmodafinilが考慮される(21)

 

 

 

神経精神症状

軽度のうつ病から軽度から重度の不安症はParkinson病でよくみられる(7)。頻回にうつ病のスクリーニングを行う必要があるが、動作緩慢、表情の消失、倦怠感、睡眠障害などのParkinson病の症状とoverlapするため認識されないことが多い(2)。気分障害はドーパミン作動薬やMAO-B阻害剤で改善する場合がある(23)。ドーパミン抵抗性うつ病にはSSRIや三環系抗うつ薬などが効果を認めるかもしれない。studiesの数は限られているが、nortriptylinedesipramineが最も効果を認められている(24)。しかし、副作用の少なさからSSRIbupropionが使われる場合が多い

 

モチベーションやgoal-directed behaviorの喪失として定義されるapathy(無気力)がParkinson病でみられることが多い。quality of lifeの低下、caregiverの負担増加に関連するが治療法は確立されていない(22)

 

 

psychosisはドーパミン作動薬の副作用、病気の進行に伴う後期症状として認知機能低下とともに認められる(7)。早期にpsychosisが認められる場合はLewy body dementiaのような他の疾患の可能性を示唆する。psychosisParkinson病における施設入所の最大のリスクファクターであり、死亡率上昇とcaregiverのストレス増加に寄与する(23)。最もよく見られるpsychosisは錯覚から幻覚にいたるまでの視覚上のmisperceptionである。Parkinson病に関連するpsychosis治療の最初のステップは感染、代謝障害、薬物副作用などの可逆的な原因の有無を確認し治療することである。そして段階的にParkinson治療薬を調整していく。まずdopamine agonistを中止、続いてL-dopa以外の薬剤を中止、最後にL-dopaの投与量を減量する(23, 24)。もしpsychosisが持続する場合は薬物治療を開始する。コリンエステラーゼ阻害剤が認知症を伴う患者に有効であるかもしれず、通常耐用性が良い。もし抗精神薬が必要な場合はclozapinequetiapinepimavanserinのみが使用できる(22, 24)。他のドーパミン阻害抗精神薬は運動系症状の悪化をもたらすため使用すべきでない

 

軽度の認知機能障害はParkinson病患者でよく見られ、早期症状の25-30%にのぼる(25)。治療者はまず薬剤、代謝異常、ホルモン異常、睡眠時無呼吸、硬膜下血腫などの可逆的な認知機能障害の原因を探す必要がある。コリンエステラーゼ阻害剤が中等度の利益があるかもしれないが、認知症を伴うParkinson病患者の治療薬としてFDA承に認されているのはrivastigmineのみである(24)。Parkinson病患者の軽度の認知症に効果が確認されている治療法はない

 

 

 

消化器症状

よく見られる消化器症状は唾液分泌過多、消化不良、便秘である

 

唾液分泌過多はL-dopa、抗コリン剤glycopyrrolate、ボツリヌストキシンA or Bの唾液腺への投与などで改善するかもしれない(24)

 

消化不良はParkinson病の早期では少ないが、後期に認め、薬物治療に抵抗性を示す。ドーパミン作動剤が切れている間に嚥下機能の悪化を認める場合があり、その場合は作用時間の長い治療薬や食事と薬物服用の時間調整によって効果がみられるかもしれない。speech pathologistへ紹介し、誤嚥の評価を行う必要がある

 

便秘治療は食事の調節、水分摂取、運動、膨張性薬剤、便軟化剤、下剤などで治療を行う。domperidonepolyethylene glycollubiprostoneなどが効果的であるかもしれない(24, 26)

 

 

 

自律神経症状

自律神経症状には起立性低血圧、尿症状、勃起不全などがある

 

尿貯留症状には尿意切迫、頻尿、夜間多尿などが排尿困難よりも多く認められる(27)。まず膀胱感染症を除外し、定期的な排尿および夜間の水分制限を促す必要がある。尿貯留症状を認める特定の患者(過活動性膀胱)ではoxybutyninのような抗コリン剤が効果を認めるかもしれないが、Parkinson病患者でのエビデンスは不十分であり(24, 27)、認知機能を悪化させる可能性がある。β3-adrenergic agonitsであるmirabegronは尿貯留症状の代替薬として投与されるが、Parkinson病患者でのstudyはない(27)

 

 

起立性低血圧の治療には塩分および水分摂取の増量、compression stockingがある。fludrocortisone、選択的α1-agonistであるmidodrine、コリンエステラーゼ阻害薬pyridostigmineなどが神経性起立性低血圧に有効であるかもしれないが、Parkinson病患者におけるエビデンスは限られている(24, 26)。これらの薬剤はpyridostigmieを除いてすべて仰臥位での血圧上昇の原因となる

 

 

 

経口摂取の低下、手術前、薬剤の間違いなどでドーパミン作動性治療薬を急に撤退した場合にはParkisonismが急性に悪化し、体温上昇や混乱などが認められ、neuroleptic malignant syndromeと類似する症状がみられ、Parkisonism hyperpyrexia syndromeと呼ばれる。速やかなドーパミン作動薬の再開とsupportive therapyが必要になる(28)

 

 

 

手術療法 

手術療法には視床切除術や淡蒼球切除術あるいはdeep-brain stimulationがある。淡蒼球切除術はすべての中心的な運動系症状のコントロールに効果的である一方、視床切除術は振戦のみを改善する。切除術による治療は不可逆的な合併症をきたしうる。したがって可逆的でプログラムできるdeep-brain stimulationが手術治療のスタンダードとなっている(29)。FDAによってParkinson病に対し片側あるいは両側の視床下核や淡蒼球内節のdeep-brain stimulationが承認されている。どちらのターゲットも薬剤治療と比較して、中心的な運動系症状の改善、機能的な時間の増加、wearing-offの減少、dyskinesiaの減少などを認めている(29, 30)

 

525人のParkinson病患者に対して行われたRCTでは両側の淡蒼球内節の刺激、両側の視床下核の刺激、最適薬剤治療が比較検討された。primary outcome6ヶ月後におけるdyskinesiaに障害されないon stategood motor function)の時間とされた。deep-brain stimulationを受けた患者ではdyskinesiaに障害されないon time4.6時間延長した一方で、薬剤治療を受けた患者ではon timeの延長が認められなかった。またquality of life scoredeep-brain stimulationのグループで改善を認めた(30)

 

Deep-brain stimulationの候補となる患者は治療抵抗性で生活に支障をきたす振戦を認める、L-dopaによる治療で頻回のwearing-offdyskinesia、他の副作用などを認める場合などである。認知症、重度の治療されていないうつ病、重度の姿勢障害、非典型的Parkinsonismなどは適応とならない(28)

 

 

 

 

Prognosis

Parkinson病は進行性の神経疾患であるが、その進行度は患者によって異なる。振戦優位の患者では無動性rigidityを認める患者に比べ、認知機能障害が起こりにくい(15)。運動系症状が適切に治療されれば多くの患者で受け入れられるquality of lifeを長い間送ることができる。姿勢障害、嚥下障害、認知症、psychosisなどの薬剤抵抗性の症状は病期の後半でquality of lifeを低下させ、生存率に影響を与える(7, 15)

 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

4 September 2018

医師として成長し続ける方法

 

研修医などの若手が己の研鑽に熱心なのはそれほど珍しいことではないが、それをその後も長く維持し続けることはなかなか大変だと思う

 

大きな声では言えないが、一度免許を取って研修さえ終了してしまえば、究極それ以上自分をアップデートしなくても働き方さえ問わなければ、どこかで何とかなってしまう仕事である事にも関係していると感じる

家族ができ時間の使い方を見直す場面に直面することも影響する場合があるかもしれない

 

 

成長の継続で良い方法の一つは後進の指導に携わり続けることだろう

研修指定病院で指導医として働き、研修医達からの評価が悪いと首にされるシステムに置かれれば当然己の知識・技術の向上に努めざるを得ないだろう。あるいは希望と不安に満ちた若い人々から日々受ける刺激の影響も大きいかもしれないが

 

 

ではそのような環境でない場所、つまり言い方は悪いが、いくらサボっていても周りからあまりお叱りを受けないようなポジションで働いている医師はどうすればよいのだろうか

 

どうやってモチベーションを維持していくのか 

 

 

 

イチロー選手がシーズン安打数世界記録を更新した後のインタビューで

 

”野球がまだ上手くなりたい、これは数字には表れづらい自分だけの楽しみ

そうやって前に進む気持ちがあれば楽しみはいくらでもある”

 

と語っていた

 

 

 

おそらくこれが”答え”なのだろう

 

つまり

 

純粋に医師としての仕事が好きであること、そしてささやかな自分の成長を喜べること

 

そうなればいいのである

 

 

 

と言ってしまえば簡単である

 

 

実際そういう立派な人も多いだろうが、自分なんかは仕事が好きかと問われれば、一応「はい」とは答えるかもしれないが、正直多少の建前や自己暗示などの含みが入ってしまう事を否定できない

 

ならやめてしまえ、とお叱りを受けそうだが、実際楽しいことばかりではないし、寝ても覚めても医療の事を考えてもいなければ、病院に行きたくて行きたくてうずうずする、なんて事もそうないのである 

 

プロフェッショナルとして一定の基準を満たしていれば、それでも良いと自分に言い聞かせている 

 

 

そんな純粋でない自分のような医師が成長し続ける、あるいはそのための努力を継続していくにはどうすればよいか

 

 

 

残念ながら自分にはまだその答えがない

 

おそらくこれは一生の課題なのだろう

 

出来る事ならそれを達成している方々に尋ねて回りたいくらいである

 

 

 

ただ現在多少考えているのは

 

人間の気分なんて変わりやすいものだからモチベーションによらず成長し続けるシステムを構築すること

そのシステムは患者のみならず、他の人からの刺激やフィードバックを得られるものにすること

 

のようなことが大切だろう、と感じている

 

 

例えばこのブログなんかもそれに当たるかもしれない

 

「月に一回米国雑誌のレビューを和訳して載せることを決める」

 

別に大した事ではないけれど、それを継続することで自分の知識をアップデートしていく事ができる。そして閲覧する人の数が多少増えていくのを見ると、やはり続けていく動機に繋がっていく

 

みたいな感じに

 

 

おそらく他にもいくらでもあるだろう

 

勉強会を定期主催する、学会発表のノルマを課す、本を出版する、一般の人への教育講演を定期開催する

 

などなど

 

成長し続けている人々を観察しヒントを得ていきたい

 

 

とにかくそのような方法を模索しながらも、少しずつでも前に進み続け、ささやかでも自分の成長を喜べる医師、そんな風になれればいいなぁと思っている

 

 

 

 

 

 

 

 

帯状疱疹

 

水痘を発症するvaricella zoster virusに感染したことのある全ての人が帯状疱疹を発症する可能性がある

 

 

米国の人口のおよそ95%がvaricella zoster virusに潜伏感染している。三人に一人が帯状疱疹を発症し、年齢とともにその頻度が増える

 

 

脊髄後根神経節あるいは脳神経神経節に潜伏感染しているvaricella zoster virusが再活性化し、求心性線維を介して皮膚に広がる

 

 

脊椎から体幹前方部に帯状の皮疹が一惻性に認められるのが特徴である。顔、眼、口、耳にも起こる場合がある。皮膚の炎症と水疱が起こり、2〜4週間持続し、時に瘢痕化や永久的な色素変化を起こす。疼痛が皮疹に沿って認められることが多く、生活に支障をきたす程強くなりえる

 

 

 

Prevention 

 

帯状疱疹は加齢に関連して弱まった免疫機能を有する60歳以上の成人に認められることが一般的である。また化学療法、放射線治療、ステロイドなどの治療を受けている患者やHIV/AIDS、糖尿病、悪性疾患などを持つ免疫不全患者などにも多く認められる

 

 

女性、白人、帯状疱疹の家族歴、1歳より前に水痘を発症した場合などでもリスクが上がる(1)

 

 

帯状疱疹の発症で免疫応答が起こるので、免疫能正常者では再発は多くない

 

 

水痘に罹患したことがない人が帯状疱疹に暴露されると水痘を発症する可能性がある

 

 

researchでは帯状疱疹の発症が増えていることが示されている;米国の人口では過去60年間で4倍以上になっている(2)

 

 

Varivaxは生varicella zoster vaccineで水痘発症予防のため小児およびvaricella zoster virus抗体陰性の成人への投与が推奨されている

 

 

Zostavax;生zoster vaccine(ZVL)とShingrix;recombinant zoster vaccine(RZV)がFDAに認可され、Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)によって帯状疱疹およびその合併症予防のために高齢者への投与が推奨されている(3,4,5)

 

  

ACIPは免疫能正常の50歳以上の成人、あるいは以前にZVLを投与されている人へRZVの投与を推奨している(4)

 

 

ACIPは有効性および費用対効果に基づいて帯状疱疹およびその合併症状予防のためにZVLよりもRZVの投与を推奨している(直接比較した試験はない)(4)

 

 

RZVは2回投与で、初回投与から2〜6ヶ月開けて2回目投与を行う。禁忌は重篤なアレルギーのみである(anaphylaxis)。influenza vaccineと同時投与可能で、それによって安全性や効果が下がることはない(6)

 

 

RZVが投与できない場合はZVLを60歳以上で免疫能正常の成人に投与することをACIPが推奨している。ZVLは生vaccineなので投与できない患者がいる(☆)。ZVLは一回投与である。acyclovirやvalacyclovirなどの抗ウイルス薬はvaccine投与前24時間以内あるいは投与後14日間は使用できない。同様にinfluenza vaccineと同時投与が可能である(7)

 

・ゼラチンやneomycinに対し重篤なアレルギーを有する

・vaccineの成分に対し重篤なアレルギーを有する

・白血病、悪性リンパ腫、あるいは他の血液・骨髄腫瘍などで免疫能が低下している

・HIV/AIDSでT cellが0.200 x 10⁹ cells/L以下

・高用量のステロイドなどの免疫能に影響を与える治療を受けている

・妊婦あるいはその可能性がある

 

 

 

どちらのvaccineにおいても投与に際して、varicellaへの暴露歴の確認や検査などを行う必要がない。帯状疱疹の既往歴の有無にかかわらずvaccineは適応となるが、帯状疱疹の急性期の場合は皮疹が治癒するまで投与を待つ必要がある

 

 

Shingles Prevention Studyは60歳以上で免疫能正常の成人38546人にて行われた帯状疱疹に対するZVLの効果を評価したdouble-blind randomized controlled trialである(8)。追跡中央値3.1年後において、ZVLは帯状疱疹による負荷を61.1%、帯状疱疹後神経痛の発症を66.5%、帯状疱疹の発症を51.3%、それぞれ減らしたことが示された。vaccineは70歳以上よりも60〜69歳の成人において帯状疱疹発症の予防により有効であることが認められた(37% vs 64%)。重篤な副作用の頻度はプラセボと同等であった(1.4%)

 

 

 

 

Diagnosis

 

帯状の皮疹が感染した神経に一致するdermatomeに沿って見られる。皮疹は片側でmidlineを超えない。隣接するdermatomeにoverlapすることが20%の場合に認められる。最も多く罹患するdermatomeは以下の順である;胸部>脳神経(特に三叉神経)>腰部>頸部

 

 

疼痛が皮疹より先に発症する場合は診断が困難である。軽度の掻痒感、チクチク感から強い疼痛までが皮疹の発症より1〜5日前に認められる場合がある。数週前の発症も報告されている。疼痛はsoft touchにより惹起されうる。他の症状としては倦怠感、頭痛、photophobiaなどがあるが、高熱は希である

 

 

臨床診断が明らかでない場合は確定検査を行う必要がある。PCR検査は感度および特異度が高く、比較的早く結果が得られるため(< 1 day)、variecella zoster virusの同定に最適である。Direct fluorescent antigen(DFA)はPCRほど感度が高くないが、PCRが利用できない場合には良い代替検査となる。ウイルス培養検査は感度が高くなく、結果が得られるまでに数日を要する

 

 

PCR

感度および特異度が高く、比較的早く結果が得られるため(< 1 day)、variecella zoster virusの同定に最適の検査である。水疱からfluidを、あるいは皮疹からcrustsを採取し、ウイルスのDNAを同定する

 

ウイルス培養

感度30〜70%、特異度100%。ウイルス培養の成否は、皮疹のステージ、検体のquality、検体採取から組織培養のinoculationまでの時間に高く依存している。水疱より新鮮なfluidをviral transport mediaを含むtuberculin syringeに吸引し、速やかに検査室に運ぶ必要がある。3〜14日間要する

 

DFA

ウイルス培養より感度が高く、PCR検査の代替となる。皮疹の基底部をメスあるいはlarge-gauge needleの傾斜エッジで削り取り、スライドグラスに塗りつけ、fluorescein-conjugated monoclonal antibodiesを使って染色する

 

 

 

 

 

臨床症状が他の疾患と類似する場合がある。鑑別疾患には接触性皮膚炎、toxic dermatitis、単純ヘルペスなどがある

 

 

皮疹に疼痛あるいは感覚異常が伴わない場合、dermatomeに一致しない場合、典型的な皮疹を伴わない神経痛が持続する場合などは他の疾患の可能性を考慮する必要がある。

 

 

若年者が帯状疱疹を発症した場合はHIV検査を考慮する必要がある

 

 

 

Differential Diagnosis

 

単純ヘルペス

疼痛を伴う小水疱がcluster状に認められる。時に帯状疱疹と類似する分布をとり間違われる場合がある。患者が2回以上の帯状疱疹の再発を報告をする場合は確定検査を行って単純性ヘルペスと帯状疱疹の鑑別を行う必要がある。免疫能正常者において帯状疱疹の再発は希である。HIV患者では再発は認められる

 

接触性皮膚炎

ゴム、ニッケル、局所の抗菌薬への反応として発赤および小疱を呈し、帯状疱疹に類似した所見をとる場合がある。ただdermatomeに一致しない場合がほとんどである

 

contact with toxic plants

poison ivyやpoison oakなどに接触して帯状に疼痛を伴う発赤や小疱を認める場合がある。しかしdermatomeに一致することは多くない

 

Zoster sine herpete

帯状疱疹と同じ典型的な神経性疼痛を認めるが、皮膚所見を認めない患者が存在し、zoster sine herpeteとして知られている。診断検査がないため発症頻度は不明である

 

 

 

 

帯状疱疹の皮疹が治癒しない場合は細菌感染合併の可能性を考慮する

 

 

ウイルスが三叉神経第一枝に感染するherpes zoster ophthalmicusとして知られる病態がある。帯状疱疹全体の10〜25%の割合で認められる。病態の進行で失明のリスクがあり早期診断および治療が重要となる。典型的な皮疹を伴わない場合がある。herpes zoster ophthalmicusを示唆する所見として鼻の先に水疱を認める状態があり、Hutchinson signとして知られる

 

 

強い耳の痛み、顔面筋麻痺、皮疹(耳道や耳介の水疱)はvaricella zoster virusによる顔面神経への感染によっておこるRamsay Hunt syndromeを示唆する。治療が遅れると聴力喪失、永久的な顔面筋麻痺を起こしえるため耳鼻科へのコンサルトが必要になる

 

 

 

 

 

Treatment

 

合併症として帯状疱疹後神経痛があり、帯状疱疹の皮疹発症後3ヶ月以上持続する疼痛として定義される(9)。帯状疱疹後神経痛を認める30〜50%の患者で1年以上疼痛が持続する(10)

 

 

他の合併症には視覚障害や聴覚障害があり、神経系合併症には脳血管障害、脊髄炎、脳神経麻痺、末梢神経麻痺、多発神経根障害などがある。皮疹に細菌感染の合併も時折認められる。免疫不全患者ではvaricella zosterによる呼吸器、中枢神経系の感染のリスクが高まり致命症となりえる

 

 

 

経口抗ウイルス薬としてfamciclovir、valacyclovir、acyclovirが免疫能正常患者の帯状疱疹治療薬としてFDAに認可されている。famciclovirとvalacyclovirが投与回数および薬物動態上優れているため、より好ましい。上記3つの全ての薬剤がウイルス複製を阻害することによって神経障害を制限し疼痛の期間を減らすとされている

 

 

合併症を伴わない帯状疱疹を認める免疫能正常の成人患者419人で行われたRCTではプラセボと比較してfamciclovirは帯状疱疹後神経痛の疼痛期間中央値を約4ヶ月から約2ヶ月に減らすことが示された(11)。他のRCTではfamciclovirの3つのregimens(750mg1日1回、500mg1日2回、250mg1日3回)を比較した結果、帯状疱疹の治癒および疼痛消失に対する効果は全て同等であった(12)。また同試験においてfamciclovirとacyclovirは帯状疱疹の治癒および疼痛消失に対する効果が同等である事が認められた。3つ目のRCTではvalacyclovirとacyclovirが皮疹の治癒に対する効果が同等であった(13)。しかしvalacyclovirの方がacyclovirに比べ、急性の疼痛および帯状疱疹後神経痛の疼痛期間をより減少させた(6ヶ月間疼痛を有した患者はvalacyclovir投与グループでは19.3%、acyclovir投与グループでは25.7%)。valacyclovirとfamciclovirを比較したblinded RCTでは帯状疱疹に対する効果が同等であったが、valacyclovirの方がよりcost-effective($83.90 vs $140.70 per course)であった(14)

 

 

famciclovirおよびvalacyclovirが利用できない場合はacyclovirを選択する

 

 

3つのclinical trialsで経口acyclovir 800mg1日5回投与を皮疹出現72時間以内に開始した場合、ウイルス排出期間および新たな皮疹の発症期間を減らし、皮疹治癒を促進することが確認された(15,16,17)

 

 

 

 

皮疹発症72時間以内の経口抗ウイルス薬

 

Famciclovir 500mg 1日3回 7日間

 

Valacyclovir 1g 1日3回7日間

(上記は米国で認可された投与方法だが、valacyclovir 1.5g 1日2回も免疫能正常で18歳以上の合併症を伴わない帯状疱疹患者に対し安全で効果的であり、かつadherenceを向上させるかもしれない(18)

 

Acyclovir 800mg 1日5回7日間

 

 

 

clinical trialsは抗ウイルス薬投与を皮疹発症72時間以内の患者に限っており、それ以降の患者では適切な試験が行われていない。エビデンスはないが、皮疹発症72時間以降の患者でも新たな皮疹形成が続く、皮膚・運動・神経・眼合併症を伴う、免疫不全、などの場合は抗ウイルス薬投与が推奨される

 

 

 

cost-benefitの面からも合併症、特に帯状疱疹後神経痛のリスクが高い50歳以上の帯状疱疹患者への治療が推奨される。若年者で軽度の疼痛あるいは皮膚所見が限局されている場合は、強い疼痛あるいは持続する疼痛のリスクが比較的低いので抗ウイルス薬治療は患者ごとに考慮される

 

 

抗ウイルス薬局所投与は効果が低いため推奨されない

 

 

抗ウイルス薬治療が帯状疱疹後神経痛の発症を減らすかどうかは明らかでない。最近のcochrane reviewでは経口acyclovirは帯状疱疹後神経痛の発症を減らさないと結論づけ、また他の抗ウイルス薬についてもエビデンスは十分でないとしている(19)

 

 

免疫不全患者で皮膚および臓器に播種する重度の帯状疱疹の場合はacyclovir静注治療を行うべきである。RCTではacyclovir 500mg/m² 静注8時間毎(腎機能正常)7日間治療がプラセボに比べ免疫不全患者の帯状疱疹の皮膚・臓器播種を減らすことが示された(20)。acyclovir静注は中枢神経合併症、特に脊髄炎をきたす場合にも全ての患者に投与されるべきである。この推奨はcase reportsに基づいている(21)。免疫能正常患者でも帯状疱疹が臓器に進展する場合はacyclovir静注が考慮されるが、この推奨を支持するprospective studiesに基づくdataはない

 

 

herpes zoster ophthalmicusは間質性あるいは神経栄養性角膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、上強膜炎、網膜壊死などの眼科合併症に進展するリスクがあり、その結果眼あるいは周囲組織に永久的な障害を与えうる重篤な病態である。抗ウイルス薬治療を行わない場合およそ50%の患者で上記のいずれかの合併症を併発する(22)。controlled, prospective clinical trialsでは経口acyclovir治療が後発性の眼科的炎症性合併症の頻度を50-60%から20-30%に減少させることが示された(23)。herpes zoster ophthalmicusの患者は経口抗ウイルス薬で、たとえ発症から72時間以上経過していても、治療されるべきである。眼科的合併症を示唆する所見、あるいは鼻の先の皮疹など眼科合併症に進展するリスクを有する症候を認める場合は眼科コンサルトを行う必要がある。重度のherpes zoster ophthalmicusの場合はacyclovir静注が考慮されるが、これを支持するclinical trialsに基づくdataはない

 

 

 

Pain control 

帯状疱疹による疼痛は日常生活に支障をきたしうる。医師は神経性疼痛を過小評価すべきでなく、たとえ皮膚所見が限局されている場合でも強い疼痛をきたす場合があることを念頭に入れておく必要がある。したがって積極的な疼痛管理が必要となる。急性の疼痛管理に早期介入することで帯状疱疹後神経痛のリスクを減らせるかもしれない

 

 

軽度の疼痛の場合はacetaminophenやibuprofenで十分である。中等度から重度の場合で抗ウイルス薬と鎮痛剤でコントロールできない場合は、oxycodoneなどの短期作用型の麻薬性鎮痛剤を、屯用でなく、定期的に投与することを検討すべきである。gabapentinのような抗痙攣薬や三環系抗うつ薬を病態の早い過程で追加することで疼痛コントロールの助けになるかもしれない。ただamitriptylineなどの三環系抗うつ薬は高齢者で重篤な副作用を起こす可能性があるので注意を要する

 

 

カプサイシン局所投与は疼痛を増悪させうるので帯状疱疹急性期に行うべきではない。帯状疱疹後神経痛には使われることがある

 

 

 

Corticosteroid

cochrane reviewではcorticosteroid投与が帯状疱疹後神経痛の発症を防ぐことを支持するエビデンスはないと結論づけている(24)。しかし、それ以外の利益もあると信じて経口corticosteroidを投与する医師もいる。一つのRCTではacyclovirにprednisoloneを追加投与することで皮疹の治癒を促進し、中等度から重度の疼痛を減らすことが示されたが、急性期の軽度の疼痛では効果が確認されなかった。またprednisoloneは帯状疱疹後神経痛の発症頻度、および疼痛が消失するまでの時間を減らさないことが確認された(25)。50歳以上の患者のみで行われた他のRCTではacyclovirとprednisoneの併用で急性の疼痛を有意に減少させることが認められた(26)

 

 

50歳以上で中等度から重度の疼痛を有する免疫能正常の帯状疱疹患者では抗ウイルス薬に経口prednisone(60mg/dから開始、10-14-day tapering course)を追加投与することを検討すべきである

 

 

 

Hospitalization

多くの帯状疱疹は外来管理が行われるが、播種性帯状疱疹、中枢神経合併、眼科的合併症などをきたす場合は入院による経過観察が必要になる。疼痛が非常に強くてコントロールできない場合も入院による疼痛治療を行う場合がある

 

 

 

水痘患者に比較すれば、帯状疱疹患者のウイルス伝染リスクは低いと考えられているが、急性期には乳児、幼児、妊婦および免疫不全患者との接触は避けるべきである。ウイルスは主に直接の接触によって伝搬する。また播種性帯状疱疹の場合などでは空気を介しても伝搬しうる。studyではvaricella zoster virus DNAが帯状疱疹患者13人中9人の病室の空気サンプルから検出されたと報告している(27)。専門家は局所に限局する帯状疱疹患者に接触する場合はstandard precautionと手袋の使用を推奨している。重度の免疫不全患者が帯状疱疹を発症した場合は伝染性がなくなるまで厳格なairbornおよび接触における隔離を行う必要がある。播種性帯状疱疹を発症した全ての患者においてairbornおよび接触における隔離を行う必要がある(28)

 

 

 

Other complications

 

対側麻痺

varicella zoster virusは中枢神経系血管炎を起こし、trigeminal zosterの対側麻痺をきたす脳梗塞様症状を発症する場合がある(21)。病態はvaricella zoster virusが三叉神経第一枝から直接脳血管に侵入することで、皮疹と同側の内頚動脈あるいはその分枝に炎症を起こし発症すると考えられている。herpes zoster ophthalmicusの後発性合併症として対側麻痺が起こり、皮疹発症から神経症状発症までの平均期間は7週間であるが、最大6ヶ月との報告もある。herpes zoster ophthalmicus発症から数週から数ヶ月後に片側麻痺をきたした患者ではvaricella zoster virusに関連する中枢神経系血管炎の可能性を考慮する必要がある(21,29)

 

 

multifocal vasculopathy

varicella zoster virusの中枢神経への播種が免疫能正常患者において稀にmultifocal vasculopathyを発症する。これは免疫不全患者により多く認められる(21)。帯状疱疹の急性期あるいは経過後に意識障害あるいは神経所見を認める場合はvaricella zoster virusによるmultifocal vasculopathyの可能性を考慮する必要がある。TIA、脳梗塞、急性あるいは亜急性のせん妄などが、頭痛、髄膜刺激症状、発熱、失調、痙攣などの他の症状を伴って発症しうる。たとえ皮疹がなくてもmultifocal vasculopathyがTIAや脳梗塞の原因となりうる。40%のvaricella zoster virus vasculopathyの患者では皮疹が認められなかった。症状は帯状疱疹発症の30日前から発症6ヶ月後まで起こりえる。適切に治療された帯状疱疹患者での発症も報告されている。varicella zoster virus vasculopathyの診断基準はMRIあるいはCTにて虚血所見を認め、かつ髄液のPCR assayでvaricella zoster virus陽性が確認されることである。病理学的検査では中枢神経小血管の血管炎であることが示唆されている。herpes zoster血管炎に対する抗ウイルス薬治療を前向きに調べた試験はないが、acyclovir静注が有効であったとの報告は存在する

 

 

 

 

 

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Annals of Internal Medicine

IN THE CLINIC

7 August 2018