レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

尿路感染症

 

尿路感染症には一般的に以下のものが含まれる

無症候性細菌尿、急性単純性膀胱炎、再発性膀胱炎、カテーテル関連無症候性細菌尿、カテーテル関連尿路感染症、前立腺炎、腎盂腎炎

 

 

 

尿路感染症のリスクは男性より女性の方が、特に閉経前の方が高い。他には糖尿病、神経因性膀胱、脊髄損傷、妊娠、前立腺肥大、また留置尿路カテーテル(30日以上)や尿路ステント留置などに関連する排尿問題を有する患者でもリスクが高まる(1, 2)

 

 

 

無症候性細菌尿を認める女性では症状を有する尿路感染症のリスクが高まるが、それに対する抗菌薬治療は尿路感染のリスクを減らさない(3)。無症候性細菌尿のスクリーニングおよび治療が推奨されるのは妊婦、およびTURP (transurethral resection of the prostate) やその他粘膜出血の可能性のある泌尿器科侵襲的手技を受ける患者である(4)

 

 

 

尿路感染症を繰り返す女性では抗菌薬の予防的投与を行う場合がある。予防的投与は性交後に、あるいは継続的に行われる。 年に3~4回尿路感染を発症する女性、特に性行に関連して発症する場合は、性交後の予防的投与が高い有効性を認めている 

(前年に2回以上培養で確認された尿路感染を発症した女性で行われたrandomized, double-blind, placebo-controlled trialではプラセボ投与グループの感染率が3.6 per patient per year であったの対し、性交後にtrimethoprim-sulfamethoxazole 40mg/200mg)を一回投与したグループでは感染率が0.3 per patient per yearであった(5))

 

 

 

より頻回の尿路感染を繰り返す女性では抗菌薬の継続的予防投与が行われる(daily, thrice-weekly, or weekly)。ただ尿路感染の発症率が減るのは抗菌薬投与中のみで、多くの場合投与中断後にもとの発症率に戻る

 

  

 

クランベリージュースが尿路感染の予防に有効かどうかの議論は続いている。cochrane review and meta-analysisは尿路感染予防にクランベリージュースは推奨されないとの結論を出している(6)が、他のmeta-analysisではクランベリーを含む製品が尿路感染の予防に有効であることが示されている(7) 

 

  

 

閉経後の女性ではエストロゲン製剤の膣外用投与が尿路感染の頻度を減らす可能性がある。2008年の2つのスタディのcochrane systematic reviewではエストロゲン膣外用投与が閉経後女性の尿路感染の頻度を減らすとの結論を出している(8)。Society of Gynecologic Surgeons Systematic Review Groupのガイドラインではエストロゲン膣外用を尿路感染を繰り返す閉経後女性への投与を推奨している(9)

 

  

 

尿路感染症の最も一般的な症状は、尿路カテーテルを留置されていない場合では、排尿時痛、頻尿、尿意切迫である。尿路感染である可能性が高まる症状は排尿時痛、血尿、costovertebral-angle tendernessである。逆にvaginal dischargeやirritationを認める場合は尿路感染の可能性が下がる(10)

 

 

 

尿路カテーテルを留置されている場合ではカテーテル関連尿路感染症を示唆する症状は発熱、悪寒、意識障害、他に原因を認めない倦怠感、側腹部痛、costovertebral-angle tenderness、血尿、骨盤部痛などである

 

 

 

ガイドラインでは1000 colony-forming units per milliliter of urine以上ではカテーテル関連尿路感染症と診断可能であるとされている

 

 

  

カテーテル関連尿路感染症の多くの症状は非特異的であるため、診断する前に他の感染症や原因を検討する必要がある。カテーテル関連尿路感染症とカテーテル関連無症候性細菌尿を鑑別するのはchallengingである

 

 

 

sexually transmitted diseaseは常に尿路感染症の鑑別診断として考慮される必要がある。vaginal dischargeなどの示唆する症状の有無を問い、それが認められる場合は検査が必要となる

 

 

 

抗菌薬の投与期間が異なるため、膀胱炎として治療を開始する前に常に腎盂腎炎の可能性を考慮する必要がある。膀胱炎の症状で来院した患者には発熱、嘔気、嘔吐、悪寒、側腹部痛がないことを確認する必要がある。尿路症状と発熱を有する男性の場合では前立腺炎と腎盂腎炎を鑑別診断として考慮する

 

 

  

排尿時痛や頻尿などの典型的症状を有する女性で他の診断や合併症を示唆する症状を認めない場合は検査を行うことなしに膀胱炎として治療を開始することが可能である 

 

 

  

膀胱炎の症状を有する女性ではpositive urine dipstickが診断の補助になりうるが、検査前確率が高い場合はurine dipstick検査が陰性であっても除外診断することはできない(10, 11)。したがって明らかな尿路感染症状を有する場合はdipstick testは不要である

 

 

 

膀胱炎症状を有する女性では他の鑑別診断のために必要、あるいは基礎疾患の有無の評価のために必要である場合を除いて、血液検査を行う必要はない。腎盂腎炎を発症する女性の30%は菌血症を合併するため、血液培養採取は起因菌同定に有効となる。糖尿病を有する患者や腎移植を受けた患者では菌血症を合併する可能性が高いため、全身性の症状を有する場合は血液培養評価が必要である(12, 13)

 

 

  

単純性膀胱炎では一般的に女性の場合は尿培養は不必要であるが、妊婦と男性の場合は行う必要がある

 

 

Escherichia coliが単純性膀胱炎と腎盂腎炎の起因菌の90%を占める。他にはKlebsiellaやProteusが含まれる。Staphylococcus saprophyticusは特に基礎疾患のない女性の単純性膀胱炎と腎盂腎炎の5-10%を原因となる。短期間の尿路カテーテル留置患者ではカテーテル関連尿路感染症の起因菌としてはE coli、他には院内感染菌としてKlebsiella、Citrobacter、Enterobacter、Pseudomonas、coagulase-negative staphylococci、enterococci、Candidaなどがある。長期のカテーテル留置患者では典型的には複数菌による感染となる。上記の菌およびProteus、Morganella、Providenciaなどが起因菌となる(14)

 

  

 

女性における単純性膀胱炎において尿培養で認められた大腸菌群、S saprophyticus、Enterococcus以外の菌、例えばlactobacilli、α-streptococci、S saprophyticus以外のcoagulase-negative staphylococciなどはcontaminantsと考えられることが多いが、複雑性尿路感染症においてはほぼ全ての尿培養菌を起因菌として検討する必要がある

 

 

  

単純性膀胱炎では画像検査(腹部単純X線、腹部エコー、CT、excretory urography)を行う必要はない。interventionを要する膀胱閉塞、尿路結石などの解剖学的異常を診断する場合には必要となる

 

 

 

近年のスタディでは救急外来において発熱を伴う尿路感染症患者に画像検査を行うかの判断のために、尿路結石の既往、尿pH 7.0以上、腎機能低下(GFR 40以下)からなる指標を使ったclinical prediction ruleが提示された。このruleに従えば臨床outcomeを失することなしに画像検査の数を40%減らすことが可能であるとされている(15)

 

 

 

尿路感染の治療はhost factor(性別、免疫機能、泌尿器科的異常、等)、重症度、多剤耐性菌リスクに基づいて行われる

 

 

 

抗菌薬を選択する場合、妊娠および授乳の有無、他の薬剤との相互作用、アレルギー、最近の抗菌薬使用、他の感染症の有無、旅行歴、過去の培養結果、等を考慮する必要がある

  

 

 

単純性尿路感染症治療として次の四つの抗菌薬がfirst-line therapyとして、また代替薬として二つの抗菌薬が推奨されている 

 

第一選択

 

nitrofurantoin

100mg 1日2回5日間

組織浸透性が低いため腎盂腎炎の可能性がある場合には使用できない。FDA pregnancy category B 

  

 

TMP-SMX

160/800mg (1 DS tablet) 1日2回3日間

耐性菌が増えているので使用の際には注意を要する。FDA pregnancy category C(妊婦での使用を避けるべき)

  

 

pivmecillinam

米国では現在使用できない。他の薬剤に比較して効果が劣るが耐性菌の頻度が低いためヨーロッパの特定の国では第一選択薬として人気がある

 

 

fosfomycin trometamol

3 gram 1回投与

米国での使用頻度は低い。他の薬剤に比較し効果は低い可能性がある。腎盂腎炎の可能性がある場合は使用できない。しかしsurveysではESBL産生グラム陰性桿菌などの多剤耐性菌に対するactivityが有していることが示された。FDA pregnancy category B 

 

 

代替薬

 

βラクタム剤 

投与量は薬剤に準じる。投与期間5~7日

一般的に効果は劣り、副作用の頻度も高いため代替薬として使用される

  

 

fluoroquinolone

ofloxacin, ciprofloxacin, levofloxacin

投与量は薬剤に準じる、投与期間3日間

効果は高いが重篤な副作用が利益を上回るため最後の選択薬としての位置付けに変更となった。他に抗菌薬が使用できない時にのみ使用することが推奨されている

 

 

 

 

男性での単純性尿路感染症における抗菌薬の最適投与期間に関するデータは限られている。Observational studyでは抗菌薬14日間投与グループは7日間投与グループに比べ利益が認められなかった上、Clostridium difficile感染の頻度が高かった(16)

 

 

 

腎盂腎炎はtissue-invasive diseaseなのでinitial empirical regimenは可能性の高い起因菌をカバーするに十分なほどbroadにする必要がある。また複雑性尿路感染(妊娠、尿路結石、尿路閉塞、等)を除外しなければならない。また、経口摂取が可能か、入院が必要か、fluoroquinolone耐性およびESBL産生菌の可能性があるか、等の評価をする必要がある(17)

 

 

 

腎盂腎炎において経口抗菌薬治療が可能な場合はciprofloxacin 7日間投与が推奨される(fluoroquinoloneのlocal resistance rateが10%を超えない場合)(17)。1日1回投与の長期作用型のciprofloxacinおよびlevofloxacinも投与可能であるが、dataは限られている(18)。TMP-SMXも起因菌感受性が陽性の場合は投与可能であるが10~14日の投与期間を必要とする。βラクタム剤は効果が劣るので推奨されない

 

 

 

腎盂腎炎の外来治療において起因菌感受性が不明の場合は経口薬を開始する前に静注薬初回投与(ceftriaxone 1gram、ertapenem 1gram、長期作用型aminoglycoside)が推奨される。ciprofloxacinとTMP-SMXを比較したスタディではceftriaxoneを静注投与されてからTMP-SMXを開始したグループにおいてoutcomeの向上が認められた

  

 

 

急性単純性腎盂腎炎治療経口抗菌薬

 

fluoroquinolone

ciprofloxacin 500mg 1日2回 5~7日間

ciprofloxacin XR 1000mg 1日1回 5~7日間

levofloxacin 750mg 1日1回 5~7日間

 

TMP-SMX 

160/800mg (1DS tablet) 1日2回 10~14日間投与

 

β lactams

投与量は各薬剤に準じる 10-14日間投与

効果が劣るため、他の薬剤が投与できない時のみ考慮する

  

 

 

 

入院において静注薬治療を行う場合は感受性が判明するまではbroad-spectrum agentを投与する必要がある。Pseudomonasあるいは多剤耐性菌のリスクがある重症患者ではcarbapenem(imipenem-cilastatin、ertapenem、meropenem、doripenem)の投与が必要となりうる

 

 

 

カテーテル関連尿路感染症での抗菌薬の推奨投与期間は抗菌薬に反応が良好な場合は7日間、反応が遅い場合は10~14日間である

 

 

 

カテーテル関連尿路感染においてカテーテル留置期間が2週間以上の場合は、抜去あるいは交換する必要がある(19)

 

 

 

 

 

 

 

UpToDate

 

単純性腎盂腎炎治療静注抗菌薬

local resistance rateに基づいてfluoroquinolone、aminoglycoside +/- amipicillin、extended-spectrum cephalosporin、extended-spectrum penicillin、carbapenemを開始する 

 

 

カテーテル関連尿路感染治療抗菌薬

重症でない場合

ceftriaxone 1gram iv 24時間毎 

cefotaxime 1gram iv 8時間毎 

ciprofloxacin 500mg 経口/ 400mg iv 1日2回

levofloxacin 250-500mg 経口/iv 24時間毎

 

重症の場合

ciprofloxacin 400mg iv 1日2回

ceftazidime 1gram iv 8時間毎 

cefepime 1gram iv 12時間毎

ESBLの可能性がある場合はcarbapenemを投与

尿グラム染色においてgram positive cocciを認める場合はvancomycin ivを追加

投与期間7~14日間 

 

  

複雑性腎盂腎炎治療静注抗菌薬(*)

軽症~中等症

ceftriaxone 1gram iv 24時間毎 

ciprofloxacin 400mg iv 12時間毎 

levofloxacin 750mg iv 24時間毎

aztreonam 1gram iv 8~12時間毎

 

重症

cefepime 2gram 12時間毎

piperacillin-tazobactam 3.375 gram iv 6時間毎

ceftolozane-tazobactam 1.5gram iv 8時間毎

ceftazidime-avibactam 2.5gram iv 8時間毎

meropenem 500mg iv 8時間毎

imipenem 500mg iv 6時間毎

doripenem 500mg iv 8時間毎

 

投与期間7~14日間

 

 

(*)複雑性尿路感染症に含まれるもの

・コントロール不良糖尿病

・妊娠

・院内感染 

・急性腎障害あるいは慢性腎臓病

・尿路閉塞あるいはその疑い

・尿道留置カテーテル、stent、nephrostomy tube、urinary diversion 

・機能的あるいは解剖学的尿路異常

・腎移植

・免疫不全

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

3 October 2017 Volume 167 Number 7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インフルエンザ

 

インフルエンザAはウイルス表面の2つの主な糖タンパクに基づいてサブタイプに分類される(H: hemagglutinin (16種類), N: neuraminidase (9種類), H1N1, H3N2が人でよく流行する)。遺伝子が比較的不安定で流行しやすい

 

 

 

インフルエンザBはAに比べ多様性が少なく亜型分類されない。流行株はB/victoriaとB/yamagataという二つのグループに大別することができる。それぞれの抗原の差異はAに比べて小さく、Bに対する免疫やワクチンはほぼ同一であるため、Bのいずれかに感染、あるいはワクチン接種をすればB全てに対してほぼ一定の効果を得られる

 

 

 

米国においてインフルエンザは12月から3月にかけてピークを迎えるが、地域によっては4月あるいは5月でも認められる。インフルエンザBは一般的にAに比べ遅いピークを迎えより長く流行する

 

  

 

感染による合併症や入院のリスクが高いのは、5歳以下の小児、65歳以上の高齢者、妊婦、施設入居者、慢性疾患既往、免疫不全患者、19歳以下でアスピリン長期服薬中、重度肥満者(BMI>40kg/m2)等である

 

 

 

年齢6ヶ月以上のすべての人が毎年ワクチン接種を行うことが推奨されている

  

 

 

近年のスタディではワクチンの効果がインフルエンザのシーズン中に弱まっていく事が示されている。よって夏にワクチン接種を行うのは早すぎる可能性がある。それ以降かつ10月の終わりまでに接種することが理想的である(1, 2, 3)

 

 

 

ワクチンの効果はシーズン毎に変わり、また年齢、基礎疾患、免疫機能、そしてワクチン株と流行するインフルエンザ抗原の一致の程度など、様々な要因の影響を受ける

 

   

 

ワクチンの効果はインフルエンザの型またインフルエンザAのサブタイプによっても変わる

(近年のsystematic review and meta-analysisではワクチンの有効率はインフルエンザA(H1N1)で61%、インフルエンザBで54%、インフルエンザA(H3N2)で33%であった。インフルエンザA(H3N2)でワクチン株がよく一致した場合は有効率33%、しかし抗原連続変異があった場合は23%であった)(4)

 

 

 

ワクチンはインフルエンザ感染による入院を防ぐことに中等度有効である(5, 6, 7, 8)

 

 

 

抗原の含有量を増やしたワクチンの方がより有効であるかもしれない

50歳以上の成人8500人以上で行われたrandomized controlled trial では各hemagglutinin抗原の含有量を3倍にしたrecombinantワクチンは通常量の抗原を含むワクチンに比べより有効であることが示された(9)。また各抗原の含有量を4倍にした不活化ワクチンは通常の抗原含有量の不活化ワクチンに比べnursing home居住高齢者の呼吸器疾患に関連する入院を減らすことが認められた(10)

 

  

 

現在米国では様々な種類のインフルエンザワクチンが利用可能である

各ワクチンは以下の組み合わせによって種類が異なる

 

・不活化・生・遺伝子組み替え

・ 鶏卵培養・哺乳類細胞培養

・通常量抗原含有・高量抗原含有 

・三価・四価(三価は2つのインフルエンザA抗原(H3N2とH1N1)および1つのB抗原を含み、四価は上記2つのA抗原と2つのB抗原(B/YamagataとB/Victoria)を含む)

 

1. inactivated, standard dose, egg-grown, trivalent

2. inactivated, standard dose, egg-grown, quadrivalent

3. inactivated, standard dose, cell culture-grown, quadrivalent

4. inactivated, standard dose, egg-grown, quadrivalent, intradermal

5. inactivated, high dose, egg-grown, trivalent

6. adjuvanted inactivated, standard dose, cell culture-grown, trivalent

7. recombinant, high dose, trivalent

8. recombinant, high dose, quadrivalent

9. live attenuated, egg-grown, quadrivalent, intranasal

(4は皮下注、9は経鼻投与、それ以外は筋注投与である)

 

  

 

経鼻投与可能な生ワクチンがFDAに承認されたが、効果が特にインフルエンザA(H1N1)に対して弱いことが確認されたためCDCは2016から2018年のシーズンに使用しないことを推奨している(1)

 

 

 

インフルエンザワクチンは妊婦に投与しても重大な妊娠あるいは胎児への合併症を認めなかった(11, 12, 13, 14, 15)

 

 

 

インフルエンザワクチンがギランバレー症候群発症のリスクを高めるかどうかははっきりしていない

(observational studiesのsystematic review and meta-analysisではインフルエンザワクチンとGBSがわずかに関連することが示された(16)。一般的には、以前にインフルエンザワクチン投与6週間以内にGBSを発症した人でインフルエンザ感染による合併症リスクの低い人はワクチン接種をしない事が推奨されている。インフルエンザ感染による合併症リスクの高い人の場合はGBSのわずかなリスクよりワクチン接種による利益が上回る。またインフルエンザ感染自体によるわずかなGBS発症のリスクも減らしうる(17, 18))

 

 

 

インフルエンザワクチンの多くは鶏卵培養で作られるが、ワクチンによる重度のアレルギー反応は、卵アレルギーの人でさえ稀である。卵のアレルギーによって蕁麻疹のみが出る人にもインフルエンザワクチンは投与できる。卵のアレルギーによって血管浮腫、呼吸困難、めまい、嘔吐を認める人、あるいはエピペンを必要としたり、アナフィラキシーによって緊急対応を要する人の場合でさえ入院あるいは外来にて医療従事者の監視のもと投与することが可能とされている(1)

  

 

 

正常免疫能で合併症を伴わないインフルエンザ感染の症状を発症した人はおよそ4~7日間上気道からウイルスを排出するとされているが、一般的には3日目以降劇的にウイルスの排出および伝染性は下がる

 

 

 

randomized clinical trials の systematic review and meta-analysisではフェイスマスクを伴う手洗いが家庭内でのウイルス伝染(laboratory-confirmed transmission)を減らす事が示された(手洗いのみでは認められなかった)(19)。他のreviewでは手洗いやフェイスマスクがウイルス伝染を減らす効果は認められなかったが、その多くのスタディに欠陥が指摘されている(20)

 

 

 

neuraminidase inhibitorであるオセルタミビルと吸入薬ザナミビルがインフルエンザ予防薬として承認されている。予防薬は施設でのoutbreakに重要な役割を果たす。オセルタミビルはインフルエンザ予防薬としてnursing homeにおけるoutbreakのコントロールに有効である事が確認されている(21, 22, 23)。nursing homeでoutbreakが起こった場合は全ての居住者に予防薬を投与する事が推奨されている。予防薬は少なくとも2週間、outbreakの期間から1週間は長く投与されるべきとされている

 

 

 

インフルエンザが流行している最中は臨床診断のため、あるいは治療薬を処方するか判断する目的のためにインフルエンザの診断テストを行う必要はない (24)。テストの結果が臨床マネージメントに影響する場合は考慮する

 

  

 

重篤な患者では上気道のみからサンプルを採取した場合、RNA検査でも偽陰性となる可能性がある。気管チューブからの吸引あるいは気管支洗浄液によるサンプル採取によってインフルエンザ診断が可能となる場合がある(25, 26)

 

  

 

インフルエンザテストのsensitivityは、大人より子供の方が、咽頭より鼻咽頭から採取した方が、そして発症から数日以内にテストした方が一般的には高いとされている

 

 

 

インフルエンザ診断テスト

Rapid diagnostic test

antigen detection,   10 min,    low-moderate sensitivity,  high specificity

Rapid molecular assay

viral RNA detection,   15-20 min,    moderate-high sensitivity,  high specificity

Molecular assay

viral RNA detection,    60-80 min,    high sensitivity,  high specificity

 

   

 

Rapid diagostic testはsensitivityが高くないため偽陰性がよく認められる。入院患者ではmolecular assayによる検査が推奨される(27) 

 

 

 

インフルエンザの合併症は多岐にわたる

(中耳炎、心筋炎、心内膜炎、痙攣、脳炎、急性壊死性脳症、急性散在性脳脊髄炎、ギランバレー症候群、筋炎、横紋筋融解など)

 

  

 

発熱が3~5日間以上続く、症状が悪化する場合等は細菌感染の合併による肺炎あるいは髄膜炎の可能性を考え、血液、培養、画像検査などを考慮する

 

   

 

アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱剤は水分喪失、また頻脈などによる代謝亢進を防ぎ、悪寒や筋痛などの症状を緩和する

(解熱剤治療が発症期間を長くしたり、または短くするという明らかなエビデンスは認められていない)

 

 

 

アスピリンあるいはアスピリンを含有する薬剤はインフルエンザあるいはその疑いの患者、特に小児および若年者ではReye syndrome のリスクがあるため避けるべきとされている(28, 29)

 

  

 

インフルエンザAおよびBに有効なneuraminidase inhibitors (経口オセルタミビル、吸入ザナミビル、静注ペラミビル)がインフルエンザの治療に推奨されている

 

オセルタミビル 

治療:75mg 経口1日2回5日間投与(重症患者ではより長い投与が必要となりうる)

予防投与:75mg1日1回(投与期間は暴露の期間に準ずる)

CDCによって入院患者の治療に推奨されている

腎機能低下では投与量の調整が必要となる

  

ザナミビル

治療:2吸入(10mg)1日2回5日間投与

予防投与:2吸入(10mg)1日1回(投与期間は暴露の期間に準ずる)

吸入ザナミビルはdataがないため入院患者治療には推奨されていない

  

ペラミビル

治療:600mgを15~30分かけて1回静注(1回投与がオセルタミビル5日間投与に匹敵する)

予防投与:適応なし

外来投与が推奨されている(入院患者治療の効果に関するdataは不十分である)

 

 

 

重症患者ではオセルタミビルを経口胃管あるいは経鼻胃管から投与する事が可能である

 

 

 

adamantane薬剤(アマンタジン、リマンタジン)はインフルエンザBに対する効果がなく、また現在流行しているインフルエンザ A(H1N1, H3N2)も抵抗性を示すためインフルエンザ治療に推奨されていない

 

 

 

CDCはインフルエンザ感染が確認された、あるいは疑いのあるすべての入院患者に対しneuraminidase inhibitorを検査結果を待たずにできるだけ早く投与開始することを推奨している

 

 

 

インフルンザで入院した患者のobservational dataでは抗ウイルス薬の投与開始が発症時に近いほど臨床効果が大きいことが示されたが、発症から48時間以降の投与でも投与しない場合に比べ利益がある事が示された(30)

 

  

 

外来ではインフルエンザが診断された、あるいはその疑いがあり、合併症リスクの高い患者では抗ウイルス薬治療が、たとえ発症から48時間以上経過していても、推奨される 

 

 

外来において発症から48時間以内に訪れた合併症リスクの高くないインフルエンザ、あるいはその疑いのある患者では抗ウイルス薬治療を行うかどうかは臨床判断に委ねられる

 

 

合併症を伴わないインフルエンザ患者の外来治療におけるrandomized clinical trialsでは発症48時間以内にneuraminidase inhibitor 治療を開始した場合、インフルエンザの発症期間をおよそ0.6~1日間短縮することが示された(31, 32)

 

 

 

成人外来患者におけるオセルタミビルとプラセボを比較したrandomized controlled trialsのmeta-analysisでは オセルタミビル投与が抗菌薬治療を要する下気道感染合併およびいかなる理由による入院のリスクを減らす事が示された(31)

 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

5 September 2017 Volume 167 Number 5

 

 

肥満

 

肥満の割合はアメリカおよび世界中で過去40年間劇的に増え、そして現在も多くの国で増加し続けている

 

 

 

多くの肥満関連疾患は脂肪組織の代謝の影響に起因している

(肥満関連疾患:多数

(他:心房細動、うっ血性心不全、深部静脈血栓、悪性疾患(大腸癌、閉経後乳癌、子宮癌、)、逆流性食道炎、びらん性胃炎、尿路結石、タンパク尿、慢性腎臓病、前立腺肥大、偏頭痛、インフルエンザ悪化、等)

 

 

 

肥満と死亡率の相関関係は J 型カーブを呈し、BMI 20.0~24.9kg/m2(標準体重)で最も低いと伝統的にはされてきた

 

 

 

最近の97の試験のメタアナリシスではBMI 25.0~29.9kg/m2の方が標準体重よりわずかばかり死亡率が低いことが示され(1)、肥満と死亡率の相関関係は議論の余地を有している

 

 

 

overweight(体重過多:BMI 25.0~29.9kg/m2)あるいはクラス1肥満(BMI 30.0~34.9kg/m2)が死亡率増加に関係するか否かに関わらず、それらのグループは2型糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸および心血管疾患などの合併疾患の発症に強く関連している

 

 

 

重度肥満に対して肥満治療手術を受け、初期の体重から15~25%低い体重を維持したグループでは全ての原因による10年後死亡率を29%減少させたことが示された。主には心血管疾患および癌関連による死亡率の減少よるものであった(2)

 

 

 

肥満予防に関する有効な行動には、食べ物のラベルを読む、一回に食べる量を減らす、果物・野菜を食べる(5 servings per day)(*)、適量の線維をとる(25g/日)、運動(45~60分/日)、仕事でのストレスを減らす(3)、車通勤の制限(4)、適度な睡眠(6~9時間)(5)などがある

 

(*)1 serving:

生野菜1カップ、調理された野菜1/2カップ、野菜ジュース3/4カップ、中等のリンゴ・バナナ・オレンジ 、缶詰あるいは調理された果物1/2カップ、フルーツジュース3/4カップ

 

 

 

 

内科医は時に患者の内服薬を確認することによって肥満予防に介入できる場合がある(体重増加に関連する薬剤(★))

 

 

 

 

計120877人を12~20年追跡した3つのコホート試験を組み合わせた結果から最も強く肥満と関連を示したものはポテトチップス、じゃがいも、赤みの肉、加糖飲料の摂取であり、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、ヨーグルトの摂取は逆の相関を示した(6)

 

 

 

 

肥満の親しい友人あるいは家族がいる場合は肥満のリスクが 上がる可能性が示唆されている(7)

 

 

 

BMIを使って肥満の診断を行うことが推奨されている

overweight:  25.0~29.9kg/m2

class 1:  30.0~34.9kg/m2

class 2:  35.0~39.9kg/m2

class 3:  40.0kg/m2以上

(class 3の名称は以前使われていたmorbid obesityからextreme or severe obesityに変更された)

 

 

 

東アジアでは糖尿病のリスクはBMI 23kg/m2以上から増加する(中国人、日本人他)

 

 

 

中心性肥満は糖尿、高血圧のような肥満関連疾患のリスクを高める内臓肥満によく相関している。ウエスト周囲径は中心性肥満に関しBMI以上に情報を提供する

 

 

 

医師はoverweight およびclass 1肥満の患者においてウエスト周囲径を測定すべきである

(BMI 25kg/m2以下あるいはclass 2以上の肥満においてはウエスト周囲径がリスクに関するさらなる情報をもたらす事はない) 

 

 

 

ウエスト周囲径は腸骨稜上で通常呼吸の呼気後に測定する

男性では88cm以上、女性では100cm以上がウエスト周囲径上昇とされる

 

 

 

患者は治療者が「肥満」という単語よりも、「体重」(あるいは weight problem)という言葉を使うことを好むことがスタディから示されている

 

 

 

治療者は「今日は体重に関してお話してもいいですか」という問いから開始する

(「減量する必要がある」と、多くの場合患者が既に自覚していることを単に言われるよりも、上記のように切り出すことによって患者の懸念に関する話をする機会を与える事ができる)

 

 

「現体重の5~10%減量するだけで合併するコンディションをかなり改善する可能性があります」 という説明によって患者に体重節制に関する希望を与える可能性がある

(患者は25%あるいはそれ以上減量しなければ成功でないと考えている場合が多い)(8)

 

 

 

肥満に関する治療には生活習慣改善、薬物治療および手術療法がある

(推奨されるアルゴリズムでは生活習慣改善は BMI 25kg/m2 以上から、薬物治療はBMI 30kg/m2 以上で生活習慣改善だけでは十分な減量ができない場合(合併疾患を有する場合は 27kg/m2 以上から)、手術療法はBMI 40kg/m2 以上から(合併疾患を有する場合は 35kg/m2 以上から)考慮する必要がある、とされている)(9)

 

  

 

カロリー制限が生活習慣改善による減量の鍵になる

(患者は摂取カロリーを500~1000kcal/日 減らす方が同等量のカロリーを運動によって消費するよりもかなり容易であると多くの場合感じる(およそ500ccの加糖飲料を2回控えるか、およそ8km歩くか、の選択において))

 

 

 

典型的には患者の1日必要摂取カロリーを計算し、そこから 500~1000kcal 差し引いたカロリー摂取を行い、週ごとにおよそ 0.5~1kg の減量を目指していく

 

 

 

カロリー摂取の処方は患者が正確にカロリー摂取量を測定できるという推測に基づいて行われるが、肥満患者は1日カロリー摂取量をおよそ40%少なめに評価することがスタディから明らかにされている(10)

 

 

 

この結果に基づいて113.6kg以下の患者では1200~1499kcal/日、113.6kg以上の患者では1500~1800kcal/日の目標カロリー摂取量が処方される

(患者の1日カロリー摂取量の過小評価を考慮した処方)

 

 

食事療法には低脂肪ダイエット、低炭水化物ダイエット、Meal-replacement diet(シェイク、meal bars)など様々なものがあるが、多くのスタディにおいて長期的には主要栄養素量が異なるダイエット間でも同等の減量を達成することが示されている。よってfederal dietary guidelinesに従ったダイエットが推奨される(11

 

 

 

運動は減量維持においてより重要な意味を持つ

 

 

 

週に275分(およそ1日40分)の運動を継続できる場合、長期的に減量した体重を維持できる可能性が非常に高くなる

 

  

 

減量した体重を維持する事は難しい

6ヶ月のプログラムを終えた患者の平均で減量した体重の三分の一が翌年の間に再度増加することが示されている。以前はこの体重の再増加は古い習慣への後退が原因だと考えられていたが、最近の研究では1年間で十分な減量を達成した後でも空腹を促すホルモン(ghrelin)が上昇したままである事や、満腹感を司るホルモン(leptin, amylin)が依然低下したままである事が明らかになり(12)、つまり生理的に体重再増加に向かう仕組みになっている事がわかった

 

 

 

 

FDAの承認を得ている肥満治療薬にはPhentermine,  Diethylproprion,  Benzaphetamine,  Phendimetrazine,  Phentermine-topiramate,  Lorcaserin,  Orlistat がある

 

 

Phentermine

米国において最も多く処方されている。交感神経刺激作用があるため血圧、脈拍のモニターが必要である(心血管疾患既往、コントール不良高血圧、緑内障、甲状腺機能亢進症、drug abuseでは禁忌)。短期間の使用が承認されている(12週間)

(他の交感神経刺激剤(Diethylproprion,  Benzaphetamine,  Phendimetrazine)の使用頻度は低い)

 

 

Phentermine-topiramate

2剤をそれぞれ単剤投与に比べ減量して組み合わせたもので、それぞれの副作用を減らす意図でつくられた薬剤。topiramateはてんかん治療薬で副作用の一つに体重減少がある。現在承認されている薬剤中で最も減量効果が高い(最初の体重の8~11%減量)。副作用は感覚低下、口腔乾燥、便秘、不眠がある。禁忌はphentermineと同じで、かつ尿路結石(topiramate)が含まれる。またtopiramateは妊娠においてcategory Xとされている

 

 

Lorcaserin

5HT2C受容体のアゴニストで食欲を制御する。セロトニン製剤を服用中の患者では注意が必要である(SSRI, SNRI)。重度の鬱および心血管疾患の既往では禁忌である

 

 

Orlistat

腸管での脂肪吸収の抑制によって減量効果を発揮する。プラセボに比べ3~4%の体重減量を認める(lorcaserinと同等)。市販薬としても利用できる。副作用には脂肪便や脂溶性ビタミン欠乏などがある

 

 

 

 

 

減量手術は BMI 40kg/m2 以上、あるいは BMI 35kg/m2 以上で少なくとも一つ以上の体重関連疾患を有する(2型糖尿、睡眠時無呼吸、重度の関節疾患、等)場合は一般的に適応となる。またlaparoscopic gastric bandingも BMI 30kg/m2 以上で2型糖尿を有する場合は施行がFDAで承認されている

 

 

 

米国で最も一般的に行われている減量手術は次の三つである

Adjustable gastric banding

Roux-en-Y gastric bypass

Sleeve gastrectomy(胃の75%を切除)

(すべて腹腔鏡下で可能な手術である)

 

 

 

減量手術は重度の肥満において最も効果の高い治療である

Randomized trials のメタアナリシスでは手術一年後における効果は gastric banding,  gastric bypass,  sleeve gastrectomy においてそれぞれ BMI が2.4kg/m2,  9.0kg/m2,  10.1kg/m2 減少したことが示された(13)

 

  

 

multicenter cohort studyでは減量手術を受けた患者において4.3%は少なくとも重大な合併症が認められた(死亡、深部静脈血栓症、再手術、failure to be discharged from the hospital)。また30日死亡率ではgastric banding,  laproscopic gastric bypass,  open gastric bypass においてそれぞれ、0%,  0.2%,  2.1% であった(14)

 

  

 

 

 

 (★)グルココルチコイド(prednisone)、糖尿病薬剤(insulin, sulfonylureas, thaizolidindiones, meglitinides)、第一世代抗精神病薬(thioridazine)、第二世代抗精神病薬(risperidone, olanzapine, clozapine, quetiapine)、神経疾患薬(carbamazepine, gabapentin, lithium, valproate)、抗ヒスタミン薬(特にcyproheptadine)、抗うつ薬(paroxetine, citalopram, amitriptyline, nortriptyline, imipramine, mirtazapine)、ホルモン製剤(progestins, 特にmedroxyprogesterone)、βブロッカー(特にpropranolol)、アルファブロッカー(特にterazosin)

 

 

 

 

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In The Clinic 

Annals of Internal Medicine

3 September 2013 Volume 159 Number 5

 

 

 

 

 

喫煙

 

米国において1965年以降タバコの使用数は半分以下に減っているが依然予防できうる死の原因第1位である(1)

 

 

多くの医師が喫煙治療に関する適切なトレーニングを受けておらず、多くの患者が禁煙に関する援助を受けていない

 

 

喫煙者は非喫煙者に比べ10年以上寿命が短くなることが示された(2)

 

 

およそ全ての癌による死亡の3分の1は喫煙に起因するとされている(3)

 

 

中年以降における虚血性心疾患による死亡の3分の2は喫煙に起因していることが示された(4)

 

 

米国において年間7300人の癌による死亡、および34000人の虚血性心疾患による死亡は受動喫煙に起因しているとされている

 

 

40歳以前に禁煙すれば喫煙に関連する死亡率を90%減少させる可能性が示された(2)

 

 

喫煙してきた癌患者が診断の時点で禁煙すれば死亡のリスクを30〜40%減少させるとされている(5)

 

 

癌診断後の喫煙の継続は癌の再発、他の原発癌の発症、癌治療抵抗性、外科的手術合併症、化学療法の必要性、放射線治療合併症のリスクを高めることが示された(1, 5)

 

 

禁煙10年後には肺癌発症リスクを50%まで減少させることが示された(1)

 

 

禁煙後2〜3年には虚血性心疾患による死亡のリスクが3分の2減少する事が示された(6, 7)

 

  

禁煙後2〜4年で脳卒中発症のリスクが非喫煙者と同等になるとされている(8)

 

 

喫煙歴に関わらず全ての年齢において禁煙は利益をもたらすことが示された(2, 4)

 

 

最近の二つの大きな後ろ向きコホート分析では55〜64歳で禁煙すれば、4年寿命が伸び、たとえ70歳以降に禁煙しても、その後も喫煙を継続するグループに比べ死亡リスクを減少させることが示された(2, 4)

 

 

ニコチンは最も中毒性のある物質の一つである(1)

 

 

タバコの離脱症状は抑うつ気分、不安、 易興奮性、集中力低下、食欲増加、情動不安、不眠などである(9)

 

 

離脱症状は典型的には最後の喫煙から数時間後に始まり、最初の1週間にピークを迎える。その後6週間、あるいはそれ以上持続しうる(10)

 

 

喫煙者の多くは18歳以前に喫煙し始めるので年齢、性別、既往歴にかかわらず全ての患者に喫煙の有無を問診することが推奨されている

 

 

電子タバコの蒸気にはタバコに比べその量は非常に少ないが有害物質が含まれる。FDAの統制を受けていないため製造工程は標準化されておらず、含まれる有害物質の量も異なりうるため、現時点において電子タバコは安全とは言い切れない(11, 12)

 

 

支援を受けずに禁煙できる確率は5%以下とされている(13)

 

 

医師からの簡易なアドバイスでさえも禁煙への有効性が認められている。その継続期間と頻度が禁煙成功に対し強い相関関係を有する(14, 15)

 

 

外来受診のたびに禁煙に対する簡易な臨床介入である”5As”を利用することが推奨されている(14)

 

 

5As

ASK: 受診のたびに喫煙に関して尋ねる

ADVISE: 禁煙を勧める(強く明確で個人に向けたメッセージで)

ASSESS: 禁煙に対するやる気を尋ねる(全員が禁煙の準備ができている訳ではなく、その場合は動機づけのカウンセリングを行う)

ASSIST: 禁煙を援助する(禁煙開始日を決める、行動を変える(代替となる行動、技術)、薬剤治療、援助(環境や誘引となるものへ介入))

ARRANGE: フォローアップ(対面・電話・メールにて、達成度・副作用・離脱症状をモニターする)

 

 

 

Meta-analysis において禁煙に関する他の治療を伴わない自己支援のアイテムは有効性が示されなかったが、個人ごとに調整されるものはそうでないものに比べ少ないながらも効果が認められている。最近ではアプリ、携帯、ウェブサイトに基づくプログラムなどがあり、その多くはエビデンスには基づかないものの、有害性も少ないため広く利用可能である(16)

 

 

6ヶ月以上の禁煙に対する鍼灸治療、指圧治療、光線治療による一致した有効性は認められなかった(17)

 

 

現在FDAに認可されているタバコ依存に対する薬物治療は7つある。そのうちの5つはNRT (nicotine replacement therapy)(パッチ、ガム、トローチ、吸入、鼻内噴霧)であり、その他2つは非ニコチン製剤である(bupropion, varenicline)

 

 

すべての喫煙者に対し禁忌でない限り薬物治療を行うことが推奨されている(14)

 

 

bupropion と NRT は同等の有効性を認め、varenicline は NRT単剤および bupropion より高い有効性を認めた(18)

 

 

 

 

nicotine replacement therapy

NRTによるニコチン伝達はタバコに比べて遅いので、喫煙者は喫煙と同等の快感は得られない(10, 14) 

 

全てのNRT製剤は動機付けされた人において6ヶ月での禁煙率を50〜70%増加させる(18)

  

タバコ1本でおよそ2mgのニコチンが伝達される。したがって1日1箱吸う喫煙者ではおよそ40mgのニコチンが吸収されるため、21mg1枚のニコチンパッチでは完全にはその渇望を満たせないかもしれない(14)

  

1つのNRT製剤に他のNRT製剤を追加することで有効性が増す(14)。典型的には長期作用型NRT(ニコチンパッチ)に短期作用型NRT(ガム、トローチ、吸入、鼻内噴霧)を追加する

  

NRT投与中は禁煙することが推奨されているが仮に喫煙してしまう場合でもニコチンパッチをはがさず、禁煙行動を続ける

(複数のNRT製剤を同時に使用、あるいはNRT製剤とタバコとの併用が重大なリスクをもたらすことはほとんどないとされている)

 

NRT製剤は心筋梗塞発症2週間以内、重度の労作性狭心症、重篤な不整脈においては慎重に投与すべきとされている(19)

(これらの患者ではNRT製剤による副作用より喫煙継続によるリスクの方が大きいと考えられる) 

 

 

NRT製剤

ニコチンパッチ( 25ドル / 2週間):

1日10本以上喫煙する場合は21mgから開始、4〜6週間後に14mgに変更、タバコに対する渇望がなければ2週間後に7mgに変更

 

ニコチンガム(35〜50ドル / 2週間):

必要時1〜2時間毎に投与(2m・4mg、ニコチン依存が強い場合は4mg)

 

ニコチン吸入(300ドル / 168 cartridges):

必要時吸入、1日16 cartridgesまで、口腔で吸収されるので深く吸い込む必要なし

 

ニコチン鼻内噴霧(300ドル / 4瓶):

必要時1時間毎に1〜2噴霧

 

ニコチントローチ(40〜50ドル / 72錠):

最初6週間は1日9〜15錠、その後減量(2mg・4mg、起床30分以内に喫煙していた場合は4mg)

 

 

 

 

bupropion

bupropionはセロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミンを抑制する。ニコチン報酬系に関与するドーパミンに対する作用によって効果を発揮すると考えられている(14)

 

体重増加が少なく、抗うつ作用を有する

 

主な副作用は不眠、不安、口腔乾燥、頭痛、皮疹である(20)

 

最近の痙攣、摂食障害などでは禁忌とされている。高血圧にも関与するので血圧のモニターが必要である 

 

禁煙開始1〜2 週間前から開始し、8〜12週間継続する

 

bupropion(150ドル / 1ヶ月):

150mg 毎朝投与を3〜7日継続、その後必要あれば300mg 1日1回に増量(典型的には8〜12週間投与)

 

 

 

 

varenicline

varenicline はニコチン受容体に対する partial agonist および antagonist として効果を発揮する

 

禁煙開始1週間前から開始する

 

最も一般的な副作用は嘔気、睡眠障害、消化器症状である。腎機能低下患者では投与量の調整が必要である。また異常行動、攻撃性、抑うつ、自殺行動などの神経精神症状に寄与する可能性も指摘されており、現在調査中である

 

varenicline(200ドル / 1ヶ月): 

0.5mg 1日1回で開始し1〜3日継続、続いて0.5mg 1日2回に増量し4〜7日間、その後1mg 1日2回に増量(12週間まで継続、効果があればさらに12週間継続)

 

 

 

 

医師および被治療者は禁煙に失敗しても諦めずに禁煙に対する行動を継続することが推奨されている

(多くの禁煙成功者は数回以上の禁煙失敗を経験している) 

 

 

電子タバコとニコチンパッチを比較した唯一の試験では禁煙率に有意差が認められなかったがその試験方法に重大な欠陥が指摘されている(21)。電子タバコに関するはっきりしたエビデンスが認められるまでは現在FDAに認可されているエビデンスに基づく治療を行うことが推奨されている(14)

 

 

多くの喫煙者が体重増加を禁煙しないことの理由としてあげるが、禁煙によってもたらされる健康に対する利益は中等度の体重増加によるリスクを上回ることを強調する必要がある

 

 

喫煙者は入院時により治療介入に反応を示すかもしれない

(入院した喫煙者に入院中および退院1ヶ月以内に行動変容に関する介入を行なった場合、禁煙を促進することが示された。またNRTをカウンセリングに追加した場合、カウンセリングのみ行なった場合に比べ禁煙率が増加した。カウンセリングに bupropion あるいは varenicline を追加した場合のはっきりしたエビデンスは示されなかった(22)) 

 

 

 

 

  

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In The Clinic

Annals of Internal Medicine

1 March 2016 Volume 164 Number 5

 

 

 

 

 

 

 

アルコール摂取

 

Alcohol Use Disorder(アルコール使用障害)で治療適応を有する患者のうち実際に治療を受けているのは4%以下である(1)

 

 

アルコール乱用は予防できうる死の原因の第3位にあたる(2)

 

 

低量のアルコール摂取が虚血性心疾患や虚血性脳疾患の発症予防に有効である事がobservational studies で示されているが、それを示すrandomized controlled trial はない(3, 4)

 

 

全ての成人へのアルコール摂取のスクリーニングが推奨されている

 

 

<最初の質問>

あなたは時々ビール、ワイン、あるいは他のアルコール飲料を摂取することがありますか

 

 

飲酒を認める場合

<NIAAA Single-Question Screening Item>

 

昨年一年間の間で一日のうちに 4 or 5 drinks 以上のアルコールを摂取することが何回ありましたか

男性:5 drinks、女性:4 drinks

(1 drink :  ビール 340cc、ワイン 140cc、スピリッツ(40%)42cc )

 

1回あるいはそれ以上あれば問題飲酒のスクリーニング陽性(sensitivity 73%,  specificity 84%)(5)

 

 

スクリーニング陽性の場合はさらに詳しく問診する

(平均週何日飲酒するか、平均1日にどのくらい飲酒するか、多量飲酒する日にちは何日あるか、・・・)

 

 

 

CAGE は広く使われているが生涯の間でのアルコール使用障害のスクリーニングには有用であるが、過去のものか、あるいは現在のものかの判別ができず、また比較的軽度の問題飲酒や過飲のスクリーニングには適切ではない

 

 

 

<lower-risk drinking>

男性では 4 drinks を超える日がない、あるいは週に14 drinks を超えない

女性では 3 drinks を超える日がない、あるいは週に7 drinks を超えない

 (1 drink :  ビール 340cc、ワイン 140cc、スピリッツ(40%)42cc )

 

 

<at-risk drinking>

上記の範囲を超える

 

 

 

<Alcohol Use Disorder(アルコール使用障害)診断基準>

・意図している以上の量あるいは時間、アルコールを摂取してしまう

・アルコールの減量あるいは節制をしたいと思っているができない

・多くの時間をアルコールの獲得、摂取あるいはその回復に費やしている

・アルコール摂取を渇望している

・アルコールのために日常業務をこなせない

・アルコール摂取による問題が起こっているにも関わらず、摂取し続けてしまう

・アルコール摂取のために重要な活動を断念あるいは制限してしまう

・身体に有害な状況になっているにも関わらず繰り返しアルコール摂取をしてしまう

・身体的あるいは精神的問題になる事を理解しているにも関わらずアルコール摂取を続けてしまう

・耐性

・離脱

 

 上記のうち2つ以上認めれば診断(軽度:2〜3、中等度:4〜5、重度:6以上)

 

 

 

アルコール離脱症状

・軽度:発汗、眼振、頻脈、反射亢進、血圧上昇、嘔気・嘔吐、発熱、下痢、軽度興奮

・幻覚(聴覚、視覚、触覚)

・離脱痙攣(最終摂取から12〜48時間後をピークに発症)

・振戦せん妄(興奮、混乱、振戦、幻覚、自律神経過活動)

 

 

 

アルコール離脱症状は最終摂取から早くて5〜8時間後、遅くて72時間後まで起こり得る(7)

 

 

 

アルコール離脱の評価および治療には CIWA (Clinical Institute Withdrawal Assessment for Alcohol) が最も一般的に使われている(6)

(10の評価項目に基づいてスコアリングを行う;軽度:7点以下、中等度:8〜15点、重度:16点以上)

 

 

 

アルコール離脱は症状に応じた量のベンゾジアゼピンを投与する方法が最も安全かつ効果的な治療法として広く行われている(8, 9, 10)

 

 

 

長時間作用型ベンゾジアゼピン(chlordiazepoxide, diazepam)が好まれて使用されるが、高齢者や肝疾患の患者では非長時間作用型ベンゾジアゼペン(lorazepam)を考慮する必要がある

 

 

 

<ベンゾジアゼピン投与>

・症状に基づいて投与

chlordiazepoxide 50-100mg,  or  diazepam 10-20mg,  or  lorazepam 2-4mg   1-2時間毎(症状が改善するまで)

 

・固定投与

chlordiazepoxide 50mg,  or  diazepam 10mg,  or  lorazepam 2mg  6時間毎 day 1

上記半量を6時間毎 day 2, day 3

 

 

 

全てのアルコール使用障害患者でアルコール使用再発を防ぐ薬物治療が考慮されるべきである(11)

 

 

 

FDA に承認されているアルコール使用障害再発予防薬は disulfiram, acamprosate,  naltrexone の三つである

 

 

 

4つのstudies の meta-analysis では disulfiram 治療によるアルコール使用障害の再発予防あるいは関連するアウトカムへの有効性は認められなかった(11)

 

 

16 の studies の meta-analysis では acamprostate によるアルコール使用再発を防ぐ number needed to treat は12 である事が示された(11)

 

 

acamprostate は1日3回投与であること、副作用による下痢が多いことなどの欠点があるが、腎代謝なので肝不全によって naltrexone を投与できない場合などに有用である

 

 

naltrexone によるアルコール乱用再発を防ぐ number needed to treat は12 であった(11)

 

 

 

 

 

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From IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

5 January 2016 Volume 164 Number 1

 

閉塞性睡眠時無呼吸

 

繰り返す上気道閉塞による酸化ヘモグロビン飽和度低下や生理的ストレスによって血圧上昇や心血管疾患が引き起こされる(1)

 

 

閉塞性無呼吸を示唆する症状を呈する患者のうち実際に評価され治療されているのは50人に1人のみである(2)

 

 

外来では全ての患者に対し睡眠に関する満足度や日中の眠気について問診することが推奨されている

 

 

スクリーニングの対象

・眠気による交通事故を起こした、あるいは起こしそうになった全ての患者

・職業運転手

・閉塞性無呼吸のリスクを要する

 

 

リスクファクター

 ・肥満(特にBMI>35)

 ・睡眠時無呼吸家族歴

 ・下顎後退症

 ・治療抵抗性高血圧

 ・うっ血性心不全

 ・心房細動

 ・脳卒中

 ・2型糖尿病

 ・肺高血圧症

 

 

テストステロン投与も閉塞性無呼吸の悪化および誘発の原因になり得るので、テストステロン投与中の患者ではスクリーニングが勧められる(3)

 

 

スクリーニング方法として Berlin questionnaire とSTOP BANG スクリーニングテストが広く使用されている

 

 

STOP-BANG

S: 大きないびきをかきますか(Snore)(閉めた扉を通しても聞こえるほど)

T: よく疲れますか(Tired)、日中に眠気が強いですか 

O: 睡眠中に呼吸が止まっている事を誰かに観察された(Observed)ことがありますか

P: 高血圧(high blood Pressure)の既往がありますか

B: BMI >35 

A: 50歳以上(Age)

N: 頸まわり(Neck) > 40cm 

G: 男性(Gender)

 

3つ以上当てはまる場合、閉塞性無呼吸の可能性が84%、5つ以上では中等度から重度の閉塞性無呼吸を示唆する(4)

 

 

統計上疾患の男女比は2:1であるが、専門家への患者紹介の比率は男女比9:1とも報告されている。女性での評価が不十分である事が示唆されている(5)

 

 

診断方法としては polysomnography が推奨されるが、患者が自宅で行える簡易で低費用な Home sleep testing(HST)の利用も増えている。検査前確率が高く心肺合併症のない患者では HST によって診断が確定できる事を示すエビデンスが認められている(6, 7)

 

 

検査前確率が低い、あるいは中等度の患者では HST による診断確定をサポートするエビデンスは示されていない。また HST は検査の信頼性が患者の認知機能に依存すること、閉塞性無呼吸の重症度を評価できない、などの欠点がある

 

 

閉塞性無呼吸重症度

軽度:5 < AHI < 15

中等度:15 < AHI < 30

重度:AHI > 30

(AHI: 時間あたりの無呼吸および低呼吸の頻度)

 

 

重症度に関わらず、日中の強い眠気を呈する患者では治療が推奨される

(特に交通事故を起こした、あるいは起こしそうになった事がある場合)(8, 9)

 

 

軽度あるいは中等度の閉塞性無呼吸で無症状の患者の場合、治療すべきかどうかは確定されていない

 

 

CPAPが症状を有する中等度から重度の閉塞性無呼吸患者の第一選択治療である

 

 

上気道閉塞に対する手術療法の多くは閉塞性無呼吸の重症度および症状を十分には改善しない(10)

 

 

下顎前方固定術は、特に非肥満で下顎後退症の患者において、90%の治癒率を示すが、侵襲が大きく術後回復に時間を要するため適応が限られる

 

 

酸素投与治療が閉塞性無呼吸による酸化ヘモグロビン飽和度低下改善に効果的ではあるが、症状、血圧上昇、心血管リスクを減らすことを示すエビデンスは乏しい(11)

 

 

閉塞性無呼吸の治療が心血管リスクを減らすかどうかははっきりしていない

 

 

閉塞性無呼吸はCPAP治療によって死亡率及び非致死的心血管イベントを減らす事が observational studies で示されているが(1, 12)、治療バイアスによる可能性も指摘されている

(CPAPを忠実に使用する患者の方が心血管治療に対してもより忠実である可能性がある)

 

 

 

 

From IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

4 November 2014 Volume 161 Number 9

 

 

 

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心房細動

 

・自覚症状は動悸や胸痛が比較的若い患者で多い一方、高齢者では倦怠感や呼吸困難感が多く認められる(1)

 

 

・日常的に症状を有する患者では診断にホルター心電図で十分なことが多いが、発症の頻度が少ない場合は1ヶ月モニターしても見逃す事もあり得る

 

 

・原因不明の脳梗塞では診断によって抗凝固療法が適応となる心房細動有無の評価のために埋め込み型モニターがより多く使用されるようになってきている(2)

 

 

・新規発症の心房細動を評価する場合、血液検査(電解質、甲状腺機能、腎機能、肝酵素)、便潜血反応、経胸壁心エコー等を評価する。また誘引となる急性疾患を見逃さないように注意する(心筋梗塞、肺血栓塞栓症、甲状腺機能亢進症等)

 

 

・心房細動治療の目的は症状緩和、塞栓症予防、心筋症予防の主に三つである

 

 

・WPW症候群を伴う心房細動では房室伝道が極めて速くなり得るため、緊急でcardioversionを要する事が多い

 

 

・入院適応

- 診断不明瞭あるいは不安定な不整脈の時

- 急性心筋梗塞、意識障害、非代償性心不全、血圧低下等を合併している

- 血行動態は安定していても症状が非常に強い

- 待機的cardioversionを行う時

- 塞栓症のリスクが非常に高く抗凝固療法を緊急で開始する時

- 特定の治療薬を開始する場合にモニターを要する時

 

 

・rhythm control よりも rate control が治療の主流であるが、若い患者や症状が強い患者では rhythm control を考慮する事が妥当とされる

(特に初回発症で症状を有する若年患者では 洞調律復帰後に抗不整脈投与なしで洞調律を維持できる事が多いので rhythm control が好まれる事が多い)

 

 

・rate control の目標は110 beats/min以下である(3)

 

 

・rate control の第一選択薬はβブロッカーあるいは非ジヒドロピリジンCaチャネルブロッカーである

 

 

・ジギタリスは運動に伴う頻脈を抑制せず、また心不全で交感神経が緊張している状況では効果が低い

 

 

・アミオダロンが rate control に使われる事があるが、副作用が多いため、他の薬剤が使用できない時に考慮される(4)

 

 

・アミオダロン以外の rhythm control 薬は一般的には効果が同等とされており、副作用等に基づいて選択される

(虚血性心疾患、構造的心疾患や重度の心不全がない場合はフレカイニドやプロパフェノンが有効とされる。ソタロールはβブロッキング作用を有するが、多少のnegative inotropic activity を持ち、QT延長のリスクがあるため入院でモニタリングを行いながら導入される)

  

 

・ドロネダロンはアミオダロンに比べ抗不整脈効果が弱く、また非代償性心不全および慢性心房細動では禁忌とされている(5)

 

 

・CHA2DS2-VASc scoreが塞栓症リスク評価のスタンダードである

 

 

・CHA2DS2-VASc score2点以上のすべての心房細動患者で抗凝固療法が推奨される

(0点では不要である。1点の時は必須ではないがアスピリンあるいは抗凝固療法を考慮する事が妥当とされている)(6)

 

 

・アスピリンによる塞栓症予防のエビデンスは弱く、full dose (325mg/day) でのみ認められる(6)

 

 

・4つの全ての非ビタミンK依存経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)が人工弁を持たない心房細動患者の塞栓症予防に対しワーファリンに劣らない代替薬として承認されている(7, 8, 9, 10)

 

 

・非ビタミンK依存経口抗凝固薬は人工弁患者では禁忌である(11)

 

 

・非ビタミンK依存経口抗凝固薬は僧帽弁狭窄症以外での生体弁患者には使用できる

(7, 8, 9, 10)

 

 

・イダルシズマブがダビガトランに対する特異的中和剤として承認されている(12)

 

 

・アンデキサネットα がリバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン の中和剤としてFDAで承認審査を受けている(13)

 

 

・症状が強い発作性あるいは慢性心房細動患者で薬剤治療に失敗した場合はアブレーション治療が考慮される(6)

 

 

・アブレーション後の長期予後に関する質の高いデータは得られていないのが現状である

 

 

・治療成功後に抗凝固療法が不要になるという患者の期待に基づいてアブレーション療法を選択すべきでない

(現在のところ、いかなるrhythm control 治療も塞栓症リスクを減らす事を示した信頼できるデータが得られていない)

 

 

 

 

 

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From IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

7 March 2017 Volume 166 Number 5

 

 

 

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