レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

帯状疱疹

 

水痘を発症するvaricella zoster virusに感染したことのある全ての人が帯状疱疹を発症する可能性がある

 

 

米国の人口のおよそ95%がvaricella zoster virusに潜伏感染している。三人に一人が帯状疱疹を発症し、年齢とともにその頻度が増える

 

 

脊髄後根神経節あるいは脳神経神経節に潜伏感染しているvaricella zoster virusが再活性化し、求心性線維を介して皮膚に広がる

 

 

脊椎から体幹前方部に帯状の皮疹が一惻性に認められるのが特徴である。顔、眼、口、耳にも起こる場合がある。皮膚の炎症と水疱が起こり、2〜4週間持続し、時に瘢痕化や永久的な色素変化を起こす。疼痛が皮疹に沿って認められることが多く、生活に支障をきたす程強くなりえる

 

 

 

Prevention 

 

帯状疱疹は加齢に関連して弱まった免疫機能を有する60歳以上の成人に認められることが一般的である。また化学療法、放射線治療、ステロイドなどの治療を受けている患者やHIV/AIDS、糖尿病、悪性疾患などを持つ免疫不全患者などにも多く認められる

 

 

女性、白人、帯状疱疹の家族歴、1歳より前に水痘を発症した場合などでもリスクが上がる(1)

 

 

帯状疱疹の発症で免疫応答が起こるので、免疫能正常者では再発は多くない

 

 

水痘に罹患したことがない人が帯状疱疹に暴露されると水痘を発症する可能性がある

 

 

researchでは帯状疱疹の発症が増えていることが示されている;米国の人口では過去60年間で4倍以上になっている(2)

 

 

Varivaxは生varicella zoster vaccineで水痘発症予防のため小児およびvaricella zoster virus抗体陰性の成人への投与が推奨されている

 

 

Zostavax;生zoster vaccine(ZVL)とShingrix;recombinant zoster vaccine(RZV)がFDAに認可され、Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)によって帯状疱疹およびその合併症予防のために高齢者への投与が推奨されている(3,4,5)

 

  

ACIPは免疫能正常の50歳以上の成人、あるいは以前にZVLを投与されている人へRZVの投与を推奨している(4)

 

 

ACIPは有効性および費用対効果に基づいて帯状疱疹およびその合併症状予防のためにZVLよりもRZVの投与を推奨している(直接比較した試験はない)(4)

 

 

RZVは2回投与で、初回投与から2〜6ヶ月開けて2回目投与を行う。禁忌は重篤なアレルギーのみである(anaphylaxis)。influenza vaccineと同時投与可能で、それによって安全性や効果が下がることはない(6)

 

 

RZVが投与できない場合はZVLを60歳以上で免疫能正常の成人に投与することをACIPが推奨している。ZVLは生vaccineなので投与できない患者がいる(☆)。ZVLは一回投与である。acyclovirやvalacyclovirなどの抗ウイルス薬はvaccine投与前24時間以内あるいは投与後14日間は使用できない。同様にinfluenza vaccineと同時投与が可能である(7)

 

・ゼラチンやneomycinに対し重篤なアレルギーを有する

・vaccineの成分に対し重篤なアレルギーを有する

・白血病、悪性リンパ腫、あるいは他の血液・骨髄腫瘍などで免疫能が低下している

・HIV/AIDSでT cellが0.200 x 10⁹ cells/L以下

・高用量のステロイドなどの免疫能に影響を与える治療を受けている

・妊婦あるいはその可能性がある

 

 

 

どちらのvaccineにおいても投与に際して、varicellaへの暴露歴の確認や検査などを行う必要がない。帯状疱疹の既往歴の有無にかかわらずvaccineは適応となるが、帯状疱疹の急性期の場合は皮疹が治癒するまで投与を待つ必要がある

 

 

Shingles Prevention Studyは60歳以上で免疫能正常の成人38546人にて行われた帯状疱疹に対するZVLの効果を評価したdouble-blind randomized controlled trialである(8)。追跡中央値3.1年後において、ZVLは帯状疱疹による負荷を61.1%、帯状疱疹後神経痛の発症を66.5%、帯状疱疹の発症を51.3%、それぞれ減らしたことが示された。vaccineは70歳以上よりも60〜69歳の成人において帯状疱疹発症の予防により有効であることが認められた(37% vs 64%)。重篤な副作用の頻度はプラセボと同等であった(1.4%)

 

 

 

 

Diagnosis

 

帯状の皮疹が感染した神経に一致するdermatomeに沿って見られる。皮疹は片側でmidlineを超えない。隣接するdermatomeにoverlapすることが20%の場合に認められる。最も多く罹患するdermatomeは以下の順である;胸部>脳神経(特に三叉神経)>腰部>頸部

 

 

疼痛が皮疹より先に発症する場合は診断が困難である。軽度の掻痒感、チクチク感から強い疼痛までが皮疹の発症より1〜5日前に認められる場合がある。数週前の発症も報告されている。疼痛はsoft touchにより惹起されうる。他の症状としては倦怠感、頭痛、photophobiaなどがあるが、高熱は希である

 

 

臨床診断が明らかでない場合は確定検査を行う必要がある。PCR検査は感度および特異度が高く、比較的早く結果が得られるため(< 1 day)、variecella zoster virusの同定に最適である。Direct fluorescent antigen(DFA)はPCRほど感度が高くないが、PCRが利用できない場合には良い代替検査となる。ウイルス培養検査は感度が高くなく、結果が得られるまでに数日を要する

 

 

PCR

感度および特異度が高く、比較的早く結果が得られるため(< 1 day)、variecella zoster virusの同定に最適の検査である。水疱からfluidを、あるいは皮疹からcrustsを採取し、ウイルスのDNAを同定する

 

ウイルス培養

感度30〜70%、特異度100%。ウイルス培養の成否は、皮疹のステージ、検体のquality、検体採取から組織培養のinoculationまでの時間に高く依存している。水疱より新鮮なfluidをviral transport mediaを含むtuberculin syringeに吸引し、速やかに検査室に運ぶ必要がある。3〜14日間要する

 

DFA

ウイルス培養より感度が高く、PCR検査の代替となる。皮疹の基底部をメスあるいはlarge-gauge needleの傾斜エッジで削り取り、スライドグラスに塗りつけ、fluorescein-conjugated monoclonal antibodiesを使って染色する

 

 

 

 

 

臨床症状が他の疾患と類似する場合がある。鑑別疾患には接触性皮膚炎、toxic dermatitis、単純ヘルペスなどがある

 

 

皮疹に疼痛あるいは感覚異常が伴わない場合、dermatomeに一致しない場合、典型的な皮疹を伴わない神経痛が持続する場合などは他の疾患の可能性を考慮する必要がある。

 

 

若年者が帯状疱疹を発症した場合はHIV検査を考慮する必要がある

 

 

 

Differential Diagnosis

 

単純ヘルペス

疼痛を伴う小水疱がcluster状に認められる。時に帯状疱疹と類似する分布をとり間違われる場合がある。患者が2回以上の帯状疱疹の再発を報告をする場合は確定検査を行って単純性ヘルペスと帯状疱疹の鑑別を行う必要がある。免疫能正常者において帯状疱疹の再発は希である。HIV患者では再発は認められる

 

接触性皮膚炎

ゴム、ニッケル、局所の抗菌薬への反応として発赤および小疱を呈し、帯状疱疹に類似した所見をとる場合がある。ただdermatomeに一致しない場合がほとんどである

 

contact with toxic plants

poison ivyやpoison oakなどに接触して帯状に疼痛を伴う発赤や小疱を認める場合がある。しかしdermatomeに一致することは多くない

 

Zoster sine herpete

帯状疱疹と同じ典型的な神経性疼痛を認めるが、皮膚所見を認めない患者が存在し、zoster sine herpeteとして知られている。診断検査がないため発症頻度は不明である

 

 

 

 

帯状疱疹の皮疹が治癒しない場合は細菌感染合併の可能性を考慮する

 

 

ウイルスが三叉神経第一枝に感染するherpes zoster ophthalmicusとして知られる病態がある。帯状疱疹全体の10〜25%の割合で認められる。病態の進行で失明のリスクがあり早期診断および治療が重要となる。典型的な皮疹を伴わない場合がある。herpes zoster ophthalmicusを示唆する所見として鼻の先に水疱を認める状態があり、Hutchinson signとして知られる

 

 

強い耳の痛み、顔面筋麻痺、皮疹(耳道や耳介の水疱)はvaricella zoster virusによる顔面神経への感染によっておこるRamsay Hunt syndromeを示唆する。治療が遅れると聴力喪失、永久的な顔面筋麻痺を起こしえるため耳鼻科へのコンサルトが必要になる

 

 

 

 

 

Treatment

 

合併症として帯状疱疹後神経痛があり、帯状疱疹の皮疹発症後3ヶ月以上持続する疼痛として定義される(9)。帯状疱疹後神経痛を認める30〜50%の患者で1年以上疼痛が持続する(10)

 

 

他の合併症には視覚障害や聴覚障害があり、神経系合併症には脳血管障害、脊髄炎、脳神経麻痺、末梢神経麻痺、多発神経根障害などがある。皮疹に細菌感染の合併も時折認められる。免疫不全患者ではvaricella zosterによる呼吸器、中枢神経系の感染のリスクが高まり致命症となりえる

 

 

 

経口抗ウイルス薬としてfamciclovir、valacyclovir、acyclovirが免疫能正常患者の帯状疱疹治療薬としてFDAに認可されている。famciclovirとvalacyclovirが投与回数および薬物動態上優れているため、より好ましい。上記3つの全ての薬剤がウイルス複製を阻害することによって神経障害を制限し疼痛の期間を減らすとされている

 

 

合併症を伴わない帯状疱疹を認める免疫能正常の成人患者419人で行われたRCTではプラセボと比較してfamciclovirは帯状疱疹後神経痛の疼痛期間中央値を約4ヶ月から約2ヶ月に減らすことが示された(11)。他のRCTではfamciclovirの3つのregimens(750mg1日1回、500mg1日2回、250mg1日3回)を比較した結果、帯状疱疹の治癒および疼痛消失に対する効果は全て同等であった(12)。また同試験においてfamciclovirとacyclovirは帯状疱疹の治癒および疼痛消失に対する効果が同等である事が認められた。3つ目のRCTではvalacyclovirとacyclovirが皮疹の治癒に対する効果が同等であった(13)。しかしvalacyclovirの方がacyclovirに比べ、急性の疼痛および帯状疱疹後神経痛の疼痛期間をより減少させた(6ヶ月間疼痛を有した患者はvalacyclovir投与グループでは19.3%、acyclovir投与グループでは25.7%)。valacyclovirとfamciclovirを比較したblinded RCTでは帯状疱疹に対する効果が同等であったが、valacyclovirの方がよりcost-effective($83.90 vs $140.70 per course)であった(14)

 

 

famciclovirおよびvalacyclovirが利用できない場合はacyclovirを選択する

 

 

3つのclinical trialsで経口acyclovir 800mg1日5回投与を皮疹出現72時間以内に開始した場合、ウイルス排出期間および新たな皮疹の発症期間を減らし、皮疹治癒を促進することが確認された(15,16,17)

 

 

 

 

皮疹発症72時間以内の経口抗ウイルス薬

 

Famciclovir 500mg 1日3回 7日間

 

Valacyclovir 1g 1日3回7日間

(上記は米国で認可された投与方法だが、valacyclovir 1.5g 1日2回も免疫能正常で18歳以上の合併症を伴わない帯状疱疹患者に対し安全で効果的であり、かつadherenceを向上させるかもしれない(18)

 

Acyclovir 800mg 1日5回7日間

 

 

 

clinical trialsは抗ウイルス薬投与を皮疹発症72時間以内の患者に限っており、それ以降の患者では適切な試験が行われていない。エビデンスはないが、皮疹発症72時間以降の患者でも新たな皮疹形成が続く、皮膚・運動・神経・眼合併症を伴う、免疫不全、などの場合は抗ウイルス薬投与が推奨される

 

 

 

cost-benefitの面からも合併症、特に帯状疱疹後神経痛のリスクが高い50歳以上の帯状疱疹患者への治療が推奨される。若年者で軽度の疼痛あるいは皮膚所見が限局されている場合は、強い疼痛あるいは持続する疼痛のリスクが比較的低いので抗ウイルス薬治療は患者ごとに考慮される

 

 

抗ウイルス薬局所投与は効果が低いため推奨されない

 

 

抗ウイルス薬治療が帯状疱疹後神経痛の発症を減らすかどうかは明らかでない。最近のcochrane reviewでは経口acyclovirは帯状疱疹後神経痛の発症を減らさないと結論づけ、また他の抗ウイルス薬についてもエビデンスは十分でないとしている(19)

 

 

免疫不全患者で皮膚および臓器に播種する重度の帯状疱疹の場合はacyclovir静注治療を行うべきである。RCTではacyclovir 500mg/m² 静注8時間毎(腎機能正常)7日間治療がプラセボに比べ免疫不全患者の帯状疱疹の皮膚・臓器播種を減らすことが示された(20)。acyclovir静注は中枢神経合併症、特に脊髄炎をきたす場合にも全ての患者に投与されるべきである。この推奨はcase reportsに基づいている(21)。免疫能正常患者でも帯状疱疹が臓器に進展する場合はacyclovir静注が考慮されるが、この推奨を支持するprospective studiesに基づくdataはない

 

 

herpes zoster ophthalmicusは間質性あるいは神経栄養性角膜炎、ぶどう膜炎、強膜炎、上強膜炎、網膜壊死などの眼科合併症に進展するリスクがあり、その結果眼あるいは周囲組織に永久的な障害を与えうる重篤な病態である。抗ウイルス薬治療を行わない場合およそ50%の患者で上記のいずれかの合併症を併発する(22)。controlled, prospective clinical trialsでは経口acyclovir治療が後発性の眼科的炎症性合併症の頻度を50-60%から20-30%に減少させることが示された(23)。herpes zoster ophthalmicusの患者は経口抗ウイルス薬で、たとえ発症から72時間以上経過していても、治療されるべきである。眼科的合併症を示唆する所見、あるいは鼻の先の皮疹など眼科合併症に進展するリスクを有する症候を認める場合は眼科コンサルトを行う必要がある。重度のherpes zoster ophthalmicusの場合はacyclovir静注が考慮されるが、これを支持するclinical trialsに基づくdataはない

 

 

 

Pain control 

帯状疱疹による疼痛は日常生活に支障をきたしうる。医師は神経性疼痛を過小評価すべきでなく、たとえ皮膚所見が限局されている場合でも強い疼痛をきたす場合があることを念頭に入れておく必要がある。したがって積極的な疼痛管理が必要となる。急性の疼痛管理に早期介入することで帯状疱疹後神経痛のリスクを減らせるかもしれない

 

 

軽度の疼痛の場合はacetaminophenやibuprofenで十分である。中等度から重度の場合で抗ウイルス薬と鎮痛剤でコントロールできない場合は、oxycodoneなどの短期作用型の麻薬性鎮痛剤を、屯用でなく、定期的に投与することを検討すべきである。gabapentinのような抗痙攣薬や三環系抗うつ薬を病態の早い過程で追加することで疼痛コントロールの助けになるかもしれない。ただamitriptylineなどの三環系抗うつ薬は高齢者で重篤な副作用を起こす可能性があるので注意を要する

 

 

カプサイシン局所投与は疼痛を増悪させうるので帯状疱疹急性期に行うべきではない。帯状疱疹後神経痛には使われることがある

 

 

 

Corticosteroid

cochrane reviewではcorticosteroid投与が帯状疱疹後神経痛の発症を防ぐことを支持するエビデンスはないと結論づけている(24)。しかし、それ以外の利益もあると信じて経口corticosteroidを投与する医師もいる。一つのRCTではacyclovirにprednisoloneを追加投与することで皮疹の治癒を促進し、中等度から重度の疼痛を減らすことが示されたが、急性期の軽度の疼痛では効果が確認されなかった。またprednisoloneは帯状疱疹後神経痛の発症頻度、および疼痛が消失するまでの時間を減らさないことが確認された(25)。50歳以上の患者のみで行われた他のRCTではacyclovirとprednisoneの併用で急性の疼痛を有意に減少させることが認められた(26)

 

 

50歳以上で中等度から重度の疼痛を有する免疫能正常の帯状疱疹患者では抗ウイルス薬に経口prednisone(60mg/dから開始、10-14-day tapering course)を追加投与することを検討すべきである

 

 

 

Hospitalization

多くの帯状疱疹は外来管理が行われるが、播種性帯状疱疹、中枢神経合併、眼科的合併症などをきたす場合は入院による経過観察が必要になる。疼痛が非常に強くてコントロールできない場合も入院による疼痛治療を行う場合がある

 

 

 

水痘患者に比較すれば、帯状疱疹患者のウイルス伝染リスクは低いと考えられているが、急性期には乳児、幼児、妊婦および免疫不全患者との接触は避けるべきである。ウイルスは主に直接の接触によって伝搬する。また播種性帯状疱疹の場合などでは空気を介しても伝搬しうる。studyではvaricella zoster virus DNAが帯状疱疹患者13人中9人の病室の空気サンプルから検出されたと報告している(27)。専門家は局所に限局する帯状疱疹患者に接触する場合はstandard precautionと手袋の使用を推奨している。重度の免疫不全患者が帯状疱疹を発症した場合は伝染性がなくなるまで厳格なairbornおよび接触における隔離を行う必要がある。播種性帯状疱疹を発症した全ての患者においてairbornおよび接触における隔離を行う必要がある(28)

 

 

 

Other complications

 

対側麻痺

varicella zoster virusは中枢神経系血管炎を起こし、trigeminal zosterの対側麻痺をきたす脳梗塞様症状を発症する場合がある(21)。病態はvaricella zoster virusが三叉神経第一枝から直接脳血管に侵入することで、皮疹と同側の内頚動脈あるいはその分枝に炎症を起こし発症すると考えられている。herpes zoster ophthalmicusの後発性合併症として対側麻痺が起こり、皮疹発症から神経症状発症までの平均期間は7週間であるが、最大6ヶ月との報告もある。herpes zoster ophthalmicus発症から数週から数ヶ月後に片側麻痺をきたした患者ではvaricella zoster virusに関連する中枢神経系血管炎の可能性を考慮する必要がある(21,29)

 

 

multifocal vasculopathy

varicella zoster virusの中枢神経への播種が免疫能正常患者において稀にmultifocal vasculopathyを発症する。これは免疫不全患者により多く認められる(21)。帯状疱疹の急性期あるいは経過後に意識障害あるいは神経所見を認める場合はvaricella zoster virusによるmultifocal vasculopathyの可能性を考慮する必要がある。TIA、脳梗塞、急性あるいは亜急性のせん妄などが、頭痛、髄膜刺激症状、発熱、失調、痙攣などの他の症状を伴って発症しうる。たとえ皮疹がなくてもmultifocal vasculopathyがTIAや脳梗塞の原因となりうる。40%のvaricella zoster virus vasculopathyの患者では皮疹が認められなかった。症状は帯状疱疹発症の30日前から発症6ヶ月後まで起こりえる。適切に治療された帯状疱疹患者での発症も報告されている。varicella zoster virus vasculopathyの診断基準はMRIあるいはCTにて虚血所見を認め、かつ髄液のPCR assayでvaricella zoster virus陽性が確認されることである。病理学的検査では中枢神経小血管の血管炎であることが示唆されている。herpes zoster血管炎に対する抗ウイルス薬治療を前向きに調べた試験はないが、acyclovir静注が有効であったとの報告は存在する

 

 

 

 

 

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2

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Annals of Internal Medicine

IN THE CLINIC

7 August 2018

心不全

 

心不全の罹患率は年齢と共に増え、lifetime riskは20〜45%にのぼる

 

 

時代とともに診断後の生存率は改善しているが、依然死亡率は高いままである。およそ50%の人が診断5年後には死亡している

 

 

心室不全はEFの低下した心不全(HFREF/systolic dysfunction)とEFの保たれた心不全(HFPEF/diastolic dysfunction)に分けられる。実際は病態の過程で両者が連続性に起こり、また同時に存在することも多い

 

 

HFREFとHFPEFを分ける事は治療方法を決定する上で重要である

 

 

StudiesではEFのカットオフを35-45%として両者を区別される事が一般的であるが、American College of Cardiology Foundation (ACCF) のガイドラインではEF40%以下をHFREF、50%以上をHFPEFと定義している。41〜49%はborderline HFPEFとされている

 

 

ACCFとAmerican Heart Association (AHA)は心不全リスクのある、あるいは既に心不全を認める患者のoutcomesを改善するための治療選択を助けるためにstaging systemを作成している

 

ACC/AHA Stages of Heart Failure

A: 器質的心疾患や症状はないが心不全のリスクが高い

B: 症状を伴わない器質的心疾患を認める

C: 過去に、あるいは現在症状を伴う器質的心疾患を認める

D: 特異的治療を要する難治性心不全を認める

 

 

 

New York Heart Association (NYHA) classificationは主観的評価に基づいているが、死亡率の予測に有効であることが認められている(1)

 

 

 

 

Prevention

 

心不全の治療は急性増悪治療からリスクファクターへの対応によって慢性および予防できうる症候への治療に重点がシフトしてきている

 

 

心不全の主なリスクファクターは高血圧、冠動脈疾患、糖尿病、肥満、および喫煙である(2)

 

 

修正できないリスクファクターには人種、性別、家族歴などがある

 

 

修正できうるリスクファクターを減らすことによって心不全の発症率を大きく減らすことができる(3)

 

 

冠動脈疾患は心不全の最も一般的な原因である

 

 

長期間未治療の高血圧はHFREFとHFPEFの両方の発症に関連し、冠動脈疾患の独立したリスクファクターでもある

 

 

高血圧の強化的な治療は左室肥大の新たな発症を減らし、また左室肥大の改善を促す(4, 5)

 

 

meta-analysisでは血圧が10mmHg下がると、心不全の発症を28%減らし、全ての原因による死亡率を13%減らすことが確認されている(6) 

 

 

糖尿病は心不全のリスクを倍以上にし(7, 8)、また高血圧、冠動脈疾患、肥満などの他のリスクファクターと同時に存在することが多い

 

 

糖尿病は微小血管病変によって心筋を器質的および機能的に変化させdiabetic cardiomyopathyを形成する。血糖コントロール不良は心不全発症の大きなリスクとなる(9)

 

 

アルコールは直接心筋障害を起こすtoxinであり、心不全の原因となる。アルコール摂取を中止することによって左室機能不全を改善させることができる(10)

 

 

甲状腺機能亢進症は心房細動や頻脈を起こし、心不全の発症や悪化をもたらす。甲状腺機能の正常化が心室機能を改善する(11, 12)。他の原因によって持続する頻脈も心室機能不全を引き起こすが、rate controlや頻脈の消失によって機能が可逆的に改善する(13)

 

 

obesity-related cardiomyopathyは心筋の脂肪沈着、血圧上昇および循環血液量増加による心負荷、および他のメカニズムによって起きると考えられている

 

 

炎症に起因するものではSLEやHIVなどの全身性疾患による心筋炎(14)、稀なものでは重度心不全をきたすgiant cell myocarditis、スルフォンアミドやペニシリンなどの様々な抗原に対するアレルギー反応で起こるhypersensitivity myocarditisなどがある

 

 

他の全身性疾患で心不全をきたすものにはfibrillar proteinの沈着によるアミロイドーシス(15)、非乾酪性肉芽種に関連するサルコイドーシスなどがある。ヘモクロマトーシスなどの鉄代謝異常や頻回の輸血などによって過剰な鉄が心筋に沈着してHFREFやHFPEFを起こし得る

 

 

遺伝性の心筋症にはhypertrophic cardiomyopathyなどがある。またDuchenne muscular dystrophyやBecker muscular dystrophyなどの遺伝性筋dystrophyなどでも心筋障害が起こる場合がある

 

 

 

 

 

Diagnosis

 

心不全を疑う初回評価において病歴聴取および身体診察は重要不可欠である。症状を伴わない左室機能低下患者に心不全治療を開始することで症状の発症を遅らせ、生命予後を改善する非常に強いエビデンスが確認されている事から、症状を伴わない患者の心不全の初期のサインを見つけることは非常に重要である(16)

 

 

新規発症の全ての心不全患者にechocardiographyを行う必要がある

 

 

初回血液検査では血算および肝酵素、TSH、脂質を含む一般生化学検査を評価する必要がある。またヘモクロマトーシス、HIV、リウマチ性疾患、アミロイドーシス、褐色細胞腫などを疑う場合は適宜検査を追加する

 

 

B-type natriuretic peptide (BNP)やN-terminal pro-BNP (NT-proBNP) は心室容量および内圧の上昇に伴って上がり、急性の呼吸困難が心不全によるものかどうかの鑑別に有用である。また診断されていない心不全のハイリスクグループのスクリーニングにも使用される(17, 18, 19, 20)

 

 

BNP・NT-proBNPは女性、高齢者、腎不全、急性冠症候群、急性呼吸器疾患などでは高くなり、肥満では低くなる傾向にあるので結果の解釈にはそれらを考慮する必要がある(21, 22)

 

 

BNP・NT-proBNPはリスク評価および予後予測に使用されるが(23)、studiesではエビデンスが混在しており心不全の治療決定のために使う事は推奨されていない(24, 25)

multicenter GUIDE-IT studyでは、心不全のハイリスク患者1100人(30日以内のBNP上昇および心不全による入院歴を有する)をNT-proBNPをガイドに行う治療グループと通常の治療グループに分けて試験が行われたが、両者間でprimary outcom(心不全によって入院するまでの時間、心血管死)に有意差が認められなかったため、試験は早期に中断された(24)

 

 

ACCF/AHAガイドラインは新規発症の全ての心不全患者に心電図検査を行うことを推奨している

 

 

冠動脈疾患の既往があるが狭心症症状を認めない患者で新規に心不全を発症した場合は心筋虚血を評価する目的に画像検査によるストレステストを行うことは道理的である。これによって生存している心筋の範囲を同定でき、血管再建術を行うかの判断に有用となる

 

 

心筋虚血が疑われる場合は冠動脈造影やCT angiographyが適応となる

 

 

重篤な入院患者でvolume statusや心拍出機能が不明な場合は血行動態を評価する目的に右室カテーテルが使用される

 

 

確定診断が治療に影響を及ぼす場合には特定のタイプの心筋症では心筋生検が行われる

 

 

ワイヤレスで情報を送る埋め込み型肺動脈圧モニターも有用である

CHAMPION trialでは外来患者で日々肺動脈圧を評価し治療を修正することによって有意に心不全による入院率を下げることが認められた(26)。またHFREF患者のサブセットグループでは死亡率が減少する傾向にあった(27)

 

 

 

 

 

Treatment

 

β-Blokers

NYHA classにかかわらず全ての心機能低下患者の第一選択薬となる。多くのlarge randomized controlled studiesで心不全患者に対しcarvedilol、bisoprolol、long-acting metoprolol succinateが入院、突然死、全死亡率を有意に下げることが確認されている。死亡率の低下は23%〜65%とされている(28, 29, 30, 31)。他のβ-blokersの重要なエビデンスがないため、臨床試験で使われているこれらのβ-blockersが好まれて使われている

 

 

ACE inhibitors

禁忌でなく患者が耐容できるかぎり全ての収縮機能が低下した心不全患者に投与されるべきである。死亡率、入院、心不全悪化、心筋梗塞を減らすことが多くのlarge randomized controlled trialsで確認されており、死亡率減少は30%までにのぼる(32, 33, 34)

 

 

Angiogensin-receptor blockers

ACE inhibitorsが投与できない患者に使用される。死亡率減少(30%-45%)などACE inhibitorsと同等の効果がlarge randomized controlled trialsで認められている(35, 36, 37, 38)。ACE inhibitorsとARBsを併用することで左室容量を減少させ、入院を減らす可能性があることを示すstudiesが存在するが、死亡率への影響ははっきりしないため、routineでは推奨されていない

 

 

Angiotensin receptor-neprilysin inhibitors

適量のACE inhibitorsあるいはARBsに耐容している軽度から重度の心不全患者(NYHA class II-IV)において、ACE inhibitorsあるいはARBsをangiotensin receptor-neprilysin inhibitor(ARNI)で代用することによって心血管死あるいは心不全による入院をさらに20%減少させるとされている。副作用には血圧低下や腎機能低下がある。angioedemaのリスクがあるため、angioedemaの歴がある場合、またはACE inhibitorsとの併用あるいは最後のACE inhibitor投与から36時間以内には使用できない

PARADIGM-HF trialにおいてEF40%以下でNYHA class II〜IVの心不全患者8442人をenalapril(ACE inhibitor)を投与するグループと sacubitril(ANRI)とvalsartan(ARB)を併用投与するグループに分けて行われた試験ではsacubitril-valsartanグループの方が死亡率および心不全による入院率が有意に低い結果となった(21.8% vs 26.5%;hazard ratio 0.80 [CI 0.73-0.87]; P < 0.001)(39)

 

 

 

Hydralazine and nitrates

ACE inhibitorsあるいはARBsに耐容できない患者ではhydralazineとisosorbide dinitrateの併用投与が代替薬となる。この併用治療は死亡率の減少がACE inhibitorsには及ばないもののプラセボよりは有効であることが認められた(40)。アフリカ系アメリカ人の重度の心不全患者(NYHA class III-IV)ではhydralazineとisosorbide dinitrateの併用投与を通常治療(ACE inhibitor or ARB and β-blocker)に追加することによって死亡率を43%下げ、心不全による入院を33%減少させ、またQOLを向上させるとされている(41)

 

  

Aldosterone antagonists

ACE inhibitorsとβ-blockersの投与にもかかわらず、軽度から重度の症状(NYHA class II-IV)を認める場合は低量のaldosterone antagonistを追加することで死亡率を減少させるとされている。spironolactoneが最もよくstudiesに使用されているが、時おり男性に疼痛を伴う女性化乳房の副作用を認める

RALESはNYHA class III-IVの心不全患者1663人で適切治療にspironolactoneを追加するグループと追加しないグループに分けて行われた試験であるが、spironolactoneを追加したグループにおいて有意に死亡率が低かったため(284 vs 386 deaths; P < 0.001)試験は早期に中断された(42)

 

eplerenoneはより選択的なaldosterone antagonistで女性化乳房の副作用が比較的少ない。心筋梗塞後でEF40%以下の患者において全ての原因による死亡率を減少させることが確認されている(43)

EMPHASIS-HF trialはNYHA class IIの心不全患者2737人で行われたdouble-blind trialであるが、適切治療にeplerenone(up to 50mg/d)とプラセボを追加投与して比較した結果、死亡率および心不全による入院率がeplerenoneグループにおいて有意に低かったため試験は早期に中断された(18.3% vs 25.9%; HR 0.63 [CI 0.54-0.74]; P < 0.001)(44)

 

 

Ivabradine

Ivabradineは洞房結節のdepolarizing If currentを選択的に抑制して心拍数を下げる新薬である。最大耐容量のβ-blockerを含む適切治療を受けており、洞調律でかつ安静時心拍数が70/min以上の軽度から中等度の心不全患者(NYHA class II-III)においてIvabradineを追加投与することで心不全による入院率を下げることが確認されている。慢性心房細動あるいは洞調律性の徐脈患者では適応にならない。副作用は症候性徐脈や視覚障害がある

SHIFTはEF35%以下、洞調律で心拍数70/min以上、最大耐容量のβ-blockerを含む適切治療を受けていて症状を有する心不全患者6558人で行われた試験で、ivabradine(titrated to a maximum dose of 7.5mg twice daily)グループの方がプラセボグループと比較してcomposite end point(心血管死と心不全による入院)が良かったことが認められた(24% vs 29%; HR 0.82 [CI 0.75-0.90]; P < 0.0001)(45)

 

 

Diuretics 

利尿薬は短期的に症状に対する利益を持つ唯一の治療薬である。最近のobservational studyではacute decompensated heart failureで救急外来受診した患者に対し早期に(救外到着60分以内)ループ利尿薬静注が投与された場合、入院死亡率が低いことが示された(46)。ほかのrandomized trialではacute decompensated heart failureで入院した患者に利尿薬静注を、低量(外来経口投与量と同等)あるいは高量(外来投与量の2.5倍)を、12時間ごとにbolus投与したグループと持続静注投与されたグループの比較において、主観的な症状および腎機能に両者間で有意差が認められなかった(47)。しかし、心不全における利尿薬の長期的な安全性や死亡率への影響を評価したprospective clinical trialsは存在しない

 

ループ利尿薬は病態の進行を抑制しないためHFREFの治療に単独で使用すべきでない。furosemideに比較しtorsemideとbumetanideは吸収速度が速く、bioavailabilityが高い。経口furosemideに反応が悪い患者では、経口torsemideあるいはbumetanideに変更することで利尿を得られる場合がある。metolazoneのようなサイアザイド利尿薬が利尿効果を高めるために追加される場合もある

 

 

Digoxin

digoxinはHFREF患者の症状を緩和し、入院率を下げる。しかし生命予後を改善しないため症状を有する心不全患者(NYHA class II-IV)にのみ限定されるべきである(48)。低カリウム血症および低マグネシウム血症はdigoxin toxicityのリスクを高めるため、電解質の定期的な評価が必要になる。large randomized controlled trialのpost hoc analysisで高い血清digoxin濃度(>1.2 ng/ml)が死亡率上昇と関連することが示されたため、治療域は0.5-0.8ng/mlが推奨されている(49)

 

 

 

HFPEFの治療

HFPEF患者の治療ゴールは悪化原因をコントロールすることである。高血圧はβ-blockers、ACE inhibitors、ARBsなどで治療されるべきである。冠動脈疾患患者で狭心症症状あるいは心筋虚血のサインがあればcoronary revascularizationが適応となる。心房細動ではガイドラインに基づいて治療されるべきである。ひとつのlarge randomized controlled trialではEFの保たれた患者(40%以上)においてcardesartanが入院率を減らすが心血管死は減少させないことが示された(50)。EFが保たれた患者(45%以上)で行われたlarge randomized trial(TOPCAT)ではspironolactoneがプラセボに比べ心血管死、心停止、心不全による入院を含むcomposite outcomeで有意差を認めなかった。BNPの上昇しているsubsetグループでは有効性が示されたが意義は不明である(51)

 

 

Inotropic agents

標準治療の経口薬に反応せず、臓器不全や心原性ショックのサインを認める重度のdecompensated heart failureの患者にdobutamineやmilrinoneなどのinotropic agentsを持続静注投与することによって心拍出量を上げ、後負荷を下げることができる。coronary revascularizationのような決定的治療につなぐために短期で心原性ショックの患者に持続静注投与が行われる。あるいは中長期間、機械的循環補助や心臓移植へのbridge therapyとして使用される場合もある。さらにはそういった治療の対象にならないend-stage heart failureの患者に症状緩和目的で長期間投与されることもある。inotropic agentsは生存率を上げず不整脈のリスクを高めるので、臨床的適応がない場合の長期投与は有害となりえる

 

 

抗凝固療法

他に抗凝固療法の適応を認めない慢性のHFREFの患者にroutineでの抗凝固療法は臨床的に利益を認めないため推奨されていない(52)。EF 35%以下、洞調律で他に抗凝固療法の適応を認めない患者ではwarfarinとaspirinを比較投与した結果、脳梗塞、頭蓋内出血、全ての原因による死亡のcomposite outcomeにおいて両者間で有意差が認められなかった。下がった脳梗塞のリスクが主要出血リスクの上昇で相殺される形となった(53)。新規経口抗凝固薬は安全性において優位であり有効性も期待されるが、臨床試験で利益が証明されていないため現在のガイドラインでは推奨されていない

 

 

Exercise program

運動と生活習慣改善が指導下に行われるcardiac rehabilitation programは身体機能およびQOLを向上させるが、死亡率は下げない(54)

 

 

Intracardiac device

implantable cardioverter-defibrillator(ICD)は生命予後が1年以上期待でき、少なくとも心筋梗塞から40日以降で、標準的な心不全の薬物治療を受けている患者が適応となる。現在のガイドラインでは突然死のprimary preventionでICD植え込みが適応となるのはEF 35%以下、軽度から中等度の症状(NYHA class II-III)を認めるischemicあるいはnonischemic cardiomyopathyの患者である。さらに無症状(NYHA class I)でEF 30%以下のischemic cardiomyopathyの患者にも適応となる(55, 56)

 

心不全の進行とともに心室同期不全が起こり、心電図のQRS延長、心室収縮不全、僧帽弁機能不全、心室リモデリングなどが認められる。cardiac resynchronization therapy(CRTまたはbiventricular pacing)はこれらの変化を改善させることができる。この治療は無症状の患者(NYHA class I)、左脚ブロックがないQRS 150msc以下の患者、生命予後が1年未満の患者では適応とならない。適応となるのはEF 35%以下、洞調律で左脚ブロックがあり、QRS 150msc以上で、軽度から重度の症状(NYHA class II-IV)を認める標準的薬物治療を受けている患者である

 

 

生活習慣

脂質異常症、肥満、糖尿病などの心血管リスクを有する患者では推奨される食事摂取を行う必要がある。禁煙、アルコール摂取の節制も重要である。体重モニター、ナトリウム・水分制限も、特に症状があり進行した心不全患者における長期的な管理においては大切であるかもしれない。日々の体重測定によって利尿薬の調整を行うことで心不全悪化の予防に役立つかもしれない。患者が毎日体重測定を行い事前に決めていた値を超えた場合に医師に連絡して指導を受ける(通常1日で2-Ib(0.9kg)あるいは3日で5-Ib(2.2kg)以上の増加)。看護師、栄養士、home health staff、理学療法士などのサポートを受けることによって心不全悪化を防ぐ助けとなる。進行した心不全、特に低ナトリウム血症の患者では水分摂取制限(1.5ー2L/日)とナトリウム制限が利尿薬の効果を高め、うっ血を減らすために理にかなっている。しかし、これらの推奨はexpert opinionであり、small, uncontrolled and observational studiesから得られたdataに基づくものである。このエビデンスは混在しており、ナトリウム制限は有害ですらあると示唆するstudiesもある(57)。現在のAHAのガイドラインでは高血圧または左室肥大の患者にナトリウム摂取を1500mg/日までに制限することを推奨しており、この制限は比較的進行していない心不全患者(AHA stage A or B)に対しては理にかなっているかもしれない。進行した心不全患者(AHA stage C or D)ではナトリウム制限をgeneral population以下(< 2000ー3000mg/日)に推奨を行う十分なエビデンスがない

 

 

緩和ケア

心不全の進行とともに頻繁の増悪や改善後の予期せぬ増悪などが起こる。緩和ケアは心不全のそれぞれのステージでそれぞれ異なるタイプのケアを提供する。基本的な緩和ケアは症状マネージメントであり、advanced palliative careでは難治性の症状、精神社会的問題、終末期マネージメントなどを扱う。また扱われなければならないものには、鬱、社会的サポート、予後あるいは治療効果に対する患者の非現実的な期待、客観的な病態と患者の主観的な経験との相違、治療に対する患者の不安、新たな社会的あるいは職業的役割への適応、などがある。ガイドラインでは緩和ケアを心不全治療のroutine careとして組み込むことを推奨している(58)

 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

5 June 2018 

大腸憩室炎

 

大腸憩室炎の多くは50歳以上の患者で見られるが、若い人にも増えてきている

 

 

大腸憩室を持つ大部分の人は無症状であり、1〜4%の人で憩室炎を発症する(1)

 

 

そのうちおよそ20%の患者が10年以内に一回あるいはそれ以上の再発を繰り返す(2)

  

 

大腸憩室炎は合併症の有無によって分類される。合併症を伴わない大腸憩室炎は大腸壁肥厚および大腸周囲の炎症性変化にとどまる。合併症には膿瘍形成、腹膜炎、腸閉塞、瘻孔形成がある。およそ12%の大腸憩室炎に合併症が認められる(2)

 

 

 

Risk Factor 

 

大腸憩室および大腸憩室炎の重要なリスクファクターは加齢である。肥満および喫煙も大腸憩室のリスクになる(3)

 

 

低繊維食や便秘がリスクファクターとされてきたが、近年に二つのcross-sectional studiesでは低繊維食および便秘は他のリスクファクターの影響を調整した場合にはリスクを上昇させない事が示された(3, 4)

 

 

しかし食事および生活習慣は大腸憩室炎に寄与する重要なファクターである。低繊維食、red meat(牛肉、羊肉)、肥満、低身体活動、喫煙はリスクの上昇に関連するとされている(5, 6, 7, 8, 9, 10)。あるstudyでは1日23g以上の繊維摂取、1日51g以下のred meat摂取制限、週2時間以上の強度の身体活動、BMI 25kg/m2以下への減量、および禁煙は大腸憩室炎の発症を50%予防しうると報告している(7)。

 

 

read meat、精製された穀物、高脂肪食などの西洋型の食事は大腸憩室炎のリスクを上げる一方、果物、野菜、全粒穀物はリスクを下げる(8)

 

 

アルコール摂取、特に乱用はリスクを高めるかもしれないが、エビデンスは混在している(11)

 

 

男性で行われたlarge prospective studyに基づき、ナッツ、トウモロコシ、seedsはもはやリスクを上げると考えられていない(12)

 

 

NSAIDsの定期的な服薬(週2回以上)はリスクを70%高める可能性がある。アスピリン以外のNSAIDsはアスピリンに比較し、より大きくリスクを、特に合併症を伴う憩室炎に対して高める(9)

 

 

コルチコステロイドやオピオイドもリスクを上昇させる可能性がある(13)

 

 

ビタミンDの低下も憩室炎を促す可能性がある(14)

 

 

Symptoms

 

大腸憩室炎では急性あるいは亜急性の腹痛、典型的には左下腹部痛を認める。疼痛は持続的で動作によって悪化する傾向がある

 

 

疼痛が左側優位であるのは憩室炎がS状結腸や下行結腸に起こることが多いからである。反対にアジア人では右側優位となる

 

 

他の症状は下痢、便秘、嘔吐を伴わない嘔気、発熱などである(15)

 

 

下血は典型的な症状ではなく、他の腹痛の原因を精査する必要がある

 

 

糞尿、気尿、膿尿を認める場合は結腸膀胱瘻を、膣からガスや便が認められる場合は直腸膣瘻の可能性を示唆する

 

 

腸閉塞は大腸の炎症や膿瘍などによって急性の憩室炎でも認められるが、罹患後あるいは再発後の瘢痕化や狭窄形成によって起こる事がより多く見られる(16)

 

 

Laboratory Test

 

憩室炎では白血球およびCRPの上昇が認められる事が多い。あるstudyではCRP上昇を伴う白血球上昇は、他の腹痛の原因と比較して、大腸憩室炎の可能性を4倍高くすると報告している(17) 。またCRP値の高さは重症度に関連し、膿瘍などの合併症を伴う患者の同定に役立つ可能性がある(18)。しかし白血球およびCRP値が正常であるからといって除外診断することはできない

 

 

multivariable analysisによって大腸憩室炎に関連するファクターは以下のものが示された

年齢50歳以上、左下腹部の疼痛、動作による疼痛の悪化、38.5度以上の発熱、憩室炎の既往、CRP 50mg/L以上(17)

 

 

Imaging Test 

 

大腸憩室炎を臨床症状だけで診断することは難しい。さらに膿瘍などの合併症は画像診断を行わなければ確定できない。合併症の有無を判別することは抗菌薬投与、膿瘍ドレナージ、手術が必要かを判断する際に必須となる。にもかかわらず、画像診断以外の臨床所見だけで診断される場合がしばしばある。特にもともと憩室炎の既往があり、画像検査が利用できない状況などの場合である(19)

 

 

重度の腹痛、血行動態あるいは呼吸状態の悪化、腹部所見でびまん性の圧痛およびguarding、あるいはrigidityを認める、白血球やCRPの高度上昇、などの重症所見を認める場合は画像検査を行わなければならない。また薬物治療に反応しない憩室炎は合併症の可能性を評価するためにも画像検査が必要となる

 

 

 

造影剤の静注および管腔内投与によるCT撮影が画像診断として選択される。systematic review and meta-analysisでは腹部CTはsensitivity 95%およびspecificity 96%と報告されている(20)

 

 

腹部超音波検査も使用される。そのsensitivityおよびspecificityはおよそ90%とされている(20)。しかし、その精度はCTに比べより術者に依存し、また肥満患者ではより制限される(19)

 

 

 

 

大腸憩室炎が初回のエピソードの場合は全ての患者で回復後に大腸癌の鑑別を行うために大腸内視鏡を行う必要がある(21)

 

 

 

Treatment

 

大腸憩室炎の治療は重症度および合併症の有無によって決まる

 

大腸憩室炎の重症度およびマネージメントを分類するいくつかのclassification systemがつくられている

 

 

Hinchey classificationはCT所見に基づく重症度およびマネージメントを決定するシステムである(22)

 

 

 

Stage of Modified Hinchey Classification

 

Stage 0(合併症なし)

臨床的に軽度の大腸憩室炎、またはCT上大腸壁肥厚を伴う憩室

 

・Clear liquid diet(2−3日)、low-fiber dietにadvance(疼痛が改善するまで)

・抗菌薬(case-by-cace)

・アセトアミノフェンと鎮痙剤による疼痛管理

 

 

Stage Ia(合併症なし)

大腸周囲脂肪織の炎症性変化(phlegmon)を伴う大腸壁肥厚

 

・Clear liquid diet(2−3日)、low-fiber dietにadvance(疼痛が改善するまで)

・抗菌薬(case-by-cace)

・アセトアミノフェンと鎮痙剤による疼痛管理

 

 

Stage Ib(合併症あり)

炎症部位近位の大腸周囲あるいは腸間膜膿瘍

 

・ドレナージを必要とする膿瘍の場合は入院治療

・経口摂取可能な場合はliquid diet摂取にて外来治療、症状の改善を認めればlow-fiber dietへadvance

・重症度により経口あるいは静注抗菌薬投与

・膿瘍が3cm以下の場合は抗菌薬のみにて改善しうる、また場合によって抗菌薬投与なしにて改善しうる

・3cm以上の膿瘍あるいは治療抵抗性の症状・膿瘍の場合は経皮的ドレナージによる治療

・大きな膿瘍では待機的手術による切除

・アセトアミノフェンと鎮痙剤による疼痛管理

  

 

Stage II(合併症あり)

炎症部位より遠位の腹腔内膿瘍、骨盤内あるいは後腹膜膿瘍

 

・入院治療

・安定、改善するまで絶食

・感染部位がコントロールできるまで静注抗菌薬投与

・経皮的ドレナージによる治療

・外科コンサルト

・待機的手術による切除

・アセトアミノフェンと鎮痙剤による疼痛管理

 

 

Stage III(合併症あり)

汎発性化膿性腹膜炎

 

・入院治療

・絶食

・静注抗菌薬投与

・緊急外科コンサルトおよび手術による切除(限られた患者では腹腔鏡洗浄による治療)

・アセトアミノフェンと鎮痙剤による疼痛管理

 

 

Stage IV(合併症あり)

糞便性腹膜炎

 

・入院治療

・絶食

・静注抗菌薬投与

・緊急外科コンサルトおよび手術による切除(腹腔鏡洗浄による治療は不適切)

・アセトアミノフェンと鎮痙剤による疼痛管理

 

 

 

 

 

Antibiotics

 

過去には全ての患者に抗菌薬治療が行われてきた

 

二つのrandomized trialsといくつかのobservational studiesでは合併症を伴わない大腸憩室炎(Hinchey stage 0, Ia, and Ib with abscess < 5cm)を抗菌薬投与なしに安全に治療できることが示された(23, 24)。これらのstudiesでは回復までの期間、合併症および再発に関して抗菌薬を投与されたグループとされなかったグループにおいて有意差が認められなかった

 

 

現在いくつかのガイドラインでは抗菌薬は合併症を伴わない大腸憩室炎患者に対しルーチンでなく選択的に投与することが推奨されている(21)

 

 

免疫不全がなく、状態が安定していてCTにて合併症が認められない事が確認され、フォローアップが期待できる患者においては抗菌薬投与なしに治療を行う事が可能とされている。その際clear liquid dietを摂取し、アセトアミノフェンによる疼痛治療を行う。2〜3日しても改善を認めない場合は抗菌薬投与を開始する

 

 

安定していて免疫不全のない合併症を伴わない憩室炎患者では経口抗菌薬が考慮される

いくつかのprospective randomized and open-label trialsでは、これらの患者に対する静注抗菌薬投与は経口抗菌薬に比べ利益が認められなかった(25)。また4日間投与は7日間投与と同等の効果であった(26)

 

 

 

状態が安定している小さな膿瘍を伴う憩室炎患者も外来にて治療を行うことが可能である。その際、経口抗菌薬はより長い投与期間が必要となる

 

 

腸管穿孔、大きな膿瘍、sepsis、腸閉塞、経口摂取不能、あるいは他の重篤な疾患を合併する憩室炎患者では入院における静注抗菌薬投与が必要となる

 

 

 

憩室炎治療に関する特定の抗菌薬を比較したtrialsは限られている。一般的にはグラム陰性菌と嫌気性菌をカバーするbroad-spectrumの抗菌薬が使用される

 

 

外来でよく投与されるのはfluoroquinoloneあるいはtrimethoprim-sulfamethoxazoleとmetronidazoleの併用である。単剤ではmoxifloxacinあるいはamoxicillin-clavulanateが使用される。入院患者で静注によるfluoroquinoloneとmetronidazoleの併用、単剤ではticarcillin-clavulanic acid、ertapenem、moxifloxacinが推奨される

 

 

 

重篤な患者、特に免疫不全患者ではmeropenem、imipenem-cilastatin、piperacillin-tazobactam、doripenemなどが必要になる場合がある(27, 28)

 

 

 

 

抗菌薬治療

 

合併症を伴わない軽度の憩室炎外来治療(27, 28, 29)

 

単剤治療

Amoxicillin-clavulanic acid 875mg/125mg  1錠12時間毎 あるいは 1000mg/62.5mg  2錠12時間毎

Moxifloxacin 400mg 1錠24時間毎

 

併用治療

Trimethoprim-sulfamethoxazole DS 160mg/800mg 1錠12時間毎 あるいは

Ciprofloxacin 750mg (or 500mg) 1錠12時間毎 あるいは

Levofloxacin 750mg 1錠24時間毎

Metronidazole 500mg 1錠6時間毎 併用

 

投与期間

4〜7日間(if source controlled / abscess drained)

 

 

合併症を伴う軽度〜中等度の憩室炎入院治療(28, 30)

 

単剤治療

Ertapenem 1g 静注 24時間毎

Moxifloxacin 400mg 静注 24時間毎

Ticarcillin-clavulanic acid 200-300mg/kg/日 分割した量を4-6時間毎静注

 

併用治療

Cefazolin 1-2g 静注 8時間毎 あるいは

Cefuroxime 1.5g 静注 8時間毎 あるいは

Ceftriaxone 1-2g 静注 12-24時間毎 あるいは

Cefotaxime 1-2g 静注 6-8時間毎 あるいは

Ciprofloxacin 400mg 静注 12時間毎 あるいは

Levofloxacin 750mg 静注 24時間毎

Metronidazole 500mg 静注 8-12時間毎 あるいは 1500mg  静注 24時間毎 併用

 

投与期間

4〜7日間(if source controlled / abscess drained)

 

  

合併症を伴う重度憩室炎・腹膜炎入院治療(28, 30)

 

単剤治療

Imipenem-cilastatin 500mg 静注 6時間毎 あるいは 1g 静注 8時間毎

Meropenem 1g 静注 8時間毎

Doripenem 500mg 静注 8時間毎

Piperacillin-tazobactam 3.375g 静注 6時間毎

 

併用治療

Cefepime 2g 静注 8時間毎 あるいは

Ceftrazidime 2g 静注 8時間毎 あるいは

Ciprofloxacin 400mg 静注 12時間毎 あるいは

Levofloxacin 750mg 静注 24時間毎

Metronidazole 500mg 静注 8-12時間毎 あるいは 1500mg  静注 24時間毎 併用

 

投与期間

4〜7日間(if source controlled / abscess drained)

 

 

 

 

 

Diet 

 

大腸憩室炎の急性期における食事治療に関するエビデンスは少ない。伝統的にはclear liquid dietから開始し、徐々にlow-fiber dietに変更し、症状が改善するまで継続することが行われている

 

一つのsmall, uncontrolled prospective studyでは合併症を伴わない憩室炎患者に対し制限を行わずに食事を与えた場合、耐用性は良好であった。しかし8%の患者において重篤なイベントが認められた(30)

 

よって軽度の憩室炎患者にはclear liquid dietを開始し、症状が改善し始めたら、徐々にlow-fiber dietに変更し、回復するまで継続することが妥当である。回復した後はred meatの少ないhigh-fiber dietが推奨される。重篤な入院患者の場合は安定するまで絶食することが推奨される

 

 

Pain Management 

 

憩室炎の疼痛管理に関するエビデンスも乏しく、多くのガイドラインでは扱っていない

 

NSAIDsは憩室炎合併症への関連が認められ急性期は避けるべきである(9)。同様にオピオイドも穿孔性憩室炎のリスクが上がる可能性がある(13)。しかし実際には多くの場合これらの鎮痛剤は急性期に投与されている

 

アセトアミノフェンとdicyclomineのような鎮痙剤が軽度から中等度の憩室炎の疼痛およびcrampingコントロールの第一選択である

 

 

Surgical Management 

 

合併症を伴わない患者、および重篤な症状、不安定な他の疾患、免疫不全などを伴わず経口摂取が可能で、社会的サポートが利用できるStage Ib(小さな憩室周囲の膿瘍)の患者では外来治療が考慮される(19)

合併症を伴わないHinchey stage Iaの大腸憩室炎患者132人で行われたrandomized trialでは入院治療と外来治療の比較において、再入院、緊急手術・経皮的ドレナージの数に有意差が認められなかった(29)。その際、抗菌薬と疼痛剤を1回投与しても疼痛あるいは発熱が持続した患者はtrialから除外されている

 

 

 

 

大きな膿瘍、腹膜炎、あるいは保存的治療に反応しない強い症状が認められる場合などは外科コンサルトが必要となる。 また腸閉塞や瘻孔形成の際も外科の介入を要する。重度の憩室炎あるいは再発を繰り返す場合も外科による評価が有益である

 

大きな膿瘍(3-4cm以上)で経皮的ドレナージを考慮する場合はinterventional radiologistにコンサルトすべきである

 

頻回に憩室炎を再発する患者の慢性的な症状が憩室炎の再発であるかが明らかでない場合など消化器内科コンサルトが考慮される。また診断が明らかでなく、炎症性腸疾患や大腸癌などの可能性がある場合も消化器内科による評価が必要となる。そして、最近大腸内視鏡検査を受けていない場合では、全ての患者において罹患4〜8週間後に内視鏡検査を行う事が推奨される

 

 

 

 

外科的治療の適応は合併症を伴う憩室炎である(穿孔、膿瘍、狭窄、瘻孔)。これらの適応に対する外科的治療は発展してきてより非侵襲的になってきている

 

 

小さな膿瘍(3〜4cm以下)、phlegmons、腸管外の少量のfree airは通常抗菌薬のみにて治療可能である(Hinchey stage 0 and I)(31)

 

より大きな膿瘍は経皮的ドレナージによって、特に抗菌薬投与のみでは不十分な場合は、治療が行われる。膿瘍の場所によっては腹腔鏡的ドレナージが必要になる

 

憩室炎が瘻孔や狭窄による慢性閉塞を合併する場合は症状を緩和するために、通常外科的切除が必要となる

 

sepsis、汎発性腹膜炎(Hinchey stage III and IV)、保存的治療でも安定しない場合は緊急外科的治療が必要になる(20)

 

 

外科的治療を必要とする患者に対するアプローチは依然はっきり定まっていない

伝統的にはend colostomyとHartman pouch(肛門直腸断端の閉鎖)によるS錠結腸切除術が行われてきたが、この方法では合併症の発症率およびpermanent stomaになる率が高い。代替治療としてprimary anastomosisとdiverting loop ileostomyによるS状結腸切除術が提案されている。この方法では合併症の率が低く、stomaもreverseできる率が高いとされているが(32, 33)、studiesは規模が小さく、後ろ向き試験である

 

重篤な状態の、あるいは他の重症疾患を複数持つ、汎発性腹膜炎を合併した患者ではHartoman pouchによる結腸切除術が選択される(20)

 

化膿性腹膜炎(Hinchey stage III(非糞便性腹膜炎))をコントロールしprimary anastomosisによる待機的手術を行う手段として腹腔鏡洗浄が提案されている。この手技は膿瘍の吸引、腹腔洗浄、およびドレーン留置からなる

この治療に関するエビデンスは混在している

3つの小さなrandomized studiesを含む7つのstudiesのmeta-analysisでは、結腸切除術を行ったグループに対して腹腔鏡洗浄を行ったグループの方が術後腹腔内膿瘍、腹膜炎、緊急再手術の率が高いことが示された(34)。しかしこれらのstudiesはenrollmentが連続的でないこと、外科的手術が標準的でないことなどの批判を受けている

これらのrandomized trials以前に出されたガイドラインでは結腸切除に対する代替治療として切除を伴わない外科的治療は適切でないとされている

 

 

糞便性腹膜炎(Hinchey stage IV)の場合は一貫して結腸切除が推奨されている(20)

 

 

 

合併症を伴わない再発性の大腸憩室炎に対し待機的外科手術が考慮される。過去においては憩室炎を2回発症した後に推奨されていた。しかし、蓄積されてきたdataでは憩室炎の自然な経過上、悪化進展しないことが示されている。多くの合併症(瘻孔や閉塞以外)は初回あるいは2回目の憩室炎の際に起こり、再発の際に緊急手術が必要になることは稀である(35)。さらには待機的手術後の合併症が多く(10〜15%)、また手術によって再発をなくすことはできない(8年間で5〜8%)(36)。手術後のQOLに関するdataも混在している。したがって合併症を伴わない再発性憩室炎に関する待機的手術の推奨はcase-by-caseで、重症度、再発の回数、QOLへの影響、免疫抑制剤投与の有無、外科手術のリスクおよび患者の好み等を考慮した上で判断される(20)

 

 

American Society of Colon and Rectal Surgeonsのガイドラインでは大腸憩室炎の待機的結腸切除を行う場合、可能なら腹腔鏡的アプローチが推奨されている(20)。手術後の再発リスクを減らすために、全S状結腸切除および憩室炎が起こった全ての区域を切除することがより好ましい(20)

 

 

Prognosis

 

大腸憩室炎初回発症後10年の再発率はおよそ20%、2回目発症後10年の再発率は55%、3回目発症後3年の再発率は40%である

 

 

 

Prevention 

 

外科的治療がより非侵襲的になってきている事、腸管慢性炎症や腸内細菌叢失調などが病態に関わっているとの新たな理論が出てくる中で大腸憩室炎の薬物的再発予防が注目されている

mesalamine(炎症性腸疾患に使用される抗炎症薬)、rifaximin(吸収されにくいbroad-spectrum抗菌薬)、probioticsの三つの薬剤が研究されている

 

その中ではmesalamineが最もよく研究されているが、6つのrandomized trialsとmeta-analysisではプラセボに比べ再発予防に効果が認められない事が明らかになった(36)

 

rifaximinとprobiotecsはそれぞれ一つの小さなtrialで調べられている。したがってこれらの薬剤の再発予防に関する効果は不明である

 

よってAmerican Gastroenterological Associationのガイドラインではこれら三つの薬剤を大腸憩室炎再発予防に投与することを推奨していない(22)

 

 

 

食事および生活習慣が大腸憩室炎の発症に関連する。食事および生活習慣への介入が憩室炎の再発リスクを減らす可能性がある(36)。 憩室炎既往のある患者ではhigh-fiber dietあるいはfiber supplementの摂取、red meat摂取の減量、aspirin以外のNSAIDsを避ける、禁煙、適正体重の維持、定期的な運動、等が推奨される

 

オピオイドやコルチコステロイドも憩室炎の発症に関連するため、既往のある患者では避けるべきである(37)

 

 

いくつかのstudiesではビタミンDの値が低い、あるいは紫外線暴露の低い地域に住んでいる人は大腸憩室炎のリスクが高まることが示されている(16)。よって再発性憩室炎患者においてはビタミンD値のモニターや補足投与が考慮される 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

1 May 2018 Volume 168 Number 9

 

 

 

治療のゴールに関する会話のガイド

 

重篤な患者は治療ゴールと予後に関する話し合いを家族を交えて行うことをためらう場合がある。しかし多くの場合、医師とはその話し合いをしたいと考えている(1)

 

 

多くの医師と家族は治療のゴールに関する話を始めることを患者の希望を取り去ることだと間違って信じている(2, 3) 。患者にその話し合いが、あきらめること、希望がないこと、出来ることがないこと、を意味している訳ではないことをしっかりと伝えなければならない

 

  

患者に予後に関する真実の情報を伝え 、治療オプションを説明することで患者の望みが保たれることをstudiesが示している(2)。そのような話を避けると症状による苦痛への治療を制限し、患者の他の心配事に関する評価ができなくなる

 

 

 

患者が自分で判断できなくなった時のための意思決定を行う代理者を決めておくことで利害の不一致や混乱を避けることができる

 

 

代理者は患者の状態が悪化した時に何をすべきか知っている必要があり、また彼らの役割は患者の希望を尊重することであって、その結果に責任を持つことではない事をしっかり伝えておく必要がある

 

 

 

 

治療のゴールの確認手順 

1、患者は意思決定能力があるか

2、患者が自分で意思決定能力を失った時の代理人は誰か

3、患者の希望を記した文書があるか

4、患者が自分の病状を理解しているか

5、患者の価値観および治療のゴールは何か

6、生命維持治療のプランは何か

 

 

 

 

治療のゴールに関する会話のガイド(REMAP)

・Reframe: Why the status quo isn't working

・Expect: Emotion: Respond with empathy

・Map out what's important

・Align with the patient't values

・Plan to match values

  

National Center for Ethics in Health Care 2017

Accessed at www.ethics.va.gov/goalsofcaretraining/REMAP.pdf on 23 Janury 2018 

 

 

 

Reframe

患者の病状に対する理解を確認する。理解が正しければ治療ゴールの話に進む。正しくない場合は状況を説明し、理解を確認してから治療ゴールの話に進む

 

Expect: Emotion: Respond with empathy

医師は医学的事実の説明に力を注ぎ、患者の感情への配慮を怠りがちである。これは有害にすらなりえる。もし患者と医師の意思決定に不一致が起こった場合は単に患者の理解を促すことよりも、そのもとにある感情を扱った方がより解決につながりやすい

 

NURSE acronym for dealing with strong emotion

N: Name:とても困惑しておられるように見えます

U: Understanding:そんな状況に立たされたらどんな気持ちになるか想像することすら大変に感じます

R: Respect:あなたはお聞きになりたい質問を全てされ、ご家族も連れてこられるというとても重要なこともされました

S: Support:私はあなたがお聞きになりたい質問に答えるためにここにいます

E: Explore:あなたが今お感じになっておられる事を教えていただけますか

  

Map out what's important

治療プランに対する提案を行う前に患者のゴールと価値観を知らなければならない

 

Align with the patient't values

患者の話を聞いてから、医師は患者が何を大切にしたいと思っているかを繰り返し、理解が正しいかを確認する

 

Plan to match values

患者の同意に基づく治療プランをつくる。医師が患者の価値観に基づくと考えられる治療法を提案することは有効である事が多い

 

 

 

 

治療ゴールに関する会話例

 

(医師)

全ての患者さんに確認しているのですが、今日はあなたの事前指示(advanced directive)についてお話したいと思っていますが、いかがでしょうか

 

(患者)

それは何ですか

 

(医師)

説明させてください

それはあなたの治療に関するご希望を医療従事者やあなたの大切な人たちが理解することを助けるものです。もしあなたがご自分で判断が出来なくなった場合にどのような治療を行うかを決める際の助けになるものです

時に患者さんは病態が悪化して話すことができなくなってしまい、その希望が聞けなくなる場合があります

これは極端な状況で、もちろん現在のあなたはそれとは程遠い状況にあります

 

(患者)

なぜ今その話をするのですか

 

(医師)

私が今この話をするのは、この先あなたにとって適切なことを行うために準備をしておきたいと考えているからです

 

例えば、ある患者さんは自分が入院していて病状の改善が難しいと分かった場合は、延命治療は避け、苦痛の緩和に力を注いでほしい、と希望されます。またある人は、たとえ話ができなくても、あるいは意識がなくても、できる限り長く生かしてもらいたい、と望まれる人もいます。

 

(患者)

今までそんな事を考えたこともありませんでした

私はただ今の病気を乗り越えることだけを考えてきました

  

(医師)

もちろんです

そしてこの事を考えるのは大変難しい事であるのも分かります

私はただ現在あなたが、先程の例えの患者さんの希望のどちら側に近いか、という事を知れたらと考えていました

 

 (患者)

もし私が良くなる可能性が低く、ただ機械に繋がれている状況になると、先生が判断する場合、私はそれを望みません。家族にもそんな状況を耐えてほしいと思いません

 

 (医師)

そうですか、分かりました

 

もし万が一あなたに何か深刻なことが起こって病院に入院することになり、病態の改善が難しいと考えられるような状態になった場合、あなたは「機械にはつながず、苦痛の緩和に力を入れて欲しい」

そのように希望される

そのような理解で正しいでしょうか

 

 (患者)

はい、もし私の状態が良くならない、先生がそう考える場合はもういっそのこと家に帰してください

 

(医師)

わかりました

とても大切な情報です。その事が私が知りたかったことです

ありがとうございます

あなたはその希望に関して今まで誰か他の人に話をされた事がありますか

 

(患者)

いいえ

おそらく子供たちは分かっていると思いますが、今までその話をした事はありません

  

(医師)

もし万が一あなたが自分で話をする事が出来なくなった場合、私が話をさせてもらう事になるのは子供さんでしょうか

  

(患者)

はい、息子だと思います

 

(医師) 

あなたは今、私におっしゃられた事を息子さんにお伝えすることができると思われますか

 

(患者)

ええ、彼は分かってると思います

でもちゃんと伝えられると思います

 

(医師)

それはとても助かります

もしよろしければ、次回の受診の際に息子さんも交えて、このお話をもう一度させていただくというのはいかがでしょうか

  

(患者)

ええ、あなたが望むなら家族全員連れてきます

  

(医師)

それは素晴らしいことです

ありがとうございます

 

 

 

 

 

治療のゴールおよびCode Statusに関する会話例

 

 

①治療のゴールに関する会話

 

(医師)

病院に来られる前のあなたの日常に関するお話をお聞きしてもよろしいでしょうか

 

(患者)

お話できるようなことも特別ありません。一人で暮らしています

 

(医師)

日中どんな事をされる事が好きですか

 

(患者)

私は犬がとても好きで飼っています。1日2回近所に散歩に連れていきます

でも、心配しています・・・

 

(医師)

どんな事が心配なんですか

 

(患者)

現在友人の家で預かってもらっています

でも、最近今までと同じではなくなってきました

 

(医師)

あなたはこの先も犬のお世話が続けられるかを心配されているのですか 

 

(患者)

ええ

 

(医師)

そうですか

また話を戻しますが、他にはどんな事をされるのが好きですか

 

(患者)

ガーデニングが好きです。トマトやホットペッパーを育てています。それを友人に配っています

でも最近は大変です。息がすぐ切れてしまいます

 

(医師)

同じ事をするのが難しくなってきている、という事ですか

 

(患者)

ええ

 

(医師)

そうですか

 

今回の入院はいかがですか

 

(患者)

ええ、なんとかやっています

 

(医師)

この前、歩行器で歩かれているのをお見かけしましたよ

 

(患者)

ええ、私にとっては初めての経験ですが、私にできる事はすべてして、少しでも早く家に帰りたいと考えています

 

(医師)

お聞きしていると、家で過ごされる事があなたにとって、とても大切な事のようですね

 

(患者)

ええ、1日でも早く退院して、犬の世話や庭の手入れをするため一生懸命私にできる事をしています

 

(医師)

 そうなんですね

 

この先お体に関してどんな事が起きるか、あるいはこの先どこで過ごされるか、などについてご心配になられている事はありますか

 

(患者)

ナーシングホームには行きたくないと思っています。病院にもいたくないです

 

(医師)

今行われている治療はまだ少し時間がかかるかもしれません。つまり、あなたはもうしばらく病院にいなければならないかもしれませんが、それによって家に帰ることができるなら、それでもよろしいとお考えですか

 

(患者)

ええ、私は家に帰られるのなら、今の治療を続けたいと思っています

 

(医師)

あなたのお話をお聞きする限り、あなたにとって最も大切な事は家にいること、そして犬と共に過ごし、またガーデニングなどのような事を行うことのようですね

 

(患者)

ええ、そうです

 

(医師)

そして入院も時に仕方ないにしても、病院で過ごす時間はできる限り制限したい

そのような理解で正しいでしょうか

 

 (患者)

ええ、その通りです

 

 

 

 

②予後に関する会話(患者がその会話をする準備ができているか、いないか)

 

(医師)

では、あなたの心不全の状態についてあなたが理解している事を教えていただけますか

 

(患者)

最近は疲れやすく、息も切れます

私の医師から聞く限りあまりよくないみたいです

 

(医師)

今まで医師からこの先あなたの病状に関してどのような事が予期されるか、というお話をお聞きされた事はありますか

 

(患者)

いいえ

 

(医師)

その事について私とお話したいですか

 

(患者)

ええ、私は正直なことを教えてもらいたいです

 

(医師)

あなたご自身はあなたのお体についてどのような事を予期されていますか

 

(患者)

ええ、私は状態が良くないのは理解しています

でも、まだ数年はこの調子で頑張りたいと考えています

 

(医師)

私もそう望みます

ただ現在の心不全の経過から考えると、もしかしたらそれより短いかもしれません

 

(患者)

・・・

ええ、私もそうかもしれないと思っています

 

(医師)

私が理解しているあなたの状態から考えると、現在のあなたの心臓がどれくらい機能しているか、また腎臓など他の臓器への影響を及ぼしている事、最近入院を繰り返している事から考えて、正直にお話しますと、もしかしたら年の単位ではなく、月の単位かもしれません

あるいはそれより長いかもしれません

あるいは短いかもしれません

あなたはもしかすると違うように考えられていたかもしれません

 

(患者)

聞いてください

私の体は現在とても落ち着いています。私は今80歳です。私の家族には100歳まで生きた者もいます。私は今までもこうやって切り抜けてきましたし、これからもそうなると信じています

 

(医師)

私も同じように望みます

私はただあなたの状態に基づく私のできる限りの推測をお話しています

 

(患者)

わかりました

 

 

 

③Code Statusに関する会話

 

(医師)

私の理解する限り、あなたにとって最も大切な事は家にいること、そして犬と共に過ごし、またガーデニングなどのような事を行うこと

そういう理解で正しいでしょうか

 

(患者)

ええ、そうです

 

(医師)

今から少し時間をとって、もし私たちの希望通りに物事が運ばなかった場合の事についてもお話させてもらいたいと思っていますがよろしいですか

 

たとえば万が一この入院中にあなたの心臓が止まってしまうような事があった場合ですが、その事について医師とお話になられた事がありますか

 

(患者)

ええ、病院に来た時に話をしました

 

(医師) 

あなたは何とお答えされたのですか

 

(患者)

蘇生してもらう事を希望しました。もし心臓の鼓動をもどしてもらえるなら、戻してください

私はまだまだ心の準備ができていません

 

(医師)

そうなんですね

今まで心肺蘇生によって予期される事に関してお話をお聞きされたことがありますか

 

(患者)

いいえ、ありません

 

(医師)

もし入院している患者さんの心臓が止まってしまった場合、テレビでよく見るのとは違って、多くの場合患者さんは亡くなってしまいます。若くて健康な人の場合は話が変わるのですが、病院に入院している人が心肺蘇生術を受けて、生還して退院できるのは100人中15人くらいです。つまり100人中85人の方が生還することができません。

たとえ生還できたとしても、本人の状態や年齢にも関係しますが、心肺蘇生中、脳への血液供給が十分でなくて脳へのダメージが起こり、それがもとに戻らなくなる可能性があります

 

(患者)

・・・

 

(医師)

あなたの現在の状態や年齢から考えますと、心肺蘇生を行なったとしても、先程あなたが今後家でどのように過ごされたいかと希望されるような状態には戻してくれない可能性が高いと考えいます

 

(患者)

・・・

ええ、そうみたいですね

私はただ家にいることが望みです

 

(医師)

あなたの状態、及びあなたがどのような事を望んでいるかというお話からして、その時がきたらその時で、もしあなたの心臓が止まってしまった時は、心肺蘇生を行わず、苦痛の緩和に専念する

私はそういった治療をお勧めしようと考えています

 

(患者)

・・・

そうですね、分かりました

私もそう思います

 

(医師)

わかりました

あなたの娘さんにもあなたのお考えを共有していただく事が大切だと考えますが、またお電話してお伝えさせていただいてもよろしいでしょうか

 

(患者)

ええ、お願いします

 

 

 

  

 

代理者との対話

 

(医師)

治療の次のステップに関してお話をしてもよろしいですか

 

(娘)

ええ、やはり私は母の人工呼吸器治療を中止したくないです

 

(医師)

そうですか

ご家族がそのようにお考えになるのは当然のことだと感じます

 

ただ、もしあなたのお母様がここにおられるとしたら、そして今私が説明したような状態に関してお聞きされたとしたら、何とおっしゃられると思いますか

 

(娘)

今までそんな風に考えた事はありませんでした

 

でも私は母がどんな人かを知っています

きっと「そんな治療はしてほしくない」そう言うだろうと思います

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会話例(他)

 

あなたの病気について理解していることを教えてください (R:reframe)

 

(私はこの治療で良くなっていない。他に何か良い治療があるはずだ)

 

より有効な治療があればいいと私も願います (E:expect/empathize)

 

 

他の医師からどのような説明を受けていますか (R)

 

 

あなたの病気は今どんな状況にあると感じていますか (R)

 

(私はCOPDを患っている。この数週間呼吸が悪化している。でも今までずっとこうやってきたし、また良くなると思っている)

 

あなたはこの病気と長い間向かい合われてきたのですね (E)

 

そして今私たちはもしかしたら違う場所に立っているのかもしれません (R)

 

(どういう意味ですか?もしかして私にあきらめろと言っているのですか)

  

いえ決してそういう意味ではありません。でも、あなたが言われる「あきらめる」という意味について教えていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

 

もしかしたら一旦立ち止まって今からどこを目指していくかを話し合うのにちょうど良いタイミングかもしれません (R)

 

今日はあなたの病気が一般的には今後どのような経過になっていくかをお話しさせていただきたいと考えていましたが、いかがでしょうか (R) 

 

 

 

Bad newsを伝える

Fire a warning shot

検査結果は望んでいたものではありませんでした

重大なことを伝えなければなりません

  

Be clear and direct

生検の結果癌が見つかりました

癌が肝臓と肺に再発しています

 

Shut up

情報を伝えたあと会話をとめる

 

 

 

これが何を意味するかお話させていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

(他に何かできることはないんですか、ほんとうにあなたは全て調べ尽くしたと言えますか)

 

ご心配になられるのは当然のことだと思います (E)

 

今日あなたはこの事を聞くことを予期されてなかったように見受けられます (E)

 

 

患者の経験を完全に理解することはできないが、理解しようとしている姿勢を見せることはできる

言ってはならない事

”あなたがどのように感じているか私には良くわかります”

 

 

(私はもう死ぬしかない、ということを言っているのですか) 

 

これらの話をお聞きになるのは本当に怖いことだろうと思います。できれば違った話をお伝えできればよかったと感じています (E)

 

(まだ希望はありますか)

 

どんな状況でも常に希望はあります (E)

 

あなたが不安に感じられている事を教えていただけますか (E)

  

 

この状況の中で、あなたにとって一番大切なことはなんですか (M:map out what's important)

 

(私にとって一番大切なことは諦めないことです。過去を振り返った時にやれることを全部しなかったと後悔したくないんです)

 

あなたの諦めないという姿勢を尊敬します (E)

 

あなたにとって一番重要なことは諦めないことなんですね (A:align with patient's values)

 

 

時間が限られているかもしれない中で、あなたにとって最も重要なことはなんですか (M)

 

今から先の事を考える時、あなたはどんな事を避けたいと考えていますか (M)

 

これからの事を考える時、あなたにとって最も大切なことはなんでしょうか、QOLでしょうか、どれくらい長く生きられるかでしょうか (M)

 

 

あなたのお話を聞くかぎり、あなたにとって最も大切なことは痛みがコントロールされ、家族とより多くの時間一緒に過ごせることのようですね。また再び呼吸器に繋がれることのような痛みや苦痛を受けたくないようですね。そういう理解で正しいでしょうか (A)

 

 

何が重要かというあなたのお話からすると、少しでも長く生きられる可能性があるのなら、たとえそれが機械によって生命が維持される場合であったとしても、いかなる治療をも追求されたい、あなたはそのように考えられている (A)

そのような理解で正しいでしょうか

もしこんな状況なら機械による生命維持を希望されない、そんな状況で思い浮かばれることはありますか (M)

 

(自分で判断ができず、家族の顔も認識できないような状態の場合は生命維持治療を望みません) 

 

 

私から提案をさせていただいてもよろしいでしょうか (P:plan to match values)

 

何が重要かというあなたの話から考えて出来ることがたくさんあります。まず痛みをコントロールすることです。痛みの治療には様々な方法が確立されています。またサービスを利用することで、あなたが家で過ごすことを助け、家族との価値ある時間をより長く過ごすことができます。 新しい薬を試してみてあなたがどう感じられるかによって、それがどれくらい可能かに関する理解が深まります

また今言ったことを全て行うことに加え、CT scanや血液検査を行ったり、また人工呼吸器につなぐといった蘇生術を行うことは、あなたが言われたゴールから考えると、必ずしも役に立つものとは考えにくいので今後行わないことを提案したいと考えています

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、これからは症状のコントロールにより注意を注ぎ、家で過ごせる時間を大切にされたい (A)

今後、胸痛が起こる度に入院するということをやめることで、それがより達成しやすくなるかと考えます (P)

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、今後病気が悪化した場合に心肺蘇生術を施したり、人工呼吸器を使用することはあなたの希望とは一致しないように感じます。仮にもしそれが起こってしまった場合、生命維持装置から離脱できない可能性が高いと考えます。たとえ離脱できたとしても、その後自立して生活することがより困難になると感じます。

そういう事は避けられたいと考えらている

その理解で正しいでしょうか (A)

  

 

 

 

 

  

 

 

1

Bernacki RE, Block SD, American College of Physicians High Value Care Task Force Communication about serious illness care goals: a review and synthesis of best practices JAMA Intern Med 2014;174:1994-2003

 

2

Smith TJ,  Giving honest information to patients with advanced cancer maintains hope Oncology (Williston Park) 2010;24:521-5

 

3

Wright AA,  Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment JAMA 2008;300:1665-73

 

 

f:id:Tatsu21:20180516161634j:plain

緩和ケア

 

緩和ケアは慢性で治癒が困難である重篤な疾患に罹患した患者のQOLを改善し症状を和らげることを目的としている。ただそれは必ずしも治療オプションがなく、予後が限られていることを意味しているわけではない(1)。緩和ケアは重篤な疾患によってもたらされる身体的、精神的、スピリチュアル的、社会的、といったそれぞれの苦悩に取り組み、患者と家族の希望・尊厳を保ち、自主性を重んじることを目指す

 

 

 

緩和ケア (PC: palliative care) は三つの要素から成り立っている

primay PC(すべての臨床家によってもたらされる、QOLに対する基本的な配慮)

specialist PC(重篤な疾患の全期間、理想的には診断の時点から、もたらされる)

hospice care(終末期(およそ予後6ケ月未満))

 

 

 

primary PCは全ての臨床家(primary careと専門家)が患者の多くのニーズを満たす基本的なケア(基本的な痛みのコントロール、advance care planning、等)を提供することによってもたらされる

 

 

 

時に複雑な状況がより援助的な生活基盤(caregivers, social services, )を必要とする場合がある。specialist PCによって紹介医、患者、caregiverに対しさらに細やかな援助を提供することができる

 

 

 

患者が延命治療を控え、疾患が通常の転帰をとった場合生命予後が6ケ月未満(Medicare-determined)と判断された場合はほとんどの商業的保険とfederal health coverage(Medicare / Medicaid)によって、hospice careを受けることができる

 

 

 

specialist PCは重篤な疾患の経過のいつの時点においても患者を評価し、治療を行うものである

 

 

 

hospiceとspecialist PCは聖職者、social worker、薬剤師を含む共同チームとして患者とcaregiverのニーズを扱い、提供される

 

 

 

hospice careは在宅あるいは長期療養施設において提供されるのに対し、specialist PCは主に入院あるいは外来において提供される 

  

 

PC (palliative care)  VS  hospice

・両方とも症状に対する細やかな対応、治療ゴールおよびadvance care planningの明確化を通してQOLを最大限にすることを目標とする

 

・PCは生命予後の限られた疾患のいつの時点(診断から死亡まで)においてもアクセスできるのに対し、hospiceは終末期(生命予後6ケ月未満)の間のみアクセス可能である

 

・PCは延命治療あるいは根治的治療と同時に提供されることが可能であるのに対し、hospiceの場合は延命治療を控えなければならない

 

・PCでは治療および入院に対する制限がないが、hospiceの場合は症状に対するマネージメントが他にない場合を除いては入院を避けることをゴールとする

 

 

 

 

入院の時点でspecialist PCを考慮する基準(2)

surprise:患者が12ケ月以内に死亡したとしても驚かないと考えられる

frequent admissions:同じコンディションに基づく数ヶ月内の繰り返す入院

complex symptoms:困難な症状あるいは精神的ニーズによる入院

complex care requirement:機能的な依存あるいは複雑なhome supportを要する

failure to thrive:生活機能の低下、体重低下、自分でケアができない

advance care planning needs:advance care planningの手続き、あるいは話し合いをしたことがない

limited social support:家族のストレス、慢性精神科疾患、caregiverの不在

limited prognosis:進行悪性疾患、認知機能低下を伴う股関節骨折、院外心肺停止

 

 

 

 

 

多くの病気で予後予測を行うことは困難である。そのため疾患毎の予後予測ツールがつくられてきた。しかし臨床家は、これらのツールはpopulation-based dataに基づく予測であって、患者個人ごとの臨床に関連するすべての要素が組み入れられているわけではないため、その限界を理解しなければならない

 

 

悪性疾患・全身状態

Karnofsky Performance Status

0から100点までの10点ごとのスケール。セルフケア、日常生活機能および歩行に関するfunctional statusの評価。100点は正常・問題なし、0点は死亡。予後をdays、weeks、monthsかで予測(3)

 

Eastern Cooperative Oncology Group

0から5点までのスケール。セルフケア、日常生活機能および歩行に関するfunctional statusの評価。0点は制限なく病気以前のすべての活動が可能、5点は死亡。生存予後をdays、weeks、monthsかで予測(4, 5)

 

Palliative Performance Scale

歩行、可能な活動、病気の進展、セルフケア、摂食機能、意識レベルによる評価。生存予後をdays、weeks、monthsかで予測(6)

 

Palliative Prognostic Score

Karnofsky Performance Status、白血球数、リンパ球パーセンテージ、呼吸困難と食思低下の有無で評価。30日生存率を予測(7)

 

 

 

COPD

BODE index

B: Body mass index、O: FEV1%、D: dyspnea severity by Modified Medical Reserch Council Scale for Dyspnea、E: exercise capacity by 6-minute walk。およそ4年生存率を予測(8)

 

 

 

心不全

Seattle Heart Failure Model

様々な臨床的、薬理学的、device、検査的指標に基づいて評価。1, 2, 3年生存率を予測(9)

 

Multiple estimation of risk based on the emergency department score in patients with acute heart failure

以下の13のリスクファクターによる評価:Barthel Score(日常生活におけるfunctional statusから算定)、年齢、収縮期血圧、呼吸数、検査指標(NT-pro BNP, カリウム, troponin, creatinine)、酸素飽和度、急性冠症候群・心電図上心肥大・NYHA class IV status・low-output symptomsの有無。30日死亡率を予測(10)

 

 

 

 

認知症

Functional Assessment Staging Tool (FAST)

16 stage / substages (Stage 1-7f)によって認知機能および行動機能を正常から重度まで評価。Score 7cは生存予後が6ケ月以下に相当(11)

 

Mortality Risk Index

年齢、性別、経口摂取、排便、運動、意識レベル、悪性疾患・不安定な内科疾患・心不全の有無の12の指標から評価。6ケ月の死亡率を予測(12) 

 

ePrognosis

コミュニティ、nursing home、hospice、入院における高齢者の複数の予後指標のsystematic reviewから集積(13)

 

 

 

 

End-stage renal disease

6-month mortality on hemodialysis

surprise question (この患者が6ケ月以内に死亡したら驚きますか)、アルブミン、年齢、認知症の有無、peripheral vascular diseaseの有無から算定。維持透析6ヶ月での生存予後を予測(14)

 

12-month mortality with stage 4 or 5 chronic kidney disease

surprise question for 6 months and 12 months、年齢、Modified Karnofsky Performance Index(0点:正常、1点:労働不能、頻繁の治療を要する、3点:生活不能、special careを要する)から算定。advanced CKDにおける12ヶ月の死亡率を予測(15)

 

 

 

End-stage liver disease

Child-Turcotte-Pugh

総ビリルビン、アルブミン、INR、肝性脳症の重症度、腹水の指標から評価。肝疾患の重症度を算定。必ずしも予後と関連しない(16, 17)

 

Model for End-Stage Liver Disease

総ビリルビン、クレアチニン、INRから評価。2006年のスタディでは血清ナトリウムを指標として追加した方がより予後を正確に予測できることが示された。90日死亡率を予測(18, 19)

 

 

 

 

Multisystem and critical illness

Charlson Comorbidity Index

19の異なるmedical conditionあるいは疾患の有無から算定。1年および10年死亡率を予測(20)

 

Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE)

生理的指標、年齢、以前の健康状態を使い重症度を評価。ICUでの死亡率を予測(21, 22)

 

 

 

 

 

 

 

症状マネージメント

 

<疼痛>

 

病歴聴取および身体診察は適切な疼痛管理において不可欠である。痛みの原因は様々で、筋膜、神経、骨、内臓などによる。重篤な患者でさえも注意深い病歴聴取によってオピオイドの間違った使用を避け、あるいは非薬剤性の治療への変更(mindfulness, 理学療法, transcutaneous nerve stimulation)を可能にする場合がある

 

非オピオイド性薬剤にはアセトアミノフェンあるいはNSAIDsが含まれ、軽度の痛み(疼痛 score 1-3(10点中))に使用される。中等度の痛み(疼痛 score 4-6)にはオピオイドと非オピオイド薬剤が併用されることが多い

 

 

患者がアセトアミノフェンの混合剤(oxycodoneとの)や市販薬を使用している場合は過剰投与に注意する必要がある。アセトアミノフェンの1日最大投与量は4gを超えてはならない(肝疾患を有する場合は2gまでである)

 

 

重度の疼痛(疼痛 score 7-10)の場合はオピオイド投与が中心となる。追加投与としてNSAIDs、コルチコステロイド、抗てんかん薬、抗うつ薬などが特定の疼痛症候群(神経性疼痛など)に使用される場合がある

 

 

オピオイドは経口剤が便利、低価格、安定した血中濃度という理由で好まれて使用される

 

注射オピオイドが必要な場合は静注あるいは皮下注が好まれる。静注投与が最も速く効果を発揮するが、持続時間が最も短い

 

経皮的オピオイドがオピオイド耐性で慢性疼痛を有する患者に有効である

 

短時間作用型オピオイドのみでは慢性あるいは癌性疼痛のコントロールには不十分であることが多い。徐放性morphine / oxycodone、貼付fentanyl剤などの長期作用型オピオイドが24時間の疼痛カバーに有効である。ただ短期作用型オピオイドも必要に応じてbreakthrough painに使用される必要がある

 

 

 

PCでよく使用される非静注オピオイド

 

Morphine

IR (immediate release) (錠剤, 液体, 濃縮液)

onset: 15-30 min,  peak at 60 min,  duration: 4h

経直腸投与可、舌下液は口腔粘膜でなく消化管で吸収される。腎不全では投与を避ける

 

ER (extended release) (錠剤, 液体, 濃縮液)

onset: 2-4h,  duration: 8-12h

錠剤は破砕できない、経口あるいは経直腸投与。腎不全では投与を避ける

 

 

Oxycodone

IR(錠剤, 液体, 濃縮液)

onset: 15-30 min,  peak at 60 min,  duration 3-6h

morphineより比較的安全

ER(錠剤)

onset: 1h,  duration: 8-12h

禁忌あるいは費用の問題がない限り長期作用型morphineを先に試すべきである

 

 

Fentanyl

IR(buccal tablet, "film or トローチ")

onset: 5-15 min,  duration: 4h (最大1日投与回数:4回)

オピオイド使用歴のない患者では推奨されない。使用前に専門家コンサルトが推奨される

 

ER(貼付剤)

onset: 12-18h(初回),  duration: 72h

開始前に患者は少なくとも60 oral morphine equivalents(後述)を服薬している必要がある。投与量調整のためには貼付から3日間待つ必要がある。体温および悪液質は吸収に影響する(発熱は吸収を促進する、皮下脂肪は吸収を抑制する)。腎不全においてもっとも安全な薬剤

 

 

Hydromorphone

IR(錠剤, 液体)

onset: 15-30 min,  peak at 60 min,  duration: 4h

腎不全および肝不全において比較的安全。経口あるいは経直腸投与可

 

ER(錠剤)

onset: 6-8h,  duration: 24h

米国ではER剤は1形態のみ利用可。使用前に専門家コンサルトが推奨される

 

 

 

 

過剰投与を避けるために、長期作用型薬剤の投与量は短期作用型薬剤の24時間での必要量に応じて決定されなければならない。長期作用型薬剤投与量は24時間総投与量の50〜75%に設定される。breakthrough painに対し薬剤が頻回に必要となる場合は、長期作用型オピオイドは3〜4日毎に増量されることになる。breakthroughオピオイドを投与する場合は24時間必要量の10〜15%の短期作用型薬剤として処方される

 

 

 

morphine equivalents

 

1:2:3 rule

1mg静注/皮下注morphine

2mg経口oxycodone

3mg経口morphine

(それぞれ等力価)

 

30:20:10:7.5:1.5 rule

30mg経口mophine

20mg経口oxycodone

10mg静注/皮下注morphine

7.5mg経口hydromorphone

1.5mg静注/皮下注hydromorphone

(それぞれ等力価)

 

 

この換算式は暗記するよりも比率を利用することで等価量を計算することに役立つ。例えばER oxycodone 30mg 1日2回、IR morphine 10mg 1日4回投与されている患者の場合

・oxycodone 30mg x 2 doses = 60mg x (30mg経口morphine/20mg経口oxycodone) = 90 OMEs (oral morphine equivalent)

・morphine 10mg x 4 doses = 40 OMEs

 total 130 OMEs

 

 

 

codeine、tramadol、morphineは腎機能が低下している患者で投与する場合は注意が必要である。meperidineは経口bioavailabilityが一定でなく、高用量を長期投与する場合、あるいは腎機能が低下している患者では神経毒性を有する代謝物が蓄積し、痙攣の閾値を下げたり、神経毒性を発揮したりする。methadoneは投与量の調整が難しい。半減期に比べonsetがかなり短く、過剰投与のリスクが高くなる

 

 

 

 

 

 

オピオイドの副作用には嘔気、便秘、掻痒感、鎮静がある

 

 

鎮静はたいてい耐性ができ1〜2日で消失する。また投与量減量、ローテーション、あるいは他のオピオイドへの変更で改善できることが多い

 

 

オピオイドを毎日使用する患者には刺激性下剤(senna, bisacodyl, )あるいは浸透圧性下剤といった便秘薬の予防投与が必要になり、排便の状態によって投与量を調整しなければならない。便軟化剤(docusate)のみでは不十分である(23)。便秘予防薬投与でも便が2日に1回以上でない場合はlactulose(モニラック)やpolyethylene glycol(マクロゴール)といった浸透圧性下剤を投与する必要がある。polyethylene glycolは低価で、副作用が少なく、効果的である。lactuloseも効果が高いが、副作用で患者が服薬できないことが比較的多い

 

 

オピオイドに関連する掻痒感や蕁麻疹は真のアレルギーではなく、ヒスタミンの放出に起因する場合が多い。 オピオイドの種類を変更するか、非鎮静性抗ヒスタミン剤を追加することによって症状を和らげることが可能である

 

 

オピオイドによる嘔気は通常3〜5日間で弱まる。metoclopramide(プリンペラン)やprochlorperazine(ノバミン)のような抗ドーパミン制吐剤によって治療ができる。ondansetron(ゾフラン)も治療抵抗性の場合に有効である。オピオイドの血中レベルが間歇的にpeakを迎えるよりも安定している方が嘔気が起きにくい場合がある。短期作用型オピオイドを定期的あるいは短い間隔で投与した方が血中濃度が安定し嘔気嘔吐を減らせるかもしれない。長期作用型や貼付剤に変更することでよりオピオイドの血中レベルが安定する

 

 

 

 

 

内臓性の疼痛は通常、鈍く、疝痛性で、局在がはっきりせず、嘔気や発汗などの自律神経症状に関連する不快感を伴う場合が多い。内臓性の痛みは通常、伸展、捻転、炎症などに起因し、膵臓、肝臓、腎臓、腸管などの癌に伴うことが多い。薬剤、運動不足、疾患などに起因する重度の便秘で起こる場合もある。疝痛に対し抗コリン薬が使われる場合もあるが、口腔乾燥、便秘、鎮静などの副作用と関連する。腸管閉塞に伴う痛みには緩和的手術が有効な場合がある。オピオイド抵抗性の痛みには腹腔神経叢や内臓神経の交感神経ブロックが効果的であるかもしれない

 

 

 

 

神経性疼痛は持続的あるいは間歇的で、灼熱感、ヒリヒリ感、刺すような痛み、電撃痛などと表現され、多くの場合中枢あるいは末梢神経に対する直接の侵害に起因する。癌の場合神経根の圧迫や神経への浸潤で起こることがある。神経圧迫の場合はコルチコステロイドが腫瘍の浮腫を改善し、また特定の腫瘍を溶解することによって圧迫と炎症による疼痛を軽減し、かつ食欲とenergy levelを増強させる。コルチコステロイドは脊髄圧迫および頭蓋内浮腫による頭痛と嘔気の主な治療薬である。補助的治療として低用量のdexamethasone(2〜4mg 1日2回)が十分であるが、脊髄圧迫の場合は高用量を必要とする

 

 

 

末梢性神経障害や神経根障害は癌の有無によらずよくみられる。神経性疼痛には様々な治療薬があり、gabapentin(ガバペン)やpregabalin(リリカ)などが有効である(24)。duloxetine(サンバルタ)も鬱を伴う患者には有効かもしれない。venlafaxine(イフェクサー)も米国ではoff-labelで使用されている(24)

 

 

内臓腫瘍による肩の疼痛といった関連痛、あるいは癌や化学療法に伴う痛風、などの骨格筋系の疼痛も認められる。骨転移の場合は放射線治療、コルチコステロイド、ビスフォスフォネート、侵襲的治療(冷凍切除、ラジオ波焼灼術)などの治療が高い効果を認める

   

 

 

 

<呼吸困難>

 

呼吸困難は心・呼吸器に関連しておこるのが通常だが、衰弱、消耗症候群、神経発達障害、不安、抑うつによっても起こる。胸水、肺炎、貧血、腹水など治療可能な場合は随時治療を行う。呼吸困難感は患者の主観的な症状であるがvital signにかかわらず速やかな対応をすべきである。呼吸困難感の強さは呼吸数、動脈血液ガス、酸素飽和度、補助呼吸筋の使用などとは必ずしも一致しない

 

 

非薬剤治療による効果が認められている(25)。呼吸理学療法は慢性の呼吸困難感を減らし、運動耐用を高める(26)

(呼吸困難に対する非薬物療法的介入を評価した47のstudiesのsystematic reviewでは呼吸トレーニング、歩行補助、神経電気筋刺激、胸壁バイブレーションが症状緩和に有効であることが確認された。音楽療法、リラクゼーション、fan use、カウンセリング、精神療法の有効性を認めるdataは不十分であった(27))

 

 

 

低用量の経口morphine(1日累積投与量10〜20mg)(28, 29)が呼吸困難に対する薬物療法のgold standardで慢性呼吸器疾患患者での有効性が証明されている(30)

 

 

オピオイドのtitrateが急過ぎるとオピオイドを使用したことがない患者では呼吸抑制が起こり得る。しかし患者の肝腎機能、オピオイド耐用性に基づいて選択使用すれば、臨床的に有害な呼吸抑制、CO2 retentionをきたさず、また死を早めることなく呼吸困難感を軽減することができる。American College of Chest Physiciansは呼吸困難に対するオピオイドを含んだaggressive treatmentを支持している(31)。他のオピオイド(fentanyl, hydromorphone)はよく調べられていないが、morphineが使用できない場合は使用が考慮される

(83人のオピオイドを使用したことがない緩和ケアを受けている患者(54%はCOPD)のobservational studyでは長期作用型経口morphine 10mg/日(必要に応じてtitrate、最大30mg/日)を投与した結果、多くの患者(62%)で少なくとも呼吸困難感が10%減り、70%の患者は1日必要量が10mgだけだった。呼吸抑制を認めたり、あるいは入院を必要とした患者はいなかった。3人に1人の患者で3ヶ月後も利益が継続した(29))

 

 

 

ベンゾジアゼピンは呼吸困難が不安によって悪化するような患者では有効である場合がある。低用量のオピオイドの安全性は証明されているが、ベンゾジアゼピンとの併用でより多くの副作用と関連する。よって患者のゴールと予後を考慮して使用する必要がある(32)

 

 

末期の患者で低酸素血症を伴う場合は酸素投与が呼吸困難の軽減に有効であるが、低酸素血症を伴わない患者ではmedical airと差が認められない(33)

(難治性の呼吸困難を有し、baseline PaO2 55mmHg以上の患者239人で行われたdouble-blind, randomized, placebo-controlled studyでは7日間経鼻カニュラで、酸素を投与したグループと空気を2Lを投与したグループの比較において呼吸困難感の改善に両者間で差は認められなかった(31))

 

 

 

 

<嘔気>

 

嘔気は様々な原因で起こり、その原因を理解することは有効な治療決定のガイドとなる

 

オピオイドに起因する嘔気はmetoclopramide(プリンペラン)、prochlorperizine(ノバミン)などの抗ドーパミン薬が最も効果的である

 

化学療法による嘔気はセロトニン拮抗薬(ondansetron(ゾフラン))やolanzapine(ジプレキサ)などが有効である(34, 35)

 

コルチコステロイドは化学療法レジメンとして他の制吐剤に追加されたり、あるいは頭蓋内圧上昇による嘔気の主要な治療薬として投与される

 

不完全な機械的的腸閉塞ではstandard治療としてdexamethasoneとmetoclopramideが使われる。 octreotide(サンドスタチン)の有効性に関する評価は定まっていない(36)。高度の腸閉塞ではoctreotideとventing gastrostomy tubeが必要になる

 

蠕動運動低下はmetoclopramideが最も効果的であり、放射線治療に起因する嘔気はセロトニン拮抗薬によく反応する

 

抗コリン性抗ヒスタミン剤(scopolamine, meclizine)はmotionに関連する嘔気や後頭蓋窩病変(小脳梗塞や転移)に有効である(37)

 

嘔気が治療抵抗性の場合は類似した作用の他の薬に変更するよりも、異なるクラスの薬剤を追加した方が相乗的に働く場合があるため推奨されている

 

 

 

<せん妄>

 

せん妄は末期患者でよくみられる。せん妄は進行癌、鬱病を併発している、あるいは死期が近くない場合においても、高齢者でのoutcome(生存率、罹患率)の悪化に関連している(38, 39, 40, 41)

 

 

せん妄は急性におこる意識の変容であり、注意散漫、不穏、活動性低下などの形で表れるが、認知症における慢性的な認知機能の変化と区別する必要がある。

治療可能なせん妄の原因(ベンゾジアゼピンなどの副作用、疼痛、尿路閉塞、bowel impaction、眼鏡の欠如や耳垢などによる感覚器の喪失) はまず非薬物療法で対応すべきである。低用量のhaloperidolがよく使われるが、スタディではreorientationなどの非薬物療法以上の効果を認めていない。haloperidolなどに反応しない不穏や興奮はより鎮静的な薬物が効果を発揮する

 

 

終末期の患者では複数の原因による終末期せん妄を経験する。ベンゾジアゼピンは一般的には終末期でない患者に対し、さらなるせん妄の悪化が起こり得るため投与を避けるべきとされている(42)。しかし、近年のエビデンスでは進行癌で興奮性せん妄をきたした入院患者に対しneurolepticにベンゾジアゼピンを追加投与することで効果が認められるとされている(43, 44)

 

 

終末期を迎える患者は様々な原因で不穏をきたす。それにはせん妄、疼痛、不安、呼吸困難などが含まれる。不穏がせん妄と判断される前にまず可逆的な原因(疼痛など)があるかを評価すべきである

 

 

終末期の患者では過活動や無気力となりえる。うめき声、補助呼吸筋の使用、呼吸数上昇、頻脈、発汗を認める場合があるが、これらの症状は非特異的で、必ずしも苦痛と関連せず、さらなる評価や対応を必要とするわけではない。不規則な呼吸や気管分泌物(”死前喘鳴”)が家族から見れば苦痛にあると判断されることがあるが、臨床家は家族教育の重要な役割にあり、終末期の予測される通常の過程であるか、非典型的で評価を必要とする状態であるかを伝える必要がある

 

 

亡くなる1〜2日前に分泌物による呼吸音に対し抗コリン薬が投与されることがよくあるが、はっきりした利益が確認されておらず、近年のdataではroutineでatropineやscopolamine patchを投与することを推奨していない(45)

 

 

 

 

<抑うつ>

 

鬱は末期患者に認められることがあり、医師はその評価および治療に対し域値を低くしなければならない。命にかかわる重篤な疾患に直面した時に数日から2〜3週間、士気を失い、一時的に抑うつ気分になることは正常な反応である。しかしそれをうつ病と鑑別することは困難である場合がある。症状がそれ以上続き、鬱病の診断基準を満たす場合は正常ではない

 

治療としてはselective serotonine reuptake inhibitorsが比較的安全であるが、薬物相互作用に、特にホルモン療法(tamoxifen)などを受けている場合は注意が必要である(46)

 

psychostimulants(methylphenidate)は主な禁忌(不安定頻脈性不整脈)がなければ即効性があり有効な薬剤である。methylphenidateの重篤な疾患を有する鬱病患者への効果に関するエビデンスは混在しているが(47, 48)、オピオイドによる鎮静および倦怠感をもつ癌患者に対する有効性を認めるdataが増えている(49)

 

低用量のmirtazapine(レメロン)は不眠と食思低下をもつ鬱病患者に有効である

 

三環系抗うつ薬、duloxetine、venlafaxineは神経性疼痛を有する鬱病患者に考慮されるが、最適効果が発揮されるのに数週間かかるため予後を考慮した上で使われなければならない(50)

 

 

 

 <食思低下>

 

食欲低下および体重減少は末期に近づく癌あるいは進行性疾患の患者でよくみられることである

 

患者が食に対する興味を失うこと、および低栄養状態となることは多くの家族にとって苦悩となる。caregiverは患者が食べなくなることを”あきらめる”と捉えるため、患者は食べなければならない、というプレッシャーを感じてしまう場合がある。患者は食思低下が家族にストレスを与えてしまうことに罪悪感を抱いてしまいうる。患者とcaregiverに食思低下と悪液質に関する教育を行うことで罪悪感の意識を減らし、食の変化を受け入れる手助けとなる。caregiverは患者が社会生活的側面として食事に参加すること、および好みの食べ物を一口か二口だけでも楽しむことを受け入れる必要がある

 

 

予後が不明で終末期が差し迫っていない場合は食欲刺激剤が考慮される。癌に関連する食思低下ではmegestrol(400〜800mg/日) がもっともよく調べられている。systematic reviewではmegestrolが食思低下を改善し体重増加をもたらすが、死亡率の改善は認めず、QOLの改善に対する効果もはっきしていない(51)。副作用には血栓症、高血糖、副腎抑制、性器出血がある。metoclopramide(10mg 1日4回)のような蠕動促進剤は嘔気を減らすが、体重増加は促進されず、食思低下を改善しない。短期間のコルチコステロイド(dexamethaxone 2〜4mg 朝食前と日中に投与)は進行癌の患者で嘔気と食思低下を改善することがいくつかのtrialsで認められている

(癌による食思低下および悪液質をもつ475人の患者で行われたrandomized studyではmegestrolとdexamethasoneが同等の食欲改善と体液増加によらない体重増加を認めた。dexamethasoneはステロイド毒性によってより頻繁に中止された。megestrolは静脈血栓症により高い関連を示した(5% vs 1%)(52))

 

 

  

 

終末期に近い患者に経腸・静脈栄養を行うことはcontroversialである

 

 

経腸栄養は進行した認知症の患者において生存率、QOL、誤嚥性肺炎のリスクに関する利益を認めないとエビデンスが示している。経腸あるいは静脈栄養が人生の残り数週間において、生存期間を延長する、あるいはQOLを改善する、といったエビデンスは現在のところ存在せず、むしろ有害であるという報告もある。体重減少および食思低下が進行する前に患者と栄養方法に関する嗜好を話し合っておくことは重要であり、後に患者や家族の苦痛を防ぐことに役立つ可能性がある(53)

 

 

 

 

 

重篤な患者は治療ゴールと予後に関する話し合いを家族を交えて行うことをためらう場合があるが、多くの場合、医師とはその話し合いをしたいと考えている(1)。患者は医師から見捨てられること、支援的手段および治療からの撤退、家族の感情的な反応などを恐れている場合がある。患者の生命維持治療に関する希望や不安、そして在宅か入院のどちらを望むか、ということに関して患者、家族、他の治療者の間での話し合いを医師は促す必要がある

 

 

 

治療のゴールに関する会話のガイド(REMAP)

・Reframe: Why the status quo isn't working

・Expect: Emotion: Respond with empathy

・Map out what's important

・Align with the patient't values

・Plan to match values

 

(具体的会話例を後述)

 

National Center for Ethics in Health Care 2017

Accessed at www.ethics.va.gov/goalsofcaretraining/REMAP.pdf on 23 Janury 2018

 

 

 

 

多くの医師と家族は治療のゴールに関する話を始めることを患者の希望を取り去ることだと間違って信じている(54, 55) 。患者にその話し合いが、あきらめること、希望がないこと、出来ることがないこと、を意味している訳ではないことをしっかりと伝えなければならない

 

 

現在の状況が希望に関わっていて、達成できるゴール(痛みのコントロール、歩行や喜びを感じる他の活動を可能にする)を設定することで希望が保てることを患者に伝えることによって患者の不安を軽減し、さらなる話し合いを進めることができる場合が多い

 

 

患者に予後に関する真実の情報を伝え 、治療オプションを説明することで患者の望みが保たれることをstudiesが示している(54)。そのような話を避けると症状による苦痛への治療を制限し、患者の他の心配事に関する評価ができなくなる

 

 

治療のゴールを決定する事と症状に対してしっかり対応をすることを患者に伝えることに加え、疾患の治療方法に関する患者の希望を確認すること、そして患者が自分で判断できなくなった時のための意思決定を行う代理者を決めなければならない。州ごとにその法律が異なっている(56)。事前に意思決定権を委任することを決めておくことで利害の不一致や混乱を避けることができる

 

 

代理者は症状に対するマネージメントおよび疾患が進行した時の治療に関する患者の希望を伝えられ、それをサポートする事に同意する必要がある。代理者は患者の状態が悪化した時に何をすべきか知っている必要があり、また彼らの役割は患者の希望を尊重することであって、その結果に責任を持つことではない事をしっかり伝えておく必要がある

 

 

米国ではGoal-directedで自発的な治療の撤退は倫理的にも法律的にも認められ、physician-aid in dyingや安楽死とは異なるものである。アメリカ連邦最高裁判所および下級裁判所は生命維持装置の撤退と最初からそれを開始しなかったこととの道徳的、倫理的、法的な違いはないことを一貫して表明している。患者は結局その疾患で亡くなるのであり、人工呼吸、経管栄養、血液透析などの治療を控えること、および中断することは法的に認められ、倫理的に自然なことであると捉えられている

 

 

米国ではベンゾジアゼピン、バルビツレート、麻酔薬等によるpalliative sedationは症状の緩和が他の方法によってはできない場合に認められ正当化されている(57)。鎮静の副作用によって意図せず死期を早める可能性があるが、”double effect”と称されている(58)。palliative sedationは倫理的にも法的にも認められている。なぜならその目的は他の治療ではコントロールできない苦しみを和らげることであり、苦痛を緩和すべき医師の責任と一致するからである

 

 

 

 

 

 

治療のゴールに関する会話

 

Reframe

患者の病状に対する理解を確認する。理解が正しければ治療ゴールの話に進む。正しくない場合は状況を説明し、理解を確認してから治療ゴールの話に進む

 

Expect: Emotion: Respond with empathy

臨床家は医学的事実の説明に力を注ぎ、患者の感情への配慮を怠りがちである。これは有害にすらなりえる。もし患者と臨床家の意思決定に不一致が起こった場合は単に患者の理解を促すことよりも、そのもとにある感情を扱った方がより解決につながりやすい

 

NURSE acronym for dealing with strong emotion

N: Name:とても困惑しておられるように見えます

U: Understanding:そんな状況に立たされたらどんな気持ちになるか想像することすら大変に感じます

R: Respect:あなたはお聞きになりたい質問を全てされ、ご家族も連れてこられるというとても重要なこともされました

S: Support:私はあなたがお聞きになりたい質問に答えるためにここにいます

E: Explore:あなたが今お感じになっておられる事を教えていただけますか

  

Map out what's important

治療プランに対する提案を行う前に患者のゴールと価値観を知らなければならない

 

Align with the patient't values

患者の話を聞いてから、臨床家は患者が何を大切にしたいと思っているかを繰り返し、理解が正しいかを確認する

 

Plan to match values

患者の同意に基づく治療プランをつくる。臨床家が患者の価値観に基づくと考えられる治療法を提案することは有効である事が多い

 

 

 

会話例

 

あなたの病気について理解していることを教えてください (R:reframe)

(患者:私はこの治療で良くなっていない。他に何か良い治療があるはずだ)

 

より有効な治療があればいいなあと私も願います (E:expect/empathize)

 

他の医師からどのような説明を受けていますか (R)

 

あなたの病気は今どんな状況にあると感じていますか (R)

(患者:私はCOPDを患っている。この数週間呼吸が悪化している。でも今までずっとこうやってきたし、また良くなると思っている)

 

あなたはこの病気と長い間向かい合われてきたのですね (E)

 

そして今私たちはもしかしたら違う場所に立っているのかもしれません (R)

(患者:どういう意味ですか?もしかして私にあきらめろと言っているのですか)

 

 

いえ決してそういう意味ではありません。でも、あなたが言われる「あきらめる」という意味について教えていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

 

もしかしたら一旦立ち止まって今からどこを目指していくかを話し合うのにちょうど良いタイミングかもしれません (R)

 

今日はあなたの病気が一般的には今後どのような経過になっていくかをお話してみたいと考えていましたが、いかがでしょうか (R) 

 

 

 

Bad newsを伝える

Fire a warning shot

検査結果は望んでいたものではありませんでした

重大なことを伝えなければなりません

  

Be clear and direct

生検の結果癌が見つかりました

癌が肝臓と肺に再発しています

 

Shut up

情報を伝えたあと会話をとめる

 

 

これが何を意味するかお話させていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

(患者:他に何かできることはないんですか、ほんとうにあなたは全て調べ尽くしたと言えますか)

 

大変心配されていらっしゃるのですね (E)

 

今日あなたはこの事を聞くことを予期されてなかったように感じられます (E)

 

 

患者の経験を完全に理解することはできないが、理解しようとしている姿勢を見せることはできる

言ってはならない事

”あなたがどのように感じているか私には良くわかります”

 

 

(患者:私はもう死ぬしかない、ということを言っているのですか) 

これらの話をお聞きになるのは本当に怖いことだろうと思います。できれば違った話をお伝えできればよかったと感じています (E)

 

(患者:まだ希望はありますか)

どんな状況でも常に希望はあります (E)

 

あなたが不安に感じられている事を教えていただけますか (E)

  

 

この状況の中で、あなたにとって一番大切なことはなんですか (M:map out what's important)

(患者:私にとって一番大切なことは諦めないことです。過去を振り返った時にやれることを全部しなかったと後悔したくないんです)

 

あなたの諦めないという姿勢を尊敬します (E)

 

あなたにとって一番重要なことは諦めないことなんですね (A:align with patient's values)

 

時間が限られているかもしれない中で、あなたにとって最も重要なことはなんですか (M)

 

今から先の事を考える時、あなたはどんな事を避けたいと考えていますか (M)

 

これからの事を考える時、あなたにとって最も大切なことはなんでしょうか、QOLでしょうか、どれくらい長く生きられるかでしょうか (M)

 

 

あなたのお話を聞くかぎり、あなたにとって最も大切なことは痛みがコントロールされ、家族とより多くの時間一緒に過ごせることのようですね。また再び呼吸器に繋がれることのような痛みや苦痛を受けたくないようですね。そういう理解で正しいでしょうか (A)

 

何が重要かというあなたのお話からすると、少しでも長く生きられる可能性があるのなら、たとえそれが機械によって生命が維持される場合であったとしても、いかなる治療をも追求されたい、あなたはそのように考えられている (A)

そのような理解で正しいでしょうか

もしこんな状況なら機械による生命維持を希望されない、そんな状況で思い浮かばれることはありますか (M)

 

 

私から提案をさせていただいてもよろしいでしょうか (P:plan to match values)

 

何が重要かというあなたの話から考えて出来ることがたくさんあります。まず痛みをコントロールすることです。痛みの治療には様々な方法が確立されています。またサービスを利用することで、あなたが家で過ごすことを助け、家族との価値ある時間をより長く過ごすことができます。 新しい薬を試してみてあなたがどう感じられるかによって、それがどれくらい可能かに関する理解が深まります

また今言ったことを全て行うことに加え、CT scanや血液検査を行ったり、また人工呼吸器につなぐといった蘇生術を行うことは、あなたが言われたゴールから考えると、必ずしも役に立つものとは考えにくいので今後行わないことを提案したいと考えています

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、これからは症状のコントロールにより注意を注ぎ、家で過ごせる時間を大切にされたい (A)

今後、胸痛が起こる度に入院するということをやめることで、それがより達成しやすくなるかと考えます (P)

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、今後病気が悪化した場合に心肺蘇生術を施したり、人工呼吸器を使用することはあなたの希望とは一致しないように感じます。仮にもしそれが起こってしまった場合、生命維持装置から離脱できない可能性が高いと考えます。たとえ離脱できたとしても、その後自立して生活することがより困難になると感じます。

そういう事は避けられたいと考えらている

その理解で正しいでしょうか (A)

  

 

 

もしあなたの病態が悪くなった時に特別な治療を受けたいか、受けたくないかについてお話させていただいてもよろしいでしょうか

 

心肺蘇生についてあなたが理解していることを教えていただけますか (R)

 

成人の場合、心肺蘇生術を受けても実際助からない場合が多いです。若年者で健康な人の場合は確率が上がります。重い病気を患っている場合はさらに確率が下がります

 

病院で心肺蘇生を受けて助かるのは100人中17人です。逆に言えば100人中83人がなくなります。これらは平均で、残念ながらあなたのように病気を持っている場合はチャンスが低くなります

 

心肺蘇生を受けたくないと想像される状況がありますか (M)

(患者:もし自分の家族を認識できなかったり、自分で意思決定できない場合は心肺蘇生を受けたくないです)

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

6 March 2018

 

 

 

蜂窩織炎・皮膚軟部組織感染症

 

皮膚軟部組織感染症の頻度は近年落ち着いたものの依然高く、尿路感染症の2倍、肺炎の10倍である(1)

 

 

 

 

皮膚軟部組織感染症 

蜂窩織炎 (cellulitis) 

丹毒 (erysipelas) 

毛嚢炎 (folliculitis) 

せつ (furuncle) 

よう (carbuncle) 

皮下膿瘍 (cutaneous abscess) 

化膿性筋炎 (pyomyositis) 

膿痂疹 (impetigo) 

膿瘡 (ecthyma) 

ガス壊疽 (gas gangrene) 

壊死性筋膜炎 (necrotizing fasciitis) 

 

 

 

リスクファクター

皮膚バリアの破綻

・外傷性(裂創、手術、熱傷、擦過傷、挫滅創、開放骨折、注射薬剤使用、人・動物咬傷、虫刺し症)

・非外傷性(潰瘍、足白癬、皮膚炎、足趾間摩擦疹)

・ドレナージ障害

・腋窩・骨盤リンパ郭清

・伏在静脈採取

・リンパ浮腫

・肥満

・慢性静脈不全

 

末梢性動脈疾患

 

感染に寄与する状態

・糖尿病

・肝硬変

・好中球減少

・HIV

・移植および免疫抑制剤

 

ホームレス

 

蜂窩織炎の既往(蜂窩織炎の既往は次の感染のリスクを非常に高くする(2, 3))

 

 

 

 

 

初回感染の時点で寄与する因子を同定・治療することで感染の再発を減らすことに努めるべきである

 

 

 

リンパ浮腫のaggressive managementによって感染再発を減らせるかもしれない(4)

 

 

 

糖尿病患者は定期的な足の診察、糖尿病性神経症のスクリーニング、皮膚硬結の除去、足装具の使用によって、潰瘍、それに続く感染のリスクを減らすことが可能である(5)

 

 

救急外来のおける合併症を伴わない創傷に対する抗菌薬外用(triple antibiotic ointment, neomycin, mupirocin)は感染率を下げることが報告されている(6)

 

 

  

 

予防的抗菌薬投与が蜂窩織炎を繰り返す患者の発症リスクを減らす可能性があり、寄与する因子の治療にも関わらず年に3〜4回感染を発症する患者では投与を考慮してよいかもしれない(7)。regimenとして経口ペニシリン、ペニシリン筋注、エリスロマイシンが調査されている

(少なくとも1回以上の蜂窩織炎再発の既往を持つ274人を調べたPATCH I randomized trialではペニシリン250mg1日2回投与したグループにおいて12ヶ月間における発症がプラセボグループに比べおよそ50%減少したことが認められた。ただし一旦ペニシリンを中止すると予防効果は漸次減少した(8))

 

 

 

動物咬傷の初期治療は大量の水での洗浄およびpovidone-iodineによる消毒、異物および組織構造損傷の確認、そして生存できない組織の除去である。基本的には動物咬傷の初期治療では傷を閉じることが推奨されないが、顔の傷の場合は大量の水での洗浄および予防的抗菌薬投与によって傷を閉じてよいかもしれない

 

 

 

犬咬傷を評価した2014年のrandomized trialでは初期治療において傷を閉じた場合、閉じなかった場合と比較して感染率が同等であり、かつ美容的外観の改善が認められたため、合併症を伴わない犬咬傷においては初期治療で傷を閉じてもよいかもしれない(9) 

 

 

IDSA (Infectious Diseases Society of America)はhigh-risk factorsをもつ患者(免疫不全、無脾症、肝不全、浮腫)あるいはhigh-risk 咬傷(手や顔の中等度から重度の咬傷、骨膜あるいは関節包を貫通する傷)に対して早期の予防的抗菌薬投与を推奨している(7)

 

 

 

人・猫咬傷は感染のリスクが高く、特に猫咬傷では猫の歯が深部に達するので骨髄炎が合併する可能性がある(10)

 

 

 

予防的抗菌薬投与は皮膚を貫通する全てのclosed-fist injury、猫咬傷に投与されるべきである

 

 

抗菌薬は好気性菌および嫌気性菌両方に対する効果を有し、動物咬傷におけるPasteurella、人咬傷におけるEikenellaをカバーする必要がある。そのレジメンとしてamoxicillin-clavulanateが推奨される。ペニシリンアレルギーの場合はclindamycinとlevofloxacinあるいはmoxifloxacin併用が代替レジメンとなる

 

 

 

tetanus vaccinationもup-to-dateされていない場合は考慮される必要がある。狂犬病の暴露後予防の必要性も評価されるべきである

 

 

 

Staphylococcus aureusのcolonizationはそれに引続く感染のリスクを高める(11)。routineでのMSSA (methicillin-sensitive S aureus)あるいはMRSAのdecolonizationは推奨されないが、intensive decolonizationは皮膚軟部組織感染症の再発率を減らす。IDSAのガイドラインではS.aureusによる再発性の皮膚軟部組織感染症に対する5日間のdecolonization regimenを検討することを推奨している 。そのregimenはmupirocinの1日2回経鼻投与、1日1回chlorhexidineによる洗浄、および1日1回personal itemsのdecolonizationである(7)

 

 

 

 

蜂窩織炎は深部真皮および皮下脂肪組織を含む皮膚感染症である。注意深い病歴聴取と身体診察に基づいて診断される。病歴には発症を促す状態および特定の病原体(注1)に関連するリスクファクターを評価する必要がある

 

 

 

 

蜂窩織炎の誤診はよくみられ、抗菌薬の過剰投与、不必要な入院、薬物副作用、および医療費の増大につながっている(12)

 

 

 

 

蜂窩織炎の発症は典型的には急性で、ほとんどの場合片側に認められる

 

 

 

 

鑑別疾患

 

感染性

 

遊走性紅斑(erythema migrans)

境界明瞭、無痛性、蜂窩織炎・丹毒に比べ緩徐に広がる

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化膿性関節炎・滑液包炎(septic arthritis/bursitis)

発赤が関節あるいは滑液包にかかり、強い圧痛、発熱を認める。化膿性関節炎では関節可動によって非常に強い疼痛を認める

f:id:Tatsu21:20180318040031j:plain 

< septic arthritis > 

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< septic bursitis >

 

初期ヘルペス(early herpes zoster)

dermatomalに発赤、強い疼痛が水泡に先んじて生じる

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Streptococcal / staphylococcal toxic shock

発熱、ショック、多臓器不全がびまん性の発赤を伴って認め、細菌性皮膚軟部組織感染症に類似する

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非感染性

 

静脈鬱滞性皮膚炎(venous stasis dermatitis)

多くの場合両側性で、表層に落屑、滲出液、痂皮 、pitting edemaを認め、慢性静脈不全の他の特徴を有する

f:id:Tatsu21:20180318042301j:plain

 

深部静脈血栓症(deep venous thrombosis)

深部の痛み、浮腫を認め、多くの場合下腿に認める。強い発赤を認めることは少ない

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接触性皮膚炎(contact dermatitis)

掻痒感を伴い、原因物質への暴露があり、暴露域に一致する境界が明瞭である

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脂肪皮膚硬化(lipodermatosclerosis)

線維化脂肪織炎、疼痛を伴い、境界不明瞭、足関節内側から始まり、数週かけて発達、急性期は赤紫色を呈する 

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リンパ浮腫(lymphedema)

nonpitting edema・発赤を認め、熱感を欠く。角化増殖、結節、色素沈着などの皮膚の二次性変化を伴う

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壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)

境界明瞭で疼痛を伴う潰瘍。全身性疾患に伴う

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皮膚軟部組織感染症内での鑑別も重要である。非膿瘍性の皮膚軟部組織感染には膿瘍を伴わない蜂窩織炎、丹毒がある。これらは適正抗菌薬が異なるため毛嚢炎、せつ、よう、皮下膿瘍などの膿瘍性皮膚軟部組織感染症と鑑別する必要がある。非膿瘍性皮膚軟部組織感染症は多くの場合streptococciに起因し、膿瘍性皮膚軟部組織感染症はたいていS.aureusに起因する

 

 

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蜂窩織炎 (cellulitis)

真皮・皮下脂肪を含む皮膚感染症

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丹毒 (erysipelas)

リンパを含むより表層の皮膚感染症。圧痛を伴う境界明瞭な紅斑性プラークが特徴

http://www.clevelandclinicmeded.com/medicalpubs/diseasemanagement/dermatology/common-skin-infections/images/common-skin-fig5_large.jpg

 

毛嚢炎 (folliculitis)

上皮内に膿を認める毛嚢表層の感染症

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せつ (furuncle)

小さな皮下膿瘍を認める毛嚢感染症

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よう (carbuncle)

せつが集合したもの

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皮下膿瘍 (cutaneous abscess)

真皮および深部皮膚組織内の膿瘍

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化膿性筋炎 (pyomyositis)

全身症状を呈し、筋群に局在するcramping painを伴う骨格筋化膿性感染症。表面的な変化をきたさない場合もある

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膿痂疹 (impetigo)

膿疱や水泡が痂皮やbullaeに進展する皮膚表層の感染症。たいていstaphylococciあるいはstreptococciに起因する

f:id:Tatsu21:20180317103541j:plain

 

膿瘡 (ecthyma)

より深部の膿痂疹。水泡や膿疱で始まりパンチアウトされたような潰瘍に進展する。多くの場合group A streptococciに起因する

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ガス壊疽 (gas gangrene)

筋組織を含む壊死性感染症。クロストリジウム筋壊死として知られる

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壊死性筋膜炎 (necrotizing fasciitis)

筋膜表面に沿って広がる皮下組織の侵攻的な感染症

f:id:Tatsu21:20180317105631j:plain

 

 

 

 

ガス壊疽や壊死性筋膜炎などの壊死性皮膚軟部組織感染症はlife / limb-threateningであり、急速に進行し、緊急の外科的処置を要するため、それらの可能性を示唆する症候を探すことは重要である

 

 

 

壊死性皮膚軟部組織感染症を初期の段階で診断することは困難である。よって全身性の症状を呈する、あるいは糖尿病、肥満、免疫不全、血液悪性疾患、静注薬剤使用、異物の存在などを伴う患者では特に強い疑いを持って評価する必要がある(13)

 

 

 

 

壊死性筋膜炎の典型的な症状は身体所見に比例しない強い疼痛、水泡、bullae、皮膚のdiscoloration、感覚鈍麻、捻発音等である。しかしこれらは感染後期の症候でsensitivityを欠く。よって適切な臨床状況ではこれらの所見を認めないという事を外科的評価をしないことの理由にしてはならない

 

 

 

壊死性筋膜炎を示唆する所見

・身体所見に比例しない疼痛

・浮腫、硬結、皮膚変化の範囲を超える疼痛

・青紫色の水泡あるいはbullae

・皮膚の感覚麻痺

・捻発音

・皮膚壊死あるいは斑状出血

・急速な進行

・初期抗菌薬へ反応しない

・全身性の症状

・多臓器不全

・壊死性軟部組織切開しても出血を認めない

 

 

 

 

 検査

 

complete blood count and differential

白血球上昇は非特異的だが感染を示唆、左方移動を伴う著しい上昇は深部の、あるいは重篤な感染である可能性を表す。血小板減少もより重症な感染である事を示唆、hemoconcentrationとleukomoid reaction (WBC >50,000)はclostridium sordellii感染の場合に見られることがあり、溶血はclostridium perfringens感染に関連することがある

 

 

乳酸

乳酸値上昇は組織の循環不全(sepsis)を表し、また組織の壊死の可能性も示唆する(14)

 

 

CPK

上昇は筋壊死の場合にみられ、壊死性筋膜炎の可能性を示唆するかもしれない。vibrio vulnificus感染の場合に上昇することが多い

 

 

CRP

非特異的だが、壊死性軟部組織感染症のリスク評価に役立つかもしれない(15)

 

 

グラム染色・培養

膿瘍性感染症の場合、またdebridementを行う際にはすべきである

 

 

 

菌血症は合併症を伴わない蜂窩織炎および軟部組織感染症ではまれである(16)。よって血液培養採取はroutineでは推奨されない。ただ免疫不全(化学療法中、好中球減少、重度の細胞性免疫不全、脾摘後)、特定の暴露(動物咬傷、水に関連する創傷)、リンパ浮腫の既往、壊死性感染を疑う、sepsisなどの場合は血液培養が推奨される

 

 

傷表層のスワブ・培養はcolonizeしている病原体を現し、原因菌を同定する可能性は高くない。非膿瘍性の蜂窩織炎や丹毒におけるneedle aspirationやpunch biopsyによる培養の意義は低い。合併症を伴わない膿瘍ではroutineで培養を行う必要はないが、再発感染、治療失敗、非典型的な兆候、重篤な状態などでは培養を行う必要がある。感染組織がdebrideされる場合は培養に提出する必要がある

 

 

X-ray 

ガスの存在を確認できるかもしれないが、壊死性軟部組織感染症の同定には非常にsensitivityが低い 

 

 

超音波検査

drainすべき液体・膿瘍貯留の同定に有用である

 

 

MRI

化膿性筋炎および骨髄炎を疑う際に行うが、壊死性軟部組織感染症にはspecificityが低い

 

 

CT with contrast

壊死性軟部組織感染症の診断がはっきりしない場合は有用であるかもしれない(17)

 

 

 

壊死性筋膜炎診断のgold standardは直接外科的に筋膜を評価することであり、画像検査のためにそれが遅れてはならない。検査にかかる時間の関係で壊死性筋膜炎の同定としてのMRIの有用性はよく調べられていない。enhanced CTは有用である可能性があるが、診断前確率が高い場合は直接外科的評価を行うべきで、診断がはっきりせず、比較的重篤でない患者の場合には行ってよいかもしれない。ただ除外診断として信頼すべきでない

 

 

 

蜂窩織炎と評価されたがショックを伴う場合など臨床的に壊死性軟部組織感染症を疑う場合は、診断や外科的処置の遅れが致命的となりうるため、速やかに外科による評価が必要になる

 

 

 

 

 

蜂窩織炎の場合、患肢挙上がドレナージを促し改善を早めるかもしれない。皮膚の亀裂、浸軟(ふやけ)、白癬など感染の起因となる状態を治療することが推奨される

 

 

 

糖尿病性足感染症やガス壊疽などに対するhyperbaric oxygenの付随的治療が調べられてきたが、効果が確認されておらず、外科的debridementなどの遅れをきたす可能性があるため推奨されてない

 

 

 

 

局所的な水泡性あるいは非水泡性の膿痂疹には抗菌薬外用(mupirocin or retapamulin 1日2回5日間)あるいは経口剤が推奨されるが、患部が無数の時や膿瘡の場合は経口抗菌薬が推奨される(18)

 

 

 

合併症を伴わない蜂窩織炎や全身症状を認めない他の皮膚軟部組織感染症では経口抗菌薬が好まれる。発熱や他の臓器不全、深部感染(化膿性筋炎、壊死性筋膜炎、壊疽)の臨床所見などを認める中等度から重度の感染では注射抗菌薬が必要になる。顔面の丹毒では最初は注射抗菌薬から開始すべきである

 

 

 

蜂窩織炎の多くはβ-hemolytic streptococciによるものと考えられている(19)。したがって非膿瘍性の蜂窩織炎ではこれらの細菌をカバーする抗菌薬を選択する必要がある。選択可能なものはpenicillin, amoxicillin, dicloxacillin, cephalexin、ペニシリンアレルギーがある場合はclindamycinが選択可能である

 

 

 

合併症を伴わない蜂窩織炎をきたしたそれ以外健康な外来患者ではMRSAのカバーは必要ない。MRSAのリスクがある場合は検討されるべきである(注2)

膿瘍や膿性滲出液を認めない蜂窩織炎の外来治療においてcephalexin と cephalexin plus trimethoprim-sulfamethoxazole (TMP-SMX) を比較した多施設randomized, double-blind trialではTMP-SMXを加えても治療率の改善を認めなかった(83.5% with TMP-SMX and 85.5% without TMP-SMX)。このtrialではもともと感染のリスクとなる皮膚の状態を持つ患者、静注薬剤使用中で発熱を認める患者、免疫不全患者は含まれていない(20)

 

 

streptococcus pyogensのsulfa抗菌薬に対するsensitivityがin vitroでは低いため従来TMP-SMX単剤治療は非膿性蜂窩織炎の治療には不十分と考えられてきたが、最近の臨床dataでは単剤治療でも合併症を伴わない皮膚軟部組織感染症において効果があることが示された

(合併症を伴わない皮膚軟部組織感染症(蜂窩織炎、膿瘍、あるいは両方)の患者524人の外来治療を調べた多施設trialにおいてclindamycin と TMP-SMXを比較した結果、治癒率は同等であった(80.3% for clindamycin vs 77.7% for TMP-SMX)(21))

 

 

培養dataがない膿痂疹の治療においてはstreptococciとstaphylococci両方をターゲットとすべきである

 

 

膿性感染症(蜂窩織炎を伴う、あるいは伴わない膿瘍、せつ、よう(多くはstaphylococciに起因))ではMRSAに有効な抗菌薬を使用すべきである

 

 

MRSAに有効な経口抗菌薬にはTMP-SMX, doxycycline, clindamycin, linezolidがある

(MRSAのclindamycinに対するsensitivityは地域によって異なるためlocal resistance rateが高い場合は第一選択薬として使用すべきではない)

 

 

 

皮膚軟部組織感染症治療に対し新たな経口抗菌薬が承認されている。2014年に承認されたtedizolidはlinezolidのように広くグラム陽性菌に対し効果を有し、経口および静注薬が利用可能で、血液毒性および薬剤相互作用が比較的少ないようである(22)。新たなbroad-spectrum fluoroquinoloneとして皮膚軟部組織感染症治療に承認されたdelafloxacinはMRSAに対し効果的であるようである(23)

 

 

 

経口抗菌薬

 

streptococci

 amoxicillin 500mg 1日3回(pasteurellaに有効、penicillinよりbioavailabilityがよい)

 penicillin VK 500mg 1日4回(せまいspectrum) 

 

streptococci and MSSA

 amoxicillin-clavulanate 875/125mg 1日2回(嫌気性菌をカバー)

 dicloxacillin 500mg 1日4回(投与回数が多い)

 cephalexin 500mg 1日4回(投与回数が多い)

 

MRSA

 clindamycin 300mg 1日2回(C.difficile感染に最も強く関連)

 doxycycline 100mg 1日2回(photosensitivityをきたす、臨床dataが少ない)

 TMP-SMX 1 double-strength 1日2回(高カリウム血症をきたす)

 linezolid 600mg 1日2回(SSRIとの併用でserotonin syndromeのリスク、長期使用で骨髄障害)

 tedizolid 200mg 1日2回(高価、linezolidに比べ血小板減少や薬剤相互作用が少ない)

 delafloxacin 450mg 1日2回(臨床dataが限られている)

 

 

 

 

 

 

中等度の非膿性蜂窩織炎治療はβ-hemolytic streptococcをターゲットとし、膿性感染、あるいはMRSAのリスクがある場合(静注薬剤使用、最近のカーテーテル留置、貫通性の外傷、MRSA保菌)はMRSAをカバーするvancomycinあるいはその他の抗菌薬を使用すべきである。重症で急速に進行する感染、直腸周囲の感染、重度の免疫不全などではグラム陰性菌をカバーするbroad-spectrumな抗菌薬を追加すべきである

 

 

新たなsemisynthetic lipoglycopeptideであるdalbavancinとoritavancinはMRSAを含むグラム陽性菌に対し広い効果を有し、半減期が非常に長い。よって静注剤治療を要するが入院を拒否する患者や経口薬摂取が信頼できない患者などの治療として考慮される(24, 25, 26)

 

 

 

 

注射抗菌薬

 

streptococci

 penicillin G 2-4 million units IV 4-6時間毎(group A streptococciの第一選択)

 ceftriaxone 1-2g IV 24時間毎(グラム陰性菌に対しよい効果(pseudomonasやESBLはカバーしない))

streptococci and MSSA

 cefazolin 1g IV 8時間毎(グラム陰性菌をある程度カバー)

 nafcillin 1-2g IV 4時間毎(cefazolinより副作用が多い(皮疹、薬剤熱、血球減少))

MRSA (and streptococci/MSSA)

 vancomycin 15mg/kg IV 12時間毎(トラフのモニターが必要、red man syndromeや腎毒性)

 daptomycin 4mg IV 24時間毎(菌血症の際は高用量を必要とする、CPKのモニターが必要)

 linezolid 600mg IV 12時間毎(SSRIとの併用でserotonin syndromeのリスク、長期使用で骨髄障害)

 clindamycin 600-900mg IV 8時間毎(C.difficileと最も強く関連、S.aureusの抵抗性が増えている)

 ceftaroline 600mg IV 12時間毎(ceftriaxoneと同等のグラム陰性菌カバー)

 dalbavancin 1500mg IV 30分かけて1回投与(臨床dataが限られている)

 oritavancin 1200mg IV 3時間かけて1回投与(PT/PTTが延長?、臨床dataが限られている)

 

 

 

 

 

 

 

2014年のIDSAガイドラインでは膿瘍に対し切開排膿してかつ抗菌薬を追加すべきは全身性の症状を有する、免疫不全、複数の膿瘍、高齢、切開排膿のみに反応しない等の患者のみとされている(7)。しかし最近の二つの臨床試験では膿瘍(5cm以下も含む)に対し切開排膿に抗菌薬を追加した方が治癒率が高いことが示された(27, 28)。したがって膿瘍が小さな場合は切開排膿のみで十分かもしれないが、また、利益・不利益を患者ごとに評価する必要はあるものの、合併症を伴わない皮下膿瘍をもつすべての患者において抗菌薬追加投与が考慮されるべきである

 

 

糖尿病患者における感染性潰瘍に関連していない合併症を伴わない蜂窩織炎や皮下膿瘍ではそれらの起因菌は非糖尿病患者と同様であり、グラム陽性好気性菌が主流を占める(29)。したがってそのような場合、抗菌薬は非糖尿病患者と同じである。軽度の糖尿病性足感染症(全身性の症状を伴わず皮膚および皮下組織に限局する2cm以下の潰瘍)ではstreptococcusとMSSA(リスクがある場合はMRSA)をカバーする抗菌薬が推奨される。中等度から重度の場合はMRSA、嫌気性菌、グラム陰性桿菌をカバーするbroad-spectrumな抗菌薬が必要になる

 

 

 

膿性の皮膚軟部組織感染症ではMRSAをカバーする抗菌薬が推奨される(30)

 

 

 

蜂窩織炎および皮膚軟部組織感染症の入院適応

・全身性の症状

・臓器不全を伴う

・壊死性感染の可能性がある

・limb-threatening

・外科的治療を要する(単純な洗浄・ドレナージは含まない)

・経口薬治療が信頼できない

 

 (重度の免疫不全、経口薬による外来治療失敗等も入院治療が考慮される)

 

 

 

壊死性筋膜炎は速やかな抗菌薬治療開始と外科的debridementを要するmedical emergencyである。抗菌薬はMRSA、グラム陰性桿菌、嫌気性菌をカバーする必要がある。またgroup A streptococcalに起因する壊死性筋膜炎は臨床的に判別できないのでトキシン産生を抑えるclindamycinも追加する必要がある。追加的治療としてimmunoglobulin静注も調査されてきたが、死亡率、入院期間、身体機能等に有効性を認めた臨床試験がないため、推奨されない(31, 32)

 

 

 

蜂窩織炎の抗菌薬投与期間は5日間(33)、改善が認められない場合は延長することが推奨されている。皮下膿瘍では追加的抗菌薬投与7日間が妥当である。好中球減少の患者では皮膚軟部組織感染症に対し7〜14日間。壊死性軟部組織感染症の最適投与期間は決定されていないが、debridementを必要とせず、臨床的に安定するまで継続すべきである

 

 

 

 

 

(注1)

糖尿病:S aureus, Group B streptococci, anaerobes, gram-negative bacilli

肝硬変:Campylobacter fetus, coliforms, Vibrio vulnificus, Capnocytophaga canimorsus

好中球減少:Pseudomonas aeruginosa

人咬傷:Eikenella corrodens, viridans group streptococci

猫咬傷:Pasteurella multicida

犬咬傷:Pasteurella multocida, Capnocytophaga canimorsus

鼠咬傷:streptobacillus moniliformis

hot tub exposure:pseudomonas aeruginosa, atypical mycobacteria

淡水内での裂創:Aeromonas hydrophila

汽水内(淡水と海水の混在)での裂創:Vibrio species

fish tank exposure:Mycobacterium marinum

fish handling:Erysipelothrix rhusiopathiae

貫通性の足の創傷:Pseudomonas aeruginosa

静注薬剤使用:MRSA, group A streptococci

壊死性筋膜炎

 Type 1 (polymicrobial, mixed anaerobse and aerobes):Streptococci, Clostridium species, Bacteroides species, Enterobacteriaceae, Staphylococci, Enterococci

 Type 2 (monomicrobial):Group A streptococci (most common), community-associated MRSA, Clostridium species (infrequent), Vibrio species

 

 

(注2)

MRSA感染の既往

違法薬剤の経鼻的あるいは静注使用

最近の収監

接触的なスポーツ

バー、音楽イベント、クラブへの頻繁な出没

HIV感染

最近の抗菌薬使用

最近の入院

血液透析

MRSA感染の人と密な接触

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

6 February 2018