レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

治療のゴールに関する会話のガイド

 

重篤な患者は治療ゴールと予後に関する話し合いを家族を交えて行うことをためらう場合がある。しかし多くの場合、医師とはその話し合いをしたいと考えている(1)

 

 

多くの医師と家族は治療のゴールに関する話を始めることを患者の希望を取り去ることだと間違って信じている(2, 3) 。患者にその話し合いが、あきらめること、希望がないこと、出来ることがないこと、を意味している訳ではないことをしっかりと伝えなければならない

 

  

患者に予後に関する真実の情報を伝え 、治療オプションを説明することで患者の望みが保たれることをstudiesが示している(2)。そのような話を避けると症状による苦痛への治療を制限し、患者の他の心配事に関する評価ができなくなる

 

 

 

患者が自分で判断できなくなった時のための意思決定を行う代理者を決めておくことで利害の不一致や混乱を避けることができる

 

 

代理者は患者の状態が悪化した時に何をすべきか知っている必要があり、また彼らの役割は患者の希望を尊重することであって、その結果に責任を持つことではない事をしっかり伝えておく必要がある

 

 

 

 

治療のゴールの確認手順 

1、患者は意思決定能力があるか

2、患者が自分で意思決定能力を失った時の代理人は誰か

3、患者の希望を記した文書があるか

4、患者が自分の病状を理解しているか

5、患者の価値観および治療のゴールは何か

6、生命維持治療のプランは何か

 

 

 

 

治療のゴールに関する会話のガイド(REMAP)

・Reframe: Why the status quo isn't working

・Expect: Emotion: Respond with empathy

・Map out what's important

・Align with the patient't values

・Plan to match values

  

National Center for Ethics in Health Care 2017

Accessed at www.ethics.va.gov/goalsofcaretraining/REMAP.pdf on 23 Janury 2018 

 

 

 

Reframe

患者の病状に対する理解を確認する。理解が正しければ治療ゴールの話に進む。正しくない場合は状況を説明し、理解を確認してから治療ゴールの話に進む

 

Expect: Emotion: Respond with empathy

医師は医学的事実の説明に力を注ぎ、患者の感情への配慮を怠りがちである。これは有害にすらなりえる。もし患者と医師の意思決定に不一致が起こった場合は単に患者の理解を促すことよりも、そのもとにある感情を扱った方がより解決につながりやすい

 

NURSE acronym for dealing with strong emotion

N: Name:とても困惑しておられるように見えます

U: Understanding:そんな状況に立たされたらどんな気持ちになるか想像することすら大変に感じます

R: Respect:あなたはお聞きになりたい質問を全てされ、ご家族も連れてこられるというとても重要なこともされました

S: Support:私はあなたがお聞きになりたい質問に答えるためにここにいます

E: Explore:あなたが今お感じになっておられる事を教えていただけますか

  

Map out what's important

治療プランに対する提案を行う前に患者のゴールと価値観を知らなければならない

 

Align with the patient't values

患者の話を聞いてから、医師は患者が何を大切にしたいと思っているかを繰り返し、理解が正しいかを確認する

 

Plan to match values

患者の同意に基づく治療プランをつくる。医師が患者の価値観に基づくと考えられる治療法を提案することは有効である事が多い

 

 

 

 

治療ゴールに関する会話例

 

(医師)

全ての患者さんに確認しているのですが、今日はあなたの事前指示(advanced directive)についてお話したいと思っていますが、いかがでしょうか

 

(患者)

それは何ですか

 

(医師)

説明させてください

それはあなたの治療に関するご希望を医療従事者やあなたの大切な人たちが理解することを助けるものです。もしあなたがご自分で判断が出来なくなった場合にどのような治療を行うかを決める際の助けになるものです

時に患者さんは病態が悪化して話すことができなくなってしまい、その希望が聞けなくなる場合があります

これは極端な状況で、もちろん現在のあなたはそれとは程遠い状況にあります

 

(患者)

なぜ今その話をするのですか

 

(医師)

私が今この話をするのは、この先あなたにとって適切なことを行うために準備をしておきたいと考えているからです

 

例えば、ある患者さんは自分が入院していて病状の改善が難しいと分かった場合は、延命治療は避け、苦痛の緩和に力を注いでほしい、と希望されます。またある人は、たとえ話ができなくても、あるいは意識がなくても、できる限り長く生かしてもらいたい、と望まれる人もいます。

 

(患者)

今までそんな事を考えたこともありませんでした

私はただ今の病気を乗り越えることだけを考えてきました

  

(医師)

もちろんです

そしてこの事を考えるのは大変難しい事であるのも分かります

私はただ現在あなたが、先程の例えの患者さんの希望のどちら側に近いか、という事を知れたらと考えていました

 

 (患者)

もし私が良くなる可能性が低く、ただ機械に繋がれている状況になると、先生が判断する場合、私はそれを望みません。家族にもそんな状況を耐えてほしいと思いません

 

 (医師)

そうですか、分かりました

 

もし万が一あなたに何か深刻なことが起こって病院に入院することになり、病態の改善が難しいと考えられるような状態になった場合、あなたは「機械にはつながず、苦痛の緩和に力を入れて欲しい」

そのように希望される

そのような理解で正しいでしょうか

 

 (患者)

はい、もし私の状態が良くならない、先生がそう考える場合はもういっそのこと家に帰してください

 

(医師)

わかりました

とても大切な情報です。その事が私が知りたかったことです

ありがとうございます

あなたはその希望に関して今まで誰か他の人に話をされた事がありますか

 

(患者)

いいえ

おそらく子供たちは分かっていると思いますが、今までその話をした事はありません

  

(医師)

もし万が一あなたが自分で話をする事が出来なくなった場合、私が話をさせてもらう事になるのは子供さんでしょうか

  

(患者)

はい、息子だと思います

 

(医師) 

あなたは今、私におっしゃられた事を息子さんにお伝えすることができると思われますか

 

(患者)

ええ、彼は分かってると思います

でもちゃんと伝えられると思います

 

(医師)

それはとても助かります

もしよろしければ、次回の受診の際に息子さんも交えて、このお話をもう一度させていただくというのはいかがでしょうか

  

(患者)

ええ、あなたが望むなら家族全員連れてきます

  

(医師)

それは素晴らしいことです

ありがとうございます

 

 

 

 

 

治療のゴールおよびCode Statusに関する会話例

 

 

①治療のゴールに関する会話

 

(医師)

病院に来られる前のあなたの日常に関するお話をお聞きしてもよろしいでしょうか

 

(患者)

お話できるようなことも特別ありません。一人で暮らしています

 

(医師)

日中どんな事をされる事が好きですか

 

(患者)

私は犬がとても好きで飼っています。1日2回近所に散歩に連れていきます

でも、心配しています・・・

 

(医師)

どんな事が心配なんですか

 

(患者)

現在友人の家で預かってもらっています

でも、最近今までと同じではなくなってきました

 

(医師)

あなたはこの先も犬のお世話が続けられるかを心配されているのですか 

 

(患者)

ええ

 

(医師)

そうですか

また話を戻しますが、他にはどんな事をされるのが好きですか

 

(患者)

ガーデニングが好きです。トマトやホットペッパーを育てています。それを友人に配っています

でも最近は大変です。息がすぐ切れてしまいます

 

(医師)

同じ事をするのが難しくなってきている、という事ですか

 

(患者)

ええ

 

(医師)

そうですか

 

今回の入院はいかがですか

 

(患者)

ええ、なんとかやっています

 

(医師)

この前、歩行器で歩かれているのをお見かけしましたよ

 

(患者)

ええ、私にとっては初めての経験ですが、私にできる事はすべてして、少しでも早く家に帰りたいと考えています

 

(医師)

お聞きしていると、家で過ごされる事があなたにとって、とても大切な事のようですね

 

(患者)

ええ、1日でも早く退院して、犬の世話や庭の手入れをするため一生懸命私にできる事をしています

 

(医師)

 そうなんですね

 

この先お体に関してどんな事が起きるか、あるいはこの先どこで過ごされるか、などについてご心配になられている事はありますか

 

(患者)

ナーシングホームには行きたくないと思っています。病院にもいたくないです

 

(医師)

今行われている治療はまだ少し時間がかかるかもしれません。つまり、あなたはもうしばらく病院にいなければならないかもしれませんが、それによって家に帰ることができるなら、それでもよろしいとお考えですか

 

(患者)

ええ、私は家に帰られるのなら、今の治療を続けたいと思っています

 

(医師)

あなたのお話をお聞きする限り、あなたにとって最も大切な事は家にいること、そして犬と共に過ごし、またガーデニングなどのような事を行うことのようですね

 

(患者)

ええ、そうです

 

(医師)

そして入院も時に仕方ないにしても、病院で過ごす時間はできる限り制限したい

そのような理解で正しいでしょうか

 

 (患者)

ええ、その通りです

 

 

 

 

②予後に関する会話(患者がその会話をする準備ができているか、いないか)

 

(医師)

では、あなたの心不全の状態についてあなたが理解している事を教えていただけますか

 

(患者)

最近は疲れやすく、息も切れます

私の医師から聞く限りあまりよくないみたいです

 

(医師)

今まで医師からこの先あなたの病状に関してどのような事が予期されるか、というお話をお聞きされた事はありますか

 

(患者)

いいえ

 

(医師)

その事について私とお話したいですか

 

(患者)

ええ、私は正直なことを教えてもらいたいです

 

(医師)

あなたご自身はあなたのお体についてどのような事を予期されていますか

 

(患者)

ええ、私は状態が良くないのは理解しています

でも、まだ数年はこの調子で頑張りたいと考えています

 

(医師)

私もそう望みます

ただ現在の心不全の経過から考えると、もしかしたらそれより短いかもしれません

 

(患者)

・・・

ええ、私もそうかもしれないと思っています

 

(医師)

私が理解しているあなたの状態から考えると、現在のあなたの心臓がどれくらい機能しているか、また腎臓など他の臓器への影響を及ぼしている事、最近入院を繰り返している事から考えて、正直にお話しますと、もしかしたら年の単位ではなく、月の単位かもしれません

あるいはそれより長いかもしれません

あるいは短いかもしれません

あなたはもしかすると違うように考えられていたかもしれません

 

(患者)

聞いてください

私の体は現在とても落ち着いています。私は今80歳です。私の家族には100歳まで生きた者もいます。私は今までもこうやって切り抜けてきましたし、これからもそうなると信じています

 

(医師)

私も同じように望みます

私はただあなたの状態に基づく私のできる限りの推測をお話しています

 

(患者)

わかりました

 

 

 

③Code Statusに関する会話

 

(医師)

私の理解する限り、あなたにとって最も大切な事は家にいること、そして犬と共に過ごし、またガーデニングなどのような事を行うこと

そういう理解で正しいでしょうか

 

(患者)

ええ、そうです

 

(医師)

今から少し時間をとって、もし私たちの希望通りに物事が運ばなかった場合の事についてもお話させてもらいたいと思っていますがよろしいですか

 

たとえば万が一この入院中にあなたの心臓が止まってしまうような事があった場合ですが、その事について医師とお話になられた事がありますか

 

(患者)

ええ、病院に来た時に話をしました

 

(医師) 

あなたは何とお答えされたのですか

 

(患者)

蘇生してもらう事を希望しました。もし心臓の鼓動をもどしてもらえるなら、戻してください

私はまだまだ心の準備ができていません

 

(医師)

そうなんですね

今まで心肺蘇生によって予期される事に関してお話をお聞きされたことがありますか

 

(患者)

いいえ、ありません

 

(医師)

もし入院している患者さんの心臓が止まってしまった場合、テレビでよく見るのとは違って、多くの場合患者さんは亡くなってしまいます。若くて健康な人の場合は話が変わるのですが、病院に入院している人が心肺蘇生術を受けて、生還して退院できるのは100人中15人くらいです。つまり100人中85人の方が生還することができません。

たとえ生還できたとしても、本人の状態や年齢にも関係しますが、心肺蘇生中、脳への血液供給が十分でなくて脳へのダメージが起こり、それがもとに戻らなくなる可能性があります

 

(患者)

・・・

 

(医師)

あなたの現在の状態や年齢から考えますと、心肺蘇生を行なったとしても、先程あなたが今後家でどのように過ごされたいかと希望されるような状態には戻してくれない可能性が高いと考えいます

 

(患者)

・・・

ええ、そうみたいですね

私はただ家にいることが望みです

 

(医師)

あなたの状態、及びあなたがどのような事を望んでいるかというお話からして、その時がきたらその時で、もしあなたの心臓が止まってしまった時は、心肺蘇生を行わなず、苦痛の緩和に専念する

私はそういった治療をお勧めしようと考えています

 

(患者)

・・・

そうですね、分かりました

私もそう思います

 

(医師)

わかりました

あなたの娘さんにもあなたのお考えを共有していただく事が大切だと考えますが、またお電話してお伝えさせていただいてもよろしいでしょうか

 

(患者)

ええ、お願いします

 

 

 

  

 

代理者との対話

 

(医師)

治療の次のステップに関してお話をしてもよろしいですか

 

(娘)

ええ、やはり私は母の人工呼吸器治療を中止したくないです

 

(医師)

そうですか

ご家族がそのようにお考えになるのは当然のことだと感じます

 

ただ、もしあなたのお母様がここにおられるとしたら、そして今私が説明したような状態に関してお聞きされたとしたら、何とおっしゃられると思いますか

 

(娘)

今までそんな風に考えた事はありませんでした

 

でも私は母がどんな人かを知っています

きっと「そんな治療はしてほしくない」そう言うだろうと思います

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会話例(他)

 

あなたの病気について理解していることを教えてください (R:reframe)

 

(私はこの治療で良くなっていない。他に何か良い治療があるはずだ)

 

より有効な治療があればいいと私も願います (E:expect/empathize)

 

 

他の医師からどのような説明を受けていますか (R)

 

 

あなたの病気は今どんな状況にあると感じていますか (R)

 

(私はCOPDを患っている。この数週間呼吸が悪化している。でも今までずっとこうやってきたし、また良くなると思っている)

 

あなたはこの病気と長い間向かい合われてきたのですね (E)

 

そして今私たちはもしかしたら違う場所に立っているのかもしれません (R)

 

(どういう意味ですか?もしかして私にあきらめろと言っているのですか)

  

いえ決してそういう意味ではありません。でも、あなたが言われる「あきらめる」という意味について教えていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

 

もしかしたら一旦立ち止まって今からどこを目指していくかを話し合うのにちょうど良いタイミングかもしれません (R)

 

今日はあなたの病気が一般的には今後どのような経過になっていくかをお話しさせていただきたいと考えていましたが、いかがでしょうか (R) 

 

 

 

Bad newsを伝える

Fire a warning shot

検査結果は望んでいたものではありませんでした

重大なことを伝えなければなりません

  

Be clear and direct

生検の結果癌が見つかりました

癌が肝臓と肺に再発しています

 

Shut up

情報を伝えたあと会話をとめる

 

 

 

これが何を意味するかお話させていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

(他に何かできることはないんですか、ほんとうにあなたは全て調べ尽くしたと言えますか)

 

ご心配になられるのは当然のことだと思います (E)

 

今日あなたはこの事を聞くことを予期されてなかったように見受けられます (E)

 

 

患者の経験を完全に理解することはできないが、理解しようとしている姿勢を見せることはできる

言ってはならない事

”あなたがどのように感じているか私には良くわかります”

 

 

(私はもう死ぬしかない、ということを言っているのですか) 

 

これらの話をお聞きになるのは本当に怖いことだろうと思います。できれば違った話をお伝えできればよかったと感じています (E)

 

(まだ希望はありますか)

 

どんな状況でも常に希望はあります (E)

 

あなたが不安に感じられている事を教えていただけますか (E)

  

 

この状況の中で、あなたにとって一番大切なことはなんですか (M:map out what's important)

 

(私にとって一番大切なことは諦めないことです。過去を振り返った時にやれることを全部しなかったと後悔したくないんです)

 

あなたの諦めないという姿勢を尊敬します (E)

 

あなたにとって一番重要なことは諦めないことなんですね (A:align with patient's values)

 

 

時間が限られているかもしれない中で、あなたにとって最も重要なことはなんですか (M)

 

今から先の事を考える時、あなたはどんな事を避けたいと考えていますか (M)

 

これからの事を考える時、あなたにとって最も大切なことはなんでしょうか、QOLでしょうか、どれくらい長く生きられるかでしょうか (M)

 

 

あなたのお話を聞くかぎり、あなたにとって最も大切なことは痛みがコントロールされ、家族とより多くの時間一緒に過ごせることのようですね。また再び呼吸器に繋がれることのような痛みや苦痛を受けたくないようですね。そういう理解で正しいでしょうか (A)

 

 

何が重要かというあなたのお話からすると、少しでも長く生きられる可能性があるのなら、たとえそれが機械によって生命が維持される場合であったとしても、いかなる治療をも追求されたい、あなたはそのように考えられている (A)

そのような理解で正しいでしょうか

もしこんな状況なら機械による生命維持を希望されない、そんな状況で思い浮かばれることはありますか (M)

 

(自分で判断ができず、家族の顔も認識できないような状態の場合は生命維持治療を望みません) 

 

 

私から提案をさせていただいてもよろしいでしょうか (P:plan to match values)

 

何が重要かというあなたの話から考えて出来ることがたくさんあります。まず痛みをコントロールすることです。痛みの治療には様々な方法が確立されています。またサービスを利用することで、あなたが家で過ごすことを助け、家族との価値ある時間をより長く過ごすことができます。 新しい薬を試してみてあなたがどう感じられるかによって、それがどれくらい可能かに関する理解が深まります

また今言ったことを全て行うことに加え、CT scanや血液検査を行ったり、また人工呼吸器につなぐといった蘇生術を行うことは、あなたが言われたゴールから考えると、必ずしも役に立つものとは考えにくいので今後行わないことを提案したいと考えています

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、これからは症状のコントロールにより注意を注ぎ、家で過ごせる時間を大切にされたい (A)

今後、胸痛が起こる度に入院するということをやめることで、それがより達成しやすくなるかと考えます (P)

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、今後病気が悪化した場合に心肺蘇生術を施したり、人工呼吸器を使用することはあなたの希望とは一致しないように感じます。仮にもしそれが起こってしまった場合、生命維持装置から離脱できない可能性が高いと考えます。たとえ離脱できたとしても、その後自立して生活することがより困難になると感じます。

そういう事は避けられたいと考えらている

その理解で正しいでしょうか (A)

  

 

 

 

 

  

 

 

1

Bernacki RE, Block SD, American College of Physicians High Value Care Task Force Communication about serious illness care goals: a review and synthesis of best practices JAMA Intern Med 2014;174:1994-2003

 

2

Smith TJ,  Giving honest information to patients with advanced cancer maintains hope Oncology (Williston Park) 2010;24:521-5

 

3

Wright AA,  Associations between end-of-life discussions, patient mental health, medical care near death, and caregiver bereavement adjustment JAMA 2008;300:1665-73

 

 

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緩和ケア

 

緩和ケアは慢性で治癒が困難である重篤な疾患に罹患した患者のQOLを改善し症状を和らげることを目的としている。ただそれは必ずしも治療オプションがなく、予後が限られていることを意味しているわけではない(1)。緩和ケアは重篤な疾患によってもたらされる身体的、精神的、スピリチュアル的、社会的、といったそれぞれの苦悩に取り組み、患者と家族の希望・尊厳を保ち、自主性を重んじることを目指す

 

 

 

緩和ケア (PC: palliative care) は三つの要素から成り立っている

primay PC(すべての臨床家によってもたらされる、QOLに対する基本的な配慮)

specialist PC(重篤な疾患の全期間、理想的には診断の時点から、もたらされる)

hospice care(終末期(およそ予後6ケ月未満))

 

 

 

primary PCは全ての臨床家(primary careと専門家)が患者の多くのニーズを満たす基本的なケア(基本的な痛みのコントロール、advance care planning、等)を提供することによってもたらされる

 

 

 

時に複雑な状況がより援助的な生活基盤(caregivers, social services, )を必要とする場合がある。specialist PCによって紹介医、患者、caregiverに対しさらに細やかな援助を提供することができる

 

 

 

患者が延命治療を控え、疾患が通常の転帰をとった場合生命予後が6ケ月未満(Medicare-determined)と判断された場合はほとんどの商業的保険とfederal health coverage(Medicare / Medicaid)によって、hospice careを受けることができる

 

 

 

specialist PCは重篤な疾患の経過のいつの時点においても患者を評価し、治療を行うものである

 

 

 

hospiceとspecialist PCは聖職者、social worker、薬剤師を含む共同チームとして患者とcaregiverのニーズを扱い、提供される

 

 

 

hospice careは在宅あるいは長期療養施設において提供されるのに対し、specialist PCは主に入院あるいは外来において提供される 

  

 

PC (palliative care)  VS  hospice

・両方とも症状に対する細やかな対応、治療ゴールおよびadvance care planningの明確化を通してQOLを最大限にすることを目標とする

 

・PCは生命予後の限られた疾患のいつの時点(診断から死亡まで)においてもアクセスできるのに対し、hospiceは終末期(生命予後6ケ月未満)の間のみアクセス可能である

 

・PCは延命治療あるいは根治的治療と同時に提供されることが可能であるのに対し、hospiceの場合は延命治療を控えなければならない

 

・PCでは治療および入院に対する制限がないが、hospiceの場合は症状に対するマネージメントが他にない場合を除いては入院を避けることをゴールとする

 

 

 

 

入院の時点でspecialist PCを考慮する基準(2)

surprise:患者が12ケ月以内に死亡したとしても驚かないと考えられる

frequent admissions:同じコンディションに基づく数ヶ月内の繰り返す入院

complex symptoms:困難な症状あるいは精神的ニーズによる入院

complex care requirement:機能的な依存あるいは複雑なhome supportを要する

failure to thrive:生活機能の低下、体重低下、自分でケアができない

advance care planning needs:advance care planningの手続き、あるいは話し合いをしたことがない

limited social support:家族のストレス、慢性精神科疾患、caregiverの不在

limited prognosis:進行悪性疾患、認知機能低下を伴う股関節骨折、院外心肺停止

 

 

 

 

 

多くの病気で予後予測を行うことは困難である。そのため疾患毎の予後予測ツールがつくられてきた。しかし臨床家は、これらのツールはpopulation-based dataに基づく予測であって、患者個人ごとの臨床に関連するすべての要素が組み入れられているわけではないため、その限界を理解しなければならない

 

 

悪性疾患・全身状態

Karnofsky Performance Status

0から100点までの10点ごとのスケール。セルフケア、日常生活機能および歩行に関するfunctional statusの評価。100点は正常・問題なし、0点は死亡。予後をdays、weeks、monthsかで予測(3)

 

Eastern Cooperative Oncology Group

0から5点までのスケール。セルフケア、日常生活機能および歩行に関するfunctional statusの評価。0点は制限なく病気以前のすべての活動が可能、5点は死亡。生存予後をdays、weeks、monthsかで予測(4, 5)

 

Palliative Performance Scale

歩行、可能な活動、病気の進展、セルフケア、摂食機能、意識レベルによる評価。生存予後をdays、weeks、monthsかで予測(6)

 

Palliative Prognostic Score

Karnofsky Performance Status、白血球数、リンパ球パーセンテージ、呼吸困難と食思低下の有無で評価。30日生存率を予測(7)

 

 

 

COPD

BODE index

B: Body mass index、O: FEV1%、D: dyspnea severity by Modified Medical Reserch Council Scale for Dyspnea、E: exercise capacity by 6-minute walk。およそ4年生存率を予測(8)

 

 

 

心不全

Seattle Heart Failure Model

様々な臨床的、薬理学的、device、検査的指標に基づいて評価。1, 2, 3年生存率を予測(9)

 

Multiple estimation of risk based on the emergency department score in patients with acute heart failure

以下の13のリスクファクターによる評価:Barthel Score(日常生活におけるfunctional statusから算定)、年齢、収縮期血圧、呼吸数、検査指標(NT-pro BNP, カリウム, troponin, creatinine)、酸素飽和度、急性冠症候群・心電図上心肥大・NYHA class IV status・low-output symptomsの有無。30日死亡率を予測(10)

 

 

 

 

認知症

Functional Assessment Staging Tool (FAST)

16 stage / substages (Stage 1-7f)によって認知機能および行動機能を正常から重度まで評価。Score 7cは生存予後が6ケ月以下に相当(11)

 

Mortality Risk Index

年齢、性別、経口摂取、排便、運動、意識レベル、悪性疾患・不安定な内科疾患・心不全の有無の12の指標から評価。6ケ月の死亡率を予測(12) 

 

ePrognosis

コミュニティ、nursing home、hospice、入院における高齢者の複数の予後指標のsystematic reviewから集積(13)

 

 

 

 

End-stage renal disease

6-month mortality on hemodialysis

surprise question (この患者が6ケ月以内に死亡したら驚きますか)、アルブミン、年齢、認知症の有無、peripheral vascular diseaseの有無から算定。維持透析6ヶ月での生存予後を予測(14)

 

12-month mortality with stage 4 or 5 chronic kidney disease

surprise question for 6 months and 12 months、年齢、Modified Karnofsky Performance Index(0点:正常、1点:労働不能、頻繁の治療を要する、3点:生活不能、special careを要する)から算定。advanced CKDにおける12ヶ月の死亡率を予測(15)

 

 

 

End-stage liver disease

Child-Turcotte-Pugh

総ビリルビン、アルブミン、INR、肝性脳症の重症度、腹水の指標から評価。肝疾患の重症度を算定。必ずしも予後と関連しない(16, 17)

 

Model for End-Stage Liver Disease

総ビリルビン、クレアチニン、INRから評価。2006年のスタディでは血清ナトリウムを指標として追加した方がより予後を正確に予測できることが示された。90日死亡率を予測(18, 19)

 

 

 

 

Multisystem and critical illness

Charlson Comorbidity Index

19の異なるmedical conditionあるいは疾患の有無から算定。1年および10年死亡率を予測(20)

 

Acute Physiology and Chronic Health Evaluation (APACHE)

生理的指標、年齢、以前の健康状態を使い重症度を評価。ICUでの死亡率を予測(21, 22)

 

 

 

 

 

 

 

症状マネージメント

 

<疼痛>

 

病歴聴取および身体診察は適切な疼痛管理において不可欠である。痛みの原因は様々で、筋膜、神経、骨、内臓などによる。重篤な患者でさえも注意深い病歴聴取によってオピオイドの間違った使用を避け、あるいは非薬剤性の治療への変更(mindfulness, 理学療法, transcutaneous nerve stimulation)を可能にする場合がある

 

非オピオイド性薬剤にはアセトアミノフェンあるいはNSAIDsが含まれ、軽度の痛み(疼痛 score 1-3(10点中))に使用される。中等度の痛み(疼痛 score 4-6)にはオピオイドと非オピオイド薬剤が併用されることが多い

 

 

患者がアセトアミノフェンの混合剤(oxycodoneとの)や市販薬を使用している場合は過剰投与に注意する必要がある。アセトアミノフェンの1日最大投与量は4gを超えてはならない(肝疾患を有する場合は2gまでである)

 

 

重度の疼痛(疼痛 score 7-10)の場合はオピオイド投与が中心となる。追加投与としてNSAIDs、コルチコステロイド、抗てんかん薬、抗うつ薬などが特定の疼痛症候群(神経性疼痛など)に使用される場合がある

 

 

オピオイドは経口剤が便利、低価格、安定した血中濃度という理由で好まれて使用される

 

注射オピオイドが必要な場合は静注あるいは皮下注が好まれる。静注投与が最も速く効果を発揮するが、持続時間が最も短い

 

経皮的オピオイドがオピオイド耐性で慢性疼痛を有する患者に有効である

 

短時間作用型オピオイドのみでは慢性あるいは癌性疼痛のコントロールには不十分であることが多い。徐放性morphine / oxycodone、貼付fentanyl剤などの長期作用型オピオイドが24時間の疼痛カバーに有効である。ただ短期作用型オピオイドも必要に応じてbreakthrough painに使用される必要がある

 

 

 

PCでよく使用される非静注オピオイド

 

Morphine

IR (immediate release) (錠剤, 液体, 濃縮液)

onset: 15-30 min,  peak at 60 min,  duration: 4h

経直腸投与可、舌下液は口腔粘膜でなく消化管で吸収される。腎不全では投与を避ける

 

ER (extended release) (錠剤, 液体, 濃縮液)

onset: 2-4h,  duration: 8-12h

錠剤は破砕できない、経口あるいは経直腸投与。腎不全では投与を避ける

 

 

Oxycodone

IR(錠剤, 液体, 濃縮液)

onset: 15-30 min,  peak at 60 min,  duration 3-6h

morphineより比較的安全

ER(錠剤)

onset: 1h,  duration: 8-12h

禁忌あるいは費用の問題がない限り長期作用型morphineを先に試すべきである

 

 

Fentanyl

IR(buccal tablet, "film or トローチ")

onset: 5-15 min,  duration: 4h (最大1日投与回数:4回)

オピオイド使用歴のない患者では推奨されない。使用前に専門家コンサルトが推奨される

 

ER(貼付剤)

onset: 12-18h(初回),  duration: 72h

開始前に患者は少なくとも60 oral morphine equivalents(後述)を服薬している必要がある。投与量調整のためには貼付から3日間待つ必要がある。体温および悪液質は吸収に影響する(発熱は吸収を促進する、皮下脂肪は吸収を抑制する)。腎不全においてもっとも安全な薬剤

 

 

Hydromorphone

IR(錠剤, 液体)

onset: 15-30 min,  peak at 60 min,  duration: 4h

腎不全および肝不全において比較的安全。経口あるいは経直腸投与可

 

ER(錠剤)

onset: 6-8h,  duration: 24h

米国ではER剤は1形態のみ利用可。使用前に専門家コンサルトが推奨される

 

 

 

 

過剰投与を避けるために、長期作用型薬剤の投与量は短期作用型薬剤の24時間での必要量に応じて決定されなければならない。長期作用型薬剤投与量は24時間総投与量の50〜75%に設定される。breakthrough painに対し薬剤が頻回に必要となる場合は、長期作用型オピオイドは3〜4日毎に増量されることになる。breakthroughオピオイドを投与する場合は24時間必要量の10〜15%の短期作用型薬剤として処方される

 

 

 

morphine equivalents

 

1:2:3 rule

1mg静注/皮下注morphine

2mg経口oxycodone

3mg経口morphine

(それぞれ等力価)

 

30:20:10:7.5:1.5 rule

30mg経口mophine

20mg経口oxycodone

10mg静注/皮下注morphine

7.5mg経口hydromorphone

1.5mg静注/皮下注hydromorphone

(それぞれ等力価)

 

 

この換算式は暗記するよりも比率を利用することで等価量を計算することに役立つ。例えばER oxycodone 30mg 1日2回、IR morphine 10mg 1日4回投与されている患者の場合

・oxycodone 30mg x 2 doses = 60mg x (30mg経口morphine/20mg経口oxycodone) = 90 OMEs (oral morphine equivalent)

・morphine 10mg x 4 doses = 40 OMEs

 total 130 OMEs

 

 

 

codeine、tramadol、morphineは腎機能が低下している患者で投与する場合は注意が必要である。meperidineは経口bioavailabilityが一定でなく、高用量を長期投与する場合、あるいは腎機能が低下している患者では神経毒性を有する代謝物が蓄積し、痙攣の閾値を下げたり、神経毒性を発揮したりする。methadoneは投与量の調整が難しい。半減期に比べonsetがかなり短く、過剰投与のリスクが高くなる

 

 

 

 

 

 

オピオイドの副作用には嘔気、便秘、掻痒感、鎮静がある

 

 

鎮静はたいてい耐性ができ1〜2日で消失する。また投与量減量、ローテーション、あるいは他のオピオイドへの変更で改善できることが多い

 

 

オピオイドを毎日使用する患者には刺激性下剤(senna, bisacodyl, )あるいは浸透圧性下剤といった便秘薬の予防投与が必要になり、排便の状態によって投与量を調整しなければならない。便軟化剤(docusate)のみでは不十分である(23)。便秘予防薬投与でも便が2日に1回以上でない場合はlactulose(モニラック)やpolyethylene glycol(マクロゴール)といった浸透圧性下剤を投与する必要がある。polyethylene glycolは低価で、副作用が少なく、効果的である。lactuloseも効果が高いが、副作用で患者が服薬できないことが比較的多い

 

 

オピオイドに関連する掻痒感や蕁麻疹は真のアレルギーではなく、ヒスタミンの放出に起因する場合が多い。 オピオイドの種類を変更するか、非鎮静性抗ヒスタミン剤を追加することによって症状を和らげることが可能である

 

 

オピオイドによる嘔気は通常3〜5日間で弱まる。metoclopramide(プリンペラン)やprochlorperazine(ノバミン)のような抗ドーパミン制吐剤によって治療ができる。ondansetron(ゾフラン)も治療抵抗性の場合に有効である。オピオイドの血中レベルが間歇的にpeakを迎えるよりも安定している方が嘔気が起きにくい場合がある。短期作用型オピオイドを定期的あるいは短い間隔で投与した方が血中濃度が安定し嘔気嘔吐を減らせるかもしれない。長期作用型や貼付剤に変更することでよりオピオイドの血中レベルが安定する

 

 

 

 

 

内臓性の疼痛は通常、鈍く、疝痛性で、局在がはっきりせず、嘔気や発汗などの自律神経症状に関連する不快感を伴う場合が多い。内臓性の痛みは通常、伸展、捻転、炎症などに起因し、膵臓、肝臓、腎臓、腸管などの癌に伴うことが多い。薬剤、運動不足、疾患などに起因する重度の便秘で起こる場合もある。疝痛に対し抗コリン薬が使われる場合もあるが、口腔乾燥、便秘、鎮静などの副作用と関連する。腸管閉塞に伴う痛みには緩和的手術が有効な場合がある。オピオイド抵抗性の痛みには腹腔神経叢や内臓神経の交感神経ブロックが効果的であるかもしれない

 

 

 

 

神経性疼痛は持続的あるいは間歇的で、灼熱感、ヒリヒリ感、刺すような痛み、電撃痛などと表現され、多くの場合中枢あるいは末梢神経に対する直接の侵害に起因する。癌の場合神経根の圧迫や神経への浸潤で起こることがある。神経圧迫の場合はコルチコステロイドが腫瘍の浮腫を改善し、また特定の腫瘍を溶解することによって圧迫と炎症による疼痛を軽減し、かつ食欲とenergy levelを増強させる。コルチコステロイドは脊髄圧迫および頭蓋内浮腫による頭痛と嘔気の主な治療薬である。補助的治療として低用量のdexamethasone(2〜4mg 1日2回)が十分であるが、脊髄圧迫の場合は高用量を必要とする

 

 

 

末梢性神経障害や神経根障害は癌の有無によらずよくみられる。神経性疼痛には様々な治療薬があり、gabapentin(ガバペン)やpregabalin(リリカ)などが有効である(24)。duloxetine(サンバルタ)も鬱を伴う患者には有効かもしれない。venlafaxine(イフェクサー)も米国ではoff-labelで使用されている(24)

 

 

内臓腫瘍による肩の疼痛といった関連痛、あるいは癌や化学療法に伴う痛風、などの骨格筋系の疼痛も認められる。骨転移の場合は放射線治療、コルチコステロイド、ビスフォスフォネート、侵襲的治療(冷凍切除、ラジオ波焼灼術)などの治療が高い効果を認める

   

 

 

 

<呼吸困難>

 

呼吸困難は心・呼吸器に関連しておこるのが通常だが、衰弱、消耗症候群、神経発達障害、不安、抑うつによっても起こる。胸水、肺炎、貧血、腹水など治療可能な場合は随時治療を行う。呼吸困難感は患者の主観的な症状であるがvital signにかかわらず速やかな対応をすべきである。呼吸困難感の強さは呼吸数、動脈血液ガス、酸素飽和度、補助呼吸筋の使用などとは必ずしも一致しない

 

 

非薬剤治療による効果が認められている(25)。呼吸理学療法は慢性の呼吸困難感を減らし、運動耐用を高める(26)

(呼吸困難に対する非薬物療法的介入を評価した47のstudiesのsystematic reviewでは呼吸トレーニング、歩行補助、神経電気筋刺激、胸壁バイブレーションが症状緩和に有効であることが確認された。音楽療法、リラクゼーション、fan use、カウンセリング、精神療法の有効性を認めるdataは不十分であった(27))

 

 

 

低用量の経口morphine(1日累積投与量10〜20mg)(28, 29)が呼吸困難に対する薬物療法のgold standardで慢性呼吸器疾患患者での有効性が証明されている(30)

 

 

オピオイドのtitrateが急過ぎるとオピオイドを使用したことがない患者では呼吸抑制が起こり得る。しかし患者の肝腎機能、オピオイド耐用性に基づいて選択使用すれば、臨床的に有害な呼吸抑制、CO2 retentionをきたさず、また死を早めることなく呼吸困難感を軽減することができる。American College of Chest Physiciansは呼吸困難に対するオピオイドを含んだaggressive treatmentを支持している(31)。他のオピオイド(fentanyl, hydromorphone)はよく調べられていないが、morphineが使用できない場合は使用が考慮される

(83人のオピオイドを使用したことがない緩和ケアを受けている患者(54%はCOPD)のobservational studyでは長期作用型経口morphine 10mg/日(必要に応じてtitrate、最大30mg/日)を投与した結果、多くの患者(62%)で少なくとも呼吸困難感が10%減り、70%の患者は1日必要量が10mgだけだった。呼吸抑制を認めたり、あるいは入院を必要とした患者はいなかった。3人に1人の患者で3ヶ月後も利益が継続した(29))

 

 

 

ベンゾジアゼピンは呼吸困難が不安によって悪化するような患者では有効である場合がある。低用量のオピオイドの安全性は証明されているが、ベンゾジアゼピンとの併用でより多くの副作用と関連する。よって患者のゴールと予後を考慮して使用する必要がある(32)

 

 

末期の患者で低酸素血症を伴う場合は酸素投与が呼吸困難の軽減に有効であるが、低酸素血症を伴わない患者ではmedical airと差が認められない(33)

(難治性の呼吸困難を有し、baseline PaO2 55mmHg以上の患者239人で行われたdouble-blind, randomized, placebo-controlled studyでは7日間経鼻カニュラで、酸素を投与したグループと空気を2Lを投与したグループの比較において呼吸困難感の改善に両者間で差は認められなかった(31))

 

 

 

 

<嘔気>

 

嘔気は様々な原因で起こり、その原因を理解することは有効な治療決定のガイドとなる

 

オピオイドに起因する嘔気はmetoclopramide(プリンペラン)、prochlorperizine(ノバミン)などの抗ドーパミン薬が最も効果的である

 

化学療法による嘔気はセロトニン拮抗薬(ondansetron(ゾフラン))やolanzapine(ジプレキサ)などが有効である(34, 35)

 

コルチコステロイドは化学療法レジメンとして他の制吐剤に追加されたり、あるいは頭蓋内圧上昇による嘔気の主要な治療薬として投与される

 

不完全な機械的的腸閉塞ではstandard治療としてdexamethasoneとmetoclopramideが使われる。 octreotide(サンドスタチン)の有効性に関する評価は定まっていない(36)。高度の腸閉塞ではoctreotideとventing gastrostomy tubeが必要になる

 

蠕動運動低下はmetoclopramideが最も効果的であり、放射線治療に起因する嘔気はセロトニン拮抗薬によく反応する

 

抗コリン性抗ヒスタミン剤(scopolamine, meclizine)はmotionに関連する嘔気や後頭蓋窩病変(小脳梗塞や転移)に有効である(37)

 

嘔気が治療抵抗性の場合は類似した作用の他の薬に変更するよりも、異なるクラスの薬剤を追加した方が相乗的に働く場合があるため推奨されている

 

 

 

<せん妄>

 

せん妄は末期患者でよくみられる。せん妄は進行癌、鬱病を併発している、あるいは死期が近くない場合においても、高齢者でのoutcome(生存率、罹患率)の悪化に関連している(38, 39, 40, 41)

 

 

せん妄は急性におこる意識の変容であり、注意散漫、不穏、活動性低下などの形で表れるが、認知症における慢性的な認知機能の変化と区別する必要がある。

治療可能なせん妄の原因(ベンゾジアゼピンなどの副作用、疼痛、尿路閉塞、bowel impaction、眼鏡の欠如や耳垢などによる感覚器の喪失) はまず非薬物療法で対応すべきである。低用量のhaloperidolがよく使われるが、スタディではreorientationなどの非薬物療法以上の効果を認めていない。haloperidolなどに反応しない不穏や興奮はより鎮静的な薬物が効果を発揮する

 

 

終末期の患者では複数の原因による終末期せん妄を経験する。ベンゾジアゼピンは一般的には終末期でない患者に対し、さらなるせん妄の悪化が起こり得るため投与を避けるべきとされている(42)。しかし、近年のエビデンスでは進行癌で興奮性せん妄をきたした入院患者に対しneurolepticにベンゾジアゼピンを追加投与することで効果が認められるとされている(43, 44)

 

 

終末期を迎える患者は様々な原因で不穏をきたす。それにはせん妄、疼痛、不安、呼吸困難などが含まれる。不穏がせん妄と判断される前にまず可逆的な原因(疼痛など)があるかを評価すべきである

 

 

終末期の患者では過活動や無気力となりえる。うめき声、補助呼吸筋の使用、呼吸数上昇、頻脈、発汗を認める場合があるが、これらの症状は非特異的で、必ずしも苦痛と関連せず、さらなる評価や対応を必要とするわけではない。不規則な呼吸や気管分泌物(”死前喘鳴”)が家族から見れば苦痛にあると判断されることがあるが、臨床家は家族教育の重要な役割にあり、終末期の予測される通常の過程であるか、非典型的で評価を必要とする状態であるかを伝える必要がある

 

 

亡くなる1〜2日前に分泌物による呼吸音に対し抗コリン薬が投与されることがよくあるが、はっきりした利益が確認されておらず、近年のdataではroutineでatropineやscopolamine patchを投与することを推奨していない(45)

 

 

 

 

<抑うつ>

 

鬱は末期患者に認められることがあり、医師はその評価および治療に対し域値を低くしなければならない。命にかかわる重篤な疾患に直面した時に数日から2〜3週間、士気を失い、一時的に抑うつ気分になることは正常な反応である。しかしそれをうつ病と鑑別することは困難である場合がある。症状がそれ以上続き、鬱病の診断基準を満たす場合は正常ではない

 

治療としてはselective serotonine reuptake inhibitorsが比較的安全であるが、薬物相互作用に、特にホルモン療法(tamoxifen)などを受けている場合は注意が必要である(46)

 

psychostimulants(methylphenidate)は主な禁忌(不安定頻脈性不整脈)がなければ即効性があり有効な薬剤である。methylphenidateの重篤な疾患を有する鬱病患者への効果に関するエビデンスは混在しているが(47, 48)、オピオイドによる鎮静および倦怠感をもつ癌患者に対する有効性を認めるdataが増えている(49)

 

低用量のmirtazapine(レメロン)は不眠と食思低下をもつ鬱病患者に有効である

 

三環系抗うつ薬、duloxetine、venlafaxineは神経性疼痛を有する鬱病患者に考慮されるが、最適効果が発揮されるのに数週間かかるため予後を考慮した上で使われなければならない(50)

 

 

 

 <食思低下>

 

食欲低下および体重減少は末期に近づく癌あるいは進行性疾患の患者でよくみられることである

 

患者が食に対する興味を失うこと、および低栄養状態となることは多くの家族にとって苦悩となる。caregiverは患者が食べなくなることを”あきらめる”と捉えるため、患者は食べなければならない、というプレッシャーを感じてしまう場合がある。患者は食思低下が家族にストレスを与えてしまうことに罪悪感を抱いてしまいうる。患者とcaregiverに食思低下と悪液質に関する教育を行うことで罪悪感の意識を減らし、食の変化を受け入れる手助けとなる。caregiverは患者が社会生活的側面として食事に参加すること、および好みの食べ物を一口か二口だけでも楽しむことを受け入れる必要がある

 

 

予後が不明で終末期が差し迫っていない場合は食欲刺激剤が考慮される。癌に関連する食思低下ではmegestrol(400〜800mg/日) がもっともよく調べられている。systematic reviewではmegestrolが食思低下を改善し体重増加をもたらすが、死亡率の改善は認めず、QOLの改善に対する効果もはっきしていない(51)。副作用には血栓症、高血糖、副腎抑制、性器出血がある。metoclopramide(10mg 1日4回)のような蠕動促進剤は嘔気を減らすが、体重増加は促進されず、食思低下を改善しない。短期間のコルチコステロイド(dexamethaxone 2〜4mg 朝食前と日中に投与)は進行癌の患者で嘔気と食思低下を改善することがいくつかのtrialsで認められている

(癌による食思低下および悪液質をもつ475人の患者で行われたrandomized studyではmegestrolとdexamethasoneが同等の食欲改善と体液増加によらない体重増加を認めた。dexamethasoneはステロイド毒性によってより頻繁に中止された。megestrolは静脈血栓症により高い関連を示した(5% vs 1%)(52))

 

 

  

 

終末期に近い患者に経腸・静脈栄養を行うことはcontroversialである

 

 

経腸栄養は進行した認知症の患者において生存率、QOL、誤嚥性肺炎のリスクに関する利益を認めないとエビデンスが示している。経腸あるいは静脈栄養が人生の残り数週間において、生存期間を延長する、あるいはQOLを改善する、といったエビデンスは現在のところ存在せず、むしろ有害であるという報告もある。体重減少および食思低下が進行する前に患者と栄養方法に関する嗜好を話し合っておくことは重要であり、後に患者や家族の苦痛を防ぐことに役立つ可能性がある(53)

 

 

 

 

 

重篤な患者は治療ゴールと予後に関する話し合いを家族を交えて行うことをためらう場合があるが、多くの場合、医師とはその話し合いをしたいと考えている(1)。患者は医師から見捨てられること、支援的手段および治療からの撤退、家族の感情的な反応などを恐れている場合がある。患者の生命維持治療に関する希望や不安、そして在宅か入院のどちらを望むか、ということに関して患者、家族、他の治療者の間での話し合いを医師は促す必要がある

 

 

 

治療のゴールに関する会話のガイド(REMAP)

・Reframe: Why the status quo isn't working

・Expect: Emotion: Respond with empathy

・Map out what's important

・Align with the patient't values

・Plan to match values

 

(具体的会話例を後述)

 

National Center for Ethics in Health Care 2017

Accessed at www.ethics.va.gov/goalsofcaretraining/REMAP.pdf on 23 Janury 2018

 

 

 

 

多くの医師と家族は治療のゴールに関する話を始めることを患者の希望を取り去ることだと間違って信じている(54, 55) 。患者にその話し合いが、あきらめること、希望がないこと、出来ることがないこと、を意味している訳ではないことをしっかりと伝えなければならない

 

 

現在の状況が希望に関わっていて、達成できるゴール(痛みのコントロール、歩行や喜びを感じる他の活動を可能にする)を設定することで希望が保てることを患者に伝えることによって患者の不安を軽減し、さらなる話し合いを進めることができる場合が多い

 

 

患者に予後に関する真実の情報を伝え 、治療オプションを説明することで患者の望みが保たれることをstudiesが示している(54)。そのような話を避けると症状による苦痛への治療を制限し、患者の他の心配事に関する評価ができなくなる

 

 

治療のゴールを決定する事と症状に対してしっかり対応をすることを患者に伝えることに加え、疾患の治療方法に関する患者の希望を確認すること、そして患者が自分で判断できなくなった時のための意思決定を行う代理者を決めなければならない。州ごとにその法律が異なっている(56)。事前に意思決定権を委任することを決めておくことで利害の不一致や混乱を避けることができる

 

 

代理者は症状に対するマネージメントおよび疾患が進行した時の治療に関する患者の希望を伝えられ、それをサポートする事に同意する必要がある。代理者は患者の状態が悪化した時に何をすべきか知っている必要があり、また彼らの役割は患者の希望を尊重することであって、その結果に責任を持つことではない事をしっかり伝えておく必要がある

 

 

米国ではGoal-directedで自発的な治療の撤退は倫理的にも法律的にも認められ、physician-aid in dyingや安楽死とは異なるものである。アメリカ連邦最高裁判所および下級裁判所は生命維持装置の撤退と最初からそれを開始しなかったこととの道徳的、倫理的、法的な違いはないことを一貫して表明している。患者は結局その疾患で亡くなるのであり、人工呼吸、経管栄養、血液透析などの治療を控えること、および中断することは法的に認められ、倫理的に自然なことであると捉えられている

 

 

米国ではベンゾジアゼピン、バルビツレート、麻酔薬等によるpalliative sedationは症状の緩和が他の方法によってはできない場合に認められ正当化されている(57)。鎮静の副作用によって意図せず死期を早める可能性があるが、”double effect”と称されている(58)。palliative sedationは倫理的にも法的にも認められている。なぜならその目的は他の治療ではコントロールできない苦しみを和らげることであり、苦痛を緩和すべき医師の責任と一致するからである

 

 

 

 

 

 

治療のゴールに関する会話

 

Reframe

患者の病状に対する理解を確認する。理解が正しければ治療ゴールの話に進む。正しくない場合は状況を説明し、理解を確認してから治療ゴールの話に進む

 

Expect: Emotion: Respond with empathy

臨床家は医学的事実の説明に力を注ぎ、患者の感情への配慮を怠りがちである。これは有害にすらなりえる。もし患者と臨床家の意思決定に不一致が起こった場合は単に患者の理解を促すことよりも、そのもとにある感情を扱った方がより解決につながりやすい

 

NURSE acronym for dealing with strong emotion

N: Name:とても困惑しておられるように見えます

U: Understanding:そんな状況に立たされたらどんな気持ちになるか想像することすら大変に感じます

R: Respect:あなたはお聞きになりたい質問を全てされ、ご家族も連れてこられるというとても重要なこともされました

S: Support:私はあなたがお聞きになりたい質問に答えるためにここにいます

E: Explore:あなたが今お感じになっておられる事を教えていただけますか

  

Map out what's important

治療プランに対する提案を行う前に患者のゴールと価値観を知らなければならない

 

Align with the patient't values

患者の話を聞いてから、臨床家は患者が何を大切にしたいと思っているかを繰り返し、理解が正しいかを確認する

 

Plan to match values

患者の同意に基づく治療プランをつくる。臨床家が患者の価値観に基づくと考えられる治療法を提案することは有効である事が多い

 

 

 

会話例

 

あなたの病気について理解していることを教えてください (R:reframe)

(患者:私はこの治療で良くなっていない。他に何か良い治療があるはずだ)

 

より有効な治療があればいいなあと私も願います (E:expect/empathize)

 

他の医師からどのような説明を受けていますか (R)

 

あなたの病気は今どんな状況にあると感じていますか (R)

(患者:私はCOPDを患っている。この数週間呼吸が悪化している。でも今までずっとこうやってきたし、また良くなると思っている)

 

あなたはこの病気と長い間向かい合われてきたのですね (E)

 

そして今私たちはもしかしたら違う場所に立っているのかもしれません (R)

(患者:どういう意味ですか?もしかして私にあきらめろと言っているのですか)

 

 

いえ決してそういう意味ではありません。でも、あなたが言われる「あきらめる」という意味について教えていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

 

もしかしたら一旦立ち止まって今からどこを目指していくかを話し合うのにちょうど良いタイミングかもしれません (R)

 

今日はあなたの病気が一般的には今後どのような経過になっていくかをお話してみたいと考えていましたが、いかがでしょうか (R) 

 

 

 

Bad newsを伝える

Fire a warning shot

検査結果は望んでいたものではありませんでした

重大なことを伝えなければなりません

  

Be clear and direct

生検の結果癌が見つかりました

癌が肝臓と肺に再発しています

 

Shut up

情報を伝えたあと会話をとめる

 

 

これが何を意味するかお話させていただいてもよろしいでしょうか (R)

 

(患者:他に何かできることはないんですか、ほんとうにあなたは全て調べ尽くしたと言えますか)

 

大変心配されていらっしゃるのですね (E)

 

今日あなたはこの事を聞くことを予期されてなかったように感じられます (E)

 

 

患者の経験を完全に理解することはできないが、理解しようとしている姿勢を見せることはできる

言ってはならない事

”あなたがどのように感じているか私には良くわかります”

 

 

(患者:私はもう死ぬしかない、ということを言っているのですか) 

これらの話をお聞きになるのは本当に怖いことだろうと思います。できれば違った話をお伝えできればよかったと感じています (E)

 

(患者:まだ希望はありますか)

どんな状況でも常に希望はあります (E)

 

あなたが不安に感じられている事を教えていただけますか (E)

  

 

この状況の中で、あなたにとって一番大切なことはなんですか (M:map out what's important)

(患者:私にとって一番大切なことは諦めないことです。過去を振り返った時にやれることを全部しなかったと後悔したくないんです)

 

あなたの諦めないという姿勢を尊敬します (E)

 

あなたにとって一番重要なことは諦めないことなんですね (A:align with patient's values)

 

時間が限られているかもしれない中で、あなたにとって最も重要なことはなんですか (M)

 

今から先の事を考える時、あなたはどんな事を避けたいと考えていますか (M)

 

これからの事を考える時、あなたにとって最も大切なことはなんでしょうか、QOLでしょうか、どれくらい長く生きられるかでしょうか (M)

 

 

あなたのお話を聞くかぎり、あなたにとって最も大切なことは痛みがコントロールされ、家族とより多くの時間一緒に過ごせることのようですね。また再び呼吸器に繋がれることのような痛みや苦痛を受けたくないようですね。そういう理解で正しいでしょうか (A)

 

何が重要かというあなたのお話からすると、少しでも長く生きられる可能性があるのなら、たとえそれが機械によって生命が維持される場合であったとしても、いかなる治療をも追求されたい、あなたはそのように考えられている (A)

そのような理解で正しいでしょうか

もしこんな状況なら機械による生命維持を希望されない、そんな状況で思い浮かばれることはありますか (M)

 

 

私から提案をさせていただいてもよろしいでしょうか (P:plan to match values)

 

何が重要かというあなたの話から考えて出来ることがたくさんあります。まず痛みをコントロールすることです。痛みの治療には様々な方法が確立されています。またサービスを利用することで、あなたが家で過ごすことを助け、家族との価値ある時間をより長く過ごすことができます。 新しい薬を試してみてあなたがどう感じられるかによって、それがどれくらい可能かに関する理解が深まります

また今言ったことを全て行うことに加え、CT scanや血液検査を行ったり、また人工呼吸器につなぐといった蘇生術を行うことは、あなたが言われたゴールから考えると、必ずしも役に立つものとは考えにくいので今後行わないことを提案したいと考えています

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、これからは症状のコントロールにより注意を注ぎ、家で過ごせる時間を大切にされたい (A)

今後、胸痛が起こる度に入院するということをやめることで、それがより達成しやすくなるかと考えます (P)

あなたはどう思われますか

 

 

あなたが今言われたことから考えると、今後病気が悪化した場合に心肺蘇生術を施したり、人工呼吸器を使用することはあなたの希望とは一致しないように感じます。仮にもしそれが起こってしまった場合、生命維持装置から離脱できない可能性が高いと考えます。たとえ離脱できたとしても、その後自立して生活することがより困難になると感じます。

そういう事は避けられたいと考えらている

その理解で正しいでしょうか (A)

  

 

 

もしあなたの病態が悪くなった時に特別な治療を受けたいか、受けたくないかについてお話させていただいてもよろしいでしょうか

 

心肺蘇生についてあなたが理解していることを教えていただけますか (R)

 

成人の場合、心肺蘇生術を受けても実際助からない場合が多いです。若年者で健康な人の場合は確率が上がります。重い病気を患っている場合はさらに確率が下がります

 

病院で心肺蘇生を受けて助かるのは100人中17人です。逆に言えば100人中83人がなくなります。これらは平均で、残念ながらあなたのように病気を持っている場合はチャンスが低くなります

 

心肺蘇生を受けたくないと想像される状況がありますか (M)

(患者:もし自分の家族を認識できなかったり、自分で意思決定できない場合は心肺蘇生を受けたくないです)

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

6 March 2018

 

 

 

蜂窩織炎・皮膚軟部組織感染症

 

皮膚軟部組織感染症の頻度は近年落ち着いたものの依然高く、尿路感染症の2倍、肺炎の10倍である(1)

 

 

 

 

皮膚軟部組織感染症 

蜂窩織炎 (cellulitis) 

丹毒 (erysipelas) 

毛嚢炎 (folliculitis) 

せつ (furuncle) 

よう (carbuncle) 

皮下膿瘍 (cutaneous abscess) 

化膿性筋炎 (pyomyositis) 

膿痂疹 (impetigo) 

膿瘡 (ecthyma) 

ガス壊疽 (gas gangrene) 

壊死性筋膜炎 (necrotizing fasciitis) 

 

 

 

リスクファクター

皮膚バリアの破綻

・外傷性(裂創、手術、熱傷、擦過傷、挫滅創、開放骨折、注射薬剤使用、人・動物咬傷、虫刺し症)

・非外傷性(潰瘍、足白癬、皮膚炎、足趾間摩擦疹)

・ドレナージ障害

・腋窩・骨盤リンパ郭清

・伏在静脈採取

・リンパ浮腫

・肥満

・慢性静脈不全

 

末梢性動脈疾患

 

感染に寄与する状態

・糖尿病

・肝硬変

・好中球減少

・HIV

・移植および免疫抑制剤

 

ホームレス

 

蜂窩織炎の既往(蜂窩織炎の既往は次の感染のリスクを非常に高くする(2, 3))

 

 

 

 

 

初回感染の時点で寄与する因子を同定・治療することで感染の再発を減らすことに努めるべきである

 

 

 

リンパ浮腫のaggressive managementによって感染再発を減らせるかもしれない(4)

 

 

 

糖尿病患者は定期的な足の診察、糖尿病性神経症のスクリーニング、皮膚硬結の除去、足装具の使用によって、潰瘍、それに続く感染のリスクを減らすことが可能である(5)

 

 

救急外来のおける合併症を伴わない創傷に対する抗菌薬外用(triple antibiotic ointment, neomycin, mupirocin)は感染率を下げることが報告されている(6)

 

 

  

 

予防的抗菌薬投与が蜂窩織炎を繰り返す患者の発症リスクを減らす可能性があり、寄与する因子の治療にも関わらず年に3〜4回感染を発症する患者では投与を考慮してよいかもしれない(7)。regimenとして経口ペニシリン、ペニシリン筋注、エリスロマイシンが調査されている

(少なくとも1回以上の蜂窩織炎再発の既往を持つ274人を調べたPATCH I randomized trialではペニシリン250mg1日2回投与したグループにおいて12ヶ月間における発症がプラセボグループに比べおよそ50%減少したことが認められた。ただし一旦ペニシリンを中止すると予防効果は漸次減少した(8))

 

 

 

動物咬傷の初期治療は大量の水での洗浄およびpovidone-iodineによる消毒、異物および組織構造損傷の確認、そして生存できない組織の除去である。基本的には動物咬傷の初期治療では傷を閉じることが推奨されないが、顔の傷の場合は大量の水での洗浄および予防的抗菌薬投与によって傷を閉じてよいかもしれない

 

 

 

犬咬傷を評価した2014年のrandomized trialでは初期治療において傷を閉じた場合、閉じなかった場合と比較して感染率が同等であり、かつ美容的外観の改善が認められたため、合併症を伴わない犬咬傷においては初期治療で傷を閉じてもよいかもしれない(9) 

 

 

IDSA (Infectious Diseases Society of America)はhigh-risk factorsをもつ患者(免疫不全、無脾症、肝不全、浮腫)あるいはhigh-risk 咬傷(手や顔の中等度から重度の咬傷、骨膜あるいは関節包を貫通する傷)に対して早期の予防的抗菌薬投与を推奨している(7)

 

 

 

人・猫咬傷は感染のリスクが高く、特に猫咬傷では猫の歯が深部に達するので骨髄炎が合併する可能性がある(10)

 

 

 

予防的抗菌薬投与は皮膚を貫通する全てのclosed-fist injury、猫咬傷に投与されるべきである

 

 

抗菌薬は好気性菌および嫌気性菌両方に対する効果を有し、動物咬傷におけるPasteurella、人咬傷におけるEikenellaをカバーする必要がある。そのレジメンとしてamoxicillin-clavulanateが推奨される。ペニシリンアレルギーの場合はclindamycinとlevofloxacinあるいはmoxifloxacin併用が代替レジメンとなる

 

 

 

tetanus vaccinationもup-to-dateされていない場合は考慮される必要がある。狂犬病の暴露後予防の必要性も評価されるべきである

 

 

 

Staphylococcus aureusのcolonizationはそれに引続く感染のリスクを高める(11)。routineでのMSSA (methicillin-sensitive S aureus)あるいはMRSAのdecolonizationは推奨されないが、intensive decolonizationは皮膚軟部組織感染症の再発率を減らす。IDSAのガイドラインではS.aureusによる再発性の皮膚軟部組織感染症に対する5日間のdecolonization regimenを検討することを推奨している 。そのregimenはmupirocinの1日2回経鼻投与、1日1回chlorhexidineによる洗浄、および1日1回personal itemsのdecolonizationである(7)

 

 

 

 

蜂窩織炎は深部真皮および皮下脂肪組織を含む皮膚感染症である。注意深い病歴聴取と身体診察に基づいて診断される。病歴には発症を促す状態および特定の病原体(注1)に関連するリスクファクターを評価する必要がある

 

 

 

 

蜂窩織炎の誤診はよくみられ、抗菌薬の過剰投与、不必要な入院、薬物副作用、および医療費の増大につながっている(12)

 

 

 

 

蜂窩織炎の発症は典型的には急性で、ほとんどの場合片側に認められる

 

 

 

 

鑑別疾患

 

感染性

 

遊走性紅斑(erythema migrans)

境界明瞭、無痛性、蜂窩織炎・丹毒に比べ緩徐に広がる

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化膿性関節炎・滑液包炎(septic arthritis/bursitis)

発赤が関節あるいは滑液包にかかり、強い圧痛、発熱を認める。化膿性関節炎では関節可動によって非常に強い疼痛を認める

f:id:Tatsu21:20180318040031j:plain 

< septic arthritis > 

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< septic bursitis >

 

初期ヘルペス(early herpes zoster)

dermatomalに発赤、強い疼痛が水泡に先んじて生じる

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Streptococcal / staphylococcal toxic shock

発熱、ショック、多臓器不全がびまん性の発赤を伴って認め、細菌性皮膚軟部組織感染症に類似する

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非感染性

 

静脈鬱滞性皮膚炎(venous stasis dermatitis)

多くの場合両側性で、表層に落屑、滲出液、痂皮 、pitting edemaを認め、慢性静脈不全の他の特徴を有する

f:id:Tatsu21:20180318042301j:plain

 

深部静脈血栓症(deep venous thrombosis)

深部の痛み、浮腫を認め、多くの場合下腿に認める。強い発赤を認めることは少ない

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接触性皮膚炎(contact dermatitis)

掻痒感を伴い、原因物質への暴露があり、暴露域に一致する境界が明瞭である

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脂肪皮膚硬化(lipodermatosclerosis)

線維化脂肪織炎、疼痛を伴い、境界不明瞭、足関節内側から始まり、数週かけて発達、急性期は赤紫色を呈する 

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リンパ浮腫(lymphedema)

nonpitting edema・発赤を認め、熱感を欠く。角化増殖、結節、色素沈着などの皮膚の二次性変化を伴う

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壊疽性膿皮症(pyoderma gangrenosum)

境界明瞭で疼痛を伴う潰瘍。全身性疾患に伴う

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皮膚軟部組織感染症内での鑑別も重要である。非膿瘍性の皮膚軟部組織感染には膿瘍を伴わない蜂窩織炎、丹毒がある。これらは適正抗菌薬が異なるため毛嚢炎、せつ、よう、皮下膿瘍などの膿瘍性皮膚軟部組織感染症と鑑別する必要がある。非膿瘍性皮膚軟部組織感染症は多くの場合streptococciに起因し、膿瘍性皮膚軟部組織感染症はたいていS.aureusに起因する

 

 

f:id:Tatsu21:20180318030241j:plain

 

 

 

 

蜂窩織炎 (cellulitis)

真皮・皮下脂肪を含む皮膚感染症

f:id:Tatsu21:20180317094252p:plain

 

丹毒 (erysipelas)

リンパを含むより表層の皮膚感染症。圧痛を伴う境界明瞭な紅斑性プラークが特徴

http://www.clevelandclinicmeded.com/medicalpubs/diseasemanagement/dermatology/common-skin-infections/images/common-skin-fig5_large.jpg

 

毛嚢炎 (folliculitis)

上皮内に膿を認める毛嚢表層の感染症

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せつ (furuncle)

小さな皮下膿瘍を認める毛嚢感染症

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よう (carbuncle)

せつが集合したもの

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皮下膿瘍 (cutaneous abscess)

真皮および深部皮膚組織内の膿瘍

f:id:Tatsu21:20180317100848j:plain

 

化膿性筋炎 (pyomyositis)

全身症状を呈し、筋群に局在するcramping painを伴う骨格筋化膿性感染症。表面的な変化をきたさない場合もある

f:id:Tatsu21:20180317102513p:plain

 

膿痂疹 (impetigo)

膿疱や水泡が痂皮やbullaeに進展する皮膚表層の感染症。たいていstaphylococciあるいはstreptococciに起因する

f:id:Tatsu21:20180317103541j:plain

 

膿瘡 (ecthyma)

より深部の膿痂疹。水泡や膿疱で始まりパンチアウトされたような潰瘍に進展する。多くの場合group A streptococciに起因する

f:id:Tatsu21:20180317103840j:plain

 

ガス壊疽 (gas gangrene)

筋組織を含む壊死性感染症。クロストリジウム筋壊死として知られる

f:id:Tatsu21:20180317104134j:plain

 

壊死性筋膜炎 (necrotizing fasciitis)

筋膜表面に沿って広がる皮下組織の侵攻的な感染症

f:id:Tatsu21:20180317105631j:plain

 

 

 

 

ガス壊疽や壊死性筋膜炎などの壊死性皮膚軟部組織感染症はlife / limb-threateningであり、急速に進行し、緊急の外科的処置を要するため、それらの可能性を示唆する症候を探すことは重要である

 

 

 

壊死性皮膚軟部組織感染症を初期の段階で診断することは困難である。よって全身性の症状を呈する、あるいは糖尿病、肥満、免疫不全、血液悪性疾患、静注薬剤使用、異物の存在などを伴う患者では特に強い疑いを持って評価する必要がある(13)

 

 

 

 

壊死性筋膜炎の典型的な症状は身体所見に比例しない強い疼痛、水泡、bullae、皮膚のdiscoloration、感覚鈍麻、捻発音等である。しかしこれらは感染後期の症候でsensitivityを欠く。よって適切な臨床状況ではこれらの所見を認めないという事を外科的評価をしないことの理由にしてはならない

 

 

 

壊死性筋膜炎を示唆する所見

・身体所見に比例しない疼痛

・浮腫、硬結、皮膚変化の範囲を超える疼痛

・青紫色の水泡あるいはbullae

・皮膚の感覚麻痺

・捻発音

・皮膚壊死あるいは斑状出血

・急速な進行

・初期抗菌薬へ反応しない

・全身性の症状

・多臓器不全

・壊死性軟部組織切開しても出血を認めない

 

 

 

 

 検査

 

complete blood count and differential

白血球上昇は非特異的だが感染を示唆、左方移動を伴う著しい上昇は深部の、あるいは重篤な感染である可能性を表す。血小板減少もより重症な感染である事を示唆、hemoconcentrationとleukomoid reaction (WBC >50,000)はclostridium sordellii感染の場合に見られることがあり、溶血はclostridium perfringens感染に関連することがある

 

 

乳酸

乳酸値上昇は組織の循環不全(sepsis)を表し、また組織の壊死の可能性も示唆する(14)

 

 

CPK

上昇は筋壊死の場合にみられ、壊死性筋膜炎の可能性を示唆するかもしれない。vibrio vulnificus感染の場合に上昇することが多い

 

 

CRP

非特異的だが、壊死性軟部組織感染症のリスク評価に役立つかもしれない(15)

 

 

グラム染色・培養

膿瘍性感染症の場合、またdebridementを行う際にはすべきである

 

 

 

菌血症は合併症を伴わない蜂窩織炎および軟部組織感染症ではまれである(16)。よって血液培養採取はroutineでは推奨されない。ただ免疫不全(化学療法中、好中球減少、重度の細胞性免疫不全、脾摘後)、特定の暴露(動物咬傷、水に関連する創傷)、リンパ浮腫の既往、壊死性感染を疑う、sepsisなどの場合は血液培養が推奨される

 

 

傷表層のスワブ・培養はcolonizeしている病原体を現し、原因菌を同定する可能性は高くない。非膿瘍性の蜂窩織炎や丹毒におけるneedle aspirationやpunch biopsyによる培養の意義は低い。合併症を伴わない膿瘍ではroutineで培養を行う必要はないが、再発感染、治療失敗、非典型的な兆候、重篤な状態などでは培養を行う必要がある。感染組織がdebrideされる場合は培養に提出する必要がある

 

 

X-ray 

ガスの存在を確認できるかもしれないが、壊死性軟部組織感染症の同定には非常にsensitivityが低い 

 

 

超音波検査

drainすべき液体・膿瘍貯留の同定に有用である

 

 

MRI

化膿性筋炎および骨髄炎を疑う際に行うが、壊死性軟部組織感染症にはspecificityが低い

 

 

CT with contrast

壊死性軟部組織感染症の診断がはっきりしない場合は有用であるかもしれない(17)

 

 

 

壊死性筋膜炎診断のgold standardは直接外科的に筋膜を評価することであり、画像検査のためにそれが遅れてはならない。検査にかかる時間の関係で壊死性筋膜炎の同定としてのMRIの有用性はよく調べられていない。enhanced CTは有用である可能性があるが、診断前確率が高い場合は直接外科的評価を行うべきで、診断がはっきりせず、比較的重篤でない患者の場合には行ってよいかもしれない。ただ除外診断として信頼すべきでない

 

 

 

蜂窩織炎と評価されたがショックを伴う場合など臨床的に壊死性軟部組織感染症を疑う場合は、診断や外科的処置の遅れが致命的となりうるため、速やかに外科による評価が必要になる

 

 

 

 

 

蜂窩織炎の場合、患肢挙上がドレナージを促し改善を早めるかもしれない。皮膚の亀裂、浸軟(ふやけ)、白癬など感染の起因となる状態を治療することが推奨される

 

 

 

糖尿病性足感染症やガス壊疽などに対するhyperbaric oxygenの付随的治療が調べられてきたが、効果が確認されておらず、外科的debridementなどの遅れをきたす可能性があるため推奨されてない

 

 

 

 

局所的な水泡性あるいは非水泡性の膿痂疹には抗菌薬外用(mupirocin or retapamulin 1日2回5日間)あるいは経口剤が推奨されるが、患部が無数の時や膿瘡の場合は経口抗菌薬が推奨される(18)

 

 

 

合併症を伴わない蜂窩織炎や全身症状を認めない他の皮膚軟部組織感染症では経口抗菌薬が好まれる。発熱や他の臓器不全、深部感染(化膿性筋炎、壊死性筋膜炎、壊疽)の臨床所見などを認める中等度から重度の感染では注射抗菌薬が必要になる。顔面の丹毒では最初は注射抗菌薬から開始すべきである

 

 

 

蜂窩織炎の多くはβ-hemolytic streptococciによるものと考えられている(19)。したがって非膿瘍性の蜂窩織炎ではこれらの細菌をカバーする抗菌薬を選択する必要がある。選択可能なものはpenicillin, amoxicillin, dicloxacillin, cephalexin、ペニシリンアレルギーがある場合はclindamycinが選択可能である

 

 

 

合併症を伴わない蜂窩織炎をきたしたそれ以外健康な外来患者ではMRSAのカバーは必要ない。MRSAのリスクがある場合は検討されるべきである(注2)

膿瘍や膿性滲出液を認めない蜂窩織炎の外来治療においてcephalexin と cephalexin plus trimethoprim-sulfamethoxazole (TMP-SMX) を比較した多施設randomized, double-blind trialではTMP-SMXを加えても治療率の改善を認めなかった(83.5% with TMP-SMX and 85.5% without TMP-SMX)。このtrialではもともと感染のリスクとなる皮膚の状態を持つ患者、静注薬剤使用中で発熱を認める患者、免疫不全患者は含まれていない(20)

 

 

streptococcus pyogensのsulfa抗菌薬に対するsensitivityがin vitroでは低いため従来TMP-SMX単剤治療は非膿性蜂窩織炎の治療には不十分と考えられてきたが、最近の臨床dataでは単剤治療でも合併症を伴わない皮膚軟部組織感染症において効果があることが示された

(合併症を伴わない皮膚軟部組織感染症(蜂窩織炎、膿瘍、あるいは両方)の患者524人の外来治療を調べた多施設trialにおいてclindamycin と TMP-SMXを比較した結果、治癒率は同等であった(80.3% for clindamycin vs 77.7% for TMP-SMX)(21))

 

 

培養dataがない膿痂疹の治療においてはstreptococciとstaphylococci両方をターゲットとすべきである

 

 

膿性感染症(蜂窩織炎を伴う、あるいは伴わない膿瘍、せつ、よう(多くはstaphylococciに起因))ではMRSAに有効な抗菌薬を使用すべきである

 

 

MRSAに有効な経口抗菌薬にはTMP-SMX, doxycycline, clindamycin, linezolidがある

(MRSAのclindamycinに対するsensitivityは地域によって異なるためlocal resistance rateが高い場合は第一選択薬として使用すべきではない)

 

 

 

皮膚軟部組織感染症治療に対し新たな経口抗菌薬が承認されている。2014年に承認されたtedizolidはlinezolidのように広くグラム陽性菌に対し効果を有し、経口および静注薬が利用可能で、血液毒性および薬剤相互作用が比較的少ないようである(22)。新たなbroad-spectrum fluoroquinoloneとして皮膚軟部組織感染症治療に承認されたdelafloxacinはMRSAに対し効果的であるようである(23)

 

 

 

経口抗菌薬

 

streptococci

 amoxicillin 500mg 1日3回(pasteurellaに有効、penicillinよりbioavailabilityがよい)

 penicillin VK 500mg 1日4回(せまいspectrum) 

 

streptococci and MSSA

 amoxicillin-clavulanate 875/125mg 1日2回(嫌気性菌をカバー)

 dicloxacillin 500mg 1日4回(投与回数が多い)

 cephalexin 500mg 1日4回(投与回数が多い)

 

MRSA

 clindamycin 300mg 1日2回(C.difficile感染に最も強く関連)

 doxycycline 100mg 1日2回(photosensitivityをきたす、臨床dataが少ない)

 TMP-SMX 1 double-strength 1日2回(高カリウム血症をきたす)

 linezolid 600mg 1日2回(SSRIとの併用でserotonin syndromeのリスク、長期使用で骨髄障害)

 tedizolid 200mg 1日2回(高価、linezolidに比べ血小板減少や薬剤相互作用が少ない)

 delafloxacin 450mg 1日2回(臨床dataが限られている)

 

 

 

 

 

 

中等度の非膿性蜂窩織炎治療はβ-hemolytic streptococcをターゲットとし、膿性感染、あるいはMRSAのリスクがある場合(静注薬剤使用、最近のカーテーテル留置、貫通性の外傷、MRSA保菌)はMRSAをカバーするvancomycinあるいはその他の抗菌薬を使用すべきである。重症で急速に進行する感染、直腸周囲の感染、重度の免疫不全などではグラム陰性菌をカバーするbroad-spectrumな抗菌薬を追加すべきである

 

 

新たなsemisynthetic lipoglycopeptideであるdalbavancinとoritavancinはMRSAを含むグラム陽性菌に対し広い効果を有し、半減期が非常に長い。よって静注剤治療を要するが入院を拒否する患者や経口薬摂取が信頼できない患者などの治療として考慮される(24, 25, 26)

 

 

 

 

注射抗菌薬

 

streptococci

 penicillin G 2-4 million units IV 4-6時間毎(group A streptococciの第一選択)

 ceftriaxone 1-2g IV 24時間毎(グラム陰性菌に対しよい効果(pseudomonasやESBLはカバーしない))

streptococci and MSSA

 cefazolin 1g IV 8時間毎(グラム陰性菌をある程度カバー)

 nafcillin 1-2g IV 4時間毎(cefazolinより副作用が多い(皮疹、薬剤熱、血球減少))

MRSA (and streptococci/MSSA)

 vancomycin 15mg/kg IV 12時間毎(トラフのモニターが必要、red man syndromeや腎毒性)

 daptomycin 4mg IV 24時間毎(菌血症の際は高用量を必要とする、CPKのモニターが必要)

 linezolid 600mg IV 12時間毎(SSRIとの併用でserotonin syndromeのリスク、長期使用で骨髄障害)

 clindamycin 600-900mg IV 8時間毎(C.difficileと最も強く関連、S.aureusの抵抗性が増えている)

 ceftaroline 600mg IV 12時間毎(ceftriaxoneと同等のグラム陰性菌カバー)

 dalbavancin 1500mg IV 30分かけて1回投与(臨床dataが限られている)

 oritavancin 1200mg IV 3時間かけて1回投与(PT/PTTが延長?、臨床dataが限られている)

 

 

 

 

 

 

 

2014年のIDSAガイドラインでは膿瘍に対し切開排膿してかつ抗菌薬を追加すべきは全身性の症状を有する、免疫不全、複数の膿瘍、高齢、切開排膿のみに反応しない等の患者のみとされている(7)。しかし最近の二つの臨床試験では膿瘍(5cm以下も含む)に対し切開排膿に抗菌薬を追加した方が治癒率が高いことが示された(27, 28)。したがって膿瘍が小さな場合は切開排膿のみで十分かもしれないが、また、利益・不利益を患者ごとに評価する必要はあるものの、合併症を伴わない皮下膿瘍をもつすべての患者において抗菌薬追加投与が考慮されるべきである

 

 

糖尿病患者における感染性潰瘍に関連していない合併症を伴わない蜂窩織炎や皮下膿瘍ではそれらの起因菌は非糖尿病患者と同様であり、グラム陽性好気性菌が主流を占める(29)。したがってそのような場合、抗菌薬は非糖尿病患者と同じである。軽度の糖尿病性足感染症(全身性の症状を伴わず皮膚および皮下組織に限局する2cm以下の潰瘍)ではstreptococcusとMSSA(リスクがある場合はMRSA)をカバーする抗菌薬が推奨される。中等度から重度の場合はMRSA、嫌気性菌、グラム陰性桿菌をカバーするbroad-spectrumな抗菌薬が必要になる

 

 

 

膿性の皮膚軟部組織感染症ではMRSAをカバーする抗菌薬が推奨される(30)

 

 

 

蜂窩織炎および皮膚軟部組織感染症の入院適応

・全身性の症状

・臓器不全を伴う

・壊死性感染の可能性がある

・limb-threatening

・外科的治療を要する(単純な洗浄・ドレナージは含まない)

・経口薬治療が信頼できない

 

 (重度の免疫不全、経口薬による外来治療失敗等も入院治療が考慮される)

 

 

 

壊死性筋膜炎は速やかな抗菌薬治療開始と外科的debridementを要するmedical emergencyである。抗菌薬はMRSA、グラム陰性桿菌、嫌気性菌をカバーする必要がある。またgroup A streptococcalに起因する壊死性筋膜炎は臨床的に判別できないのでトキシン産生を抑えるclindamycinも追加する必要がある。追加的治療としてimmunoglobulin静注も調査されてきたが、死亡率、入院期間、身体機能等に有効性を認めた臨床試験がないため、推奨されない(31, 32)

 

 

 

蜂窩織炎の抗菌薬投与期間は5日間(33)、改善が認められない場合は延長することが推奨されている。皮下膿瘍では追加的抗菌薬投与7日間が妥当である。好中球減少の患者では皮膚軟部組織感染症に対し7〜14日間。壊死性軟部組織感染症の最適投与期間は決定されていないが、debridementを必要とせず、臨床的に安定するまで継続すべきである

 

 

 

 

 

(注1)

糖尿病:S aureus, Group B streptococci, anaerobes, gram-negative bacilli

肝硬変:Campylobacter fetus, coliforms, Vibrio vulnificus, Capnocytophaga canimorsus

好中球減少:Pseudomonas aeruginosa

人咬傷:Eikenella corrodens, viridans group streptococci

猫咬傷:Pasteurella multicida

犬咬傷:Pasteurella multocida, Capnocytophaga canimorsus

鼠咬傷:streptobacillus moniliformis

hot tub exposure:pseudomonas aeruginosa, atypical mycobacteria

淡水内での裂創:Aeromonas hydrophila

汽水内(淡水と海水の混在)での裂創:Vibrio species

fish tank exposure:Mycobacterium marinum

fish handling:Erysipelothrix rhusiopathiae

貫通性の足の創傷:Pseudomonas aeruginosa

静注薬剤使用:MRSA, group A streptococci

壊死性筋膜炎

 Type 1 (polymicrobial, mixed anaerobse and aerobes):Streptococci, Clostridium species, Bacteroides species, Enterobacteriaceae, Staphylococci, Enterococci

 Type 2 (monomicrobial):Group A streptococci (most common), community-associated MRSA, Clostridium species (infrequent), Vibrio species

 

 

(注2)

MRSA感染の既往

違法薬剤の経鼻的あるいは静注使用

最近の収監

接触的なスポーツ

バー、音楽イベント、クラブへの頻繁な出没

HIV感染

最近の抗菌薬使用

最近の入院

血液透析

MRSA感染の人と密な接触

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

6 February 2018

 

脂質異常症

 

脂質異常症は動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease (CVD))の主要なリスクファクターである

 

 

生活習慣の改善はtotal cholesterol, HDL, LDL, triglycerideに良き影響を及ぼすためAHA (American Heart Association)はすべての成人に健康的な食事、定期的な運動、および禁煙を推奨している(1)。しかしUSPSTF (U.S. Preventive Services Task Force)は食事や身体活動などの生活習慣の改善だけでは十分には脂質の値を減らさず、多くの高脂質症患者は治療ゴールを達成するために薬物治療を必要とすることを指摘している(2)

 

 

 

何歳から脂質異常症のスクリーニングを始めたらよいかははっきりしていない

 

USPSTFは35歳以上の全ての男性および45歳以上のすべての女性(動脈硬化性冠動脈心臓病(atherosclerotic coronary heart diease (CHD))のリスクがある場合はそれぞれ20~35歳、20~45歳)において脂質異常症のスクリーニングを行う事を推奨している(1)

(CHDのリスクがあると見なされるのは以下の場合である:冠動脈リスクファクター(注1)がある、早発性CHDの家族歴、遺伝性を示唆する脂質異常、高脂質症を示唆する身体所見(3))

 

National Cholesterol Education Program Adult Treatment Panel III(NCEP-ATPIII)はCHDのリスクの有無にかかわらず20歳以上のすべての成人にスクリーニングを行うことを推奨している(4)

(このスクリーニングの推奨は健康習慣を促す事、社会の認識を増やす事、および高リスクの患者を発見する事といった目的に基づいている(5)。しかし、早期に一律にスクリーニングを行うこととリスクファクターに基づいて若年者にスクリーニングを行うこととの比較における有用性および費用対効果は不明である)

 

 

65歳以上の成人にスクリーニングを行う事の有用性はmoderate-quality evidenceに基づいて認められている。65歳以上の成人は基本的にCHDの高いリスクを有し、脂質異常症への介入を行う事で利益を得られる可能性が高まる(6)

 

  

 

年齢にかかわらずCHDおよびCHD risk-equivalent(注2)の患者では脂質の値を測定すべきである

 

 

米国のほとんどの機関は成人における脂質異常症のスクリーニングを少なくとも5年に1回行うことを推奨している

(ACC/AHAは20~78歳において4-6年毎、CVDのリスクがある場合はより頻繁に空腹時脂質値のスクリーニングを行う事を推奨。NCEP-ATP IIIは20歳以上に5年毎空腹時脂質値の測定を推奨。USPSTFは35歳以上に5年毎、脂質値が正常の場合はより低頻度で、脂質値が高い場合はより頻繁に測定することを推奨(USPSTFは空腹時および非空腹時両方を脂質値として認めている))

 

 

181人の一般内科外来患者における空腹時 vs 非空腹時における脂質値測定を比較した試験において両者間で total cholesterolおよびHDLの値において臨床的に重要な違いは認められなかった(6)。また20~95歳の成人33391人に行った空腹時および非空腹時における脂質値を比較したcross-sectional population studyにおいては通常食摂取による脂質値の変化はわずかであることが確認され、非空腹時の脂質値も心血管イベントの予測に有用であると報告している(7)

 

NCEP-ATP IIIは最初のスクリーニングにtriglycerideの測定とLDL値算定を含むことを推奨している。USPSTFは脂質値の評価にtriglyceride測定を含む事を推奨していない(3)(LDLおよびtriglycerideの測定は治療のガイダンスには有用であるが、リスク予測には利益をもたらさないと報告されている(3))

 

  

 

2013年にAmerican College of Cardiology (ACC)とAHAはLDLおよびHDLの値を治療のゴールとして目指す治療にはエビデンスが認められないと結論づけている(1)

新しいガイドラインはCVDを有する患者に禁忌でない限り、高用量スタチンを投与し、LDLの値を少なくとも50%減らすことを推奨している

 

 

 

脂質異常症を診断した時には心血管リスクを予測する必要がある。リスク評価が一次予防のために治療を開始するかどうかのガイダンスになる

 

 

リスクの評価には脂質値のみを考慮、あるいはリスクファクターを数えるのみで行うよりも、特定の式を使ってリスクを算定することでより正確な評価が可能である。現在米国にはいくつかのアルゴリズムがある

・Framingham Risk Score

・ACC/AHA Arteriosclerotic Cardiovascular Disease Risk Estimator

・Reynolds Risk Score 

 

 

心血管リスクの算定にACC/AHAのelectronic toolが利用可能である

www.cvriskcalculator.com/

 

 

cardiovascular risk scoreによってCVDを予測することは、特に米国以外のpopulationにおいては、妥当性がないと考えている専門家もいる(8)。現在のrisk calculatorsはリスクを過剰に評価してしまう可能性があるため、それを使い薬物治療によって利益を得られる患者を特定すること、およびその治療のガイダンスとすることにはpredictive valueを欠いている(9)。これらの使用がスタチンの過剰処方および投与量増加につながり、他剤との併用で副作用を導きうると考えている医師も多くいる

 

 

リスクの算定によっても治療を行うかどうかが不明瞭な場合は、家族歴、high-sensitivity CRP、冠動脈石灰化スコア、ankle-brachial indexなどをも考慮する

 

 

初回CVDのリスク予測に以下の事項も追加した方がよい、あるいは追加しない方がよいという推奨はない:アポリポプロテインB、慢性腎臓病、アルブミン尿、cardiorespiratory fitness

 

 

 

一旦治療を開始すればその後終生続く可能性があるため、患者のリスク評価は重要であり、その意思決定は治療開始前に患者と治療者で共有されることが望ましい

 

 

 

脂質異常症には様々な脂質の異常が含まれるが、一般的にはtotal cholesterol 240mg/dL以上、LDL 160mg/dL以上、triglyceride 200mg/dL以上、HDL 40mg/dL以下の組み合わせで定義される

 

 

機関毎による推奨や測定タイミングなどの違いはあるものの、baselineとしてtotal cholesterol, LDL, HDL, triglycerideを測定することが一般的である。CVD既往の患者、あるいは非常に高いリスクを有する場合はリポプロテイン、アポリポプロテインB、アポリポプロテインA1を追加測定することも検討される

 

 

血液サンプルは空腹時(12時間)に採取することが望ましいが、total cholesterolとHDLは非空腹時においてもほとんど違いがない(10)。triglycerideが400mg/dLを超える場合は空腹時に採取を行う必要があるが、多くの場合、非空腹時脂質値もリスク評価として使用することが受け入れられる

 

  

 

10-year riskが12%を超える場合はmoderate-doseのスタチンを投与することによって5年間のCVDリスクを20~30%減らすことができることを臨床試験が示唆している(1, 11)

 

   

 

triglyceride値は治療のprimary targetではないが、prospective epidemiologic studiesにおいてtriglycerideの上昇がCADのリスクに関連することが示され(12)、prospective studiesのmeta-analysisではtriglyceride上昇がCADの独立したリスクファクターであることが示された(13)

 

 

triglycerideは非空腹時には20%まで増加するため空腹時に採取される必要がある

 

 

triglyceride上昇とCADは男性よりも女性の方がより強く関連するようである(13)

 

 

triglycerideが500mg/dL以上の場合は膵炎発症のリスクがあるため治療が必要となる

 

 

 

HDLが40mg/dL以下の場合は動脈硬化イベントのリスクが上がり、1mg/dL下がる毎に冠動脈リスクが2~3%上昇する(14)。またmeta-analysisではHDLが13mg/dL上昇することで死亡率が30%が減少することが示された(15)

 

   

 

二次性脂質異常症の原因には甲状腺機能低下症、閉塞性肝疾患、ネフローゼ症候群、腎不全、コントロール不良糖尿病、喫煙、飲酒がある。また薬剤(注3)も脂質異常に寄与する。二次性脂質異常症の原因を治療することで脂質降下剤が不必要になる場合があるので、これらの疾患の可能性を評価することは重要である

 

 

 

脂質異常症の患者には薬物治療をするしないにかかわらず生活習慣改善の重要性を伝える必要がある。NCEP-ATP IIIのTherapeutic Lifestyle Change Dietを適応すればLDLを5~15%下げることが可能とされている(4)。National Health and Nutrition Examination SurveyによればLDLが15%下がれば、コレステロール降下剤の必要性を14%から5%に減らすことが可能であるとしている

 

 

2013年ACC/AHAガイドラインでは心血管リスクを減少させるために果物、野菜、ナッツ、whole grainsを多く含む食事、一価不飽和脂肪酸の油(ココナッツオイルやかカノーラオイルなど)、低脂肪乳製品、などの摂取を、また動物製品よりも鶏肉や魚などを摂取することを強調している(16)

 

 

中等量のアルコール摂取、禁煙、減量、定期的な運動はHDLを10%まで上昇させることができる(16)

 

 

 

治療

First Step:健康的な生活習慣を促す(健康的な食事、定期的な運動、禁煙、健康的な体重維持)

Second Step:リスク評価 

Third Step:患者と治療者が治療の意思決定を共有、脂質降下剤投与の利益・リスクおよび費用を議論 

Fourth Step:薬物治療開始

 

 

 

二次予防はCVD既往がある患者に適応され高用量スタチン治療が推奨される

 

 

一次予防はCVD既往がなく心血管イベントのhigh risk な患者に適応され(1)、次の三つのカテゴリーに分類される

・LDLが190mg/dL以上

・40~75歳、LDL 70~189mg/dL、糖尿病の既往

・40~75歳、LDL 70~189mg/dL、CVD 10-year riskが7.5%以上

 

 

 

ACC/AHAガイドライン2013は脂質降下剤としてスタチンを投与することを推奨している(1)。スタチンはLDLを下げるのみでなく、CVD既往およびCVD発症リスクの高い患者両方で心血管イベントの発生を減らすことが多くのlarge-scale, high-quality clinical trialsで確認されている

 

 

 

スタチンへの追加薬として新たな脂質降下剤が出てきているが、これらの薬剤単独では動脈硬化性疾患のリスクを下げない。たとえば ezetimibe はNPC1L1蛋白に作用してLDLを下げるが、単独投与で心血管イベントを減らすことが確認された試験はなく(17)、PCSK9 inhibitor においても同様の結果であった(18, 19, 20)

 

 

ナイアシンはHDLを上げ、triglycerideを下げる目的で使われてきたが、もはや脂質異常症のroutineの治療薬としては推奨されない。HPS2-THRIVE (Heart Protection Study 2 Treatment of HDL to Reduce the Incidence of Vascular Events)においてナイアシンはclinical benefitが認められず、耐糖能異常、消化管症状、筋骨格症状、皮疹、頭痛、痛風、感染などの副作用を起こすことが確認された(21)

 

 

一次予防薬としてフィブレート、bile acid-binding resin、omega-3 fatty acid supplement、planto sterol or stanol、ナイアシンの投与は推奨されない

 

 

 

投与量上限のスタチン単剤投与に反応しない脂質値の非常に高い患者に対し併用薬剤投与が考慮されるべきである

 

 

IMPROVE-IT (Improved Reduction of Outcomes: Vytorin Efficacy International Trial)においてスタチンにezetimibeを併用することで心血管end pointを改善することが確認された(22)。しかしその利益は小さく、2016年にU.S. Food and Drug AdministrationはIMPROVE-ITの結果はCVDのhigh risk患者に ezetimibe投与を推奨するには不十分であると発表している

 

FOURIER (Further Cardiovascular Outcomes Research with PCSK9 Inhibition in Subjects with Elevated Risk) trialにおいて中用量あるいは高用量のスタチン治療にPCSK9 inhibitorを追加することで心血管outcomeが改善されることが示された(23)。しかし薬剤は高価であるため、患者と治療者は費用対効果について議論する必要がある

 

 

 

治療の第一ゴールは生活習慣の改善であり、第二ゴールは心血管イベントのリスクを減らすことである。 LDLの値を減らすことはもはや治療ゴールではない

 

 

 

治療開始後の患者モニターの間隔に対する強いエビデンスは認められていないが、開始6週間後に空腹時脂質を測定することが妥当である

 

フォローのたびに肝機能検査を行うことを提唱する医師もいるが、スタチンによる肝障害は考えられていた以上に少なくAmerican College of Physicians ガイドラインではスタチン治療中の患者に肝機能検査をすることを推奨していない(1)。しかし、スタチン治療を開始する場合は最初の年はbaseline、3ヵ月後、12ヵ月後に肝機能検査をする必要がある。クレアチニンキナーゼもbaselineとして測定すべきである

 

 

 

 

治療薬剤

 

スタチン

・atrovastatin (10-80mg/d)

・fluvastatin (20-80mg/every night)

・lovastatin (10-60mg/everning meal/every night)

・pravastatin (10-80mg/bedtime)

・rosuvastatin (5-40mg/d)

・simvastatin (5-80mg/evening meal)

・pitavastatin (2-4mg/d) 

 

安全性と効果について多くの試験で研究されている

LDLを22~63%低下させる

 

副作用

肝酵素上昇(比較的少ない)、筋痛・筋炎(フィブレート併用でリスクがあがる)、rosuvastatinはワーファリンあるいはgemifibrozilと併用すべきでない

 

7つのスタチンは代謝が異なるため副作用が起こった場合は代用可能である。LDL低下の相乗効果のためbile acid sequestrantと併用される場合がある。フィブレートと併用する場合は肝酵素のモニターが必要である。妊婦、授乳中、活動性の肝疾患では使用できない

 

 

 

Bile acid sequestrants

・colestipol (2 scoops 2-3 times per day)

・colsevelam hydrochloride (625mg x 3 tablets 2 times per day)

 

吸収されず、長期投与の安全性が確認されている

LDLを10~15%低下させる

 

副作用

不快な味、胸焼け、膨満感、便秘、薬相互作用(食事1時間前あるいは4時間後投与でそのリスクを減らすことができる)、triglyceride上昇

 

子供および妊婦への第一選択薬 。スタチンとの相乗効果でLDLを低下させるsecond-line drug。triglycerideが300mg/dL以上の時あるいはgastrointestinal motility disorderでは使用できない

 

 

 

フィブレート

・gemifibrozil (600mg 2 times per day)

・fenofibrate (45-145mg/d)

 

triglyceride をもっとも下げる薬剤(50%あるいはそれ以上)。HDLを15%上昇させる

 

副作用

嘔気、皮疹、腎機能低下あるいは胆嚢疾患の際は注意を要する

 

LDLを安定しては下げない(上昇する場合もある)、スタチンとの併用は筋痛・筋炎の可能性があるので注意を要する。repaglinideとの併用は重度の低血糖をもたらしうる

 

 

  

Ezetimibe

(10mg once a day)

 

LDLを18%、triglycerideを8%、apoBを16%減少させる

 

副作用

比較的副作用は少ないが、肝疾患あるいは肝酵素が上昇している場合は禁忌である 

 

さらにLDLとtriglycerideを低下させ 、HDLを上昇させる目的でスタチンと併用できる。resin、フィブレート、cyclosporineとは併用できない

 

  

 

Omega-3 fatty acid

・lovaza 4g/d

・omtryg 4.8g/d

・vascazen 4g/d

・epanova 2-4g/d

・vascepa 2g/d

 

triglycerideのコントロールに有効(最大45%低下)。HDLを13%上昇させる。triglycerideが500mg/dLを超える場合に食事療法との併用で投与される

 

副作用

消化不良、嘔気、出血リスクを上げる可能性がある、抗凝固療法を行なっている際は注意を要する

 

triglycerideが上昇している患者でLDLを上昇させる可能性がある。カプセル形態であり飲み込まなければならない(溶解、破砕、噛むことが不能)。18歳以下では安全性が確立されていない

 

 

 

ApoB antisense oligonucleotide

・mipomersen 200mg/ml SQ weekly

 

ホモ接合性家族型高コレステロール血症の患者においてコレステロール降下剤・食事療法と併用してLDL、apoB、TC、non-HDLを下げる補助剤として使用される

 

副作用

肝酵素を上昇させうる。嘔気、嘔吐、腹痛、黄疸、発熱、意識障害、インフルエンザ様症状を有する場合は肝酵素を検査する。肝酵素が正常値上限の2倍の時は中止を検討、5倍の時は中止

 

各週の同じ曜日に投与。要冷蔵保存

 

 

 

PCSK9 inhibitor

・evolocumab (140mg/ml SQ every 2 weeks or 420mg SQ once monthly)

・alirocumab (75mg/ml SQ every 2 weeks or 300mg SQ every 4 weeks) 

 

食事療法およびスタチン最大耐用量を受けている家族性高コレステロール血症、あるいはCVD既往の患者でさらなるLDLの低下を要する場合に追加投与される

 

副作用

副作用は比較的少ない

 

子供での効果および安全性は確立されていない。治療の反応はLDL受容体の機能に依存するため投与開始4~8週間後にLDLを測定する

 

 

 

ナイアシン

(500-750mg~1-2g every night)

 

LDLを下げ、triglycerideを10~30%減少させる。もっともHDLを上昇させる薬剤 (25-35%) 

 

副作用

皮膚紅潮、嘔気、耐糖能低下、肝酵素上昇、痛風、尿酸値上昇

 

低HDLを伴う高脂質症の際の選択薬。スタチンあるいはbile acid sequestrantと併用される。studyによって多くの副作用があり、clinical benefitが認められなかったのでもはやroutineで使用される薬剤ではない

 

 

 

Microsomal triglyceride transport protein inhibitor

・lomitapide (5-60mg/d)

 

ホモ接合性家族型高コレステロール血症の患者において他のコレステロール降下剤とLDL apheresisに併用してLDL、apoB、TC、non-HDLを下げる補助剤として使用される

 

肝障害の可能性があるためアクセス制限のあるプログラムを通してのみ利用可能である。1日1回少なくとも夕食摂取2時間後にグラス1杯の水とともに服用

 

 

 

 

 

(注1)

冠動脈リスクファクター

改善できない因子

年齢(男性45歳以上、女性55歳以上)、性別(男性)、家族歴(55歳以下で発症の父親・男兄弟、65歳以下で発症の母親・姉妹)、遺伝素因

改善できる因子

喫煙、動脈硬化傾向の食事(多量の赤身の肉、高脂肪食など)、アルコール摂取(中等度の飲酒(2-7 drinks/週)はリスクを減らすが、irregular heavy drinking(一度に5 drinks以上あるいは月1回以上の急性中毒)はリスクを高める)、身体活動、脂質異常症、高血圧、糖尿病、肥満(BMI>25-30)、メタボリックシンドローム

新興の因子

CRP上昇、フィブリノーゲン、冠動脈石灰化、ホモシステイン、リポプロテイン、small dense LDL

 

 

(注2) 

動脈硬化性冠動脈心臓病(CHD)

Risk-equivalent

 急性冠症候群

 心筋梗塞

 冠動脈・他動脈血行再建

 脳卒中

 TIA

 安定・不安定狭心症

 動脈硬化性末梢血行障害 

 

 

 

(注3) 

薬剤

コルチコステロイド、アンドロゲン性ステロイド、プロゲストジェン、サイアザイド利尿剤、βブロッカー、retinoic acid derivative、経口エストロゲン 

 

 

 

 

 

 

1

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

5 December 2017

 

 

Acute Kidney Injury

 

急性腎障害

Kidney Disease Improving Global Outcomes (KDIGO) 基準

Cre上昇 ≧ 0.3mg/dL(48時間以内)or 

Cre ≧ baselineから1.5倍(7日以内)or 

尿量< 0.5ml/kg/h 6時間以上

 

 

KDIGO staging

Stage 1:

Cre上昇≧ 0.3mg/dL or 1.5-1.9 times baseline or 尿< 0.5ml/kg/h 6-12h

Stage 2:

Cre 2.0-2.9 times baseline or 尿< 0.5ml/kg/h 12h以上

Stage 3:

Cre 3.0 times baseline or Cre ≧ 4mg/dL or kidney replacement therapy開始 or 尿< 0.3ml/kg/h 24h以上 or 無尿12h以上

 

 

 

急性腎障害の重症度が合併症リスクおよび予後に関連する

死亡oddsは急性腎障害のないグループに比べ、ステージ1では3.4倍、ステージ2では7.5倍、ステージ3では13.2倍、血液浄化療法を要した場合は24倍高くなる

 

 

 

 

急性腎障害の原因は以下の四つに分類される

・Decreased kidney perfusion

・尿路閉塞

・腎実質疾患(ATN以外)

・ATN (acute tubular necrosis)

 

 

 

 

急性腎障害の原因を同定することは重要である。ATNの治療はsupportive careが基本となるが、それ以外の原因による急性腎障害はそれぞれ特異的治療によって低下したGFRを回復させることができうるからだ

 

 

 

市中発症の急性腎障害の原因として最も多いのはdecreased kidney perfusion であり、院内発症で最も多い原因はATNである 

 

 

 

 

急性腎障害へのアプローチ

・volumeを評価

(循環血漿流量の低下を認める時、あるいはvolumeが不明の場合はintravenous fluidを開始する)

 ・緊急 kidney replacement therapy の適応を評価

(volume overload、尿毒症合併症、電解質異常、薬剤毒性)

 ・尿検査

 ・他の検査を検討(血液検査、画像検査)

 ・病歴、身体所見

(現病歴、内服薬、造影剤暴露、最近の手術歴、最近の旅行、感染症への暴露、fluid intake and output)

 

  

 

 

身体所見

volume overload (呼吸困難、頸静脈怒張、rale、腹水、下肢浮腫)

uremic encephalopathy(意識障害、羽ばたき振戦、反射亢進、ミオクローヌス)

心膜炎(心膜摩擦音)

 

 

 

 

循環血漿流量低下によるdecreased kidney perfusionで経口あるいは静注によるfluid投与で速やかに急性腎障害の改善を認める場合は血液検査などのさらなる評価は不要である

 

 

 

volume statusが明らかでない時は利尿剤投与中の場合は中止し、生食500ccを4-6時間かけて投与し、8-12時間以内に尿量、Cre値、eGFRを評価する。それらが改善を認める場合は急性腎障害の原因が循環血漿量の低下によるものである事を示唆し、改善しない場合は他の原因を評価する必要がある

 

 

 

 

急性腎障害では多くの場合、尿検査による評価が必要になる。外観、dipstick、沈渣、尿化学(浸透圧, Na, urea nitrogen, creatinine, albumin, total protein)等である

 

 

 

 

尿培養も採取することが多い。急性腎障害の原因として腎盂腎炎、sepsisに起因するATNがあるためである

 

 

 

 

ATNは急性腎障害の他の原因を除外した後で、典型的な病歴や所見をもつ場合に診断が推定される。ATNの最も多い原因はショックやsepsisである。他には腎毒性薬剤(*)や造影剤への暴露、手術などの後の一時的な血圧低下、急性細胞壊死(溶血、横紋筋融解、tumor lysis)などである

 

  

 

濃縮尿をつくるためには尿細管機能が働かなければならない。急性腎障害における濃縮尿の有無の評価が decreased kidney perfusion と acute tubular necrosis を鑑別することにおいて有用である

 

濃縮尿

・urine specific gravity >1.020

・osmolarity > 500 mosm/kg

・FENa (fractional excretion of sodium) (UNa x Scr/SNa x Ucr) < 1%

・FEurea (fractional excretion of urea) (UUN x Scr/SUN x Ucr) < 35%  (利尿剤投与中)

・ratio of SUN to serum creatinine concentration  > 20:1

 

 

 

 

尿中へのアルブミンの喪失が糸球体障害および、ATN以外の多くの腎実質疾患のマーカーとなる。アルブミンを欠くタンパク尿はタンパク生産増加あるいは尿細管における低分子血漿タンパクの吸収障害の指標となる(light-chain proteinuria or tubular proteinuria)。urine dipstickは他のタンパクよりアルブミンに対しsensitivityが高い

 

 

 

 

尿路閉塞が疑われる場合は超音波検査による評価が必要になる

 

 

水腎症を伴わない尿路閉塞の原因としては尿路内への多量出血、後腹膜線維症がある

 

 

 

 

血圧低下を伴う患者では心拍出量およびvolume評価のために頸静脈内圧や肺血管楔入圧をモニターする場合がある。CKD stage 4-5 (GFR < 30ml/min/1.73m2)の場合は後に透析を行う際に血管狭窄がアクセスの妨げになりうるため鎖骨下静脈へのカテーテル留置は避けるべきである

 

 

 

Cre値の上昇は筋肉量の少ない患者、あるいはvolume overloadの場合は遅れ、逆に筋肉量の多い、あるいはvolume depletionの場合は速くなりうる

 

 

 

baseline GFRが低い場合、急性腎障害がなくてもGFRのわずかな変動がCre値を0.3mg/dL前後変動させる場合がある。よって急性腎障害の診断に必要な48時間という時間を考慮することで過剰診断を少なくすることができる

 

 

 

 

 

 

 

Decreased Kidney Perfusion

 

循環血漿量低下

治療:intravenous fluid

intravenous fluid投与後のeGFRおよびCre改善、尿量の増加が診断となる

 

心不全(left- or right-sided)(cardiorenal syndrome)

治療:afterload reduction(ACEI/ARB, hydralazine or nitrate)と利尿剤(volume overloadの時) 

  

肝不全(hepatorenal syndrome)

治療:アルブミン、midodrine、octreotide

アルブミンは特に細菌性腹膜炎や腹水穿刺などの時にvolumeを増加させる場合に投与される。midodrineやoctreotideは血圧を上げ、内臓血管収縮を促す

 

Sepsis

治療:intravenous fluidと抗菌薬

  

腹腔内圧上昇

治療:intra-abdominal decompression

経鼻胃管、直腸ドレナージ、腹腔内占拠病変の除去(腹水、液体貯留、血腫)、また腹腔内圧が20mmHg以上の時は外科的減圧(open abdomen)が必要な場合もある

 

腎血管障害 

治療:降圧剤、血管再建

両側腎動脈狭窄や片側腎への動脈狭窄に伴う急性腎障害の時などにステント留置やバイパス術が考慮される

 

NSAIDs

治療:薬剤中止

 

ACEI / ARB

治療:一時的に薬剤中止

特に利尿剤併用中の場合で急性期疾患などで循環血漿流量の低下する可能性のある時期

 

 

Urinary Tract Obstruction

Obstructive nephropathy

治療:腎瘻チューブ、尿道カテーテル

 

 

Parenchymal Kidney Disease

Acute glomerulonephritis

治療:免疫抑制剤

腎生検の病理学的所見および原因疾患による治療選択

・crescentic glomerulonephritis(ANCA and anti-GBM disease):

  ステロイドとシクロフォスファミド

・proliferative lupus nephritis:

  ステロイドとシクロフォスファミドあるいはマイコフェニレイト

・IgA nephropathy:

  ステロイドや他の免疫抑制剤

・感染や悪性疾患に起因するglomerulonephritis:

  原因疾患の治療

 

急性間質性腎炎

治療:原因薬剤中止とステロイド

急性腎障害が重度、あるいは薬剤による急性間質性腎炎で原因薬剤を除去しても改善を認めない場合は、多くの専門家が、高いエビデンスを欠くものの、コルチコステロイド投与を行なっている(1)

  

急性腎盂腎炎

治療:抗菌薬

尿路閉塞、尿路結石、あるいは他の感染源の検索

 

Thrombotic microangiopathy

治療:血漿交換

血小板減少性紫斑病や他の免疫機序によるthrombotic microangiopathyの場合に施行

 

Cast nephropathy(multiple myeloma)

治療:化学療法

 

腎梗塞

治療:血管再建 or 抗凝固療法

腎動脈のarterial fibromuscular dysplasiaの時は血管再建治療が考慮される。動脈塞栓あるいは静脈血栓の場合は再発予防のために抗凝固療法が検討される 

 

Atheroembolism (cholesterol embolism)

治療:動脈内手技を避ける

再発を避けるためintra-arterial procedureを避ける。intra-arterial procedureによらない自然発症の場合は抗凝固療法を、特に最近開始した場合は中止することを検討する

 

 

 

 

 

現在のところATNに対する有効的な薬物治療は存在しない

 

 

 

KIDGOガイドラインではvolume overload以外での急性腎障害の治療に利尿剤を使用することを推奨していない。しかし"furosemide stress test"(furosemide 1mg/kgを投与し、尿量と同量の生食を補う)が予後予測に使われる場合がある。投与後2時間で尿量が200ml以下の場合はより重度の急性腎障害への発展、あるいはkidney replacement therapyが必要となるリスクが高くなる(2, 3)

(338人のKRTを要した急性腎障害患者で行われたmoderate-quality randomized trialにおいて、furosemideを25mg/kg/day 静注、あるいは35mg/kg/day 経口投与したグループはプラセボグループに対し、より速やかに尿量2L/day以上を達成した(5.7 days with furosemide vs 7.8 days with placebo)が、死亡率、透析を要した期間、Cre < 200umol/Lを達成するのに要した時間において両者間で有意差は認められなかった) (4)

 

 

 

KDIGOガイドラインでは急性腎障害を伴うvasomotor shockの患者に対し昇圧剤投与(ノルエピネフリン、バソプレッシン)を推奨している(5)

 

 

 

KDIGOガイドラインではmoderate-quality evidenceに基づいて急性腎障害の治療に対し、dopamine、fenoldopam、atrial natriuretic peptides、N-acetylcysteineを投与することを推奨していない(5)

 

 

 

 

急性腎障害におけるfluid overloadに対し、高用量のループ利尿剤(1日複数回投与、持続静注)およびサイアザイド静注利尿剤の併用によって利尿を得られる場合がある

 

 

 

 

重度の高カリウム血症 (K > 6.5mmol/L or 心電図変化) に対する治療には不整脈のリスクを下げるcalcium gluconate、それに続き、細胞外から細胞内にカリウムを移動させるinsulin plus dextrose、β-agonists、重炭酸が含まれる。これらの治療の効果は一時的なものなのでカリウムを体外に排出する治療を伴わなければならない。乏尿の患者ではループ利尿剤投与によって尿量およびカリウム排出を増加させることができうる。無尿の患者ではsorbitol with sodium polystyrene sulfonateあるいはcalcium polystyrene sulfonate resinsが浸透圧性下痢を起こすことによりカリウムの便排出を促すことができる

 

 

 

代謝性アシドーシスが重度の場合、多くの専門家が重炭酸投与を行うが、それに対するhigh-quality evidenceは認められていない(6)

 

 

  

KDIGOガイドラインではlow-quality evidenceに基づき、タンパク質摂取ゴールとして、non-catabolic の患者では0.8〜1.0g/kg per day、KRT治療中の患者では1.1〜1.5g/kg per day、hypercatabolicな時、あるいは持続KRT治療中の場合は最大1.7g/kg per dayを推奨している(5, 7)

 

 

 

KDIGOガイドラインでは重症患者での血糖値ゴールとしてインスリン治療によって110〜149mg/dLに管理することを推奨している

 

 

 

 

急性腎障害の際、尿毒症による血小板機能の低下にて出血リスクが増加し、low-molecular heparinやdirect oral anticoagulantsなどの薬剤の腎排出能が低下するため抗凝固剤を使用する場合は注意を要する

 

 

施設によっては長期に透析を受ける患者でanti-factor X activityをモニターしながらlow-molecular heparinを間歇的に投与する場合もあるが、急性腎障害の際はunfractionated heparinが好まれて使用される場合が多い

 

 

 

尿毒症を呈する患者が出血を認める際は急性期の対応としてdesmopressin (0.3mcg/kg iv, subcutaneous, intranasal)やcryoprecipitateが投与されるが、長期的な出血のコントロールとしてはconjugated estrogenや透析が治療となる

 

 

 

 

 

KRT(Kidney Replacement Therapy)

 

重度の急性腎障害では合併症(生命危機的な体液量増加、電解質異常、アシドーシス)の管理にKRTが行われる

 

 

 

KRTはこれらの合併症が起こる以前から開始される場合があるが、急性腎障害の比較的早い段階からKRT を開始した方が、合併症が起こってから開始した場合に比べ利益があるかどうかはcontroversialである(8, 9, 10)

 

 

 

 

Kidney Replacement Therapy 

 

持続的 kidney replacement therapy(24時間)

 continuous venovenous hemofiltration

 continuous venovenous hemodialysis

 continuous venovenous hemodiafiltration

 

 

間歇的 kidney replacement therapy

 intermittent hemodialysis(週3-4回、4時間/session)

 

 prolonged intermittent kidney replacement therapy(毎日、6時間以上/session)

  sustained low effeciency dialysis

  sustained low efficiency diafiltration

  sustained continuous ultrafiltration

 

 

 

 

持続的KRTはICUにて24時間持続で行われる治療であるが、通常血行動態の不安定な患者に行われ(11)、間歇的血液透析は血行動態の安定している患者で行われる

 

 

 

重症患者において持続的KRTと間歇的血液透析を比較した randomized trialsでは二つのグループにおいて死亡率、入院期間、および長期間透析を必要としたかどうかにおいて有意差が認められなかった(12, 13)

 

 

 

 

造影剤、アミノグリコシド、アンホテリシンB、バンコマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、イフォスファミド

 

 

 

 

 

 

 

1. Gonzalez E,  Early steroid treatment improves the recovery of renal function in patients with drug-induced acute interstitial nephritis. Kidney Int. 2008;73:940-6

 

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In The Clinic

Annals of Internal Medicine

7 November 2017 Volume 167 Number 9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

尿路感染症

 

尿路感染症には一般的に以下のものが含まれる

無症候性細菌尿、急性単純性膀胱炎、再発性膀胱炎、カテーテル関連無症候性細菌尿、カテーテル関連尿路感染症、前立腺炎、腎盂腎炎

 

 

 

尿路感染症のリスクは男性より女性の方が、特に閉経前の方が高い。他には糖尿病、神経因性膀胱、脊髄損傷、妊娠、前立腺肥大、また留置尿路カテーテル(30日以上)や尿路ステント留置などに関連する排尿問題を有する患者でもリスクが高まる(1, 2)

 

 

 

無症候性細菌尿を認める女性では症状を有する尿路感染症のリスクが高まるが、それに対する抗菌薬治療は尿路感染のリスクを減らさない(3)。無症候性細菌尿のスクリーニングおよび治療が推奨されるのは妊婦、およびTURP (transurethral resection of the prostate) やその他粘膜出血の可能性のある泌尿器科侵襲的手技を受ける患者である(4)

 

 

 

尿路感染症を繰り返す女性では抗菌薬の予防的投与を行う場合がある。予防的投与は性交後に、あるいは継続的に行われる。 年に3~4回尿路感染を発症する女性、特に性交に関連して発症する場合は、性交後の予防的投与が高い有効性を認めている 

(前年に2回以上培養で確認された尿路感染を発症した女性で行われたrandomized, double-blind, placebo-controlled trialではプラセボ投与グループの感染率が3.6 per patient per year であったの対し、性交後にtrimethoprim-sulfamethoxazole 40mg/200mg)を一回投与したグループでは感染率が0.3 per patient per yearであった(5))

 

 

 

より頻回の尿路感染を繰り返す女性では抗菌薬の継続的予防投与が行われる(daily, thrice-weekly, or weekly)。ただ尿路感染の発症率が減るのは抗菌薬投与中のみで、多くの場合投与中断後にもとの発症率に戻る

 

  

 

クランベリージュースが尿路感染の予防に有効かどうかの議論は続いている。cochrane review and meta-analysisは尿路感染予防にクランベリージュースは推奨されないとの結論を出している(6)が、他のmeta-analysisではクランベリーを含む製品が尿路感染の予防に有効であることが示されている(7) 

 

  

 

閉経後の女性ではエストロゲン製剤の膣外用投与が尿路感染の頻度を減らす可能性がある。2008年の2つのスタディのcochrane systematic reviewではエストロゲン膣外用投与が閉経後女性の尿路感染の頻度を減らすとの結論を出している(8)。Society of Gynecologic Surgeons Systematic Review Groupのガイドラインではエストロゲン膣外用を尿路感染を繰り返す閉経後女性への投与を推奨している(9)

 

  

 

尿路感染症の最も一般的な症状は、尿路カテーテルを留置されていない場合では、排尿時痛、頻尿、尿意切迫である。尿路感染である可能性が高まる症状は排尿時痛、血尿、costovertebral-angle tendernessである。逆にvaginal dischargeやirritationを認める場合は尿路感染の可能性が下がる(10)

 

 

 

尿路カテーテルを留置されている場合ではカテーテル関連尿路感染症を示唆する症状は発熱、悪寒、意識障害、他に原因を認めない倦怠感、側腹部痛、costovertebral-angle tenderness、血尿、骨盤部痛などである

 

 

 

ガイドラインでは1000 colony-forming units per milliliter of urine以上ではカテーテル関連尿路感染症と診断可能であるとされている

 

 

  

カテーテル関連尿路感染症の多くの症状は非特異的であるため、診断する前に他の感染症や原因を検討する必要がある。カテーテル関連尿路感染症とカテーテル関連無症候性細菌尿を鑑別するのはchallengingである

 

 

 

sexually transmitted diseaseは常に尿路感染症の鑑別診断として考慮される必要がある。vaginal dischargeなどの示唆する症状の有無を問い、それが認められる場合は検査が必要となる

 

 

 

抗菌薬の投与期間が異なるため、膀胱炎として治療を開始する前に常に腎盂腎炎の可能性を考慮する必要がある。膀胱炎の症状で来院した患者には発熱、嘔気、嘔吐、悪寒、側腹部痛がないことを確認する必要がある。尿路症状と発熱を有する男性の場合では前立腺炎と腎盂腎炎を鑑別診断として考慮する

 

 

  

排尿時痛や頻尿などの典型的症状を有する女性で他の診断や合併症を示唆する症状を認めない場合は検査を行うことなしに膀胱炎として治療を開始することが可能である 

 

 

  

膀胱炎の症状を有する女性ではpositive urine dipstickが診断の補助になりうるが、検査前確率が高い場合はurine dipstick検査が陰性であっても除外診断することはできない(10, 11)。したがって明らかな尿路感染症状を有する場合はdipstick testは不要である

 

 

 

膀胱炎症状を有する女性では他の鑑別診断のために必要、あるいは基礎疾患の有無の評価のために必要である場合を除いて、血液検査を行う必要はない。腎盂腎炎を発症する女性の30%は菌血症を合併するため、血液培養採取は起因菌同定に有効となる。糖尿病を有する患者や腎移植を受けた患者では菌血症を合併する可能性が高いため、全身性の症状を有する場合は血液培養評価が必要である(12, 13)

 

 

  

単純性膀胱炎では一般的に女性の場合は尿培養は不必要であるが、妊婦と男性の場合は行う必要がある

 

 

Escherichia coliが単純性膀胱炎と腎盂腎炎の起因菌の90%を占める。他にはKlebsiellaやProteusが含まれる。Staphylococcus saprophyticusは特に基礎疾患のない女性の単純性膀胱炎と腎盂腎炎の5-10%を原因となる。短期間の尿路カテーテル留置患者ではカテーテル関連尿路感染症の起因菌としてはE coli、他には院内感染菌としてKlebsiella、Citrobacter、Enterobacter、Pseudomonas、coagulase-negative staphylococci、enterococci、Candidaなどがある。長期のカテーテル留置患者では典型的には複数菌による感染となる。上記の菌およびProteus、Morganella、Providenciaなどが起因菌となる(14)

 

  

 

女性における単純性膀胱炎において尿培養で認められた大腸菌群、S saprophyticus、Enterococcus以外の菌、例えばlactobacilli、α-streptococci、S saprophyticus以外のcoagulase-negative staphylococciなどはcontaminantsと考えられることが多いが、複雑性尿路感染症においてはほぼ全ての尿培養菌を起因菌として検討する必要がある

 

 

  

単純性膀胱炎では画像検査(腹部単純X線、腹部エコー、CT、excretory urography)を行う必要はない。interventionを要する膀胱閉塞、尿路結石などの解剖学的異常を診断する場合には必要となる

 

 

 

近年のスタディでは救急外来において発熱を伴う尿路感染症患者に画像検査を行うかの判断のために、尿路結石の既往、尿pH 7.0以上、腎機能低下(GFR 40以下)からなる指標を使ったclinical prediction ruleが提示された。このruleに従えば臨床outcomeを失することなしに画像検査の数を40%減らすことが可能であるとされている(15)

 

 

 

尿路感染の治療はhost factor(性別、免疫機能、泌尿器科的異常、等)、重症度、多剤耐性菌リスクに基づいて行われる

 

 

 

抗菌薬を選択する場合、妊娠および授乳の有無、他の薬剤との相互作用、アレルギー、最近の抗菌薬使用、他の感染症の有無、旅行歴、過去の培養結果、等を考慮する必要がある

  

 

 

単純性膀胱炎治療として次の四つの抗菌薬がfirst-line therapyとして、また代替薬として二つの抗菌薬が推奨されている 

 

第一選択

 

nitrofurantoin

100mg 1日2回5日間

組織浸透性が低いため腎盂腎炎の可能性がある場合には使用できない。FDA pregnancy category B 

  

 

TMP-SMX (trimethoprim-sulfamethoxazole)

160/800mg (1 DS tablet) 1日2回3日間

耐性菌が増えているので使用の際には注意を要する。FDA pregnancy category C(妊婦での使用を避けるべき)

  

 

pivmecillinam

米国では現在使用できない。他の薬剤に比較して効果が劣るが耐性菌の頻度が低いためヨーロッパの特定の国では第一選択薬として人気がある

 

 

fosfomycin trometamol

3 gram 1回投与

米国での使用頻度は低い。他の薬剤に比較し効果は低い可能性がある。腎盂腎炎の可能性がある場合は使用できない。しかしsurveysではESBL産生グラム陰性桿菌などの多剤耐性菌に対するactivityを有していることが示された。FDA pregnancy category B 

 

 

代替薬

 

βラクタム剤 

投与量は薬剤に準じる。投与期間5~7日

一般的に効果は劣り、副作用の頻度も高いため代替薬として使用される

  

 

fluoroquinolone

ofloxacin, ciprofloxacin, levofloxacin

投与量は薬剤に準じる、投与期間3日間

効果は高いが重篤な副作用が利益を上回るため最後の選択薬としての位置付けに変更となった。他に抗菌薬が使用できない時にのみ使用することが推奨されている

 

 

 

 

男性での単純性尿路感染症における抗菌薬の最適投与期間に関するデータは限られている。Observational studyでは抗菌薬14日間投与グループは7日間投与グループに比べ利益が認められなかった上、Clostridium difficile感染の頻度が高かった(16)

 

 

 

腎盂腎炎はtissue-invasive diseaseなのでinitial empirical regimenは可能性の高い起因菌をカバーするに十分なほどbroadにする必要がある。また複雑性尿路感染(妊娠、尿路結石、尿路閉塞、等)を除外しなければならない。また、経口摂取が可能か、入院が必要か、fluoroquinolone耐性およびESBL産生菌の可能性があるか、等の評価をする必要がある(17)

 

 

 

腎盂腎炎において経口抗菌薬治療が可能な場合はciprofloxacin 7日間投与が推奨される(fluoroquinoloneのlocal resistance rateが10%を超えない場合)(17)。1日1回投与の長期作用型のciprofloxacinおよびlevofloxacinも投与可能であるが、dataは限られている(18)。TMP-SMXも起因菌感受性が陽性の場合は投与可能であるが10~14日の投与期間を必要とする。βラクタム剤は効果が劣るので推奨されない

 

 

 

腎盂腎炎の外来治療において起因菌感受性が不明の場合は経口薬を開始する前に静注薬初回投与(ceftriaxone 1gram、ertapenem 1gram、長期作用型aminoglycoside)が推奨される。ciprofloxacinとTMP-SMXを比較したスタディではceftriaxoneを静注投与されてからTMP-SMXを開始したグループにおいてoutcomeの向上が認められた

  

 

 

急性単純性腎盂腎炎治療経口抗菌薬

 

fluoroquinolone

ciprofloxacin 500mg 1日2回 5~7日間

ciprofloxacin XR 1000mg 1日1回 5~7日間

levofloxacin 750mg 1日1回 5~7日間

 

TMP-SMX 

160/800mg (1DS tablet) 1日2回 10~14日間投与

 

β lactams

投与量は各薬剤に準じる 10-14日間投与

効果が劣るため、他の薬剤が投与できない時のみ考慮する

  

 

 

 

入院において静注薬治療を行う場合は感受性が判明するまではbroad-spectrum agentを投与する必要がある。Pseudomonasあるいは多剤耐性菌のリスクがある重症患者ではcarbapenem(imipenem-cilastatin、ertapenem、meropenem、doripenem)の投与が必要となりうる

 

 

 

カテーテル関連尿路感染症での抗菌薬の推奨投与期間は抗菌薬に反応が良好な場合は7日間、反応が遅い場合は10~14日間である

 

 

 

カテーテル関連尿路感染においてカテーテル留置期間が2週間以上の場合は、抜去あるいは交換する必要がある(19)

 

 

 

 

 

 

 

UpToDate

 

単純性腎盂腎炎治療静注抗菌薬

local resistance rateに基づいてfluoroquinolone、aminoglycoside +/- amipicillin、extended-spectrum cephalosporin、extended-spectrum penicillin、carbapenemを開始する 

 

 

カテーテル関連尿路感染治療抗菌薬

重症でない場合

ceftriaxone 1gram iv 24時間毎 

cefotaxime 1gram iv 8時間毎 

ciprofloxacin 500mg 経口/ 400mg iv 1日2回

levofloxacin 250-500mg 経口/iv 24時間毎

 

重症の場合

ciprofloxacin 400mg iv 1日2回

ceftazidime 1gram iv 8時間毎 

cefepime 1gram iv 12時間毎

ESBLの可能性がある場合はcarbapenemを投与

尿グラム染色においてgram positive cocciを認める場合はvancomycin ivを追加

投与期間7~14日間 

 

  

複雑性腎盂腎炎治療静注抗菌薬(*)

軽症~中等症

ceftriaxone 1gram iv 24時間毎 

ciprofloxacin 400mg iv 12時間毎 

levofloxacin 750mg iv 24時間毎

aztreonam 1gram iv 8~12時間毎

 

重症

cefepime 2gram 12時間毎

piperacillin-tazobactam 3.375 gram iv 6時間毎

ceftolozane-tazobactam 1.5gram iv 8時間毎

ceftazidime-avibactam 2.5gram iv 8時間毎

meropenem 500mg iv 8時間毎

imipenem 500mg iv 6時間毎

doripenem 500mg iv 8時間毎

 

投与期間7~14日間

 

 

(*)複雑性尿路感染症に含まれるもの

・コントロール不良糖尿病

・妊娠

・院内感染 

・急性腎障害あるいは慢性腎臓病

・尿路閉塞あるいはその疑い

・尿道留置カテーテル、stent、nephrostomy tube、urinary diversion 

・機能的あるいは解剖学的尿路異常

・腎移植

・免疫不全

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

3 October 2017 Volume 167 Number 7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インフルエンザ

 

インフルエンザAはウイルス表面の2つの主な糖タンパクに基づいてサブタイプに分類される(H: hemagglutinin (16種類), N: neuraminidase (9種類), H1N1, H3N2が人でよく流行する)。遺伝子が比較的不安定で流行しやすい

 

 

 

インフルエンザBはAに比べ多様性が少なく亜型分類されない。流行株はB/victoriaとB/yamagataという二つのグループに大別することができる。それぞれの抗原の差異はAに比べて小さく、Bに対する免疫やワクチンはほぼ同一であるため、Bのいずれかに感染、あるいはワクチン接種をすればB全てに対してほぼ一定の効果を得られる

 

 

 

米国においてインフルエンザは12月から3月にかけてピークを迎えるが、地域によっては4月あるいは5月でも認められる。インフルエンザBは一般的にAに比べ遅いピークを迎えより長く流行する

 

  

 

感染による合併症や入院のリスクが高いのは、5歳以下の小児、65歳以上の高齢者、妊婦、施設入居者、慢性疾患既往、免疫不全患者、19歳以下でアスピリン長期服薬中、重度肥満者(BMI>40kg/m2)等である

 

 

 

年齢6ヶ月以上のすべての人が毎年ワクチン接種を行うことが推奨されている

  

 

 

近年のスタディではワクチンの効果がインフルエンザのシーズン中に弱まっていく事が示されている。よって夏にワクチン接種を行うのは早すぎる可能性がある。それ以降かつ10月の終わりまでに接種することが理想的である(1, 2, 3)

 

 

 

ワクチンの効果はシーズン毎に変わり、また年齢、基礎疾患、免疫機能、そしてワクチン株と流行するインフルエンザ抗原の一致の程度など、様々な要因の影響を受ける

 

   

 

ワクチンの効果はインフルエンザの型またインフルエンザAのサブタイプによっても変わる

(近年のsystematic review and meta-analysisではワクチンの有効率はインフルエンザA(H1N1)で61%、インフルエンザBで54%、インフルエンザA(H3N2)で33%であった。インフルエンザA(H3N2)でワクチン株がよく一致した場合は有効率33%、しかし抗原連続変異があった場合は23%であった)(4)

 

 

 

ワクチンはインフルエンザ感染による入院を防ぐことに中等度有効である(5, 6, 7, 8)

 

 

 

抗原の含有量を増やしたワクチンの方がより有効であるかもしれない

50歳以上の成人8500人以上で行われたrandomized controlled trial では各hemagglutinin抗原の含有量を3倍にしたrecombinantワクチンは通常量の抗原を含むワクチンに比べより有効であることが示された(9)。また各抗原の含有量を4倍にした不活化ワクチンは通常の抗原含有量の不活化ワクチンに比べnursing home居住高齢者の呼吸器疾患に関連する入院を減らすことが認められた(10)

 

  

 

現在米国では様々な種類のインフルエンザワクチンが利用可能である

各ワクチンは以下の組み合わせによって種類が異なる

 

・不活化・生・遺伝子組み替え

・ 鶏卵培養・哺乳類細胞培養

・通常量抗原含有・高量抗原含有 

・三価・四価(三価は2つのインフルエンザA抗原(H3N2とH1N1)および1つのB抗原を含み、四価は上記2つのA抗原と2つのB抗原(B/YamagataとB/Victoria)を含む)

 

1. inactivated, standard dose, egg-grown, trivalent

2. inactivated, standard dose, egg-grown, quadrivalent

3. inactivated, standard dose, cell culture-grown, quadrivalent

4. inactivated, standard dose, egg-grown, quadrivalent, intradermal

5. inactivated, high dose, egg-grown, trivalent

6. adjuvanted inactivated, standard dose, cell culture-grown, trivalent

7. recombinant, high dose, trivalent

8. recombinant, high dose, quadrivalent

9. live attenuated, egg-grown, quadrivalent, intranasal

(4は皮下注、9は経鼻投与、それ以外は筋注投与である)

 

  

 

経鼻投与可能な生ワクチンがFDAに承認されたが、効果が特にインフルエンザA(H1N1)に対して弱いことが確認されたためCDCは2016から2018年のシーズンに使用しないことを推奨している(1)

 

 

 

インフルエンザワクチンは妊婦に投与しても重大な妊娠あるいは胎児への合併症を認めなかった(11, 12, 13, 14, 15)

 

 

 

インフルエンザワクチンがギランバレー症候群発症のリスクを高めるかどうかははっきりしていない

(observational studiesのsystematic review and meta-analysisではインフルエンザワクチンとGBSがわずかに関連することが示された(16)。一般的には、以前にインフルエンザワクチン投与6週間以内にGBSを発症した人でインフルエンザ感染による合併症リスクの低い人はワクチン接種をしない事が推奨されている。インフルエンザ感染による合併症リスクの高い人の場合はGBSのわずかなリスクよりワクチン接種による利益が上回る。またインフルエンザ感染自体によるわずかなGBS発症のリスクも減らしうる(17, 18))

 

 

 

インフルエンザワクチンの多くは鶏卵培養で作られるが、ワクチンによる重度のアレルギー反応は、卵アレルギーの人でさえ稀である。卵のアレルギーによって蕁麻疹のみが出る人にもインフルエンザワクチンは投与できる。卵のアレルギーによって血管浮腫、呼吸困難、めまい、嘔吐を認める人、あるいはエピペンを必要としたり、アナフィラキシーによって緊急対応を要する人の場合でさえ入院あるいは外来にて医療従事者の監視のもと投与することが可能とされている(1)

  

 

 

正常免疫能で合併症を伴わないインフルエンザ感染の症状を発症した人はおよそ4~7日間上気道からウイルスを排出するとされているが、一般的には3日目以降劇的にウイルスの排出および伝染性は下がる

 

 

 

randomized clinical trials の systematic review and meta-analysisではフェイスマスクを伴う手洗いが家庭内でのウイルス伝染(laboratory-confirmed transmission)を減らす事が示された(手洗いのみでは認められなかった)(19)。他のreviewでは手洗いやフェイスマスクがウイルス伝染を減らす効果は認められなかったが、その多くのスタディに欠陥が指摘されている(20)

 

 

 

neuraminidase inhibitorであるオセルタミビルと吸入薬ザナミビルがインフルエンザ予防薬として承認されている。予防薬は施設でのoutbreakに重要な役割を果たす。オセルタミビルはインフルエンザ予防薬としてnursing homeにおけるoutbreakのコントロールに有効である事が確認されている(21, 22, 23)。nursing homeでoutbreakが起こった場合は全ての居住者に予防薬を投与する事が推奨されている。予防薬は少なくとも2週間、outbreakの期間から1週間は長く投与されるべきとされている

 

 

 

インフルエンザが流行している最中は臨床診断のため、あるいは治療薬を処方するか判断する目的のためにインフルエンザの診断テストを行う必要はない (24)。テストの結果が臨床マネージメントに影響する場合は考慮する

 

  

 

重篤な患者では上気道のみからサンプルを採取した場合、RNA検査でも偽陰性となる可能性がある。気管チューブからの吸引あるいは気管支洗浄液によるサンプル採取によってインフルエンザ診断が可能となる場合がある(25, 26)

 

  

 

インフルエンザテストのsensitivityは、大人より子供の方が、咽頭より鼻咽頭から採取した方が、そして発症から数日以内にテストした方が一般的には高いとされている

 

 

 

インフルエンザ診断テスト

Rapid diagnostic test

antigen detection,   10 min,    low-moderate sensitivity,  high specificity

Rapid molecular assay

viral RNA detection,   15-20 min,    moderate-high sensitivity,  high specificity

Molecular assay

viral RNA detection,    60-80 min,    high sensitivity,  high specificity

 

   

 

Rapid diagostic testはsensitivityが高くないため偽陰性がよく認められる。入院患者ではmolecular assayによる検査が推奨される(27) 

 

 

 

インフルエンザの合併症は多岐にわたる

(中耳炎、心筋炎、心内膜炎、痙攣、脳炎、急性壊死性脳症、急性散在性脳脊髄炎、ギランバレー症候群、筋炎、横紋筋融解など)

 

  

 

発熱が3~5日間以上続く、症状が悪化する場合等は細菌感染の合併による肺炎あるいは髄膜炎の可能性を考え、血液、培養、画像検査などを考慮する

 

   

 

アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱剤は水分喪失、また頻脈などによる代謝亢進を防ぎ、悪寒や筋痛などの症状を緩和する

(解熱剤治療が発症期間を長くしたり、または短くするという明らかなエビデンスは認められていない)

 

 

 

アスピリンあるいはアスピリンを含有する薬剤はインフルエンザあるいはその疑いの患者、特に小児および若年者ではReye syndrome のリスクがあるため避けるべきとされている(28, 29)

 

  

 

インフルエンザAおよびBに有効なneuraminidase inhibitors (経口オセルタミビル、吸入ザナミビル、静注ペラミビル)がインフルエンザの治療に推奨されている

 

オセルタミビル 

治療:75mg 経口1日2回5日間投与(重症患者ではより長い投与が必要となりうる)

予防投与:75mg1日1回(投与期間は暴露の期間に準ずる)

CDCによって入院患者の治療に推奨されている

腎機能低下では投与量の調整が必要となる

  

ザナミビル

治療:2吸入(10mg)1日2回5日間投与

予防投与:2吸入(10mg)1日1回(投与期間は暴露の期間に準ずる)

吸入ザナミビルはdataがないため入院患者治療には推奨されていない

  

ペラミビル

治療:600mgを15~30分かけて1回静注(1回投与がオセルタミビル5日間投与に匹敵する)

予防投与:適応なし

外来投与が推奨されている(入院患者治療の効果に関するdataは不十分である)

 

 

 

重症患者ではオセルタミビルを経口胃管あるいは経鼻胃管から投与する事が可能である

 

 

 

adamantane薬剤(アマンタジン、リマンタジン)はインフルエンザBに対する効果がなく、また現在流行しているインフルエンザ A(H1N1, H3N2)も抵抗性を示すためインフルエンザ治療に推奨されていない

 

 

 

CDCはインフルエンザ感染が確認された、あるいは疑いのあるすべての入院患者に対しneuraminidase inhibitorを検査結果を待たずにできるだけ早く投与開始することを推奨している

 

 

 

インフルンザで入院した患者のobservational dataでは抗ウイルス薬の投与開始が発症時に近いほど臨床効果が大きいことが示されたが、発症から48時間以降の投与でも投与しない場合に比べ利益がある事が示された(30)

 

  

 

外来ではインフルエンザが診断された、あるいはその疑いがあり、合併症リスクの高い患者では抗ウイルス薬治療が、たとえ発症から48時間以上経過していても、推奨される 

 

 

外来において発症から48時間以内に訪れた合併症リスクの高くないインフルエンザ、あるいはその疑いのある患者では抗ウイルス薬治療を行うかどうかは臨床判断に委ねられる

 

 

合併症を伴わないインフルエンザ患者の外来治療におけるrandomized clinical trialsでは発症48時間以内にneuraminidase inhibitor 治療を開始した場合、インフルエンザの発症期間をおよそ0.6~1日間短縮することが示された(31, 32)

 

 

 

成人外来患者におけるオセルタミビルとプラセボを比較したrandomized controlled trialsのmeta-analysisでは オセルタミビル投与が抗菌薬治療を要する下気道感染合併およびいかなる理由による入院のリスクを減らす事が示された(31)

 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

5 September 2017 Volume 167 Number 5