原因
炎症
cameron erosion
食道炎・食道潰瘍
炎症性腸疾患
消化性潰瘍
腫瘍
原発性消化管癌
消化管への転移癌
血管異常
血管拡張症
動脈腸管瘻
デュラフォイ病変
胃前庭部毛細血管拡張症
痔瘻
放射線直腸症・胃症・腸症
静脈瘤
薬剤性
アスピリン
NSAIDs
抗凝固剤
医原性
内視鏡的切除術
括約筋切開術後出血
transenteric stent placement
外科的吻合(marginal ulcer、吻合部潰瘍)
他
青色ゴムまり様母斑症候群
大腸・空回腸憩室症
マロリーワイス症候群
marginal ulcer(Roux-en-Y gastric bypassあるいは他の腸管吻合)
メッケル憩室
虚血性損傷
直腸孤立性潰瘍症候群
宿便性潰瘍
外傷
タール便は通常上部消化管出血に起因するが、小腸あるいは近位大腸出血でも見られる
欧州消化器内視鏡学会ガイドラインでは経鼻胃管吸引はタール便患者が上部消化管出血か下部消化管出血かの鑑別を適切に行えず、内視鏡治療を要するハイリスク病変の存在を予期できず、主な臨床アウトカムを改善するエビデンスが認められないため、ルーチンで行うことを推奨していない(1)
Risk Stratification Tools for Upper Gastrointestinal bleeding
Pre-endoscopic Rockall Score
risk categories: high (>5 points), intermediate (3-4 points), low (0-2 ponits)
mortality risk: 0 = very low risk (<1%), potential outpatient management; 1-3 = low risk (2-10%), 4-7 = high risk (20-50%)
年齢
>80歳 +2
60-79歳 +1
<60歳 0
ショックの有無
血圧低下(SBP<100mmHg) +2
頻脈(HR≧100/min、SBP≧100mmHg) +1
ショックなし(SBP>100mmHg、HR<100/min)0
併存症
腎不全、肝不全、播種性悪性疾患 +3
腎不全、肝不全、播種性悪性疾患以外の主要併存疾患 +2
主要併存疾患なし 0
Glasgow-Blathford Score
0-1: low risk and safety of outpatient care
BUN
18.2-22.3mg/dL +2
22.4-27.9mg/dL +3
28.0- 69.9mg/dL +4
≧70mg/dL +6
ヘモグロビン
12.0-12.9g/dL(男性), 10.0- 11.9g/dL(女性) +1
10.0-11.9g/dL(男性) +3
< 10.0g/dL +6
SBP
100-109mmHg +1
90-99mmHg +2
<90mmHg +3
HR≧100 +1
タール便 +1
失神 +2
肝疾患の既往 +2
心不全あり +2
Age, Blood Tests and Comorbidities (ABC) Score
mortality risk: ≦3=0.7%, 4-7=9.3%, ≧8=34%
年齢
60-74歳 +1
≧75歳 +2
血液検査
Urea > 10mmol/L +1
アルブミン < 30g/L +2
クレアチニン 100-150μmol/L +1
クレアチニン >150μmol/L +2
併存症
意識障害 +2
肝硬変 +2
ASA score
3 +1
≧4 +3
出血と死亡率を低下させるエビデンスは欠いているものの、視野不良による内視鏡の再施行を減らし、入院期間を短縮させる可能性があるために、2021年米国消化器病学会ガイドラインではエリスロマイシン(250mgを20-30分かけて内視鏡の20-90分前に投与)の静注を提唱している(2)
これはルーチンでの消化管運動促進剤の使用を控えるという2019年のinternational consensus groupの推奨と異なっている(3)
早期のintensive resuscitationは消化管出血による死亡率低下と関連するものの、依然controversialとなっている(4)。2019年のinternational consensus groupガイドラインでは早期のaggressive hydrationが出血悪化、凝固阻害、死亡率上昇との関連を示す動物実験のデータを引用している
2016年のAssociation for the Advancement of Blood & Biotherapiesのガイドラインでは血行動態の安定している患者に対し制限的な輸血療法(ヘモグロビン7g/dL以下に到達するまで待つ)を推奨している(5)
2021年米国消化器病学会ガイドラインでは非静脈瘤性消化管出血に対し制限的な輸血療法(ヘモグロビン7g/dL以下)を推奨している。ただし血圧低下を認める患者ではヘモグロビン7g/dL以下になる以前に開始することを、心血管疾患既往の患者ではヘモグロビン8g/dL以下で、急性冠症候群あるいは安定冠動脈疾患の患者で心臓カテーテルを行う患者ではヘモグロビン8g/dLあるいはそれ以上の値において輸血療法を行うことを推奨している(2)
2021年米国消化器病学会ガイドラインでは内視鏡的に治療される出血を認める消化性潰瘍および凝血塊の付着した消化性潰瘍(内視鏡的治療の有無にかかわらず)に対し、高用量PPI (≧80mg/d) を持続的に(80mg bolusに続いて8mg/hで持続静注)、あるいは間欠的(bolus)に3日間投与することを推奨しており、それによるさらなる出血および死亡率低下が複数のRCTによって確認されている(2)
内視鏡的リスク評価にて低リスクとされる患者は24時間以内に経口摂取が可能である。高リスクの場合は少なくとも内視鏡後72時間の入院が考慮されるべきである(3)
門脈圧亢進症に関連する慢性肝疾患の患者は消化管出血のリスクが高い
過度な輸液投与は門脈圧亢進を悪化させ、再出血はるいは治療抵抗性の出血につながる可能性があるため、その場合にはFluid resuscitationは加減される必要がある
静脈瘤出血をおこす肝硬変患者における凝固能障害および血小板減少のマネージメントに関するガイドラインあるいは確固たる推奨は存在しない
肝硬変患者においてはINRとプロトロンビン時間は凝固カスケードの状態を必ずしも反映しない。実際、INRの上昇している肝硬変患者では多くの場合過凝固状態にあり、多量の新鮮凍結血漿によってPT/INRを正常化させようとする事は避けるべきである
静脈瘤出血が疑われる場合は血管作用薬(オクトレオチド、ソマトスタチン、テルリプレシンなど)静注を開始し、出血が確認された場合は2〜5日間継続すべきである
オクトレチオドは初回50mcg投与、続いて50mcg/hで持続静注を行う
抗菌薬は消化管出血を認める全ての肝硬変患者に投与されるべきである
セフトリアキソンが第一選択として最大7日間投与が推奨される
経口摂取が再開され、地域での耐性が高くなければフルオロキノロンも投与可能である(6, 7)
血行動態が安定したら12時間以内に静脈瘤出血を内視鏡的に評価する必要がある(6, 7)
下部消化管出血患者の来院24時間以内の大腸内視鏡は出血原因診断の可能性を高めるが、再出血や死亡率を低下させるような臨床アウトカムを改善するという高い質のエビデンスは認められていない
消化管内視鏡ガイドラインでは、必ずしも12〜24時間以内でなく、入院中に大腸内視鏡検査(4〜6Lのポリエチレングリコールで前処置をした後に)を行うことを推奨している(8)
血行動態が不安定な下部消化管出血患者では造影剤なしおよび造影剤静注によるCTアンジオグラフィーがplanar RBC scintigraphyよりも有用である。後者は緊急では実用的でなく、感度が低く(50%以下)、出血部位の解剖学的位置同定が10〜33%の割合で正確でないとの問題が認められている(9)。CTアンジオグラフィーにて血管外漏出が認められ、内視鏡前処置が行われていない患者では緊急経カテーテル動脈塞栓術が行われるべきである
下部消化管出血では憩室出血がよく見られる。75%の患者では出血が自然に止まる。特に24時間で4単位以下の出血の場合はそうである(10)
1. Gralnek IM , Stanley AJ , Morris AJ , et al. Endoscopic diagnosis and management of nonvariceal upper gastrointestinal hemorrhage (NVUGIH): European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) guideline—update 2021. Endoscopy. 2021;53:300-32.
2. Laine L , Barkun AN , Saltzman JR , et al. ACG clinical guideline: upper gastrointestinal and ulcer bleeding. Am J Gastroenterol. 2021;116:899-917.
3. Barkun AN , Almadi M , Kuipers EJ , et al. Management of nonvariceal upper gastrointestinal bleeding: guideline recommendations from the International Consensus Group. Ann Intern Med. 2019;171:805-22.
4. Baradarian R , Ramdhaney S , Chapalamadugu R , et al. Early intensive resuscitation of patients with upper gastrointestinal bleeding decreases mortality. Am J Gastroenterol. 2004;99:619-22.
5. Carson JL , Guyatt G , Heddle NM , et al. Clinical practice guidelines from the AABB: red blood cell transfusion thresholds and storage. JAMA. 2016;316:2025-35.
6. Garcia-Tsao G , Abraldes JG , Berzigotti A , et al. Portal hypertensive bleeding in cirrhosis: risk stratification, diagnosis, and management: 2016 practice guidance by the American Association for the Study of Liver Diseases. Hepatology. 2017;65:310-35.
7. European Association for the Study of the Liver. EASL Clinical Practice Guidelines for the management of patients with decompensated cirrhosis. J Hepatol. 2018;69:406-60.
8. Triantafyllou K , Gkolfakis P , Gralnek IM , et al. Diagnosis and management of acute lower gastrointestinal bleeding: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) guideline. Endoscopy. 2021;53:850-68.
9. Karuppasamy K , Kapoor BS , Fidelman N , et al; Expert Panel on Interventional Radiology. ACR Appropriateness Criteria®. Radiologic management of lower gastrointestinal tract bleeding: 2021 update. J Am Coll Radiol. 2021;18:S139-S152.
10. Zuccaro G Jr. Management of the adult patient with acute lower gastrointestinal bleeding. American College of Gastroenterology. Practice Parameters Committee. Am J Gastroenterol. 1998;93:1202-8.
インザクリニック
アナルズオブインターナルメディシン
2022年2月