レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

市中肺炎

 

肺炎球菌ワクチンは肺炎球菌感染リスクのある全ての人に推奨される。リスクのない人は65歳の時点で接種すべきである

 

示唆する病歴と身体所見がある場合は胸部レントゲンで浸潤影が認められない時でも肺炎の可能性がある。その場合はCTスキャンが有用であるかもしれない

 

血液培養はルーティンでは採取すべきでない。重症肺炎で多剤耐性菌あるいは通常でない病原体感染が疑われる場合には治療開始前に血液培養2セット採取されるべきである

 

 

後ろ向きスタディでは抗菌薬が必要でない患者を信頼をもって同定するにはその感度が低すぎたため、プロカルシトニンをその目的で使用することが推奨されていない。代わりに入院患者で初期にプロカルシトニンが上昇していた場合は、連続での測定が抗菌薬をいつ中止すべきかの判断に役立つかもしれない(1)

 

 

多くの市中肺炎は48〜72時間以内にエンピリックの抗菌薬投与に反応を示す(2)。この期間に反応を示さない場合は耐性菌、ウイルス、結核菌のような通常でない病原体、あるいは真菌(histoplasmosis, coccidioidomycosis, blastomycosis)などの可能性を考慮すべきである。また閉塞性細気管支炎、肺血管炎、過敏性肺炎、肺癌、癌性リンパ管炎、気管支肺胞細胞癌、リンパ腫、心不全などの非感染性疾患も考慮すべきである

 

 

耐性菌のリスクファクターがない一般病棟入院患者では静注あるいは経口キノロン(レボフロキサシン750mg/d、あるいはモキシフロキサシン400mg/d)、あるいはベータラクタム(セフォタキシム、セフトリアキソン、アンピシリンスルバクタム、高量アンピシリン)とマクロライドあるいはドキシサイクリンの併用投与が推奨される(3)

 

 

過去に耐性菌を認めた患者ではその菌に対する治療を行うべきである。MRSAが疑われる場合はバンコマイシンあるいはリネゾリドが選択されるが、鼻腔PCRが陰性であった場合は中止してもよいかもしれない。グラム陰性菌の場合はピペラシリンタゾバクタム、セフィピーム、セフタジディム、イミペネム、メロぺネム、アズトレナムが選択される。48時間の時点で培養が陰性であり、臨床的に安定している場合は抗菌薬をデエスカレートしてもよいかもしれない。培養陰性であった場合のデエスカレーションに関するRCTはないが観察研究では強いエビデンスが示されている

 

 

ICU入院患者では少なくとも抗菌薬2剤以上の投与によるエンピリック治療が行われるべきである。緑膿菌のリスクファクターが評価されるべきであり、リスクファクターのない場合はセフトリアキソンあるいはセフォタキシム静注とアジスロマイシンあるいは呼吸器キノロンによる併用治療が行われるべきである。リスクファクターがある場合は抗緑膿菌ベータラクタム(セフィピーム、ピペラシリンタゾバクタム、イミペネム、メロぺネム)と静注抗緑膿菌キノロン(シプロフロキサシンあるいは高量レボフロキサシン)が選択される。

 

 

 

 

1. Upadhyay S, Niederman MS. Biomarkers: what is their benefit in the identification of infection, severity assessment, and management of community-acquired pneumonia. Infect Dis Clin North Am. 2013;27:19-31. 

 

2. Vaughn VM, Flanders SA, Snyder A, et al. Excess antibiotic treatment duration and adverse events in patients hospitalized with pneumonia: a multihospital cohort study. Ann Intern Med. 2019;171:153-63

 

3. Metlay JP, Waterer GW, Long AC, et al. Diagnosis and treatment of adults with community-acquired pneumonia. An official clinical practice guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America. Am J Respir Crit Care Med. 2019;200:e45-e67.

 

 

 

 

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2022年4月