ICUノート
尿路感染症による敗血症性ショックでICUに入院した 歳 性
入院4日目、ICU 4日目、挿管 4日目
<経過>
1日目:発熱、意識障害にてnursing homeより搬送、尿路感染による敗血症の診断のもと救外にて挿管・人工呼吸管理開始、広域抗生剤投与開始、生食5L初期投与、ノルエピネフリン開始、ICU入院、乳酸値入院6時間後6.1mmol/Lをピークに減少
2日目:呼吸器・カテコラミンweaning、心房細動出現、cardioversion 失敗にてアミオダロン持続静注開始、血培陽性判明
3日目:洞調律復帰、アミオダロン静注終了、カテコラミン離脱、自発呼吸トライアル失敗、尿・血培ともにE.coliと判明し、抗生剤をde-escalation
ASSESSMENT AND PLAN
<神経>
Baseline:軽度認知症、見当識障害なし、脳梗塞既往なし
ミダゾラム・フェンタニルにて鎮静・疼痛管理中 (夜間臨時投与なし)
呼吸数 18 ( > rate of MV setting)
神経所見:呼びかけにて開眼、疼痛を否定、指示に従う、四肢運動あり
①挿管・鎮静中
- フェンタニル25mcg IV疼痛時・呼吸促迫時・2時間毎
- ミダゾラム持続中止、1mg IV不穏時・2時間毎に変更
- オリエンテーション・病状説明、一日一回
- 神経所見チェック一日一回
<循環>
Baseline:高血圧、心筋梗塞(BMS留置2002年)、うっ血性心不全
心エコー(2014年)EF 40%、軽度拡張能不全、弁膜症なし、左房拡大なし
外来内服薬:アスピリン 81mg, リシノプリル5mg、メトプロロール100mg、フロセミド20mg、アトロバスタチン20mg
①敗血症性ショック
生食5L初期投与、ノルエピネフリン開始、乳酸値1日目をpeakに改善、2日目心房細動発症にてフェニルフェリンに変更、3日目にカテコラミン離脱
BP 110-120/70-80 (カテコラミンoff), HR 80-90 (SR), 尿量0.5-1ml/kg/h, CVP 14
- 循環動態モニター継続
- 抜管・ABG評価後にA-line抜去
②心房細動
敗血症・カテコラミン投与に際して新規発症(入院2日目)、HR 160に上昇、SBP 80台に低下、cardioversion 失敗し、アミオダロン持続静注開始、開始8時間後に洞調律復帰、アミオダロン静注24時間後終了(3日目)、TSH正常、CHA2DS2-VASc score 3点
- メトプロロール12.5mg 6時間毎胃管投与開始
- 心房細動再発・心拍数120以上の時メトプロロール5mg IV(SBP 100以下の時中止)
- 心エコー評価
- 電解質適宜補正
- 心電図モニター
- アスピリン継続、抗凝固療法は開始せず経過観察
③トロポニン軽度上昇
0.05 -> 0.07 -> 0.05、心電図:V4~6でST depression (1mm)ー>改善
原因:敗血症性心筋障害+demand ischemia
胸痛なし
- アスピリン継続
- βブロッカー内服再開
- 心エコー評価
④鬱血性心不全
IN/OUT:positive 6L total, CVP 14、背部・下肢浮腫あり、CXR軽度鬱血所見
- 生食中止
- フロセミド20mg IV 一回、血圧維持すれば午後に再度投与
- IN/OUTフォロー
- βブロッカー再開
- ACEIは中断継続
<呼吸>
Baseline:既往なし、喫煙歴なし、挿管困難なし
呼吸数18/min、呼吸音:wheezingなし
呼吸器設定: Assist control / VC: FIO2 40% / TV 400 / f 14 / PEEP 5
MV 7L/min, compliance 45
CXR:気管チューブ・胃管・CVカテーテル位置okay、気胸なし、右下肺に無気肺、新たな陰影なし
ABG (FIO2 40%, PEEP 5, TV 400, f 14, MV 7L) pH 7.41 pCO2 38 pO2 125 HCO3 22 SaO2 99%
①挿管・人工呼吸管理(4日目)
呼吸促迫・意識レベル低下にて1日目に挿管、2日目よりweaning開始
3日目自発呼吸 trial、呼吸数上昇し中断(f/VT 125 f/L)
血行動態安定、発熱なし、従命okay、喀痰量中等度、3時間毎吸引、咳嗽反射良好
- 午前中に自発呼吸 trial (PS 7, PEEP 5, FIO2 40)
- 持続鎮静剤中止
- 利尿剤投与にて鬱血改善を図る
- 電解質適宜補正
- 状態を見て午後に抜管トライ
<消化器>
Baseline:消化性潰瘍の既往、H.pylori 除菌後
入院以来排便なし
①肝酵素上昇
入院時AST/ALT 320/410, T-bil 1.4、腹部CT:肝・胆嚢・胆管に異常認めず
補液・病態改善にて減少、AST/ALT 150/182, T-bil 1.0, 凝固異常なし
原因:敗血症・虚血肝
- 経過観察
- 絶食、呼吸器 weaning 困難であれば経腸栄養開始
- 排便コントロール適宜
- PPI予防投与
<腎臓・泌尿器>
Baseline:既往歴なし、Baseline Cre 0.9
BUN 25 Cre 1.2 HCO3 22 Na 150 Cl 110 K 4.5 Ca 8.2 Mg 1.9 Phos 2.4
尿量 0.5-1.0ml/kg/hr
①急性腎障害
入院時:Cre 1.9、尿浸透圧 550、FeUN 23%
補液・血圧維持にて腎機能改善傾向、尿量維持
原因:敗血症に伴う腎前性腎障害
- 腎毒性薬剤を避ける
- ACEI中断継続
- 腎機能・重炭酸値フォロー (利尿剤投与開始)
②高ナトリウム血症
原因:輸液によるナトリウム負荷
- 生食中止
- free water 250cc × 4回/day 胃管投与開始
- ナトリウム値18時に再検
<感染症>
Baseline:nursing home 在住、留置尿道・膀胱カテーテルなし、過去の培養結果なし
[入院時] BP 83/45 (MAP 58) SpO2 92%(RA) (Pa/F: 309 (65/0.21)), GCS 13, WBC 15000, PLT 22万, T-bil 1.4, Cre1.9, 乳酸値 4.5mmol/L, 尿所見:pH 7.0, WBC>180, nitrate positive、入院時腹部CT上、右腎周囲脂肪織濃度上昇、尿路閉塞所見認めず、急速補液開始、各種培養採取後ピペラシリンタゾバクタム、バンコマイシン静注開始、2日目に尿・血液培養ともにGNR検出、フォローアップ血培2セット採取、バンコマイシン中止、3日目にカテコラミン離脱、血培・尿培よりpan-sensitive E.coli検出、抗生剤セファゾリンに変更
[現在] 抗生剤投与4日目、Tmax 37.2 WBC 7000, フォローアップ血培no growth so far
①敗血症性ショック・尿路感染症
- セファゾリン1 gram IV 8時間毎、経過を診て経口に変更、抗生剤投与期間10日
- 抜管トライ、不要カテーテル適宜抜去
<内分泌>
Baseline:2型糖尿病 (副腎不全・ステロイド治療なし)
内服薬:メトフォルミン500mg 1日2回、インスリンなし
血糖値 120-200で推移、TSH正常範囲
カテコラミン投与にて血行動態維持できステロイド投与せず
①2型糖尿病
- メトフォルミン中断継続
- インスリンsliding scale
- 血糖測定6時間毎
- 低血糖プロトコール
- 目標血糖150-180
<血液>
Baseline:既往なし
入院時Hb 14.4から11.3 (2日目)に減少、直腸診による便潜血陰性、その後Hb低下なし
原因:輸液による希釈
Hb 12.2 Hct 33 PLT 15万 INR 1.3
- CBCフォロー
- PPI予防投与
栄養:呼吸器離脱できれば明日より経口摂取開始、離脱困難であれば本日より経腸栄養開始
電解質:適宜補正
輸液:生食中止ー>free water 250cc x4回/day 開始
予防
深部静脈血栓症:ヘパリン5000単位 1日2回皮下注
消化性潰瘍:パントプラゾール40mg IV1日1回
VAP:ヘッドアップ30度、口腔ケア
カテーテル
A-line:右橈骨(4日目)
トリプルルーメンカテーテル右内頸(4日目)
末梢静脈左上腕(2日目)
尿道留置カテーテル(4日目)
経口胃管(4日目)
挿管チューブ(7.5mm, 21cm口角固定、4日目)
Full code
Disposition
- 本日抜管できれば明日一般病棟へ転棟
- 理学療法士による機能評価、必要あれば短期リハビリ入所
- 必要あれば嚥下機能評価、食事形態を調整