レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

入院時ノート 22 心房細動

<現病歴>

動悸の自覚(-/+)   いつから    

胸痛(-/+)呼吸困難感(-/+)労作時倦怠感(-/+)立ちくらみ(-/+)発熱(-/+)recent immobilization(-/+)食思不振(-/+)下痢(-/+)

<既往歴>

心房細動(-/+)脳梗塞 (-/+)  甲状腺疾患 (-/+) 糖尿(-/+)  高血圧(-/+)心不全(-/+) 消化管出血 (-/+)  転倒 (-/+) PE/DVT(-/+)COPD/Asthma(-/+)虚血性心疾患(-/+)PAD(-/+)

心エコー(  年 月)LVEF         LA径   弁膜症:

<社会歴> アルコール      タバコ      ドラッグ

daily activity level

<家族歴>

<身体所見>

T             P             BP            RR          SpO2 

意識

頸静脈        cm above sternal notch

心音      呼吸音      腹部

神経

四肢 下腿浮腫

<救外経過>

WBC   Hb     PLT    INR    Na    K    Cl    HCO3    BUN     Cre    Glu    Alb  AST    ALT   ALP    T-bil   troponin       (pro-BNP)

尿一般沈渣:

(urine drug screen)

ECG(AF時)

(ECG (洞調律復帰後):  pre-excited QRS complex(+/-)                   )

(以前のECG:  rhythm                                                                                    )

胸部x-ray

投与薬剤:

治療後:血圧     脈拍     rhythm 

 

<ASSESSMENT>

Atrial fibrillation with RVR

chronic/paroxysmal/newly diagnosed

発症推定期間

誘因

underlying cardiac disease:      LVEF      %

CHA2Ds2-VASc score        /        if HF (+)

外来抗凝固療法(-/+:      )   腎不全(-/+)  出血・転倒リスク(-/+)

symptom: asymptomatic / mild - moderate /  severe

cardioversion 歴 

 

<PLAN>

一般病棟/ICUに入院

評価

循環器内科コンサルト

24時間心電図モニター

翌朝ECG

経胸壁心エコー

(経食道心エコー)

(chest CT angiography)

救外血液検査にMg, Phos, TSHを追加

Check INR

(cycle troponin 6時間毎)

(各長期抗凝固療法に関する長所・短所を提示し patientの希望を確認)

(長期抗凝固療法に関する外来主治医の意向を確認) 

 

治療

treat precipitating condition (ABX, IV fluid, diuresis, steroid・・・)

rate control

target HR < 80 (symptomatic) / 110 (asymptomatic with prEF)

-BB:metoprolol 5mg iv as needed, metoprolol 25mg 経口6時間毎で開始

-CCB:diltiazem 10mg iv as needed, diltiazem 30mg 経口6時間毎で開始(prEF, reactive airway disease)

-digoxin:0.5mg iv→0.25mg iv (6時間後)→0.25mg iv(6時間後)→0.125 - 0.25mg 経口1日1回(additive to or not tolerate other meds, HFrEF)

-amiodarone  300mg iv over 1h, then 10-50mg/h over 24h(other meds ineffective or cannot be given)

rhythm control

(consider cardioversion: symptomatic new onset AF and 80歳以下)

anticoagulation

外来抗凝固療法継続 /新規開始(脳梗塞のリスクに基づいて)

 (ACEI / ARB開始: 高血圧の時)

  

輸液:     cc/hr

電解質: 適宜補正

栄養:   絶食 (from midnight, 経食道心エコー施行の可能性ある時)

予防

深部静脈血栓: 外来抗凝固療法継続/heparin 5000U sc q8h/

消化性潰瘍: なし/pantoprazole 40mg 経口 1日1回

precaution  転倒/誤嚥

Disposition

(ワーファリンクリニック予約)

(social workerに外来抗凝固療法剤の患者負担分の算出依頼)

外来主治医受診退院1-2週間以内

(elective cardioversion after 3 weeks of anticoagulation Tx)

急変時:  Full code

  

(薬剤選択・投与量: 米国一施設基準)

 

入院時ノート 21 オピオイド離脱

<現病歴>

 オピオイド:

種類   常用量・投与経路   使用期間    最後に使用した日時

antagonist 投与(-/+)

他のドラッグ併用(-/+:      )

鼻汁(-/+)流涙(-/+)嘔気(-/+)嘔吐(-/+)下痢(-/+)腹痛(-/+)筋肉痛(-/+)発熱(-/+)四肢発赤腫脹(-/+)

 <既往歴>

 肝炎血液検査歴         HIV検査歴

 <内服薬>

 methadone(-/+:     mg) buprenorphine(-/+)

 <社会歴> アルコール      タバコ      

 ドラッグ:種類   投与量   投与経路     使用期間

 更生施設使用歴:

 サポート

 <家族歴>

 <身体所見>

 T             P             BP            RR          SpO2 

 意識

 心音:雑音(-/+)    呼吸音      腹部  蠕動音

 神経  瞳孔

 depressed mood(-/+)

 四肢

 皮膚  発赤(-/+)

 <救外経過>

 WBC   Hb     PLT    INR    Na    K    Cl    HCO3    BUN     Cre    Glu    Alb  AST    ALT   ALP   T-bil   ETOH

尿一般沈渣:

drug screen

ECG: QTc       msec

胸部x-ray

 

<ASSESSMENT>

 オピオイド離脱

 種類   使用量・投与経路   使用期間    最後に使用した日時

 antagonist 投与(+/-)

  

<PLAN>

一般病棟

評価

vital check  時間毎

(HBs-Ag/Ab, HCV-Ab, HIV-Ab)

(blood culture / echocardiography:sepsisを疑う時)

(depression / suicidal ideation)

(精神科コンサルト:for possible co-occuring psychiatric disease)

(CIWA protocol: alcohol abuse の時)

 

治療

opioid agonist therapy

(methadone 20mg 経口1日1回:methadone 内服中の場合)

non-opioid adjunctive therapy 

clonidine protocol

chlordiazepoxide 25-50mg 経口 (agitation の時)

promethazine 25-50mg im (嘔気・嘔吐時)

loperamide 4mg 経口 (下痢の時)

acetaminophen 650mg / ibuprofen 800mg 経口 (疼痛時)

baclofen 5-10mg 経口 (muscle crampの時)

 

輸液:     cc/hr

電解質: 適宜補正

栄養:    食

予防

深部静脈血栓: ヘパリン 5000単位皮下注1日2回 / 間歇的空気圧迫機

消化性潰瘍: なし/pantoprazole 40mg 経口 1日1回

precaution: 誤嚥/痙攣/転倒 

Disposition

social workerコンサルト(更生施設set up)

急変時:  Full code

 

(薬剤選択・投与量: 米国一施設基準)

 

補足

clonidine protocol

0.1mg po as test dose, repeat dose one hour after

taper

0.2mg po every 6 hours for 24 hours

then 0.1mg po every 6 horus for 48 hours

then 0.1mg po every 12 hours for 24 hours 

then 0.1mg po at bedtime for one night, then discontinue 

入院時ノート ⑳ 喘息急性増悪

<現病歴> 

咳(-/+)痰(-/+:   )熱(-/+)胸痛(-/+)sick contact(-/+)

増悪因子(-/+)

喘息治療薬服薬状況:

<既往歴>

アトピー性皮膚炎(-/+) GERD(-/+) アレルギー性鼻炎(-/+) 鼻茸(-/+)アナフィラキシー(-/+)糖尿病(-/+)

喘息

PFT(  年 月) 

ピークフロー (personal best)                         入院歴(-/+)  挿管歴(-/+)

治療薬:

<アレルギー>アスピリン/NSAIDs(-/+) 

<社会歴> アルコール      ドラッグ

タバコ        pack-year      受動喫煙(-/+)

ペット(-/+)   環境変化 (寝具、引越、転職、)(-/+)

<家族歴>

<身体所見> 

T             P             BP            RR          SpO2  

意識

心音      

呼吸音      

腹部

神経

<救外経過>

血液検査:WBC   Hb     PLT    Na    K    Cl    HCO3    BUN     Cre    Glu      

(ABG)

胸部x-ray

治療:albuterol / ipratropium neb ×             steroid:  

 

<ASSESSMENT>

喘息急性増悪

誘因:

状態(初期治療後):呼吸数  /min,   脈拍   /min

外観:in no / mild / moderate / severe respiraotry distress 

 

<PLAN>

一般病棟/ICUに入院

評価

ピークフロー 1日1回

救外血液検査にMgを追加

(Finger stick glucose check 1日4回)

(インフルエンザA/B迅速検査)

インフルエンザ・肺炎球菌ワクチンプロトコール

治療

Supplemental Oxygen to keep SpO2 > 92% as needed

メチルプレドニゾロン 40-60mg IV 6 / 8 / 12 時間毎

or

プレドニゾン 60mg 経口1日1回

(Budesonide 0.25-0.5mg ネブライザー12時間毎/外来吸入ステロイド継続)

Albuterol 2.5mg / (ipratropium 0.5mg)  ネブライザー1日4回

Albuterol 2.5mg ネブライザー 2時間毎必要時

(Magnesium sulfate 2gram IV over 20min)

(外来喘息治療薬継続)

(Insulin sliding scale)

 

輸液: keep IV access /     cc/hr

電解質: 適宜補正

栄養:    食

予防

深部静脈血栓: ヘパリン 5000単位皮下注1日2回 / 間歇的空気圧迫機

消化性潰瘍: なし/pantoprazole 40mg 経口 1日1回

precaution 転倒

Disposition

プレドニゾン内服を退院後漸次減量(taper by 10mg every 1 / 2 / 3 days)

外来主治医フォロー1週間以内

アレルギー専門医外来紹介

急変時:  Full code 

 

(薬剤選択・投与量: 米国一施設基準) 

 

補足

ステロイド全身投与期間

呼吸機能がbaselineに戻るまで投与(重症発作でも一般的には10-14日で戻る)

21日以内の投与であればステロイド漸次減量は要せず

(steroid has traditionally been tapered off over one to two weeks after discharge in my hospital)

  

オリジナルマニュアル(補足)

もし iphoneに情報を入れていく場合は、パソコンに入れてからiphoneと同期して情報を移すのでなく、iphoneの画面を確認しながら直接打ち込んでいった方が良いと感じる。画面の大きさの違いから、パソコンに入れた時の見え方と iphoneの画面での見え方が改行なども含めて大きく異なるので、それをいちいち編集し直す手間が増えるからだ

 

その際自分は iphone用折り畳み式キーボードを使用している。持ち運びが容易で出先でちょっと勉強する時なんかにもわざわざパソコンを持ち運ぶ必要がなくて便利である。それにこれをカフェで使っていると一見できる人に見える可能性も無きにしも非ずであるからである(ホンマかよ)

 

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他に意識している事は

 

・慌てない事

どこまで行ってもゴールはないので続ける事が重要になる。だから気長にやるようにしている。今回は治療に関して、次回診た時は診断基準、などのように一回一つずつ入れていくくらいでも良い気がする

 

・並べる順序

疾患に関する情報は一般的には疫学、病態生理、症候、検査、診断基準、治療、予後などのように並ぶ事が多いだろうが、すぐ欲しい情報を最初に持ってくるにしている。よって検査オーダー、診断基準や治療を前に配置する事が多い

 

・情報源

もし特別な好みがないのであれば、情報源はやはりUpToDateが無難かと思う。たいがいの事がカバーされているからだ。そうなるとやはり打ち込む言語も英語の方が良い気がする。慣れないと最初は大変かもしれないが、一旦慣れてしまえば結局はその方が楽になると感じる

 

・深み

マニュアルを使う事はいわば反射のようなものである。そればっかりだと奥行が出てきにくい気がする。ではどうすれば良いかという問いに明確な答えを持っていないが、例えば主要なスタディなども徐々に読んでいき、それもマニュアルに付け足していく。カンファレンス中などにそれをチラッと盗み見した後で「~年の~スタディでは有意差は出なかったものの、サブグループアナリシスでは~だったので、その選択もありかもしれません」なんて発言すると 「コイツは一体?!」なんて一目置かれる事も起こるかもしれない。他には疾患に対する症状や身体所見の感度・特異度なんかも入れていく事で後輩に話をするネタにはなりやすい気がする。まあそんな事もしながら、それらの情報を元に診療しつつも結局は症例をしっかり振り返って反省していく事で医師としての深みが出てくるのではないかと自戒の念もこめて想像している

 

研修医は反射神経をつけろ

これは自分が研修医の時に先輩から言われた言葉だ

 

頭を使う事はもちろん大切だが、医師として(特に若手の頃は)ファンクションするためには考えなくても勝手に体が動くような迅速さも必要だ

という事を意図していたと理解している

 

既に卒後年数がすぐに出てこないくらい時間が経ってしまったが自分は未だ研修医をしている。だから今もこの教えに向き合っている

 

例えば夜勤中に10人の患者を入院させるような場合

細部にわたる問診を取り、隅々まで身体診察を行い、鮮やかな鑑別を挙げ、治療方針を決め、ノートを書き、華麗に指示を出す

 

もちろんこれを全員にできたら素晴らしいだろうが、自分の場合は仮に最初の数人でこれを目指しても、残りの対応が悲惨な事になってしまうのは目に見えている

 

だから如何に時間内に全員を及第点に持っていくかをゴールにし、もし抜けた部分があれば後から補えばいい、そのくらいの気持ちで診療を行っている事が多い

実際問題タイムマネージメントも大切だという話だが、その対策のためいろいろな試みを行っている

 

各疾患ごとの入院時ノートやオーダーセットのフォーマットを作っておく事もその一環だ

それ以外に力を入れている事がある

 

オリジナルマニュアルを作成する事だ

 

“こういう時はこう対応する” といった事を記したものだ

 

よく出版されている〇〇マニュアルみたいなものを自分で一から作るのだ

それを持ち運ぶ事によって現場で大幅に時間をセーブする事ができると感じている

 

そのマニュアルを小さめのノートに書き記して持ち運んでもいいだろうが、携帯性や増えていく情報量から考えても、やはりスマートフォンに電子情報として入れる事が最適だろうと考える

 

自分の場合はiphoneのメモ機能を使っている

 

使用する薬の投与量などの情報をスマートフォンに入れて使うことはよくあるだろうが、それを診療で出くわすあらゆる疑問に対して行う、それくらいの勢いで作成していく

 

例えば

・喘息発作の初期治療は?その投薬量は?

・治療抵抗性喘息の鑑別は?その検査項目は?

・anti-IgE therapy の適応は?

・喘息大発作時の挿管後の人工呼吸器設定 (flow, TV, I:E, PEEP, goal plateau pressure) は?

 

などというように同じ疾患でも診る度に出てくる新たな疑問をその都度調べて付け足していく

その疑問に対する答えの情報源は、自分の場合ほとんどUpToDateあるいはガイドラインなどからである

 

この作業を始めてから五年近く経つだろうか。やる気や忙しさの兼ね合いで休んだり再開したりを繰り返しながら細々と続けてきたが、トピックを記したメモの数は現在700程度になっている(他のスマートフォンは分からないが、iphoneのメモ機能の良いところは入れられる数に制限がない(らしい)事である)。

  

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このマニュアル作成は地道で時間がかかり、速効性が必ずしも高くないので当初の目的に必ずしも合わないように感じられるが、それでも多くの利点があると考えている

 

 

・スピード・利便性

作成開始後しばらくは感じられないかもしれないが、ある程度入れてトピックが一巡すれば診療の効率を大幅に改善すると感じられる。調べたい言葉を入れ検索にかけると、すぐにそのメモの書いている部分に辿り着く事ができる。スマートフォンは常に携帯する事が多いので、肝心な時に手元にない、一旦医局に戻って調べてくる、なんて事が少なくなる。UpToDateなどを契約して端末で常に見られるようにしておくのも一つの方法だが、ひとたびネットの繋がらない環境(当直先など)に行けば途端にパフォーマンスが悪くなる事も起こり得る。それにそのUpToDateだが、もともと纏められたものとはいえ、急いでいる時にパッと読んで探している答えを見つける事、それを目の前の患者に適応していいのかの答えを探す事は、個人の能力にも関係するのだろうが、自分の場合はなかなか難しいと感じている。昔UpToDateをそのままコピペしてメモに入れた事があったが恐ろしいくらい機能しなかった。自分で読んでさらに纏めておく事で必要な情報をすぐに取り出せるようになる

 

・編集可能

自分が研修医になりたての頃は書籍のポケットマニュアルを購入して使った経験がある。速効性としてはかなり有用なものだったと感じる。しかし医療の進歩は速く、ついこの間までコンセンサスを得ていた事が実は正しくなかった、新しい治療薬が主流になる、なんて事もある。その変更をその都度書き足していってもいいが、段々見づらくなるし、書き込める量に限度もある。そして何よりもベテランの域に近づいてくるとマニュアル本を若者の前で開く事に少し躊躇いもでてくる事が予想される

あるいは書籍でなく電子版として有名なマニュアルをアプリとして利用できるものもあるが、かゆい所に手が届かない感じで必ずしも知りたい事が載っていない事も多々ある。複数の電子版マニュアルを入れて使う事もあるだろうが、結局どこにどの情報が入っていたかを探す事に手間がかかり本末転倒になる事もある。その点自作のマニュアルだと一本化でき、ピンポイントで自分に必要な情報を付け足していく事ができる。使いやすくするために記載の順序を変えたり、不必要に情報が多すぎる時は削って見やすくする事も自在である。使えば使うほど自分仕様に洗練させていく事が可能だ

 

・情報整理

時間短縮のため見てすぐ情報に辿り着く事が主な目的であるが、せっかく勉強したからといってすべてを盛り込もうとすると情報量が増えすぎて反ってその機能に支障をきたしうる。よって入れる情報は必要最低限、かつ後から読んでも根拠を理解できる量にする事が望ましい。そのためresourceのガイドラインなどを読む時もどこが抽出すべきポイントかという意識を持って読め、その情報をまとめる作業自体が記憶の定着に繋がりやすくなる。そのように自作マニュアルは作成する時点で知識が身に付きやすくなるが、既成のものは使っていく間に自分のものになっていくので、ある程度時間がかかるし、そうなった時点で既に古くなっている可能性も出てくる

 

・情報保持

文献やresourceを読んでもその内容を自分は読んだ端から凄まじい勢いで忘れていく事ができる。「だからもう読んでも仕方ないんじゃないか」なんて言い訳をして文献を読むモチベーションを上げる事が難しく感じられた。仮に繰り返し読んで一時的に記憶に残ったとしても、10年後、20年後には継続的アルコール摂取の影響や無症候性脳梗塞などで全て忘却の彼方に消え去っている可能性が高い。よってより信頼のおける媒体に情報を残しておく事は有効な手段だと感じる。以前は学んだ事をノートに書き留めたり、パソコンにまとめようとした事もあったが、その時は多少やった気になっても、情報が分散する事もあって、結局後から見返す事はほぼ皆無で診療に直接役立つ事は少なかった。「だから勉強したって仕方ないやん」という言い訳がここでも出てきてサボる口実にしていた。それを携帯一本に絞って情報を入れる事で、いつでもアクセスでき現場で実際に役に立つ事が分かっていれば知識習得に取り組むモチベーションにも繋がりやすくなる

 

 

要するに自作マニュアルは作成に多少時間がかかるが、ある程度出来上がれば仕事の能率が格段に向上し、一生ものとして使える素晴らしい代物だという事を言いたいだけだ。

そして、さらには医師としてのモチベーションを保つ事にまで貢献してくれる。

研修医の時に早く一人前になりたくてやる気が高いのはよくある事だ。ただ分かり易いゴールが立てにくい職業柄、研修が終わって一段落した後に如何に医師としてのテンションを維持していくかが勝負になると感じる。その点、このマニュアル作成作業は診療における疑問が無くならない限り、あるいは情報updateのために一生続いていくので、少しずつでも前に進んでいる事を視覚的に確認でき、ささやかでも自分の成長を感じ続ける事ができるので、気持ちを保っていく助けになると感じている

 

もしジェネラルにやって行こうという気持ちがあるのなら腰の軽い研修医のうちに自分用のマニュアルを作り始める事を個人的には強くお勧めする

入院時ノート ⑲ 静脈血栓塞栓症

<現病歴>

胸痛(-/+)呼吸困難(-/+)recent immobilization(-/+)血痰(-/+)喀血(-/+)下肢腫脹(-/+)下肢疼痛(-/+)体重減少(-/+)寝汗(-/+)

<既往歴> PE/DVT(-/+:回数  誘因  抗凝固療法-/+:種類  期間   ) 

悪性疾患(-/+) 脳梗塞(-/+) 消化管出血(-/+)脳出血(-/+)頭部外傷歴(-/+)転倒歴(-/+)  脳動脈瘤(-/+)脳動静脈奇形(-/+)HIT(-/+)肝不全(-/+)

<1か月以内の手術歴>種類    時期

<1か月以内の入院歴>理由    時期    入院期間 

<静脈留置カテーテル>(-/+:部位   種類   期間   function   )

<内服薬>エストロゲン製剤(-/+) 

<社会歴> アルコール      タバコ      ドラッグ

<家族歴> 凝固異常症(-/+) PE/DVT(-/+:  年齢   )

<身体所見> T             P             BP            RR          SpO2 

意識

心音      呼吸音      腹部

下肢:チアノーゼ(-/+) 動脈拍動触知(-/+) 

神経

<救外経過>

WBC   Hb     PLT    INR   APTT   Na    K    Cl    HCO3    BUN     Cre    Glu    Alb   AST    ALT   ALP   T-bil   (D-dimer) (troponin)    (proBNP)

(妊娠反応)

胸部x-ray:胸水(-/+)

心電図

(chest CT angiography)

(深部静脈エコー) 

 

<ASSESSMENT>

静脈血栓塞栓症

extensive / non-extensive DVT 

hemodynamically stable / unstable PE 

unprovoked / provoked:

腎不全(-/+)  出血リスク: 

 

<PLAN>

一般病棟/ICUに入院

評価

心電図モニター

(血管外科コンサルト: hemodynamically unstable PE、extensive DVTの時)

(経胸壁心エコー)

血算毎日フォロー

(INR毎日フォロー)

(ヘパリン静注APTT protocol)

(各長期抗凝固療法に関する長所・短所を提示し patientの希望を確認)

(長期抗凝固療法に関する外来主治医の意向を確認)

治療

oxygen as needed to keep SpO2 > 90

(エノキサパリン 1mg/kg 皮下注1日2回)

(ヘパリン持続静注:腎不全、出血リスクがある時、など)

(fondaparinux 7.5 mg 皮下注1日1回: HITの既往ある時)

(IVC filter:抗凝固療法禁忌の時、cardiac reserveが少ない時検討)

early ambulation

(restrictive IV bolus with NS 500-1000ml ー>ノルエピネフリン:hemodynamically unstableでbolusに反応しない時)

 

輸液:     cc/hr

電解質: 適宜補正

栄養:    食

予防

深部静脈血栓: 抗凝固療法

消化性潰瘍: pantoprazole 40mg 経口 1日1回

precaution 転倒

Disposition

(ワーファリンクリニック予約)

(social workerに外来抗凝固療法剤の患者負担分の算出依頼)

(抗凝固療法終了後にhypercoagulable work-up)

(routine age-appropriate screening for malignancy) 

急変時:  Full code

 

(薬剤選択・投与量: 米国一施設基準)

 

補足

① Indication for hypercoagulable work-up

- patient with at least one first degree relative with documented VTE before 45 yo

- patient younger than 45 yo

- recurrent VTE, multiple vnous site or unusual vascular beds

->

[inherited]

Factor V Leiden, prothrombin gene mutation, protein S activity, protein C activity, antithrombin III activity

[antiphospholipid syndrome]

lupus anticoagulant, cardiolipin Ab, beta 2-glycoprotein I Ab

[other]

JAK2 mutation, paroxysmal nocturnal hemoglobinuria

 

② Heparin iv protocol

initial iv bolus with 80 units/kg (usually 5000units)

continuous infusion (heparin /D5W 25000Units/500cc)

start at 18 units/kg/hr

aPTT < 47 sec : repeat initial bolus and increase infusion by 4 units/kg/hr

aPTT 47-64 sec : give half initial bolus and increase infusion by 2 units/kg/hr

aPTT 65-104 sec : no change (target range)

aPTT 105-130 sec : reduce infusion by 2 units/kg/hr

aPTT >130 sec : hold infusion for 1 hour and reduce infusion by 3 units/kg/hr

入院時ノート ⑱ 肝性脳症

<現病歴> 

<ROS>吐血(-/+) 下血(-/+) 排便(  回/週)  嘔気・嘔吐(-/+) 下痢(-/+)熱(-/+) 腹痛(-/+)

<既往歴> 慢性B型肝炎(-/+) 慢性C型肝炎(-/+) アルコール依存(-/+)

<内服薬> ベンゾジアゼピン(-/+) オピオイド(-/+)

<社会歴> アルコール      タバコ      ドラッグ

<家族歴> 

<身体所見> T             P             BP            RR          SpO2 

意識:見当識                                   

confusion / lethargy / stupor / coma

心音      呼吸音      腹部

直腸診:便潜血反応(-/+)

神経

羽ばたき振戦(-/+)

<救外経過>

WBC   Hb     PLT    INR    Na    K    Cl    HCO3    BUN     Cre   Ca    Glu    Alb  AST    ALT   ALP   T-bil   lipase  NH3  ETOH

尿一般沈渣:       urine drug screen:

胸部x-ray

頭部CT: 

 

<ASSESSMENT>

肝性脳症

confusion / lethargy / stupor / coma

underlying liver disease:

誘因:

MELD score:

意識障害 DDx:

 

<PLAN>

一般病棟/ICUに入院

評価 

救外血液検査にMg, Phos, TSHを追加

nutrition consult

(血液ガス)

(intravascular volume 評価)

(腹部エコー/doppler: to evaluate portal vein thrombosis)

(腹水穿刺: SBPを疑う時)

治療

ラクツロース 30ml 経口1日4回で開始(軟便が1日2~3回出る量に調整)

(リファキシミン 550mg 経口1日2回: ラクツロースで改善しない時追加)

(カリウム補正)

(multivitamin 1 tab 経口1日1回)

(ビタミンB1 100mg 経口1日1回)

(生食輸液: intravascular volumeが低い時)

(利尿剤中止: intravascular volumeが低い時)

 

輸液:     cc/hr

電解質: 適宜補正

栄養:   絶食 / 普通食 (蛋白制限なし) / 蛋白制限食 + 経口分岐鎖アミノ酸製剤(蛋白非制限食摂取で症状悪化する場合) / ±  2 gram sodium diet(腹水を認める時) 

予防

深部静脈血栓: ヘパリン 5000単位皮下注1日2回 / 間歇的空気圧迫機

消化性潰瘍: なし/pantoprazole 40mg 経口1日1回

precaution 転倒/誤嚥/痙攣

Disposition

(肝移植の適応評価)

(肝炎治療適応評価、肝癌スクリーニング、上部消化管内視鏡、栄養・アルコール指導、βブロッカー適応評価、排便コントロール、内服薬投与量調整)

急変時:  Full code

 

(薬剤選択・投与量: 米国一施設基準)

  

補足

肝性脳症に対する分岐鎖アミノ酸静注剤の効果を評価したメタアナリシスでは5つのRCTのうち3つは死亡率を下げ、2つは死亡率を上げるとの結果

Parenteral nutrition with branched-chain amino acids in hepatic encephalopathy. A meta-analysis.                                                 Gastroenterology. 1989;97(4):1033.