喘息
喘息は最も多くみられる呼吸器疾患で、気道炎症と気道過敏性を伴う可逆的な気道閉塞を特徴とする
世界中で3億人以上が罹患し、米国には2600万人存在する(1)
喘息による健康および経済的な負担は非常に大きく、米国では毎年1100万件の外来受診および100万に10人の死亡をきたす(2)
診断
喘息を疑わせる症状は喘鳴、呼吸困難、咳嗽、息を吸い込みにくい、胸部圧迫感などである(3, 4)
診断の鍵となる特徴は症状の重度が時間によって変わることであるため、問診の際に症状と時間の関係を注意深く聞くことが大切である。症状が間欠的であったり、自然にあるいは短期作用型気管支拡張剤によって改善する、などの特徴がある。さらには、1日のうちの時間帯で症状が変化することが多く、夜間や早朝に悪化しやすい
また季節ごとに変化したり、冷気、運動、動物の皮や毛、花粉、職業的暴露、食物、アスピリン、NSAIDsなどの特定の誘因にも関連する
ウイルス気道感染は多くの場合に強い誘因となる
職場に起因する症状の場合、週末や休みの期間に改善することがよく見られる
第一親等に喘息、湿疹、アレルギー性鼻炎などがいる場合は診断の補助となる
慢性の咳嗽を認める、特に夜間、季節、職場、あるいは他の活動などに関連する場合にも喘息を考慮しなければならない
National Heart, Lung, and Blood Institute Expert Panel Report 3(4)、Global Initiative for Asthma (GINA) guidelines(5)および他のガイドラインは喘息を疑う5歳以上の全ての人に客観的な評価となる呼吸機能検査を行うことを推奨している
最初の評価にはスパイロメトリーによってFEV1、FVC、FEV1-FVC ratioを測定する必要がある。そして気道閉塞の可逆性を評価するために、気管支拡張剤投与後に再度それらを測定しなければならない
気管支拡張剤投与後にFEV1が12%以上および200mL以上増加することが気道閉塞の可逆性があるとみなされ(6, 7)、その可逆性の存在が喘息の診断をサポートする
気管支拡張剤投与後、4週間の抗炎症薬治療後、あるいは異なる日に測定して自然に上記の値以上の改善が認められる場合も可逆性があると考えられる
スパイロメトリーで気道閉塞の可逆性が確認できれば喘息の診断となるが、測定結果が正常であっても除外診断とはならない。スパイロメトリーは包括的な病歴聴取、身体診察、および血液検査などの診断手段とともに最もよく使われるものである
誘発試験
喘息の診断にgold standardはない。しかしメサコリンあるいはヒスタミンによる吸入誘発試験は、症状から喘息が疑われるがスパイロメトリーが正常である患者の診断確立の助けとなる
安全と見なされているが、FEV1が予測値の65%以下の場合には一般的に推奨されない(8, 9)
標準量のメサコリン投与後にFEV1が20%低下することが、喘息の特徴の鍵である気道過敏性の証明となる
メサコリン誘発試験に関するスタディでは、誘発試験によって多くの喘息患者が同定でき、また陰性の時は多くの場合が喘息でないことが示されている(8, 9)
代替としては、患者によるピークフロー測定を最低2週間、1日のうちで複数回行って記録させ、有意な日内変動が確認できれば喘息の診断の補助となる。しかしピークフロー測定は本人の努力に強く依存し、質が評価できないため信頼性が相対的に低くなる(10)
喘息の鑑別診断は広い。喘息がコントロール困難である、あるいは患者が非典型的な症状や所見を有する、特にスパイロメトリーで診断を示唆しなかった場合は他の疾患の可能性を考慮する必要がある
鑑別診断
COPD
気道閉塞の可逆性は少なく、典型的には喫煙歴のある成人にみとめられる
vocal cord dysfunction
症状の発症と改善が突発的である。monophonic wheeze(単一の喘鳴音)。より若年の患者にみられる。videostroboscopyやフローボリューム曲線によって診断される
心不全
呼吸困難、喘鳴、聴診にてcracklesを聴取、喘息治療への反応不良、心拡大、浮腫、BNP上昇、他の心不全の特徴
気管支拡張症
咳嗽、多量の膿性痰、通常rhochiやcracklesを聴取、喘鳴や撥指が認められる場合もある、CTにて診断
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
胸部レントゲンにて再発性の浸潤影、好酸球増多、IgE高値、アスペルギルス抗原感作
Cystic Fibrosis
咳嗽、多量の膿性痰、通常rhochiやcracklesを聴取、著明な撥指、喘鳴が認められる場合もある
機械的閉塞
より限局的な喘鳴、位置がより中枢である場合はフローボリューム曲線が手がかりになる場合がある
気道閉塞の可逆性の欠如はCOPDの可能性を示唆し、FEV1およびFVCは低下するがFEV1-FVC ratioが正常である拘束性パターンの場合は間質性肺疾患を示唆する
喘息とCOPDを鑑別する重要な因子は喫煙歴である
COPDは多くの場合、重大な喫煙歴のある比較的年齢の高い患者に起こり、慢性気管支炎や肺気腫によって特徴づけられる
COPD患者は呼吸機能検査において気管支拡張剤投与で可逆性を示す場合もあるが、その程度がより少なく、またコンスタントに認められる頻度がより少ない(11)
喘息と間質性肺疾患を合併することもあり、また喘息とCOPD両方を罹患している事も珍しくない
血液および他の検査
呼吸機能検査
スパイロメトリーで気道閉塞の可逆性が確認できれば喘息の診断がサポートされるが、正常の場合でも除外診断はできない。lung volumeとフローボリューム曲線を評価して他の鑑別診断を除外しなければならない
吸入誘発試験
検査が陽性の場合は喘息の特徴である気道過敏性の診断となるが、他の呼吸器疾患でも認められる場合がある。検査が陰性の場合は基本的に喘息の除外診断となる
胸部レントゲン
他の疾患の除外診断に有効である。肺過膨張の所見は喘息に一致するが急性増悪の際の一時的な現象として認められる
アレルギー試験
治療抵抗性の患者において抗原の役割を評価する際に皮膚およびin vitroでの感受性試験を行うことは有用であるかもしれない。しかしdiagnostic valueははっきりしていない
血算および分画
軽度の好酸球増多は喘息でよくみられる。好酸球の値は生物学的治療の反応予測となりえる
喀痰検査
初期評価においてルーティンでは適応とならない
IgE
軽度の上昇はアレルギー性の喘息においてよく認められる。omalizumab治療の評価に使われるかもしれない。しかし初期評価においてはルーティンでの測定は推奨されない
呼気中一酸化窒素測定
値の上昇は2型気道炎症およびステロイド反応性の同定に有用であるかもしれない。現在のところ診断のための測定は推奨されていない
治療
アレルゲン暴露に関するアドバイス
およそ喘息患者の半数がアトピーであるため、環境的アレルゲンへの暴露を減らすことで症状が改善することがよくみられる。誘因を避けることが喘息の非薬物療法的治療の要であり、臨床家は患者に誘因に関する質問を行い、その暴露を減らす方法を提供しなければならない
成人の喘息の約15%が職業に関連しているため、職場での誘因について確認する必要がある
典型的な誘因には動物や植物のアレルゲン、ラテックス、穀物、ポリウレタン製品の製造に使用するジイソシアネートなどがある
農家、動物をケアする人、医療従事者、ラテックス手袋使用者、パン類製造業者、ポリウレタン製造業者などがリスクとなる
他のよく見られる誘因にはアスピリン、NSAIDs、保存剤に使用される亜硫酸塩などがある
一旦感作されると、たとえ非常に小さな誘因への暴露にも患者は反応しうるようになる。誘因への暴露を制限することが難しい場合でさえも、たとえ少しでもその暴露を減らすことで利益が得られる場合もある
環境的アレルゲンへの暴露を減らすための手段
・湿度を50%以下に維持してエアコンを使用する
・カーペット除去
・布・織物張りの家具、ドレープ、柔らかい玩具などの室内品の制限
・マットレスや枕に不浸透性カバーを使用
・毎週130°F(54℃)以上の水による寝具の洗濯
・適度な換気
・ゴキブリの除去
・猫の排除
・家の中の湿気を減らす
・薪による、あるいは非換気型の暖炉やストーブを避ける
・タバコの煙を避ける
タバコの煙への暴露は喘息急性増悪の原因であることが多く(12)、いくつかのスタディでは喫煙および受動喫煙が喘息患者の呼吸機能低下の原因となることが示されている(13, 14)
タバコの煙に暴露される喘息患者は、暴露されない患者に比べ疾病罹患率および死亡率が高くなる
喫煙は気道炎症のタイプおよび程度を変化させて吸入ステロイド薬の治療効果を減らす可能性がある(15)
あるスタディでは164人の非喫煙喘息患者が家でタバコの煙に暴露されると、活動が制限される日にちがより多くなり(オッズ比 1.61 [95% CI, 1.06-2.46])、より症状が増える可能性が高くなる(オッズ比 2.05 [95% CI, 1.79-2.40])ことが示された(16)
空気清浄機器に関するアドバイス
空気清浄機は理屈的には喘息患者の助けになりそうである(17)。しかし室内のエアダクトの清掃や高性能微粒子エアフィルターが喘息の症状を和らげるというエビデンスはほとんどなく、Institute of Medicineはアレルゲン暴露を減らすために空気清浄機器を使用することを推奨していない(18, 19)
加湿器は頻繁に清掃する必要があるが、それにもかかわらずアレルゲンレベルを上げる可能性がある。専門家は除湿機あるいはエアコンディショナーにて室内湿度を50%以下に保つことを推奨している。それによって喘息の症状および薬剤需要を減らすからである(4, 5, 20)
喘息の評価
Global Strategy for Asthma Management and Preventionは喘息の評価および管理に関するガイドラインを毎年アップデートしてGINA reportを出している(5)
現在のガイドラインではAsthma Control TestやAsthma Control Questionnaireを利用して医療機関受診毎に症状のモニタリングを行うことの重要性を強調している
症状がない、あるいはほとんどない、活動制限がない、レスキュー薬剤を必要としない、あるいはほとんど必要としない場合には喘息がよくコントロールされているとみなされる
夜間の症状は特に重要であり、それを認める場合はたとえ頻度が少なくてもコントロールがされていない事を示唆する
喘息アセスメント
症状
以下の場合は喘息がコントロールされているとみなされる
・症状の頻度が週に2回未満
・夜間に目覚めることが月に2回未満
・通常活動の妨げが起こらない
・短期作用型βアゴニストの使用が週に2回未満
・Asthma Control Testの結果が20より高い
・Asthma Control Questionnaireの結果が0.75より高い
急性増悪および有害事象のリスク
以下の場合は急性増悪および有害事象のリスクがあるとされる
・短期作用型β2アゴニストの使用が週2回以上
・吸入ステロイドの不使用あるいは不適切な使用
・FEV1が予測値の60%未満
・気道閉塞の可逆性レベルが高い
・重大な精神科的あるいは社会的な問題
・タバコの煙への暴露
・食物を含むアレルゲンへの感作
・肥満あるいは慢性鼻炎
・喀痰あるいは血液中好酸球増多
・吸入ステロイド使用中の呼気中一酸化窒素上昇
・喘息による挿管あるいはICU入院の既往
・過去12ヶ月以内に重度の急性増悪が1回以上
呼吸機能のレベル
診断時、コントローラー治療開始後、急性増悪後、および定期的にスパイロメトリーを施行してトレンドをフォローしていく
Asthma Control Test
1、 過去4週間に喘息で職場、学校、家庭で思うように作業がはかどらなかったことはどれくらいありますか
いつも(1)、かなり(2)、時々(3)、少し(4)、全くない(5)
2、過去4週間にどれくらい息苦しくなりましたか
1日に2回以上(1)、1日に1回(2)、1週間で3〜6回(3)、1週間に1〜2回(4)、全くない(5)
3、過去4週間に喘息の症状(喘鳴、咳、呼吸困難、胸部圧迫感、痛み)によって夜間あるいはいつもより朝早く目覚めてしまうことはどれくらいありますか
1週間に4回以上(1)、1週間に2〜3回(2)、1週間に1回(3)、1〜2回(4)、全くない(5)
4、過去4週間にレスキューの吸入あるいはネブライザーをどのくらい使いましたか
1日に3回以上(1)、1日に1〜2回(2)、1週間に2〜3回(3)、1週間に1回以下(4)、全くない(5)
5、過去4週間に喘息をどの程度コントロールできたと思いますか
全くできなかった(1)、あまりできなかった(2)、まあまあできた(3)、十分できた(4)、完全にできた(5)
項目の合計点が19点以下の場合は喘息のコントロールが不十分と評価される
有害事象を予測する多くの因子の中で最も重要なものは低い呼吸機能、過去12ヶ月以内の1回以上の重度の急性増悪、過去の挿管あるいはICU入院の既往である
したがって呼吸機能検査はアセスメントの継続において重要である。ガイドラインでは診断時、治療によって安定した後、長引く増悪後、進行的あるいは慢性的に悪化していく時、そして毎年のルーティンのモニタリングとしてスパイロメトリーを行うことを推奨している(4, 5)
受診毎に治療のレビューを行う必要がある。多くの患者が吸入薬を使用しており、適切に使用できていることを確認することが重要である
スタディでは多くの患者において吸入の手技が適切でないことが示されている(21)
受診時に実際に患者が吸入するところを観察し、フィードバックを与えることが理想的である
適切な薬剤投与のために必要な吸気流量が吸入器ごとにかなり異なるため、処方の際にそのことを考慮する必要がある(22)
スペーサーを使って加圧式定量噴霧吸入を行えばエラーを減らすことができる
鼻炎、副鼻腔炎、逆流性食道炎、肥満、睡眠時無呼吸、うつ病、不安症など喘息に影響しうる合併症を同定し、対応することも重要である。スタディではスタンダードな方法に基づいてこれらの疾患の評価を行う事で喘息のコントロールが改善することが示されている(23, 24)
治療薬剤選択
治療のゴールは症状のコントロール、患者の活動レベルの維持、そして急性増悪による有害事象のリスク、呼吸機能低下、薬剤副作用などを減らすことである
したがってアセスメントは継続的に行う必要があり、治療は最も近位のアセスメントを反映させて調整する必要がある
患者のアセスメントに基づく連続的なステップ毎に異なる治療薬を使用するアプローチが取られる。症状の短期的な改善のための薬剤(レスキュー治療)と長期的なコントロールのための薬剤が使用される
間欠的にのみ症状を有する患者でも重度の急性増悪をきたすことがあるため、レスキュー薬は重症度に関わらず全ての患者に必要とされる
症状が持続する、あるいは間欠的だが強くなる場合はレスキュー薬に加え、長期のコントローラーが必要となる
患者の症状、リスクファクターによって予想される増悪時の症状の重症度、推奨(★)、薬剤情報(☆)等に基づいて治療を開始する
喘息のステップ治療
Step 1
好ましいコントローラー:ー
代替:低量ICSを考慮
リリーバー:必要に応じてSABA
Step 2
好ましいコントローラー:低量ICS
代替:LTRA、低量テオフィリン
リリーバー:必要に応じてSABA
Step 3
好ましいコントローラー:低量ICS/LABA
代替:中等量ICS、低量ICSプラスLTRAあるいはテオフィリン
リリーバー:必要に応じてSABAあるいは低量ICS/formoterol
Step 4
好ましいコントローラー:中等量あるいは高量ICS/LABA
代替:tiotropiumを追加、高量ICSプラスLTRAあるいはテオフィリン
リリーバー:必要に応じてSABAあるいは低量ICS/formoterol
Step 5
好ましいコントローラー:追加薬剤(tiotropium、anti-IgE、anti-IL-5など)に関して専門家紹介
代替:低量OCS追加
リリーバー:必要に応じてSABAあるいは低量ICS/formoterol
(ICS:inhaled corticosteroid、SABA:short-acting β2-agonist、LTRA:leukotriene-receptor antagonist、LABA:long-acting β2-agonist、OCS:oral corticosteroid)
初期治療選択(★)
症状:月に2回未満
リスク:なし
ー>SABA(step 1)
症状:月に2回未満
リスク:あり(上記参照)
ー>SABAプラス低量ICS(Sstep 2)
症状:月に少なくとも2回
リスク:あり
ー>SABAプラス低量ICS(Sstep 2)
症状:多くの日に起こる
リスク:あり
ー>低量ICS/LABAあるいは中等量ICS(strep 3)
症状:夜間の症状が少なくとも週に1回
リスク:あり
ー>低量ICS/LABAあるいは中等量ICS(strep 3)
症状:重度でコントロールできない症状あるいは急性増悪
リスク:あり
ー>oral corticosteroidプラス中等量ICS/LABA(strep 4)
(ICS:inhaled corticosteroid、SABA:short-acting β2-agonist、LABA:long-acting β2-agonist)
治療を開始した後は喘息コントロールのレベルに基づいて継続的に治療のアセスメントと調整を行わなければならない
もしコントロールが不良であればより強化的な治療にステップアップしなければならない。これは吸入ステロイド薬の投与量を増やす、あるいは第二のコントローラー薬を追加することなどである
もし症状が3ヶ月以上良好にコントロールされれば、より軽度の治療にステップダウンする必要がある。これは第二のコントローラー薬を中止する、あるいは吸入ステロイド剤の投与量を減量することなどである
吸入ステロイド剤の投与量を25〜30%減量することが最初の目標として適切である
この過程において患者に症状が悪化した場合は臨床家に速やかに報告するように伝えておくことも重要である(25)
臨床家は治療開始後1〜3ヶ月、あるいはステップアップおよびステップダウンした後1〜3ヶ月における変更の影響をレビューする必要がある。フォローアップの頻度はコントロールのレベルに依存する
レスキュー治療
間欠的な症状の場合は即効性の薬剤のみが屯用として必要であるかもしれない。安全性と耐容性より短期作用型β2アゴニストが気道攣縮の改善薬として使用される。長期コントローラー治療を受けている持続性の症状を持つ患者(軽度、中等度、重度)にも短期作用型β2アゴニストを処方すべきで、急性の症状の場合にすぐに利用できるよう準備しておくことも伝えておいた方がよい
長期コントローラー治療
コントローラー治療薬は持続する症状を改善し、増悪を防ぐ目的で使われる。コントローラーとしていくつかのクラスの薬剤が存在し、喘息の特性となる異なる機序をターゲットとしている。異なるクラスの薬剤を併用することによって良きコントロールが得られる可能性がある
吸入ステロイドはコントローラー治療薬の中で最も効果の高いものである(26, 27)。気道粘膜の浮腫、粘液の過分泌、気道炎症などの喘息反応の病理学的変化を改善する。様々な力価と製剤が利用可能で、個人間で反応が異なるため、治療効果が十分でない場合は同じクラスの他の製剤を試してみることは意義があるかもしれない
副作用は用量と関連し製剤ごとに異なる。最も多いものは口腔カンジダ症、発声障害、局所沈着などである。他には副腎抑制、骨密度減少、白内障などがある。budesonide 400mcg以下および等力価以下の他の吸入ステロイドでは通常それらの全身性の副作用は起こらない(28)。高用量で高力価の吸入ステロイドにて肺炎の率が増えるとの報告がある(29)。喫煙者では吸入ステロイドの効果が減少し、より多くの用量を必要とするかもしれない。臨床家は吸入ステロイドのリスクは経口ステロイドの有害事象に比較し、非常に小さなものであることも認識しておく必要がある
1日1回あるいは2回の投与で気道拡張を維持する吸入長期作用型β2アゴニスト(LABA)も重要である。吸入ステロイドに追加されると、喘息コントロールが改善し増悪のリスクを減らす。中等量の吸入ステロイドにて喘息のコントロールが不十分である場合はその吸入ステロイドをLABAとステロイドの合剤である1つの吸入薬に変更する必要がある(5, 30, 31)。1つの吸入薬にすることでアドヒーランスが向上し、コストが下がる
ステロイドなしでLABAを使用すると喘息関連死のリスクが上がり、2003年にU.S. Food and Drug Administration(FDA)がLABAとステロイドの合剤も含む全てのLABAを有する吸入剤に対しblack box warningを発表した(32)。しかし新たな5つの臨床試験によって吸入ステロイドと併用すればLABAは喘息に関連する入院、挿管、死亡のリスクを上げず、その併用によって増悪を少なくすることが示され、2017年にFDAはLABAとステロイドの合剤をblack box warningから外した(33, 34, 35)
ロイコトリエン受容体拮抗薬はゆるやかな気管支拡張作用を持ち、アレルギー性鼻炎などの上気道疾患の治療薬として使用される。アスピリンによって悪化する気道疾患の患者はこの薬剤によく反応することが多い。特にzileutonは同じクラスの他の薬剤に比べ、炎症経路に含まれるcysteinyl leukotrienをより効果的にブロックすることがわかっている(36)
経口ステロイドは急性増悪時にルーティンで使用されるが、長期の使用にてよく知られた有害事象のリスクに晒される
長期作用型ムスカリン受容体拮抗薬は持続する気管拡張効果をもたらす。たとえばtiotropiumは症状コントロールが不十分の患者においてステロイドとLABAの合剤と併用することで呼吸機能を向上させ、増悪を減らす。さらに重大な副作用でLABAの使用ができない場合はその代替として使用できる。しかし長期作用型ムスカリン受容体拮抗薬は長期気道拡張薬としてLABAより先にルーティンで使用されるべきではない
間欠的な症状の患者ではstep 1として必要に応じて短期作用型β2アゴニストを使用して治療する。しかし間欠的な症状であっても増悪のリスクファクターを有する場合はコントローラー治療を行うことによる利益がある(5)。持続する症状をもつ全ての患者(step 2以上)においては長期コントローラー治療が必要となる。step 2で推奨される治療は低量吸入ステロイドであり、増悪、気道過敏性、レスキュー治療使用のリスクを減らす。step 2で吸入ステロイドの代替となるのはロイコトリエン受容体拮抗薬かテオフィリンである
推奨される治療はstep 3では低量吸入ステロイドとLABA併用、step 4では中等量あるいは高量吸入ステロイドとLABA併用である。長期作用型気管支拡張剤を追加することで、吸入ステロイドのみの用量を2倍に増やすことに比べ、レスキュー薬使用および症状を減らし、呼吸機能を改善させる(33)。各ステップに代替となる併用法が利用できるが、これらの選択をガイドするスタディは少ない。たとえば高量の吸入ステロイド薬はmontelukastなどのロイコトリエン受容体拮抗薬に比べより効果的であるが、montelukastを高量吸入ステロイドに追加することで、ステロイドの用量を減らせる可能性がある(37)
中等量あるいは高量吸入ステロイドとLABAの併用でも症状が持続する場合は第3のコントローラー治療薬が必要になるかもしれない(step 5)。病状がこのレベルの患者では非常に増悪しやすく、強い炎症が起こっていると考えられる。薬剤オプションには吸入ステロイドとLABA併用に追加することで呼吸機能を改善し、増悪を減らすtiotropiumの追加(38)、あるいは生物学的療法を開始することが含まれる
あるrandomized trialでは症状を有し、FEV1が予測値の80%以下でかつ過去1年間に少なくとも1回以上の急性増悪があった患者において、吸入ステロイドとLABA併用にtiotropiumを追加した場合、プラセボに比べて次の急性増悪までの期間が長くなり、またFEV1がより改善したことが示された(38)
各ステップアップする前に、患者の吸入技術、アドヒーランス、並存疾患、修正できうるリスクファクターを再評価することが重要である。スタディでは50%以上の患者において吸入治療を指示された通りに使用していないことが示されている
喘息治療薬(☆)
短期作用型β2アゴニスト吸入薬
副作用
振戦、頻脈などの交感神経症状、低カリウム血症、高血糖、過敏性反応
注意
心血管疾患、甲状腺機能亢進症、糖尿病、緑内障、てんかんなどの既往の時
臨床使用
軽度、間欠的症状の第一選択
Albuterol (Proventil HFA, Ventolin HFA, Proair HFA, Accuneb)
MDI (90mcg/吸入):必要に応じて4〜6時間毎に2吸入
ネブライザー:必要に応じて6〜8時間毎に2.5mg吸入
(急性増悪時にはMDIを1〜4時間毎に4〜8吸入、ネブライザーを1〜4時間毎に2.5〜10mgへ増量可能)
Levalbuterol (Xopenex, Xopenex HFA)
MDI (45mcg/吸入):必要に応じて4〜6時間毎に2吸入
ネブライザー:必要に応じて8時間毎に0.63〜1.25mg吸入
(急性増悪時にはMDIを1〜4時間毎に4〜8吸入、ネブライザーを1〜4時間毎に1.25〜5mgへ増量可能)
吸入ステロイド薬
副作用
口腔乾燥、紅潮、白内障、緑内障、口腔カンジダ症、嗄声、皮疹、低い頻度だが視床下部-下垂体-副腎抑制、骨量減少
注意
糖尿病の既往の時
臨床使用
軽度から重度の喘息
Beclomethasone (QVAR)
インヘイラー(40,80mcg/inh): 40-160mcg1日2回
Budesonide (Pulmicort Flexhaler, Pulmicort Turbohaler)
DPI (90,180mcg/inh) : 360mcg1日2回
DPI (200mcg/inh) : 200-400mcg1日2回
Ciclesonide (Alvesco)
MDI (80, 160mcg/inh): 80-320mcg1日2回
Fluticasone propionate (Flovent HFA, Flovent Diskus)
MDI (44, 110, 220mcg/inh): 88-440mcg1日2回
DPI (50, 100, 250mcg/inh) : 100-1000mcg1日2回
Fluticasone furoate (Arnuity Ellipta)
DPI (50, 100, 200mcg/inh) : 1吸入1日1回
Mometasone (AsmanexTwisthaler, Asmanex HFA MDI)
DPI (110, 220mcg/inh) : 220mcg1日1回午後、維持220-440mcg1日2回, HFA (100 or 200mcg)
ロイコトリエン調整薬
副作用
稀に神経精神的イベント
臨床使用
軽度から中等度の喘息の代替治療
Montelukast (Singulair) 10mg 1日1回午後
副作用
稀に全身性の好酸球増多
Zafirlukast (Accolate) 20mg 1日2回
副作用
肝酵素上昇、過敏性反応、稀に全身性の好酸球増多
注意
肝疾患では避ける、CYP1A2, 2C8, 2C9, 3A4を阻害、ワーファリン併用でINR上昇
Zileuton (Zyflo CR) 長期作用型: 1200mg 1日2回 食後1時間以内
副作用
肝酵素上昇、インフルエンザ様症状
注意
肝疾患では避ける、ベースラインと治療開始後定期的に肝酵素をチェック、CYP1A2を阻害
長期作用型β2アゴニスト吸入薬
Salmeterol (Serevent Diskus)
50mcg 12時間毎
副作用
震戦や頻脈などの交感神経症状、paradoxical bronchospasm、過敏性反応、低カリウム血症、高血糖(稀)
注意
喘息関連死のblack box warning、心血管疾患、甲状腺機能亢進症、緑内障、てんかんなどの既往のある時、時間とともに耐性獲得
臨床使用
中等度から重度の喘息、コントローラーと併用しなければならない
経口ステロイド薬
副作用
長期使用で視床下部-下垂体-副腎抑制、免疫抑制、高血圧、神経症状、耐糖能、体重増加、筋障害、白内障、骨粗鬆症
臨床使用
急性増悪時、一般的に長期使用には使われない
Prednisone
1日総量40-80mg 1-2回に分けて、計3〜10日間、漸減も考慮
Prednisolone (Prelone, Flo-Pred, Orapred)
1日総量40-80mg 1-2回に分けて、計3〜10日間、漸減も考慮
Methylprednisolone (Medrol)
1日総量40-80mg 1-2回に分けて、計3〜10日間、漸減も考慮
メチルキサンチン
Theophylline (Theo-Dur, Theochron, Theo-24)
用量は個人ごと、血中濃度を5-15μg/mLに調整
静注: 0.2-0.4mg/kg/h
intermediate-release: 初回1日総量300mg, 6-8時間毎に分けて、1日総量400-1600mg, 6-8時間毎に分けて, へ増量可能
extended-release: 初回1日総量300mg, 8-12時間毎に分けて、1日総量400-1600mg, 8-12時間毎に分けて, へ増量可能
controlled-release (Theo-24): 初回300-400mg 1日1回, 400-1600mg, 12-24時間毎に分けて, へ増量可能
副作用
消化器および心血管作用
注意
狭い治療域、CYP450代謝のため多くの薬剤と相互作用、肝疾患、心不全、高齢者では低量投与、心血管、甲状腺疾患、消化性潰瘍、前立腺肥大、てんかん、喫煙などの既往のある時
吸入抗コリン薬
副作用
口腔乾燥、抗コリン作用
注意
緑内障、膀胱閉塞、前立腺肥大の既往の時
Ipratropium (Atrovent, Atrovent HFA)
MDI (17mcg/吸入):2-3吸入1日4回
ネブライザー:500mcg 1日3-4回
臨床使用
重度の急性増悪時に吸入β2アゴニストとの併用で多くの利益
Tiotropium (Spiriva Handihaler, Spiriva Respimat)
Handihaler: 18mcg 1日1回(powder in capsules)
Respimat: 2吸入1日1回
硫酸マグネシウム
2g静注
注意
房室ブロックの際は避ける、CKDの既往のある時
臨床使用
他の薬剤に反応しない重度の急性増悪時
合剤(ステロイドと長期作用型β2アゴニスト吸入薬)
Budesonide-formoterol (Symbicort)
80/4.5mcg, 160/4.5mcg: 2吸入1日2回
Mometasone-formoterol (Dulera)
100/5mcg, 200/5mcg: 2吸入1日2回
Fluticasone-salmeterol (Advair DIskus, Advair HFA)
DPI: 100/50mcg, 250/50mcg, 500/50mcg: 1吸入1日2回
MDI: 45/21mcg, 115/21mcg, 230/21mcg: 2吸入1日2回
Fluticasone furoate-vilanterol (Breo Ellipta)
DPI: 100/25mcg, 200/25mcg: 1吸入1日1回
(CYP: cytochrome P450 isoenzymes, DPI: dry powder inhaler, HFA: hydrofluoroalkane, MDI: metered-dose inhaler)
喘息反応の特定のメディエーターに対する新しい抗体治療薬が標準治療にて適切にコントロールされない重度の喘息患者に使用することができる。これらの抗体治療は特定の患者においては大きく治療を変える場合がある
様々なタイプの生物学的療法が現在利用可能であり、またさらに多くのものが現在開発されている
現在利用できるものはIgEを産生する経路や好酸球を活性化する経路をターゲットとし、サイトカインであるインターロイキン4(IL-4)、IL-5、IL-13などに作用を及ぼす。これらのサイトカインは主に2型ヘルパーT細胞によって分泌され、このクラスの喘息気道炎症が2型と称される。少なくとも喘息患者の半数は2型炎症を有し、重度の喘息患者ではさらに多い可能性がある(39)
認識できる臨床的特徴とバイオマーカーによって患者が特定の生物学的療法による利益がある2型炎症を有するかどうかを決定する。この過程がphenotypingと呼ばれる
そのようなphenotypeを示唆するよくある臨床的特徴はアトピー、季節に関連して増悪、hay fever、アレルゲンへの感作などである。これらの患者を評価するバイオマーカーは血清あるいは喀痰中の好酸球増多、高IgE値、呼気中一酸化窒素上昇などである(40)
皮膚テストにて確認された、あるいは総IgE高値とともに特定のアレルゲンIgE値の上昇によって確認されたアトピーを有する場合はomalizumabによって利益が認められる可能性がある。omalizumabはIgEに結合するモノクローナル抗体であり、高量吸入ステロイドとLABAの併用、あるいは他の薬剤治療にもかかわらず重度の喘息症状が続く患者における急性増悪を減らすことが確認されている(41)
アトピーの特徴の有無に関わらず好酸球上昇を認める患者には好酸球を呼び寄せて成熟させるIL-5の阻害剤が治療薬として使われる。これらの薬剤にはIL-5に直接結合するmepolizumab、reslizumab、そしてIL-5受容体に結合して好酸球のアポトーシスを誘導するbenralizumabがある(42)
dupilumabはモノクローナル抗体であり、IL-4とIL-13からのシグナルを阻害し、結果2型炎症を抑える(43, 44)
2型炎症をターゲットとする全ての薬剤は中等度から重度の喘息を有するtype 2 phenotypeの患者に効果が認められる。その効果には症状および呼吸機能の改善、経口ステロイド薬の必要性および急性増悪の減少、などがあるが薬剤ごとにその効果は異なる
副作用には過敏性反応があり、アナフィラキシーのリスクのため2剤(omalizumab、reslizumab)はblack box warningが与えられている
薬価が非常に高いため、現行の治療の注意深いレビューと最適化を行った後においてのみ限られた重症の患者に対し考慮する必要がある
あるスタディでは重症の喘息と考えられた患者の半数以上が、診断、並存疾患、薬剤へのアドヒーランスをシステマティックな段階を踏んで確認すると重症度が再分類され直した、と報告している(45)
step 5治療にて入院を防ぐ、あるいは減らすことができれば、重症で2型炎症を持つ喘息患者に対する生物学的療法は費用対効果的であると言えるかもしれない(41)
3つのrandomized, double-blind, placebo-controlled trialsのpooled analysisでは吸入ステロイド薬を使用している1405人の喘息患者が調べられた。omalizumabにて治療された場合、プラセボに比べ、入院、救急外来受診、予定外の外来受診を減らすことが示された(41)
生物学的療法
Omalizumab (Xolair)
75-375mg: 2週毎あるいは4週毎に皮下注射(用量および投与頻度を血清IgE値にて決定)
機序
Anti-IgE、Fc受容体に結合
適応
IgE値が30-1300IU/mLのアレルギー性喘息でaeroallergen skin testが陽性あるいは特定のaeroallergen IgE値が上昇
副作用
Black box warning (アナフィラキシーのリスク)
Mepolizumab
100mg: 4週毎に皮下注射
機序
Anti-IgE、IL-5 ligandに結合
適応
好酸球性喘息で好酸球数>0.15-0.3 x 10⁹cells/L
副作用
稀にアナフィラキシー
Reslizumab
3mg/kg: 4週毎に静注
機序
Anti-IgE、IL-5 ligandに結合
適応
好酸球性喘息で好酸球>0.4 x 10⁹cells/L
Benralizumab
300mcg: 3ヶ月毎に皮下注、その後8週毎
機序
Anti-IgE、IL-5 ligandに結合
適応
好酸球性喘息で好酸球>0.3 x 10⁹cells/L
Dupilumab
初期量400 or 600mg皮下注、その後300 or 200mg 2週毎に皮下注
機序
Anti-IL-4 and anti-IL-13、IL-4受容体に結合
適応
好酸球性喘息で好酸球>0.15 x 10⁹cells/L
非薬物療法
包括的な喘息治療はアレルゲンの管理とともに誘因を除去すること、タバコの煙のある環境に晒されることを減らすこと、健康的な食事、減量を促す運動プログラムなどが含まれる
肥満は喘息の重要なリスクファクターであり、減量は喘息コントロールおよび呼吸機能を改善し、急性増悪および入院を減らす(46, 47)
気管支サーモプラスティは気管支鏡を使用したラジオ波による気道治療であり、注意深く選ばれた患者においては急性増悪を減らし、QOLが向上する。気道の平滑筋量を減らすことによって気道攣縮を防ぐようデザインされた治療である。適応となるのはFEV1の予測値が60%以上で、高量吸入ステロイドとLABAの併用にも関わらずコントロール不良な重度の喘息患者である。現在のガイドラインでは長期的な効果を調べるためのスタディに登録する場合においてのみサーモプラスティを行うことを提案している(48)
多くの患者が鍼灸やハーブ療法などの代替治療に興味を持っている。喘息のマネージメントにおいてそれらの役割をサポートする、あるいは否定するのに十分なエビデンスはないが、ガイドラインでは鍼灸を推奨しないことが示されている(4)
運動誘発性喘息
運動誘発性気管支攣縮は喘息患者の症状の最もよくみられる誘因である
高い強度の運動中では喘息のない患者やアスリートにも起こりえる
環境的因子が症状の発症に重要な役割を果たしている。冬や室内アイスリンクなどの冷たく乾いた空気の中での運動、プールでの高い濃度のトリクロラミンへの暴露、空中の微粒子やオゾンの吸入、などが関与している
運動誘発性気管支攣縮のために活動を制限しなければならない、ということはない。呼吸機能は正常だが、咳、呼吸困難、喘鳴などの運動誘発性の症状を持つ患者では運動開始5〜20分前にalbuterol吸入を行うことによって効果的にコントロールすることができる
もし運動誘発性の症状が持続する場合は追加で吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬などを日々使用することで助けとなりえる。あるスタディでは軽度の安定した喘息を持つ患者にmontelukastを1日1回投与することで運動誘発性気管支攣縮を防ぐことに効果的であったことが報告されている(49)
運動前にはウォームアップエクササイズを行う、寒い環境で運動する場合はマスクを使用する、あるいは吸い込む空気を温め加湿するような装置を利用することなどを考慮すべきである
臨床家は運動誘発性気管支攣縮も治療の一環として考慮しなければならない
専門家紹介
step 5の治療を必要とする場合は通常専門家へ紹介すべきである
その他の患者で専門家紹介によって利益があるのは致死的に近い喘息発作を認めた、年のうちに経口ステロイドによる治療を行うことが2回以上あった場合などである
これらの患者ではphenotypingによる気道炎症の分類が必要になり、それに準じた適切な治療薬を使う必要がある。この場合2型炎症の患者では生物学的療法が最もよく使われる
患者が知っておくべきこと
患者はセルフマネージメントするために急性増悪も含め喘息症状をよく知っておく必要がある(4, 5)。早い対応が救急外来受診や入院を防ぐ可能性があるため、悪化時の初期のサインや症状、適切な取るべき行動を知っておくべきである
臨床家と患者は日々のマネージメント、悪化のサインや症状をどのように認識するか、急性の症状やピークフローの結果によってどのように薬剤を調整するか、などが書かれたアクションプランを共有する必要がある
中等度から重度の喘息患者では自宅で急性増悪に速やかに対応できるように薬剤(経口ステロイドなど)や装置(ネブライザーなど)などが利用できるようにしておく必要がある
外来における経口ステロイド治療
急性増悪を認める限られた患者では適切な治療の強化と、症状が持続あるいは悪化する場合は緊急受診を行うよう指示しておく事によって外来にて管理ができる場合がある
書かれたアクションプランに基づいて、全ての患者が悪化した症状に対して短期作用型β2アゴニストを使用すべきであり、患者によってはコントローラー薬剤もセットアップする必要がある場合も存在する
もし症状のコントロールが24〜48時間後にも不十分であった場合は、中等量の経口ステロイド(prednisoneあるいはprednisoloneを1日40〜60mg)を5〜7日間投与する必要があるかもしれない
症状が持続したり悪化する場合、また短期作用型β2アゴニストを4時間毎より多く使用しなければならない場合は速やかに医療機関を受診するように指示しておく必要がある
入院
中等度から重度の急性増悪で治療に十分な反応を示さない場合は入院が必要になるかもしれない。中等度から重度の増悪の症状は言葉を文で話せない、強いair hunger、臥位になれない、などである。身体所見では意識混乱、著明な頻呼吸や頻脈、補助呼吸筋の使用、などがある。呼吸苦がある患者の胸部診察にて喘鳴の低下あるいは消失を認める場合は悪いサインあるいは差し迫る呼吸不全の兆候である可能性がある
もし可能なら症状よりも客観的に呼吸機能を測定することの方が急性増悪の重症度評価はより正確にできる。FEV1が予測値の40-69%、あるいはピークフローが個人ベストの40-69%の場合は中等度、FEV1あるいはピークフローが40%以下の場合は重度と評価される
治療後のピークフローが40%以下のままである場合にはICU入院が必要になるかもしれない
救急外来退院時の適切な酸素飽和度やピークフロー値が良きアウトカムの予測指標になるという十分なデータはない
急性増悪による致死的あるいはそれに準じたイベントのリスク
喘息の病歴、社会経済的因子、並存疾患などは患者が急性増悪時に致死的あるいはそれに近いイベントが起こる高いリスクを有するかを同定する指標となる。多くの因子の中で悪いアウトカムを予測するものとして最も重要なものが、低い呼吸機能、過去12ヶ月のうちの1回以上の重度の急性増悪、挿管あるいはICU入院の既往である
フォローアップの頻度
フォローアップの頻度をガイドするための決定的なスタディはないが、新しく診断されて治療を開始した1〜3ヶ月後、そしてその後は症状の反応に基づいて3〜12ヶ月ごとにフォローすることが妥当であるとのコンセンサスが得られている。GINAガイドラインでは急性増悪の治療後7日以内にフォローすることが推奨されている(5)
1. To T, Stanojevic S, Global asthma prevalence in adults: findings from the cross-sectional World Health Survey BMC Public Health 2012;12:204
2. Centers for Disease Control and Prevention. Most Recent Asthma Data. Atlanta: Centers for Disease Control and Prevention; 2019. Accessed at www.cdc.gov/asthma/most_recent_data.htm on 1 March 2019.
3. Li JT, Clinical evaluation of asthmaAnn Allergy Asthma Immunol 1996;76:1-13
4. National Asthma Education and Prevention ProgramExpert Panel Report 3 (EPR-3): guidelines for the diagnosis and management of asthma—summary report 2007 J Allergy Clin Immunol 2007;120:S94-138
5. Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention. Updated 2018. Accessed at https://ginasthma.org on 1 April 2019.
6. Pellegrino R, Interpretative strategies for lung function testsEur Respir J 2005;26:948-68
7. Dempsey TM, Pulmonary function tests for the generalist: a brief review Mayo Clin Proc 2018;93:763-71
8. Crapo RO, Guidelines for methacholine and exercise challenge testing—1999. This official statement of the American Thoracic Society was adopted by the ATS Board of Directors, July 1999 Am J Respir Crit Care Med 2000;161:309-29
9. Perpiñá M, Diagnostic value of the bronchial provocation test with methacholine
10. Jain P, Utility of peak expiratory flow monitoring Chest 1998;114:861-76
11. Calverley PM, Bronchodilator reversibility testing in chronic obstructive pulmonary disease Thorax 2003;58:659-64
12. Asthma and Allergy Foundation of America; National Pharmaceutical Council. Ethnic Disparities in the Burden and Treatment of Asthma. 2005. Accessed at www.aafa.org/media/1633/ethnic-disparities-burden-treatment-asthma-report.pdf on 1 June 2019.
13. Althuis MD, Cigarette smoking and asthma symptom severity among adult asthmatics J Asthma 1999;36:257-64
14. Weiss ST, Environmental tobacco smoke exposure and asthma in adults Environ Health Perspect 1999;107 Suppl 6:891-5
15. Thomson NC, Asthma and cigarette smoking Eur Respir J 2004;24:822-33
16. Ostro BD, Indoor air pollution and asthma. Results from a panel study Am J Respir Crit Care Med 1994;149:1400-6
17. Gold DR, NIAID, NIEHS, NHLBI, and MCAN Workshop Report: The indoor environment and childhood asthma—implications for home environmental intervention in asthma prevention and management J Allergy Clin Immunol 2017;140:933-49
18. Institute of Medicine Committee on the Assessment of Asthma and Indoor Air Clearing the Air: Asthma and Indoor Air Exposures.Washington, DC:National Academies Pr;2000
19. Kanchongkittiphon W, Indoor environmental exposures and exacerbation of asthma: an update to the 2000 review by the Institute of Medicine Environ Health Perspect 2015;123:6-20
20. Kader R, Indoor environmental interventions and their effect on asthma outcomes Curr Allergy Asthma Rep 2018;18:17
21. Levy ML, Asthma patients' inability to use a pressurised metered-dose inhaler (pMDI) correctly correlates with poor asthma control as defined by the Global Initiative for Asthma (GINA) strategy: a retrospective analysis Prim Care Respir J 2013;22:406-11
22. Sanders MJ. Guiding inspiratory flow: development of the In-Check DIAL G16, a tool for improving inhaler technique Pulm Med 2017;2017:1495867
23. Irwin RS, Difficult-to-control asthma. Contributing factors and outcome of a systematic management protocol Chest 1993;103:1662-9
24. Gibeon D, British Thoracic Society Difficult Asthma Network Dedicated severe asthma services improve health-care use and quality of life Chest 2015;148:870-6
25. Hagan JB, The risk of asthma exacerbation after reducing inhaled corticosteroids: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials Allergy 2014;69:510-6
26. Suissa S, Low-dose inhaled corticosteroids and the prevention of death from asthma N Engl J Med 2000;343:332-6
27. Covar RA. Pivotal efficacy trials of inhaled corticosteroids in asthma Ann Allergy Asthma Immunol 2016;117:582-8
28. Pandya D, Systemic effects of inhaled corticosteroids: an overview Open Respir Med J 2014;8:59-65
29. McKeever T, Inhaled corticosteroids and the risk of pneumonia in people with asthma: a case-control study Chest 2013;144:1788-94
30. Greening AP, Added salmeterol versus higher-dose corticosteroid in asthma patients with symptoms on existing inhaled corticosteroid. Allen & Hanburys Limited UK Study Group Lancet 1994;344:219-24
31. Woolcock A, Comparison of addition of salmeterol to inhaled steroids with doubling of the dose of inhaled steroids Am J Respir Crit Care Med 1996;153:1481-8
32. Salpeter SR, Meta-analysis: effect of long-acting beta-agonists on severe asthma exacerbations and asthma-related deaths Ann Intern Med 2006;144:904-12
33. Peters SP, Serious asthma events with budesonide plus formoterol vs. budesonide alone N Engl J Med 2016;375:850-60
34. Stempel DA, Serious asthma events with fluticasone plus salmeterol versus fluticasone alone N Engl J Med 2016;374:1822-30
35. Seymour SM, Inhaled corticosteroids and LABAs—removal of the FDA's boxed warning N Engl J Med 2018;378:2461-3
36. White AA, Aspirin-exacerbated respiratory disease N Engl J Med 2018;379:1060-70
37. Löfdahl CG, Randomised, placebo controlled trial of effect of a leukotriene receptor antagonist, montelukast, on tapering inhaled corticosteroids in asthmatic patients BMJ 1999;319:87-90
38. Kerstjens HA, Tiotropium in asthma poorly controlled with standard combination therapy N Engl J Med 2012;367:1198-207
39. Wenzel SE, Evidence that severe asthma can be divided pathologically into two inflammatory subtypes with distinct physiologic and clinical characteristics Am J Respir Crit Care Med 1999;160:1001-8
40. Opina MT, Phenotype-driven therapeutics in severe asthma Curr Allergy Asthma Rep 2017;17:10
41. Corren J, Omalizumab, a recombinant humanized anti-IgE antibody, reduces asthma-related emergency room visits and hospitalizations in patients with allergic asthma J Allergy Clin Immunol 2003;111:87-90
42. McGregor MC, Role of biologics in asthma Am J Respir Crit Care Med 2019;199:433-445
43. Wenzel S, Dupilumab in persistent asthma with elevated eosinophil levels N Engl J Med 2013;368:2455-66
44. Rabe KF, Efficacy and safety of dupilumab in glucocorticoid-dependent severe asthma N Engl J Med 2018;378:2475-85
45. Heaney LG, Predictors of therapy resistant asthma: outcome of a systematic evaluation protocol Thorax 2003;58:561-6
46. Juel CT, Asthma and obesity: does weight loss improve asthma control? A systematic review J Asthma Allergy 2012;5:21-6
47. Pakhale S, Effects of weight loss on airway responsiveness in obese adults with asthma: does weight loss lead to reversibility of asthma? Chest 2015;147:1582-90
48. Chung KF, International ERS/ATS guidelines on definition, evaluation and treatment of severe asthma Eur Respir J 2014;43:343-73
49. LeffJ A, Montelukast, a leukotriene-receptor antagonist, for the treatment of mild asthma and exercise-induced bronchoconstriction N Engl J Med 1998;339:147-52
インザクリニック
アナルズオブインターナルメディシン
2019年10月1日