レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

インフルエンザ

 

インフルエンザAはウイルス表面の2つの主な糖タンパクに基づいてサブタイプに分類される(H: hemagglutinin (16種類), N: neuraminidase (9種類), H1N1, H3N2が人でよく流行する)。遺伝子が比較的不安定で流行しやすい

 

 

 

インフルエンザBはAに比べ多様性が少なく亜型分類されない。流行株はB/victoriaとB/yamagataという二つのグループに大別することができる。それぞれの抗原の差異はAに比べて小さく、Bに対する免疫やワクチンはほぼ同一であるため、Bのいずれかに感染、あるいはワクチン接種をすればB全てに対してほぼ一定の効果を得られる

 

 

 

米国においてインフルエンザは12月から3月にかけてピークを迎えるが、地域によっては4月あるいは5月でも認められる。インフルエンザBは一般的にAに比べ遅いピークを迎えより長く流行する

 

  

 

感染による合併症や入院のリスクが高いのは、5歳以下の小児、65歳以上の高齢者、妊婦、施設入居者、慢性疾患既往、免疫不全患者、19歳以下でアスピリン長期服薬中、重度肥満者(BMI>40kg/m2)等である

 

 

 

年齢6ヶ月以上のすべての人が毎年ワクチン接種を行うことが推奨されている

  

 

 

近年のスタディではワクチンの効果がインフルエンザのシーズン中に弱まっていく事が示されている。よって夏にワクチン接種を行うのは早すぎる可能性がある。それ以降かつ10月の終わりまでに接種することが理想的である(1, 2, 3)

 

 

 

ワクチンの効果はシーズン毎に変わり、また年齢、基礎疾患、免疫機能、そしてワクチン株と流行するインフルエンザ抗原の一致の程度など、様々な要因の影響を受ける

 

   

 

ワクチンの効果はインフルエンザの型またインフルエンザAのサブタイプによっても変わる

(近年のsystematic review and meta-analysisではワクチンの有効率はインフルエンザA(H1N1)で61%、インフルエンザBで54%、インフルエンザA(H3N2)で33%であった。インフルエンザA(H3N2)でワクチン株がよく一致した場合は有効率33%、しかし抗原連続変異があった場合は23%であった)(4)

 

 

 

ワクチンはインフルエンザ感染による入院を防ぐことに中等度有効である(5, 6, 7, 8)

 

 

 

抗原の含有量を増やしたワクチンの方がより有効であるかもしれない

50歳以上の成人8500人以上で行われたrandomized controlled trial では各hemagglutinin抗原の含有量を3倍にしたrecombinantワクチンは通常量の抗原を含むワクチンに比べより有効であることが示された(9)。また各抗原の含有量を4倍にした不活化ワクチンは通常の抗原含有量の不活化ワクチンに比べnursing home居住高齢者の呼吸器疾患に関連する入院を減らすことが認められた(10)

 

  

 

現在米国では様々な種類のインフルエンザワクチンが利用可能である

各ワクチンは以下の組み合わせによって種類が異なる

 

・不活化・生・遺伝子組み替え

・ 鶏卵培養・哺乳類細胞培養

・通常量抗原含有・高量抗原含有 

・三価・四価(三価は2つのインフルエンザA抗原(H3N2とH1N1)および1つのB抗原を含み、四価は上記2つのA抗原と2つのB抗原(B/YamagataとB/Victoria)を含む)

 

1. inactivated, standard dose, egg-grown, trivalent

2. inactivated, standard dose, egg-grown, quadrivalent

3. inactivated, standard dose, cell culture-grown, quadrivalent

4. inactivated, standard dose, egg-grown, quadrivalent, intradermal

5. inactivated, high dose, egg-grown, trivalent

6. adjuvanted inactivated, standard dose, cell culture-grown, trivalent

7. recombinant, high dose, trivalent

8. recombinant, high dose, quadrivalent

9. live attenuated, egg-grown, quadrivalent, intranasal

(4は皮下注、9は経鼻投与、それ以外は筋注投与である)

 

  

 

経鼻投与可能な生ワクチンがFDAに承認されたが、効果が特にインフルエンザA(H1N1)に対して弱いことが確認されたためCDCは2016から2018年のシーズンに使用しないことを推奨している(1)

 

 

 

インフルエンザワクチンは妊婦に投与しても重大な妊娠あるいは胎児への合併症を認めなかった(11, 12, 13, 14, 15)

 

 

 

インフルエンザワクチンがギランバレー症候群発症のリスクを高めるかどうかははっきりしていない

(observational studiesのsystematic review and meta-analysisではインフルエンザワクチンとGBSがわずかに関連することが示された(16)。一般的には、以前にインフルエンザワクチン投与6週間以内にGBSを発症した人でインフルエンザ感染による合併症リスクの低い人はワクチン接種をしない事が推奨されている。インフルエンザ感染による合併症リスクの高い人の場合はGBSのわずかなリスクよりワクチン接種による利益が上回る。またインフルエンザ感染自体によるわずかなGBS発症のリスクも減らしうる(17, 18))

 

 

 

インフルエンザワクチンの多くは鶏卵培養で作られるが、ワクチンによる重度のアレルギー反応は、卵アレルギーの人でさえ稀である。卵のアレルギーによって蕁麻疹のみが出る人にもインフルエンザワクチンは投与できる。卵のアレルギーによって血管浮腫、呼吸困難、めまい、嘔吐を認める人、あるいはエピペンを必要としたり、アナフィラキシーによって緊急対応を要する人の場合でさえ入院あるいは外来にて医療従事者の監視のもと投与することが可能とされている(1)

  

 

 

正常免疫能で合併症を伴わないインフルエンザ感染の症状を発症した人はおよそ4~7日間上気道からウイルスを排出するとされているが、一般的には3日目以降劇的にウイルスの排出および伝染性は下がる

 

 

 

randomized clinical trials の systematic review and meta-analysisではフェイスマスクを伴う手洗いが家庭内でのウイルス伝染(laboratory-confirmed transmission)を減らす事が示された(手洗いのみでは認められなかった)(19)。他のreviewでは手洗いやフェイスマスクがウイルス伝染を減らす効果は認められなかったが、その多くのスタディに欠陥が指摘されている(20)

 

 

 

neuraminidase inhibitorであるオセルタミビルと吸入薬ザナミビルがインフルエンザ予防薬として承認されている。予防薬は施設でのoutbreakに重要な役割を果たす。オセルタミビルはインフルエンザ予防薬としてnursing homeにおけるoutbreakのコントロールに有効である事が確認されている(21, 22, 23)。nursing homeでoutbreakが起こった場合は全ての居住者に予防薬を投与する事が推奨されている。予防薬は少なくとも2週間、outbreakの期間から1週間は長く投与されるべきとされている

 

 

 

インフルエンザが流行している最中は臨床診断のため、あるいは治療薬を処方するか判断する目的のためにインフルエンザの診断テストを行う必要はない (24)。テストの結果が臨床マネージメントに影響する場合は考慮する

 

  

 

重篤な患者では上気道のみからサンプルを採取した場合、RNA検査でも偽陰性となる可能性がある。気管チューブからの吸引あるいは気管支洗浄液によるサンプル採取によってインフルエンザ診断が可能となる場合がある(25, 26)

 

  

 

インフルエンザテストのsensitivityは、大人より子供の方が、咽頭より鼻咽頭から採取した方が、そして発症から数日以内にテストした方が一般的には高いとされている

 

 

 

インフルエンザ診断テスト

Rapid diagnostic test

antigen detection,   10 min,    low-moderate sensitivity,  high specificity

Rapid molecular assay

viral RNA detection,   15-20 min,    moderate-high sensitivity,  high specificity

Molecular assay

viral RNA detection,    60-80 min,    high sensitivity,  high specificity

 

   

 

Rapid diagostic testはsensitivityが高くないため偽陰性がよく認められる。入院患者ではmolecular assayによる検査が推奨される(27) 

 

 

 

インフルエンザの合併症は多岐にわたる

(中耳炎、心筋炎、心内膜炎、痙攣、脳炎、急性壊死性脳症、急性散在性脳脊髄炎、ギランバレー症候群、筋炎、横紋筋融解など)

 

  

 

発熱が3~5日間以上続く、症状が悪化する場合等は細菌感染の合併による肺炎あるいは髄膜炎の可能性を考え、血液、培養、画像検査などを考慮する

 

   

 

アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの解熱剤は水分喪失、また頻脈などによる代謝亢進を防ぎ、悪寒や筋痛などの症状を緩和する

(解熱剤治療が発症期間を長くしたり、または短くするという明らかなエビデンスは認められていない)

 

 

 

アスピリンあるいはアスピリンを含有する薬剤はインフルエンザあるいはその疑いの患者、特に小児および若年者ではReye syndrome のリスクがあるため避けるべきとされている(28, 29)

 

  

 

インフルエンザAおよびBに有効なneuraminidase inhibitors (経口オセルタミビル、吸入ザナミビル、静注ペラミビル)がインフルエンザの治療に推奨されている

 

オセルタミビル 

治療:75mg 経口1日2回5日間投与(重症患者ではより長い投与が必要となりうる)

予防投与:75mg1日1回(投与期間は暴露の期間に準ずる)

CDCによって入院患者の治療に推奨されている

腎機能低下では投与量の調整が必要となる

  

ザナミビル

治療:2吸入(10mg)1日2回5日間投与

予防投与:2吸入(10mg)1日1回(投与期間は暴露の期間に準ずる)

吸入ザナミビルはdataがないため入院患者治療には推奨されていない

  

ペラミビル

治療:600mgを15~30分かけて1回静注(1回投与がオセルタミビル5日間投与に匹敵する)

予防投与:適応なし

外来投与が推奨されている(入院患者治療の効果に関するdataは不十分である)

 

 

 

重症患者ではオセルタミビルを経口胃管あるいは経鼻胃管から投与する事が可能である

 

 

 

adamantane薬剤(アマンタジン、リマンタジン)はインフルエンザBに対する効果がなく、また現在流行しているインフルエンザ A(H1N1, H3N2)も抵抗性を示すためインフルエンザ治療に推奨されていない

 

 

 

CDCはインフルエンザ感染が確認された、あるいは疑いのあるすべての入院患者に対しneuraminidase inhibitorを検査結果を待たずにできるだけ早く投与開始することを推奨している

 

 

 

インフルンザで入院した患者のobservational dataでは抗ウイルス薬の投与開始が発症時に近いほど臨床効果が大きいことが示されたが、発症から48時間以降の投与でも投与しない場合に比べ利益がある事が示された(30)

 

  

 

外来ではインフルエンザが診断された、あるいはその疑いがあり、合併症リスクの高い患者では抗ウイルス薬治療が、たとえ発症から48時間以上経過していても、推奨される 

 

 

外来において発症から48時間以内に訪れた合併症リスクの高くないインフルエンザ、あるいはその疑いのある患者では抗ウイルス薬治療を行うかどうかは臨床判断に委ねられる

 

 

合併症を伴わないインフルエンザ患者の外来治療におけるrandomized clinical trialsでは発症48時間以内にneuraminidase inhibitor 治療を開始した場合、インフルエンザの発症期間をおよそ0.6~1日間短縮することが示された(31, 32)

 

 

 

成人外来患者におけるオセルタミビルとプラセボを比較したrandomized controlled trialsのmeta-analysisでは オセルタミビル投与が抗菌薬治療を要する下気道感染合併およびいかなる理由による入院のリスクを減らす事が示された(31)

 

 

 

 

 

 

 

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IN THE CLINIC

Annals of Internal Medicine

5 September 2017 Volume 167 Number 5