レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

C型肝炎ウイルス

 

全経口投与可能、短期間投与、耐容性良好、広く入手可能、効果の高い急性および慢性C型肝炎ウイルス感染に対する抗ウイルス薬の急速な発達によってウイルスの根絶が達成可能なゴールとなっている。2016年にWHOは2030年までにHepatitis C virus (HCV)の影響をなくす国際戦略とアクションプランをかかげている(1)

 

 

HCVは米国において最もよく見られる血液感染性の病原体である

 

HCV RNAが治療終了後少なくとも12週間検知されない状態、sustained virologic response (SVR)が治癒とみなされる

 

現在SVRは8〜12週間の経口抗ウイルス治療を受けた患者の95%以上で達成される(2)

 

SVRの結果、生命をおびやかす合併症である肝癌(3)および総死亡率(4)が著しく減少する

 

HCV感染はもはや米国における肝移植の最たる原因ではなくなったが(5)、新たな抗ウイルス治療にもかかわらず、依然肝癌の最も多い原因である(6)

 

 

伝染

HCV患者の多くは感染した血液への経皮的な暴露によって感染する

 

血液感染の主な2つの経路はドラッグ注射と医原性感染である

 

ドラッグ注射を行う人の間での感染血液に汚染された注射器の共有によって伝染することが多い

 

ドナー血液のスクリーニングが始められた1992年以前の血液製剤への暴露もHCV感染のリスクファクターとなる

 

タトゥーやピアスなどの美容的手技は厳格な感染コントロール手段が取られる限り感染リスクは非常に低いと考えられている

 

適切な感染コントロール手段が取られていない状況では血液透析を受けている患者での高い感染率が報告されている(7)

 

HCV RNAがウイルス血症患者の精液に検知される場合があるため、HCVは性交渉によって伝染するかもしれない。しかしセロステータスの異なる異性間カップルで行われたスタディでは伝染性は非常に低いことが報告されている(8)

 

HCVは男性間での性交渉(MSM: men who have sex with men)、特にプロテクトされていないアナルセックス、あるいはHIV感染を有する場合などでは伝染率が高いと考えられている(9)

 

HCVの母から子への感染率は4〜5%と考えられている(10)。母乳と感染の関連が認められず、授乳は安全と考えられている(11)

 

HCVセロステータスが異なり他に関係を持たない長期の異性カップル間でのコンドーム使用は推奨されていないが、多数の関係を有する患者やHIV陽性のMSMにおいては推奨される

 

患者から医療従事者への針刺し事故後の伝染予防処置を取ることは推奨されていない。感染のリスクが低い事、感染が起こっても効果的な抗ウイルス治療があること、およびコストがかかるためである(12)

 

 

 

 

スクリーニング

急性期および慢性期の大半が無症状であるためHCV感染のスクリーニングを行うことが推奨される

 

American Association for the Study of Liver Diseases and the Infectious Diseases Society of America (AASLD/IDSA)は18歳以上のすべての人に単回のスクリーニングを行うことを推奨している(2)

 

ドラッグ注射使用者、HIV陽性MSMなどのリスクが持続する人の場合は少なくとも年毎のスクリーニングを行う必要がある(13)

 

 

 

 

診断

 

自然経過

HCV暴露後の潜伏期間は2〜12週間であり、その間HCV RNAは検知され伝染可能であるが、肝酵素(ALT)は正常のままである

 

潜伏期間後、軽度の肝炎が起こるが、多くの患者が無症状で10〜15%においてインフルエンザ様症状、筋痛、黄疸、濃い尿、などが見られる。劇症型の報告もあるが非常に稀である。大半が無症状であることより急性感染の患者が医療機関を受診することは少ない

 

Anti-HCV antibodies (HCVAbs)は感染の初期では検知されないままである場合が多く、この時期に検知するためにはHCV RNAテストが必要となる

 

急性期にspontaneous viral clearance(再検査にてHCV RNAが消失)がおこる割合は15〜45%である。これは若年者、女性、特定の遺伝的多型を有する、などの有症状者により多く見られる(14)

 

spontaneous clearanceは感染から6〜12ヶ月以内に起こることが一般的である。慢性感染が確立した後に治療なしでウイルス消失が起こるのは12ヶ月以降であるが、非常に稀である(14)

 

感染後の最初の1年はHCV RNAが検知される事とされない事が揺れ動くので(15)、モニタリングを中止する前にウイルス血症消失の確認を繰り返し行うことが重要となる

 

無治療の急性感染患者の多くが慢性感染へと進行する。慢性感染の間、ALTは通常では常にあるいは間欠的に上昇するが、20%までの患者では正常のままである可能性もある

 

慢性感染患者は通常無症状であるが、クリオグロブリン血管炎、ポルフィリン症、インスリン抵抗性/糖尿病、慢性腎臓病、倦怠感などの肝外症状を認める場合もある(16)

 

 

 

HCV感染の肝外徴候

クリオグロブリン血管炎

膜性増殖性糸球体腎炎

膜性腎症

単クローン性ガンマグロブリン血症

非ホジキンリンパ腫

関節痛/関節炎

レイノー現象

倦怠感

シェーグレン症候群

扁平苔癬

porphyria cutanea tarda

糖尿病/インスリン抵抗性

甲状腺機能低下症/甲状腺機能亢進症

 

 

 

 

慢性感染の主な続発症は肝線維症であり、数十年かけて肝硬変と進展する。15〜20%の慢性HCV感染患者が20年かけて肝硬変に進展する(17, 18)

 

肝疾患進展への最も大きいリスクファクターは感染獲得の年齢である(19)。50歳以降に感染した人の60%以上が20年以内に肝硬変になるのに対し、40歳以前に感染した人が肝硬変になる割合は10%以下である

 

定期的なアルコール摂取、脂肪肝、他のウイルスの重複感染(HIV、HBVなど)も線維化を促進する

 

いったん肝硬変を発症すると、門脈圧亢進症(腹水、食道や胃からの消化管出血)、肝性脳症、肝細胞癌などの合併症により非常に死亡率が高くなる

 

HCV関連肝硬変による肝細胞癌リスクは治療成功がない場合は年3%までと高くなる

 

 

診断検査

患者はanti-HCV (HCVAb)テストによってスクリーニングされる。これは感度と特異度が高い(20)。HCVAbはnucleic acid testing (NAT) に比べ安価であるが、現在と過去の感染の判別ができず、偽陽性もみられる。NATが急性期およびHCVAb産生が遅れる可能性のある免疫不全患者では好ましい。いったんHCVAb陽性が確認されたら、PCRを使ってHCV RNAを測定し現在の感染かを確認する

 

HCV RNA titersと病態の進行あるいは線維化との関連性が認められないため、抗ウイルス治療を受けている患者以外でHCV RNAを繰り返し測定する意義はない

 

6つの主なviral genotypeがあり、genotype 1(特にsubtype 1a)が米国において最もよく認められる。すべてのgenotypeにおいて臨床経過は非常によく類似している。過去には治療レジメンと治療期間を決定するためにgenotypeの評価が必要であったが、AASLD/IDSAの新たに単純化されたガイドラインではgenotypeに基づく治療アルゴリズムは大多数の治療候補者においてもはや推奨されない。genotype検査は肝硬変の患者においては依然有用である。またいったんウイルス消失した後に新たなgenotypeあるいはsubtypeが検出された時に再感染を同定する場合などにも有用である

 

全生化学とGFR推定、血算、PT/INRはすべてのHCV感染患者で測定される必要がある。腎機能低下が見つかれば、尿タンパクおよび血清クリオグロブリンの測定を行う必要がある。HCV患者は感染経路が共有されることからHIVとHBV(HBsAg、HBsAb、HBcAb)のスクリーニングも行わなければならない。A型肝炎の免疫に関する評価も推奨される(HAV IgG)。可能なら超音波にて肝硬変を同定するため肝臓の結節性および脾臓の大きさを測定することも有用である。ただ検査結果が正常であっても肝硬変は除外できないことにも注意が必要である

 

 

 

線維化の程度を評価することの重要性

併存する脂肪肝やアルコール依存がなければ抗ウイルス治療はC型肝炎による代償性肝硬変から非代償性肝硬変に進行するリスクを本質的には無くすことが可能である。しかし線維化が進行した患者、特に肝硬変患者においては肝細胞癌のリスクが高くなる(3, 21)

 

アルコール摂取や非アルコール性脂肪肝などによる肝障害が併存する場合は線維化が進行した患者あるいは肝硬変患者において肝代償不全や肝細胞癌のリスクが高くなる。したがってアルコール摂取を中止あるいは減量、体重減量、脂質異常症の治療、インスリン抵抗性のマネージメントなどのリスクファクターの修正が肝不全の原因が2つ以上ある患者においては強調される必要がある。肝細胞癌あるいは肝代償不全がおこれば、肝移植を考慮する必要がある

 

 

 

血液検査

脾摘あるいは他の骨髄抑制の原因などがなければ血小板数は門脈圧亢進の代理マーカとして非常に有用である。血小板数が200×10⁹ cells/L (20万/μL)以下の場合は疑いを持たなければならない。160×10⁹ cells/L (16万/μL)以下あるいは110×10⁹ cells/L (11万/μL)以下の場合の肝硬変に対する特異度はそれぞれ88%および95%である(22)

 

血清アルブミンが35g/L (3.5g/dL)以下の場合の肝硬変に対する特異度は90%であり、38g/L (3.8g/dL)以下の場合は可能性を考慮する必要がある

 

HCVウイルスレベル、AST値あるいはALT値と線維化の程度とは相関を認めない

 

AST、ALT、血小板数によってFibrosis-4 (FIB-4)とAST-platelet ratio index (APRI)の2つの指標が計算できる。AASLD/IDSAガイドラインではFIB-4を治療開始前評価の1つとして推奨している(http://www.hepatitisc.uw.edu/page/clinical-calculators/fib-4)(2)。FIB-4スコアが3.25以上の場合は肝硬変も含む進行した線維化に特異性が高い。よって新たにHCV感染が診断された多くの患者の初回診療において進行した線維化のリスク評価が容易に行うことが可能である

 

 

 

線維化の決定

線維化ステージを決定することは疾患および死亡率を評価することの助けとなる(23)。いくつかの線維化スコアリングシステムが存在するが、METAVIRが最もよく使用され、F0 (線維化なし)からF4 (肝硬変)までをステージングする

 

肝線維化評価のゴールドスタンダードは生検であり、適切に採取され評価された場合は最も正確な指標となる。また脂肪性肝炎などの原因も検知することが可能だ。しかし現在ではサンプリングエラーや評価者間での相違などのリスクがあることからゴールドスタンダードとしての地位が下がっている。また侵襲的で強い疼痛や出血の小さなリスクも有している

 

非侵襲的な線維化評価がより多く行われるようになってきている。安価で患者の受容も良く、生検に比べ繰り返し行うことが可能である。肝超音波検査などは進行した肝硬変を同定することが可能だが、初期の肝硬変では感度が高くない

 

ステージングを行う非侵襲的画像アプローチが広く利用できるようになってきている

 

FibroScanは超音波に基づく画像手段で線維化の程度に相関する肝臓の硬さを測定する。Acoustic radiation force imaging (ARFI)とpoint shear-wave elastography (pSWE)はエラストグラフィック技術で既にある超音波システムに組み込まれている。ARFI/pSWEはベースライン評価の腹部超音波検査時に行われる場合もあり、FibroScanよりも利用しやすい地域もある。magnetic resonance elastography (MRE)はMRIに基づく肝線維化を評価する手段で特殊なハードウェアとソフトウェアをインストールする必要があるが、超音波ベースのアプローチに比べ進行した線維化や肝硬変の診断能力が高い

 

 

 

 

治療

 

進行を遅らせる方法は

アルコールの定期摂取は線維化進行との関連を認め、中等度の摂取でさえも悪い予後と関連する(24)。安全な摂取量が確立されていないため線維化が進行したあるいは肝硬変を有するHCV感染患者は禁酒が勧められる(2)

 

コーヒー摂取は線維化進行を遅らせ、肝細胞癌の発生率を下げるデータがある(25)

 

進行した肝疾患患者では腎障害および消化管出血のリスクがあるためNSAIDsは避けるべきである

 

一般的にアセトアミノフェンは1日2gを超えない限り安全とみなされている

 

スタチンは肝疾患患者に安全に使用でき、肝細胞癌や肝非代償および死亡を減らす可能性があると考えられている(26, 27)

 

A型肝炎に対するワクチンを慢性肝疾患患者、特に慢性C型肝炎の患者に施行することが推奨されている。両ウイルスの重複感染がより重篤な肝障害をきたす可能性があるからだ

 

肝硬変患者では感染リスクが高まるため、肺炎球菌および毎年のインフルエンザワクチン摂取を行うべきである

 

HIVあるいはHBVが陰性のHCV感染患者では重複感染を予防することが重要である。HBV感染はワクチンによって防ぐことができる

 

選ばれたHCV関連の肝硬変患者では上部消化管内視鏡による食道静脈瘤のスクリーニングが推奨される(28)

 

すべての肝硬変患者では肝画像検査(通常超音波であるが、造影CTあるいは造影MRIも使用される)とαフェトプロテイン血液検査による肝細胞癌のスクリーニングを、治癒が達成された後でさえ、6ヶ月毎に行う必要があ(3, 29)

 

 

 

すべてのactive HCV感染患者において抗ウイルス治療は利益があるとのコンセンサスが得られているが、ウイルスの根絶によって状態が変わらない生命予後の短い患者は例外となる(2)

 

 

 

 

治療前検査

治療前血液検査はHBcAb IgG、HBsAg、HBsAb、HCV RNA、血算、総生化学、推定GFR、妊娠テスト(現在のすべてのdirect-acting antiviral (DAA)治療は妊娠カテゴリーCとされている)が含まれる

 

genotypeテストは多くの患者では必要とされないが、genotype 3 感染の肝硬変患者の治療選択にウイルスの抵抗性を調べる必要があるため、ウイルスgenotypeテストは肝硬変患者、特に非代償性肝硬変患者では有用となる

 

肝硬変でgenotype 3 感染が確認された患者ではnonstructural protein 5A (NS5A) viral resistance mutationsを調べなくてはならない

 

 

 

薬剤相互作用

線維化の評価に加え、患者が服用する全ての処方薬と市販薬を確認する必要がある。起こりえる薬剤相互作用をLiverpool HEP Drug interaction toolで調べることが可能である(http://www.hep-druginteractions.org/)。考慮すべきことの主なものには、アミオダロンはソホスブビルが含まれるレジメンと共に投与されると重度の徐脈を起こす可能性、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、フェニトイン、リファンピン、チプラナビル、St.John's wortなどの強いシトクロムP450誘導剤は有効血中濃度を下げる可能性、スタチンはプロテアーゼ阻害剤と共に投与されるとtoxic levelを上げる可能性、エチニルエストラジオールを含む避妊薬と特定の化学療法薬はプロテイン阻害剤によって濃度が高められる可能性、プロトンポンプ阻害剤は特定のNS5A阻害剤の吸収を抑制する可能性、などがある

 

 

 

治療レジメンの選択

肝硬変の有無、以前の治療の有無が治療レジメン選択決定の要となり、リバビリンを追加するか、あるいは治療を延長するかを決定する。また選択は服用薬剤との薬剤相互作用を最小化することや服薬数負担を減らすことなども考慮して行われる

 

承認されているDAAには3つの成分がある。NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、NS5A阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤である。投薬量が固定された合剤には2〜3剤が含まれる。単剤治療では速やかに起こるウイルス抵抗性のために有効でなくなるため合剤治療が必要となる

 

抗HCV治療剤の中で最も安全性が低いため、ペグインターフェロンはもはや使用されない

 

リバビリンも既に有用性が低くなっているが、必要となる場合もある

 

 

 

特定の患者における考慮

 

HIV/HCV重複感染

HIVとHCV重複感染患者におけるDAA治療の成功率と耐容性はHCV単独感染者と同等である(30, 31)。HIV/HCV重複感染で考慮すべきことはHCV DAAと抗レトロウイルス治療の薬剤相互作用である。スタディでは正しく組み合わされた場合は抗HCV DAAはHIV抑制を阻害しないと報告されている

 

 

HBV/HCV重複感染

重複感染の患者ではC型肝炎ウイルスは通常B型肝炎ウイルスの複製を抑制する。したがってHCV抑制はHBV再燃(HBV reactivation: HBVr)を起こす可能性がある。HBsAg陽性の患者はHCV治療中および治療後にHBVに対するDAA(エンテカビル、テノホビル)にて治療される必要がある。HBsAg陰性でHBcAb陽性の患者のHBVrのリスクは1%以下であるがHCV治療数年後に起こる場合もある(32)。これらの患者はHCV治療終了後少なとも24週間はHBVrをモニターする必要がある

 

 

非代償性肝硬変

肝非代償の患者ではインターフェロンに基づく治療は危険であるが、プロテアーゼ阻害剤を含まない経口レジメンは高い効果を持って安全に投与できるかもしれない(33)

非代償性肝硬変患者の治療は肝臓専門医にて、理想的には肝移植センターで行われることが望ましい。治療前に肝移植の適応が評価される必要がある。患者が肝移植の適応があり肝非代償性が強い場合は肝移植後まで抗ウイルス治療を延期することが適切な場合もある

 

 

慢性腎臓病

慢性腎臓病ステージ4あるいは5の患者もいずれのstandard first-line DAAにて治療を行うことができる。透析およびHCV陰性ドナーからの長い待機期間より死亡率が高いことから治療を移植後に延期することが適切であるかもしれない

 

 

 

HCV治療の効果

ソホスブビル/ベルパタスビル、ソホスブビル/ベルパタスビル/ボキシラプレビル、ピブレンタスビル/グレカプレビルがすべての主要なHCV genotypeの治療としてFDAに承認されている(34)。未治療で非肝硬変患者のどのgenotype感染患者へも効果は95%を超える

 

ソホスブビル/ベルパタスビル

ASTRAL-1試験では121人の代償性肝硬変を含むgenotype 1, 2, 4 ,5, 6で未治療あるいはインターフェロン治療を経験している患者624人に対し12週間のソホスブビル/ベルパタスビル1日1回投与を行った結果99%で効果を認めた。重篤な副作用は治療薬を投与された2%の患者で認められた。プラセボ投与を受けた116人の患者では1人もSVRが達成されなかった(35)

 

ピブレンタスビル/グレカプレビル

ENDURANCE-1試験ではgenotype 1で、未治療の(62%)あるいは以前にインターフェロンベースのレジメン治療を受けた(38%)、患者703人が無作為に抽出され8週間あるいは12週間のピブレンタスビル/グレカプレビルが投与されて行われた(36)。SVR率は8週間および12週間グループでそれぞれ99.1% (CI, 98%-100%) および99.7% (CI, 99%-100%)であった

 

ソホスブビル/ベルパタスビル/ボキシラプレビル

ソホスブビル/ベルパタスビル/ボキシラプレビルは初回レジメンあるいは以前の治療後に再発した患者に投与される。POLARIS-2とPOLARIS-3試験では34%の肝硬変を含む611人の未治療患者にソホスブビル/ベルパタスビル/ボキシラプレビルが投与されて行われた。12週間治療によるSVR率はすべてのgenotypeにおいて95〜98%であった(37)

 

 

 

治療の安全性

ペグインターフェロンとリバビリンは様々な副作用や禁忌を認める。これらの薬剤を含むレジメンは現在では使われることが少なくなっている(38)

 

ペグインターフェロンやリバビリンを含まない抗ウイルスレジメンも倦怠感、頭痛、嘔気などの副作用を認める。これらが認められるのは比較的少なく一時的で、持続したりあるいは重度で治療中止しなければならないことは稀である(39)。非代償性肝硬変ではプロテアーゼ阻害剤を含むレジメン(ピブレンタスビル/グレカプレビル、ソホスブビル/ベルパタスビル/ボキシラプレビル、グラゾプレビル/エルバスビル)などは避けるべきである

 

 

 

治療中のモニタリング

外来受診や電話による抗ウイルス薬治療中のアドヒランスモニタリングは有用である。糖尿病患者では抗ウイルス治療がインスリン抵抗性を改善させ、低血糖をきたす可能性があるためカウンセリングを行う必要がある。ワーファリン治療中の患者ではINRの変化をきたす可能性があり、投与量を調整する必要があるかもしれない。それら以外ではDAAは非常に安全な薬剤であり、特定の血液検査にてモニターする必要はない。HCV RNAは治療開始4週間後にアドヒランスの指標として評価することが可能で、HCV RNAはほぼ全例で検知されない、あるいは非常に少ない量が検知される。高量検知される場合はアドヒランスが最適でないことが示唆される。B型肝炎ウイルスに暴露歴のある患者(HBcAb陽性、HBsAg陰性)ではHCV血症が改善した後にHBVrの小さなリスクがあり、DAA治療終了12週間後および24週間後に再燃の評価(HBsAg)を行わなければならない(32)

 

 

 

治療終了後のモニタリング

肝硬変発症前にSVR(治癒)を達成した患者では治療後に肝臓関連のモニタリングを行う必要はない。肝硬変を認める患者では6ヶ月毎の超音波およびαフェトプロテインによる肝細胞癌のサーベイランスを行い続ける必要がある

 

SVRの持続性は大きな前向き試験で確認されており、5年のフォローアップにおいてHCV RNA陰性が99%以上で持続した。治療成功後に再感染のリスクファクターがある患者では年毎のHCV RNA評価が必要になる

 

慢性C型肝炎のよく見られる症状の倦怠感は抗ウイルス治療成功後に改善するかもしれない(40)

 

SVRは肝臓の炎症減少およびALT値の正常化との関連を認める。SVR後にALT上昇が持続する場合はさらなる検査が必要かもしれない

 

肝酵素値正常化後の新たな上昇は再燃(通常治療終了後12週間以内)か再感染(治療終了後いつでも起こりえる)かを決定するためHCV RNAテストを行う必要がある

 

 

 

 

 

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インザクリニック

2020年9月1日

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