レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

高血圧

 

近年高血圧治療に関するいくつかの新しいガイドラインが発表された(1, 2, 3)。新しいガイドラインでは最近の臨床試験やアップデートされたエビデンスに基づき、かなりの変更が含まれている(1, 2, 3)。いくつかの問題に関するガイドライン間での相違は大きな論争を巻き起こした(4, 5, 6, 7, 8)。専門家が利用可能な科学的根拠を公正に評価しても、そのデータを実臨床にどのように落とし込むかは専門家それぞれで異なる考え方を持ちうるからだ

 

 

ここでは主に2017年に発表されたAmerican College of Cardiology and the American Heart Association(ACC/AHA)のガイドラインをフォローし、臨床的に関連するアップデートを提供する(1)

 

 

 

 

2017年ACC/AHAの高血圧に関するガイドラインの主なアップデート

 

・高血圧と定義される値が下がったことを含む高血圧の新たな分類

 

・外来における正しい血圧測定技術の強調

 

・外来以外での血圧モニタリングも高血圧の診断、白衣高血圧や仮面高血圧(masked hypertension)の評価、および治療決定の指針に利用すること

 

・いつ二次性高血圧の評価を考慮するかのアウトライン

 

・生活習慣および非薬物的治療の強調

 

・アテローム性動脈硬化性心血管疾患10年リスクを計算し薬物治療の開始およびその強度決定のガイドにすること

 

・非薬物的治療を新たに分類された"elevated blood pressure"(血圧上昇)およびそれ以上の値の全ての患者に行うこと(血圧120/80mmHg以上のすべての人)

 

・ステージ1高血圧(血圧130-139/80-89mmHg)でハイリスク患者(アテローム性動脈硬化性心血管疾患の既往、10年リスク10%以上、糖尿病、慢性腎臓病)に対し早期に薬物治療を開始すること

 

・新たに診断されたステージ2高血圧(血圧140/90mmHg以上)の全ての患者に直ちに薬物治療を開始すること

 

・ほとんど全ての患者に対する血圧目標値を130/80mmHg以下とすること

 

・早い段階での薬剤併用を強調

 

・合併疾患をもつ異なる患者へのガイドライン

 

・治療に対する新たな戦略の支持

 

 

 

 

 

成人の高血圧分類

 

正常:収縮期血圧120mmHg未満 かつ 拡張期血圧80mmHg未満

血圧上昇:収縮期血圧120-129mmHg かつ 拡張期血圧80mmHg未満 

高血圧

 ステージ1:収縮期血圧130-139mmHg あるいは 拡張期血圧80-89mmHg

 ステージ2:収縮期血圧140mmHg以上 あるいは 拡張期血圧90mmHg以上

 

2回以上の外来受診で基準値を満たす必要がある

 

 

 

 

 

 

高血圧は疾患および死亡に対する最たるリスクファクターである(9)。世界でおよそ10億人が収縮期血圧140mmHg以上、35億人が理想血圧115/75mmHgより高い値を有する(9, 10, 11)

 

 

高血圧は腎および末梢血管疾患、動脈瘤、網膜症、神経認知機能低下、心房細動などに関連する。また左室肥大、タンパク尿、動脈硬化、白質疾患などの多くの臓器障害の原因となる

 

 

通常の血圧が115/75mmHgから185/115mmHgにある40歳から70歳の人では、収縮期血圧が20mmHg上がる毎に、あるいは拡張期血圧が10mmHg上がる毎に、虚血性心疾患あるいは脳卒中による死亡リスクが2倍に増えていく(12)

 

 

 

以前のガイドライン(13, 14)では140/90mmHgがゴールとされており、European Society of Cardiology and the European Society of Hypertension(ESC/ESH)の2018年のガイドラインでも特定の患者へのゴールとしてはその値が採用されているが(2)、130/80mmHg以下をESC/ESHではほとんどの患者へのゴールとして、またACC/AHAでは全ての患者へのゴールとすることが提唱されている(1)

 

 

 

最近の分析では収縮期血圧130mmHgを目指す事が治療による利益とリスクのバランスを最大限にすることが示されている(15, 16)

 

 

 

総体的な科学的根拠および、高血圧とはその値以上に対して治療を行うと害よりも利益の方が大きくなるもの(17)、という考え方に一致させて、ACC/AHAガイドラインは高血圧の定義を130/80mmHg以上にまで引き下げた

 

 

 

 

スクリーニングをすべきか

The U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)は40歳以上で高血圧のリスクが高い人(血圧130-139/85-89mmHg、肥満、African Americans)へは一年毎の高血圧スクリーニグを提唱している(18)。逆に18〜39歳で血圧130/85mmHg以下でリスクファクターのない人へは3〜5年毎のスクリーニングを推奨している。 2017年のACC/AHAガイドラインでは正常血圧の成人へは一年毎のスクリーニングが妥当だろうと記されている

 

 

 

以前は高血圧のカテゴリーとして血圧120/80〜139/89mmHgがprehypertension(高血圧前症)と定義されていた(14)。この定義は高血圧と規定される値が下がった事により、最近のガイドランには含まれていない(1, 2)。その代わりに"elevated BP"という言葉が収縮期血圧120-129mmHgに対し使用されるようになった。その理由としては、この値の人は高血圧とは定義されないものの、正常血圧の人(120/80mmHg以下)に比べ心血管イベントのリスクが高くなり、その認識が重要になるからである。また高血圧に進展するリスクも上がる。したがってモニタリングやフォローアップをより強化することが推奨される

 

 

 

 

診断

高血圧の診断はシンプルだが多くの場合そのステップが守られていない。最も多い間違いは不適切な血圧測定である。測定前に5分間安静にしていない、測定する肢をサポートしていない、小さすぎるカフを使用している、などが含まれる。これらの間違いは忙しい診療で時間がないためによく起こることだが、それは重大な問題を起こし得る。なぜなら間違って血圧が高く測定され、誤診につながるからだ

 

 

 

 

血圧測定の仕方

・リラックスし、足を地につけ、背もたれのある椅子に5分間座る

(診察台の上での座位や臥位は基準を満たさない)

・測定前の30分以内のカフェイン、運動、喫煙を避ける

・排尿を先に済ませる

・腕を心臓の高さでサポートする(机の上に休ませる)

・両腕で測定する。高い方の腕を記録し、その腕を他の測定(立位、臥位)やその後の測定でも使用する

・患者および測定者は安静中および測定中に話をしてはならない

・適切なカフサイズ(☆)を使用し、通常より大きいものや小さいものが必要な場合は記録しておく

・生地の厚い服の上からカフを巻かない

 

 

 

 

カフサイズ(☆)

腕周り24-32cm・女性150lb(68kg)以下・男性200lb(90kg)以下 

ー>カフサイズ:Regular

 

腕周り33-42cm ・女性150lb(68kg)以上・男性200lb(90kg)以上 

ー>カフサイズ:Large

 

腕周り38-50cm

ー>カフサイズ:Thigh(大腿)

 

 

 

 

患者の血圧は大きく変化しうる。通常数分あけて測定する間に下がっていく。多くの臨床試験では治療の効果判定に1回の測定でなく、複数回の測定による値を採用している。その理由から、1回の測定で血圧を評価する、あるいは高血圧と診断するのは不適切であり、血圧は受診毎に最低2回は測定し、その平均値を評価する必要がある。さらには、1回の受診の平均値よりも複数回の受診の平均値を使用する方が有効である。従って高血圧の診断およびその評価は少なくとも2回以上の受診時の値に基づいて行われなければならない

 

 

 

マニュアル測定によるエラーがなくなる理由から腕の血流の拍動を測定する自動血圧測定器の使用がスタンダードになっている。最近のスタディでは”無人”の血圧測定の有効性が示されている(19)

 

 

 

2017年のACC/AHAのガイドラインでは24-hour Ambulatory Blood Pressure Monitoring(ABPM)や自宅での測定を含む外来以外での血圧モニタリングの重要性が強調されている(20)。外来以外でのモニタリングによって高血圧の診断および白衣高血圧や仮面高血圧を見つける助けとなる。また高血圧治療薬の調整にも有効である(18, 21)

 

 

 

 

白衣高血圧

白衣高血圧は外来では血圧が高いが、家や24-hour ambulatory monitorでは正常である、と定義されている(22)。白衣高血圧は外来で血圧高値である人の15〜30%の割合で存在するとされている(23, 24)。白衣高血圧は高血圧になるリスクが高くなる。心血管リスクも軽度上昇するが、これは血圧正常者に比べ外来以外での血圧も少し高い傾向(130/80mmgHg以下ではあるものの)にあることによる(25, 26, 27)。2017年のACC/AHAガイドラインでは収縮期血圧130〜160mmHgあるいは拡張期血圧80〜100mmHgで未治療の患者ではABPMや家での血圧モニタリングを行って白衣高血圧のスクリーニングを行うことが妥当だとしている。また白衣高血圧と診断された人ではABPMや家での血圧モニタリングを1年毎に行って高血圧への進展を評価することも妥当だとしている。現在のガイドラインでは有効性を示すエビデンスが欠如していることより白衣高血圧への薬物的治療を推奨していないが、生活習慣の改善および定期的なフォローアップを推奨している

 

 

 

 

仮面高血圧(masked hypertension)

外来では血圧が140/90mmHg以下の人の10〜40%までが、家あるいはambulatory monitoringでは高い血圧を認め、仮面高血圧として知られている(27, 28)。仮面高血圧は持続する高血圧となるリスク、また心血管疾患およびそれによる死亡率のリスク上昇と関連している(27, 29)。よって家での血圧測定およびABPMは仮面高血圧のスクリーニングとして重要である。2017年のACC/AHAガイドラインでは外来での血圧が収縮期血圧120〜129mmHgあるいは拡張期血圧75〜79mmHgで未治療の患者に対し仮面高血圧のスクリーニングを行うことが妥当だとしている。外来での血圧が130/80mmHg以下の患者の30%が仮面高血圧であったことがdaytime 24-hour ABPMによって明らかにされたと報告されている(30)。ACC/AHAガイドラインでは生活習慣改善の継続を推奨しているが、初めて仮面高血圧に対する薬物治療開始も推奨している

 

 

 

 

ABPM

ambulatory BP monitorは24時間の通常活動中に患者に装着する携帯器具である。通常、日中は15〜30分毎に、夜間は30〜60分毎に血圧が測定される。ABPMは心血管リスクを予測する最も有力な"gold standard" assessmentを提供する(20)

 

 

ABPMの適応と考えられるもの

・異常な血圧の変動

・白衣高血圧の可能性

・夜間高血圧の評価

・治療抵抗性高血圧の評価

・24時間における薬物治療効果の判定

・妊娠における高血圧の診断および治療

・様々な薬に起因する症状を有する低血圧の評価(高血圧でない可能性を示唆)

・episodic hypertensionあるいは自律神経機能不全の評価

・仮面高血圧の可能性

 

 

ABPMは高血圧患者の心血管イベント上昇に関連するリスクの高い血圧パターンの同定にも有効である。その一つに、"nocturnal dipping"の欠如がある。通常睡眠中の血圧は日中に比べ少なくとも10%は低くなる(31)。この睡眠中の血圧低下の欠如は心血管アウトカムの悪化との関連が認められている(31)。他のハイリスクパターンとして早朝時の血圧上昇(surge)がある(32)。これは脳血管疾患のリスク上昇と関連が認められている。surgeは一般的に起床後2時間の収縮期血圧の平均値が睡眠時の最低値より55mmHg上昇するものと定義されている(32)。このパターンの患者においては朝における収縮期血圧のコントロールに治療照準を合わせる事が検討されるかもしれない。しかし、chronotherapy(時間的治療)の有効性を示すスタディも存在する一方で(33)、有効性がないとするスタディもある(34, 35)。特定の時間帯における高血圧に対し治療を調整する方法は現在調べられているところであるが、ガイドラインで正式には推奨されていない。ケースバイケースでのみ検討されるべきである

 

 

 

 

新たに高血圧と診断された時の検査

ヘモグロビン、ヘマトクリット、電解質、血糖、クレアチニン(GFR算定)、空腹時脂質(心血管リスク算定)、尿一般沈渣、心電図

 

 

心臓超音波は心電図に比べ左室肥大評価のsensitivityが高く、高血圧の診断、その重症度の推定、高血圧と白衣高血圧の鑑別などに役立つが、そのコストの面から全ての高血圧患者へのスクリーニングとしては使用されない

 

 

痛風の既往がある場合は利尿剤の開始前に尿酸値を測定しておくことが推奨される。またACE inhibitors、ARBs、β-blockersも尿酸値を上昇させる可能性がある

 

 

GFR推定と尿アルブミン-クレアチニン比も心血管リスクの層別化の助けとなる

 

 

臨床ファクター、二次性高血圧を疑う所見、予測される治療法などに基づいてさらなる検査も必要になる場合がある

 

 

 

 

 

 

二次性高血圧を評価すべき患者は?

 

 二次性高血圧を示唆する症状および所見

・高血圧の発症が25歳以下あるいは55歳以上

・薬物治療抵抗性高血圧(異なる3剤以上の最大投与量を要する)

・自然発症の低カリウム血症

・動悸、頭痛、発汗

・重度の血管病変(冠動脈疾患、頸動脈疾患、末梢血管疾患)

・心窩部bruit

・Radial-femoral pulse delay(特に肩甲骨間の雑音)

 

 

 

 

 

二次性高血圧に関する検査

 

大動脈狭窄症:胸部X-ray(rib notching; reverse "3" sign)、心臓超音波、大動脈造影、MRI

クッシング症候群:dexamethasone抑制試験、free cortisol24時間尿、CT

一次性アルドステロン症:血漿アルドステロン・レニン比、塩分負荷によるアルドステロン排泄率、副腎CT

褐色細胞腫:血漿カテコラミンあるいはメタネフリン、24時間fractionated catecholamines and metanephrines、クロニジン抑制試験、副腎CT・MRI、iodine131-metaiodobenzylguanidine scan

腎血管疾患:Renal duplex sonography、MRA、CTA、腎静脈レニン比

腎実質疾患:スポット尿タンパク-クレアチニン比、24時間尿タンパク・クレアチニンレベル、腎超音波検査、GFR、腎生検

副甲状腺疾患:カルシウム・リンレベル、血清副甲状腺ホルモンレベル、血清カルシトニンレベル

甲状腺疾患:血清甲状腺ホルモンレベル、thyrotropinレベル

 

 

 

 

 

 

 

治療 

2017年のACC/AHAガイドラインでは血圧120/80mmHg以上の患者に対し生活習慣の改善を推奨している

 

 

ガイドラインでは心血管リスク評価に基づいて治療の決定を行うことを推奨している

 

心血管疾患の既往がある場合は薬物治療を推奨している。また心血管疾患の既往がなくても10-year risk for artherosclerotic CVD(ASCVD)が10%以上で平均収縮期血圧が130mmHg以上あるいは平均拡張期血圧が80mmHg以上の場合は薬物治療を推奨している(http://tools.acc.org/ASCVD-Risk-Estimator

 

血圧が130/80mmHg以上で糖尿病あるいは慢性腎臓病(ステージ3以上)の既往のある患者への薬物治療も推奨している

 

心血管疾患がなく、10-year risk for ASCVDも10%以下であっても血圧が140/90mmHg以上の場合は薬物治療を推奨している

 

血圧が140/80mmHg以上で脳卒中の既往がある場合は二次予防として薬物治療を推奨している

 

 

 

2017年のACC/AHAガイドラインではマネージメントを単純化するために単一の血圧目標値を推奨している。新たな目標値は130/80mmHg以下で、その目標は外来、家、日中の携帯測定でもみな同じである

 

 

例外として歩行可能なコミュニティ在住の65歳以上の人においては収縮期血圧130mmHg以下をゴールとするが、拡張期血圧のゴールは設定されていない

 

その理由の1つはそれに当てはまる多くの人では既に動脈硬化による拡張期血圧の低下が認められるからである。他の理由としては過剰に低い拡張期血圧は心血管リスクを、特に冠動脈疾患の既往のある患者においては、上昇させる可能性があるからだ。拡張期血圧が60〜75mmHg以下の患者では胸痛や失神などの症状の有無をモニターする必要があり、場合によっては治療強度を下げる必要もある

 

高齢者においては高血圧治療に関して臨床判断や患者の希望がより重要になる。彼らは生命予後も限られているため、過剰治療によるアウトカムも考慮しなければならない。これらの状況を踏まえて収縮期血圧のゴールを140mmHgとする臨床家もいる

 

 

 

 

 

生活習慣改善 

2017年のACC/AHAガイドラインでは生活習慣の改善をelevated BPあるいは高血圧の全ての患者に推奨している(1)。生活習慣の改善は大きく血圧を低下させるが、その変化と効果を維持することは困難である。従って臨床家は特に薬物治療が必要になった場合には患者に生活習慣の改善を促すことが大切である

 

 

 

 

 

 

塩分制限

食事による塩分制限によって収縮期血圧が3mmHg下がると専門家の間で信じられている。その結果、2017年のACC/AHAガイドラインではほとんどの高血圧患者で塩分摂取を1日1500mg以下に制限、それが難しければ、1日摂取量を1000mg減らすことを推奨している

 

 

しかしながら、心血管アウトカムと塩分摂取の関連に関する論争は依然続いている

 

2013年のInstitute of Medicine reportではヘルスアウトカムを評価したスタディの間で試験の質が一定でないこと、また量も不十分であることより、塩分1日摂取量を2300mg以下にした場合、心疾患、脳卒中、全ての原因による死亡のリスクを下げるか、あるいは上げるかを決定することができないと報告している(36)

 

さらには、Agency for Healthcare Research and Qualityによる最近の報告では塩分摂取と全ての原因による死亡との関連に関するエビデンスは限られている、としている(37)

 

17ヶ国で10万人以上を調べた2014年のスタディでは塩分摂取量の推定を尿サンプルで行った結果、1日摂取量が3〜6gの間の摂取群では、それ以下あるいはそれ以上の摂取群に比べ心血管リスクが低いことが示された(38)

 

より最近の報告では塩分摂取と心血管あるいは脳卒中と関連を認めるのは1日摂取量が5gを超える場合のみである、とされている(39)

 

 

 

他の生活習慣介入

臨床家は20%までの減量(理想体重よりは上)を勧めるべきである。1kg減量する毎におよそ1mmHg収縮期血圧が下がる(40)

 

 

最低30分の有酸素運動を週の多くの日に行うことを推奨すべきである。2018年に出されたPhysical activity guidelinesは臨床家が患者に合わせてアドバイスを提供することに役立つかもしれない(41)。このガイドラインでは初めて中等度のウェイトリフティングとisometric exercise(等尺性運動:筋肉を収縮させずに力を加える運動)も血圧を下げる可能性がある事を記している

 

 

心血管リスクを下げるために必須なものとして禁煙も強く推奨しなければならない

 

 

fish oil、マグネシウム、カルシウムサプリメントなどは血圧を下げることが証明されていない

 

 

他のライフスタイルの変更は効果が定かでない。適切なコントロールをデザインしてライフスタイルの変更による効果を証明するスタディを行うことが難しい。ヨガ、鍼灸、device-guided breathing、瞑想などがレビューされている(42)

 

 

カフェインは一時的に血圧を上昇させるが、それを維持する効果はほとんどない

 

 

 

 

 

生活習慣改善による血圧の低下

 

塩分制限 

推奨:塩分摂取1日2400mg以下 

収縮期血圧低下の可能性:2〜8mmHg

 

減量 

推奨:正常体重の維持(BMI 18.5〜24.9kg/m2) 

収縮期血圧低下の可能性:10kg減量毎に5〜20mmHg

 

有酸素運動 

推奨:週の多くの日に30分の有酸素運動(1 mile (1.6km) 歩行) 

収縮期血圧低下の可能性:4〜9mmHg

 

DASH diet 

推奨:果物、野菜、低脂肪乳製品が多く、飽和脂肪および総脂肪を減らした食事 

収縮期血圧低下の可能性:4〜14mmHg

 

飲酒制限 

推奨:男性ではビール 12-oz (340cc) 缶 2缶、ワイン4-oz (113cc) グラス 2杯、それ以上摂取しない(女性ではこの半分) 

収縮期血圧低下の可能性:2〜4mmHg

 

 

 

 

 

 

薬物治療

 

多くの高血圧患者では生活習慣改善に関わらず薬物治療が必要になる

 

2017年のACC/AHAガイドラインではステージ1高血圧の患者の初回薬物治療としてサイアザイド利尿剤、ACE inhibitor、ARB、カルシウムチャネルブロッカーを選択することを推奨している

 

 

単なる降圧作用以上のアウトカムを示す臨床試験のエビデンス、有効性、作用時間などに基づいて、利尿剤を使う場合はhydrochlorothiazideよりもchlorthalidoneやindapamideを選択することを多くの専門家が推奨している(43)

 

 

脳卒中予防の効果が他の薬剤より低いためβブロッカーは多くの患者において第一選択薬とならない(特定の疾患の既往を持つ場合は選択される)

 

 

ガイドラインではアドヒランスが上がることより小さな錠剤に2つ以上の薬を混合して1つにした薬剤の使用を承認している

 

 

  

 

2017年ACC/AHAガイドラインによるアプローチ

 

1、高血圧と診断(BP>130/80mmHg)

2、生活習慣改善

 2−1:ステージ1高血圧(>130/80mmHg):10-y ASCVD riskが10%以上の時は薬物治療開始

 2−2:ステージ2高血圧(>140/90mmHg):リスクに関わらず薬物治療開始

 

ASCVD: atherosclerotic cardiovascular disease

第一選択薬:ACE inhibitor、ARB、サイアザイド利尿剤、CCB

特にステージ2高血圧の場合は降圧剤併用を推奨 

糖尿病、慢性腎臓病の場合は自動的にこのカテゴリー(10-y ASCVD risk>10%)に含まれる

 

 

 

 

 

 

ALLHAT試験は高血圧およびもう1つの心血管リスクファクターがある55歳以上の患者44000人の初回治療として利尿剤(chlorthalidone)、αブロッカー(doxazosin)、ACE inhibitor(lisinopril)、CCB(amlodipine)をそれぞれ無作為に割り当てて行われた。必要に応じてもう1剤追加投与も認められた。doxazosin投与群は心不全の発症がより多かったので途中で中止された。残りの群の試験結果より、利尿剤投与が心血管死、非致死的心筋梗塞、心不全、脳卒中を減らすことにより効果的であり、コストの面でも優れることより第一選択薬として使用することを支持する結果となった(44)。これら全ての薬剤のコストは以来下がっており、ACC/AHAガイドラインではACE inhibitor、ARB、CCBよりも利尿剤を優先して投与することを推奨してはいない

 

 

 

 

臨床家はより高齢な患者での高血圧治療も考慮する必要がある

 

HYVET試験は収縮期血圧160〜199mmHgの80歳以上の患者3845人に対しプラセボあるいは利尿剤(indapamide, 1.5mg/日)を無作為に割り当てられて行われた。必要に応じてACE inhibitor(perindopril, 4-8mg/日)の追加投与が許された。試験は治療群の利益が大きく早期に中止された。致死的および非致死的脳卒中が30%減少、全ての原因による死亡が21%減少という結果であった。この試験によって80歳以上で収縮期血圧が少なくとも150mmHgの患者に対する薬物治療の有効性が確認された(45)

 

 

 

SPRINT試験では50歳以上で心血管リスクの上昇した患者(糖尿病および脳卒中の既往がある場合は除かれる)9361人に対し収縮期血圧の目標値を140mmHgよりも120mmHgにした場合、より良い心血管アウトカムが得られるかどうかが調べられた。無作為に低い目標値に割り当てられたグループではcomposite cardiovascular outcomeのスコアがより良かったが、失神、急性腎障害、急性腎不全がより多く見られた。これらの効果は75歳以上のサブセットグループでも確認された

 

 

 

 

 

 

患者の特性に合わせた治療薬選択

 

糖尿病患者では全ての4クラスの薬剤(サイアザイド利尿剤、ACE inhibitor、ARB、CCB)が第一選択薬として推奨される

 

 

慢性腎臓病ステージ3あるいはそれ以上の場合は糖尿病の有無によらず、特にタンパク尿が認められる場合はACE inhibitorあるいはARBが考慮されるべきである。しかし、ACE inhibitorと、ARBあるいはdirect renin inhibitorの併用は副作用のリスクが高いことが臨床試験で報告されていることより避けるべきである

 

 

高血圧既往のAfrican Americanはsalt-sensitiveである傾向にあるので、初期治療としてサイアザイド利尿剤やCCBを選択すべきである

 

 

ACE inhibtorやARBは若年者の高血圧に良い選択薬である。なぜなら彼らはレニンアンギオテンシン系の抑制によく反応するからである

 

 

心不全の患者にはRALES試験やEMPHASIS-HF試験によってガイドされるように、ACE inhibitor、利尿剤、carvedilol、metoprolol succinate、ARB、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬などが推奨される(46, 47)

 

 

βブロッカーとACE inhibitorは心筋梗塞後の患者に良き選択薬となる

 

 

 

 

薬物クラスの適応

心不全:利尿剤、βブロッカー、ACE inhibitor、ARB、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬 

心筋梗塞後:βブロッカー(carvedilol, metoprolol succinate)、 ACE inhibitor、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬

冠動脈疾患ハイリスク:利尿剤、βブロッカー、ACE inhibitor、ARB+CCB

糖尿病:利尿剤、ACE inhibitor、ARB、CCB

慢性腎臓病:ACE inhibitor、ARB

脳卒中再発予防:利尿剤、ACE inhibitor

 

 

 

 

 

 

HOPE試験は55歳以上で心血管疾患既往のある9000人以上の患者に対しramipril 10mg at nightとプラセボが無作為に割り当てられて行われた。結果、プラセボ群に対しramipril投与群の方がmorbidityと死亡率が低かった。その半分の患者に高血圧の既往があったことより、著者はACE inhibitorを心血管疾患既往のある患者の高血圧治療の初回選択薬とすることが妥当であると結論づけている(48)

 

 

ASCOT試験は高血圧の既往があり、心血管リスクファクターが3つ以上ある成人19000人に対し、βブロッカーと必要に応じてサイアザイド利尿剤を追加投与するグループと、CCB(amlodipine)と必要に応じてACE inhibitor(perindopril)を投与するグループを無作為に割り当てて行われた。心血管イベントと全体の死亡率がCCB投与グループで有意に低かかったため(25% for stroke, 15% for coronary events and procedures, and 25% for cardiovascular deaths)、中央値5.5年後に試験は早期中断された。血圧コントロールは両グループで良好であったが、CCBグループの方が平均2.7/1.9mmHg低かった(49)

 

 

 

 

治療抵抗性高血圧 

異なるクラスの降圧薬を3つ以上(利尿剤を含む)それぞれ最大耐容量投与してもゴールの血圧に達しない場合を治療抵抗性高血圧とする(50)

 

 

治療抵抗性高血圧は実際に存在するよりも多く診断されている。その理由の1つに血圧測定の間違いがあり、過剰評価につながっているからだ。従って治療抵抗性高血圧の診断およびモニタリングには厳密なプロトコールに従って血圧測定する事が特に重要となる

 

さらに、治療抵抗性高血圧とみなされる患者の30〜50%は実際には白衣高血圧あるいは治療薬のアドヒランス不良によるものである、と蓄積されてきたエビデンスが示している

 

 

治療抵抗性高血圧を認める場合は二次性の原因を考慮しなければならない。最も頻度が多いのが一次性アルドステロン症であり、診断されず治療されない場合がよくみられる(51)。治療抵抗性高血圧のおよそ20%の患者に認められるとされている(52)

 

 

治療抵抗性高血圧は慢性腎臓病の患者にもよく見られる(53) 

 

 

治療抵抗性高血圧の患者はそうでない患者に比べおよそ50%心血管イベントのリスクが高くなる(54)

 

 

臨床試験PATHWAY-2(55)とReHOT(56)よりミネラルコルチコイド受容体阻害剤であるspironolactoneを治療抵抗性高血圧の4番目の治療薬として追加することが好ましい事が確認されている。理由の1つとして治療抵抗性高血圧は一次性アルドステロン症が多いことがある(57, 58)。他の考えられる理由として治療抵抗性高血圧のその他の患者ではアルドステロンがわずかばかり過剰に分泌されいてる可能性があるからだ(59)

 

 

spironolactoneはβブロッカーやαブロッカーよりおよそ2倍の効果がありコストも安いが、治療抵抗性高血圧の治療に使用されることが比較的少ない(60)。おそらくこれは高カリウム血症の可能性によって電解質の定期的なモニタリングを要するからだと考えられる

 

 

 

 

 

 

降圧剤

 

利尿剤

Hydrochlorothiazide (12.5-50mg)、Chlorothiazide (250-500mg)、Chlorthalidone (12.5-50mg)、Indapamide (1.25-5mg)

Advantage

以下の群に有効:高齢者、収縮期血圧のみが高い、糖尿病、salt-sensitveである可能性が高いAfrican American

Disadvantage

低カリウム血症や低ナトリウム血症などの電解質異常、血糖・コレステロール・尿酸などを上昇させる可能性、photosensitivity 

 

 

ACE inhibitor

Enalapril (5-40mg)、Fosinopril (10-40mg)、Lisinopril (5-40mg)、Perindopril (4-16mg)、Quinapril (5-80mg)、Ramipril (1.25-20mg)

Advantage

慢性腎臓病、心不全、糖尿病に好んで使われる、利尿剤との併用でより効果的

Disadvantage

高カリウム血症、尿酸上昇、15%で咳嗽(ARBへ変更)、30%までのクレアチニン上昇は受容、0.1〜0.7%で血管浮腫、妊娠では禁忌

 

 

ARB

Losartan (25-100mg)、Candesartan (16-32mg)、Irbesartan (150-300mg)

Advantage

通常耐容性良好、血管浮腫はまれ、利尿剤との併用でより効果的、咳嗽をおこさない

Disadvantage

高カリウム血症、尿酸上昇(Losartan以外)、めまい、比較的高価、妊娠では禁忌

 

 

カリウム保持利尿剤

Spironolactone (25-100mg) 、Triamterene (25-100mg)

Advantage

サイアザイドで低カリウム血症を呈する時に有効

Disadvantage

高カリウム血症(Triamtereneではまれ)、女性化乳房(Spironolactone)、降圧作用が弱い

 

 

βブロッカー

Atenolol (25-100mg)、Metoprolol (50-300mg)、Propranolol (40-480mg)、Nebivolol (2.5-10mg)、Carvedilol (12.5-50mg)

Advantage

Carvedilolはαおよびβブロッカー作用を有する、Nebivololは血管拡張作用を有する、心不全以外の患者では第一選択薬として使用しない

Disadvantage

気管支収縮、徐脈、心不全、インスリンによる低血糖をマスク、末梢循環障害、不眠、倦怠感、運動耐容低下、トリグリセリド上昇(ISAがない場合)、いくつかの試験でAtenololはACE inhibitors、ARBs、CCBsよりも悪いアウトカム

 

 

カルシウムチャネルブロッカー

Amlodipine (2.5-10mg)、Diltiazem (120-360mg)、Verapamil (120-480mg)、Nifedipine (30-120mg)

Advantage

耐容性がよく効果的、Amlodipineなどのdihydropyridineはpotentが高い

Disadvantage

利尿剤抵抗性浮腫(ACE inhibitorやARBを加えれば減少)、頭痛、心伝道障害、便秘、歯肉肥大

 

 

レセルピン

Reserpine (0.05-0.25mg)

Advantage 

アドレナリン作動性ニューロン遮断薬

Disadvantage

鼻閉、うつ、消化性潰瘍

 

 

中枢性α作動薬

Methyldopa (500-3000mg)、Clonidine (0.2-1.2mg)、Guanfacine (0.5-2mg)

Advantage

他の選択が失敗した場合に効果的である可能性

Disadvantage

鎮静、口腔乾燥、徐脈、離脱(リバウンド)、突然の中断で血圧上昇

 

 

αブロッカー

Prazosin (2-30mg)、Doxazosin (1-16mg)、Terazosin (1-20mg)

Advantage

potentが強い

Disadvantage

起立性低血圧、下痢、ALLHATにおいてdexazosinで心不全増加

 

 

ハイドララジン

Hydralazine (50-300mg)

Advantage

Disadvantage

Lupus reaction、頭痛、浮腫、頻回投与

 

 

Direct renin inhibitor

Aliskiren (150-300mg)

Advantage

血漿レニンの減少自体が治療的である可能性、他剤併用で効果的

Disadvantage

下痢、ALTITUDE trialで糖尿病患者のスタンダード治療に追加投与で有害である可能性が認められた

 

 

 

 

 

 

 

 

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インザクリニック

アナルズオブインターナルメディシン

2019年5月7日

 

 

 

 

 

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ

 

更新の確認で送られてきた軍病院の卒業名簿に書かれている各学年の卒業後の進路を何気なく眺めていたら、まさにそんな気分になった

 

滑り込みでなんとか場末の病院(なんて言ったら怒られそうだけど)に拾ってもらえた身にはなんだかとても眩しいものに見えた

 

別に人より抜きん出るがために生きている訳ではないが、これといった肩書きもないのであれば、せめて実力を蓄えるため、サボってばかりいないでもう少し真面目に生きよう、そう思った平成の末である

 

 

不安障害

 

不安はストレス下では適切な反応であるが、生活機能に障害をきたしたりコントロールできない状態は病理学的なものと捉えられる

 

 

generalized anxiety disorder(GAD:全般性不安障害)はプライマリケアで見られる最も多い不安障害で、米国成人のおよそ4〜7%が罹患している(1, 2)

 

 

GAD患者は人生全般の満足度が下がり、健康に関するQOLが低くなる(3)

 

 

GADは持続的で過剰な不安が少なくとも6ヶ月間続き、通常の出来事を度々憂え、筋緊張、不眠、倦怠感などの身体症状を伴い、生活や職場などで機能障害をきたしうることを特徴とする(4)

 

 

3分の1以上のGAD患者において職場における生産性の低下が認められ、月の平均欠勤日数が6.3日と報告されている(5)

 

 

GAD患者はヘルスケアの使用および費用が高く(より頻回の救急外来受診、外来受診、および専門家紹介)、 全般的に処方の率も高くなる(6-9)

 

 

これらの患者では自殺企図のリスクが高くなり(10)、また心血管疾患を罹患している場合はより心血管イベントの頻度が多くなる(心筋梗塞、心不全、脳卒中、TIA、死亡)(11, 12)

 

 

 

 

スクリーニング

 

GADは女性の方が男性より2倍多く見られる(13)

 

 

社会経済的に低い状態、未亡人、離別、中年、などがGADのリスクファクターである(14)。さらなるリスクファクターには精神科疾患の合併、薬物使用歴、外傷、GADの家族歴などがある(14-18)。高齢者では慢性疾患に付随して新たにGADを発症する場合がある(19)

 

 

リスクのある患者において有効な予防法はあるか

 

予防および早期介入が精神疾患による過度の機能不全を減らす可能性はあるが、成人のGADに対する予防措置を調べたスタディは少ない。 最近脳卒中を発症した患者を調べた1つのスタディでは薬物療法と精神療法がGADの発症予防に有効であったと報告している(20)

 

最近脳卒中を発症した149人の患者におけるrandomized controlled studyではescitalopramあるいはproblem-solving therapyのGAD予防に対する有効性が調べられた。スタディではプラセボを投与されたグループは、escitalopramを投与されたグループに比べ4.95倍 (CI, 1.54 to 15.93)、problem-solving therapyを受けたグループに比べ4.00倍 (CI, 1.84 to 8.70)、より多くGADを発症したことが認められた(20)

 

 

 

リスクのある患者にGADのスクリーニングをすべきか

 

GADに対するスクリーニングおよび早期介入の利益を認めたhigh-quality studiesが少ない事によると考えられるが、現在のガイドラインではGADリスクのある患者へのスクリーニングに関する推奨を扱っていない。しかしながら、GADが正しく診断される割合は3分の1であり(21)、そして診断されたおよそ60%の患者で治療が行われていない(22, 23)。鬱病診療においても見られるように、疾患のより良い検出が未診断・未治療への対応および患者アウトカム向上へ繋がる最初のステップとなりえる(24)

 

 

一つの質問によるスクリーニングである "Are you bothered by nerves?" は平均的なリスクを持つプライマリケアにおける患者では感度100%、特異度59%である(25)

 

2-item Generalized Anxiety Disorder (GAD-2) screening toolは過去2週間においてどれくらいの頻度で、不安になったか、心配する事を止めるあるいはコントロールする事ができなかったか(bothered by "feeling nervous, anxious, or on edge" and "not being able to stop or control worrying")を尋ね、それぞれの質問を0から3点までで評価し(0: not at all, 1: several days, 2: more than half of the days, 3: nearly every days)、合計0から6点でスコアリングを行う。3点あるいはそれ以上の場合でGADを検出する感度は86%、特異度83%である(2)

 

 

4-item Patient Health Questionnaire (PHQ-4)はGAD-2 toolとPHQ-2を組み合わせたのもので鬱病と全般性不安障害の簡易で正確なスクリーニングが行える(26)

 

 

PHQ-4 (The 4-Item Patient Health Questionnaire for Anxiety and Depression)

過去2週間の間にどれ程の頻度で以下の問題によって悩まされたか

 

1、不安になる、気分が過敏になる(feeling nervous, anxious, or on edge)

0: 全くない、1: 数日、2: 半分以上の期間、3: ほとんど毎日

 

2、心配することをやめられない、あるいはコントロールできない

0: 全くない、1: 数日、2: 半分以上の期間、3: ほとんど毎日

 

3、落ち込む、抑うつ気分になる、希望を感じられない

0: 全くない、1: 数日、2: 半分以上の期間、3: ほとんど毎日

 

4、物事に興味や喜びを感じられない

0: 全くない、1: 数日、2: 半分以上の期間、3: ほとんど毎日

 

4項目の合計で評価

正常:0〜2、軽度:3〜5、中等度:6〜8、重度:9〜12

 

最初の2項目の計3点以上で不安障害を示唆

最後の2項目の計3点以上で鬱病を示唆

 

 

 

 

 

診断

 

 

全般性不安障害の診断基準

1、学校や職場での多くの出来事や活動に関する過度の不安や心配が少なくとも6ヶ月間、起こる日の方が起こらない日より多い

2、心配をコントロールする事が難しいと感じる

3、不安や心配が下記の6つの症状の3つ以上に関連する

(少なくとも6ヶ月間、症状が起こる日の方が起こらない日よりも多い)

・落ち着かない、緊張感、過敏

・疲れやすい

・集中できない、考えられない(mind going blank)

・刺激に敏感に反応してしまう

・筋緊張

・睡眠障害(入眠障害、中途覚醒、落ち着かない、睡眠に満足できない)

4、不安、心配、身体的症状が臨床的に重大な苦悩をもたらし、あるいは社会生活、仕事、その他の分野において機能不全をきたす 

5、機能不全が薬物の影響(ドラッグの乱用、薬剤)や他の病態(甲状腺機能亢進症など)に起因しない

6、機能不全が他の精神疾患(パニック障害、社交不安障害、強迫性障害、分離不安障害、PTSD、摂食障害、身体症状障害、身体醜形障害、病気不安障害、統合失調症、妄想性障害)によってより説明されやすい、という事がない

 

全般性不安障害の診断には上記6つの基準を全てを満たさなければならない 

 

 

 

 

 

半分以上のGAD患者が鬱病、パニック障害、社交不安障害などの他の精神疾患を併発している(13)。鬱病はよく共に認められる精神疾患で症状(過敏性気分、倦怠感、不眠など)が重なるためにGADとの鑑別が難しい。快楽の消失、希望を失う、などが鬱病の症状であるが、GADの症状ではない

 

 

 

 

 

治療

 

 

認知行動療法(cognitive behavioral therapy (CBT) )

CBTは役に立ちづらい考え方と行動を認識し、それを変える事によって感情とQOLを改善することを基本的なゴールとする。例えばGADの患者は愛する人が無事であるかが心配で、電話をかけて確認することなどで不安を避けようとする行動に従事するが、結果一時的に不安は減るが長期的には不安を維持してしまう

 

あるCBTの技法、特にexposure therapyでは一時的に苦悩を高める可能性があるが、最終的には慢性的な不安を和らげる事を目指す。exposure therapyにはimaginal(不安の対象となる物体、状況、活動などを鮮明に想像する)、in vivo(実生活の中で不安となる物体、状況、活動などに直面させる) interoceptive(害にはならないが不安を引き起こす身体感覚を故意にもたらす)などがある

 

他によく使われるCBTの技法には教育、目標設定、セフルモニタリング、認知再構成、リラクゼーショントレーニング、などがある

 

GADに対する通常のCBTのコースはおよそ12週間続き、セッションの間には患者にホームワークが与えられる。残念ながらCBTセラピストへのアクセスは限られている(4, 37,  38)

 

アクセスを増やす一つの方法としてインターネットによるCBTがあり(39)、セラピストの介入が少なくて済み、有効性も認められている(40, 41)。しかしこの方法は研究以外の状況ではまだ広く利用可能となっていない。また多くの人に治療を提供でき費用対効果が高い方法だが(42)、セキュリティー、プライバシー、また電気機器の過度な使用などに対する懸念も指摘されている(43)。多くのself-help books and appsはスマートフォンにダウンロードして利用可能であるが、臨床家はその有効性が正確には調べられていない事を認識しておく必要がある(44)

 

計8403人で調べられた92のスタディのmeta-analysisではself-help CBT(本、オーディオテープ、ビデオ、インターネットプログラムなど)はwait-listのコントロール群に比べ有効性が示された(moderate to large effect size of 0.67(CI, 0.55 to 0.80))が、face-to-face CBTよりは劣るようであった(effect size, -0.23(CI, -0.36 to -0.09))(38)

 

 

CBTが利用できない場合は他の精神療法を検討する必要がある

 

 

supportive psychotherapy(支援精神療法)とpsychodynamic therapy(精神力動療法)が不安を抱える患者に利用可能である場合が多いが、CBTに比べGADに対する治療のアウトカムが劣ることを示唆するcomparison studiesが存在する(46-49)

 

mindfulness meditation(マインドフルネス瞑想)とacceptance and commitment therapy (アクセプタンスコミットメントセラピー) はCBTと類似性を有し、GADに対し効果的である事が認められているが、CBTと比較された試験は少ない(50-52)

 

 

Supportive psychotherapy(支援精神療法)

通常、患者のself-esteemを支えることに集中する非指示的なセラピー。温かくジャッジが行われない環境で、セラピストが注意深く傾聴し、安心と勇気づけを行う

 

Psychodynamic therapy(精神力動療法)

人生の早い段階における人間関係に起因すると信じられている無意識の葛藤を解決することを目指す洞察に基づくセラピー。技術には明確化、解釈、直面化が含まれる

 

Mindfulness(マインドフルネス)

現在に対する認識を高める瞑想の一つ。患者はジャッジを行わないようにしながら体の感覚、感情、思考に集中する事が奨励される

 

Acceptance and commitment therapy(アクセプタンスコミットメントセラピー)

マインドフルネスやCBTと類似性を有するセラピー。患者は現在に集中し、思考を受け入れ、cognitive defusionと呼ばれる、内的思考と感覚から分離する方法(超越的な自己の感覚、ただ観察している自分)を学ぶ

 

 

 

不安の治療にハーブ療法を利用する患者もいるが、治療者はそれを尋ね、認識されている薬剤相互作用や毒性に関するカウンセリングを行う必要がある。例えば、太平洋諸島において根から作られる飲料のカヴァは長く伝統的に治療目的として使われており、短期間においては不安を軽減する事が認められているが、稀ではあるが肝障害を起こす懸念もある(53)

 

recreational drugsやアルコール摂取の制限、十分な睡眠の確保、定期的な運動などの健康的なライフスタイルがメンタルヘルスにおいて重要であることを強調する必要がある

 

最近のmeta-analysisでは運動がwait-listのコントロール群に比べ有効である事が確認されている(moderate effect size: -0.41(CI, -0.70 to -0.12))(54)。high-intensity exerciseがlow-intensity exerciseに比べより有効であることが認められている(effect size of -0.38(CI, -0.68 to -0.08))が、ドロップアウト率がより高いようである

 

 

 

 

薬物療法

 

多くのGAD患者に対し、非薬物的治療の効果が認められなかった場合は薬物治療を提供する必要がある

 

他の薬剤との比較において耐容性と効果が高い事によってselective serotonin reuptake inhibitors(SSRIs)とserotonin-norepinephrine reuptake inhibitors(SNRIs)が第一選択薬となる(55)。他の薬剤に比べ長期的なリスクが少なく、また併発する鬱病治療に対する利益がある(56)。U.S. Food and Drug AdministrationによってGAD治療に承認されているSSRIsはparoxetine、sertraline、escitalopram、SNRIsはvenlafaxine extended-release、duloxetineである。不安を持つ患者は消化器症状、めまい、落ち着かない、などの薬剤開始に伴う副作用に敏感であるため、低量(sertraline 25mg/d、venlafaxine extended-release 37.5mg/d)から開始すべきである。耐容性が良好である、あるいは反応が部分的である場合などは治療用量に調整していく事を考慮する必要があり、その場合、通常の鬱病に対する投与量よりも多くなる時もある。SSRIあるいはSNRIを8週間投与しても効果が認められない場合は他のクラスの薬剤への変更を検討すべきである(1)

 

 

 

第二選択薬にはbuspironeなどのazapirones系薬剤、benzodiazepines、pregabalinなどがある

 

buspironeはGAD治療においてbenzodiazepinesと同等の効果があるとされる(56, 57)が、鎮静やめまいなどの副作用が見られ、効果を発揮するまでに数週間かかる

 

benzodiazepinesはSSRIやSNRIの効果が現れるまでの間の短期間(2〜4週間)における不安を改善させる事に有効である(19)。しかしbenzodiazepinesの長期投与における有効性を認めるスタディが欠如しており、鎮静、運動・認知障害、依存などの重大な副作用のリスクがある。よって長期での使用は控えるべきである(1, 56)

 

抗てんかん薬として開発されたpregabalinはrandomized controlled trialsにおいてGAD治療への有効性および良好な耐容性が確認され、SSRIsやSNRIsより治療効果発現が速やかである(58)。ただbenzodizazepineのような習慣性はないかもしれないが、薬物依存患者への使用は注意を要し、また高齢者や腎機能の低下した患者では鎮静などの副作用のリスクが上がる可能性がある

 

 

 第一選択薬あるいは第二選択薬の効果が認められない、あるいは耐容できない場合はquetiapineやrispedidoneなどの非定型抗精神病薬(59, 60)、hydroxyzine(61)、imipramineなどの三環系抗うつ薬などが代替治療薬に含まれる(56)

 

 

 

第一選択薬

SSRI and SNRI

Benefits:効果的、耐容性が良い

Adverse Effects and Notes:嘔気、下痢、食欲低下、落ち着かない、不眠、傾眠、性機能障害、低ナトリウム血症

 

SSRI

Escitalopram 10-20 mg/d

Benefits:薬剤相互作用が少ない

Adverse Effects and Notes:QTc延長、高齢者および肝機能障害患者では最大10 mg/dが推奨

 

Paroxetine 20-60 mg/d

Benefits:長く臨床で使われている

Adverse Effects and Notes:体重増加、鎮静、遷延性離脱症候群、強いCYP2D6 inhibitionなどの薬剤相互作用

 

Sertraline 50-200 mg/d

Benefits:長く臨床で使われている、少ない薬剤相互作用

Adverse Effects and Notes:消化器症状の副作用が多い

 

 

SNRI

Duloxetine 60-120 mg/d

Benefits:神経性や慢性の筋骨格系の疼痛にも有効

Adverse Effects and Notes:消化器症状の副作用が多い

 

Venlafaxine extended-release 75-225 mg/d

Benefits:片頭痛、神経性疼痛、閉経による血管運動系の症状にも有効

Adverse Effects and Notes:血圧上昇

 

 

第二選択薬

Azapirones

Buspirone 15-30 mg/d

Benefits:習慣性がない、追加薬として使える

Adverse Effects and Notes:めまい、眠気

 

Benzodiazepines

Alprazolam 0.5-2 mg/d,  Diazepam 2-10 mg/d,  Chlordiazepoxide 15-40 mg/d

Benefits:短期では非常に効果的、抗うつ薬より効果発現が速い

Adverse Effects and Notes:転倒、記憶障害、依存のリスク

 

Anticonvulsant

Pregabalin 300-600 mg/d

Benefits:耐容性良好、速い効果発現

Adverse Effects and Notes:鎮静、めまい、末梢性浮腫、腎機能低下での使用は注意を要する

 

 

第三選択薬

Atypical antipsychotics

Quetiapine 50-300 mg/d,  Risperidone 0.5-1.5 mg/d

Benefits:mood and psychotic disordersにも有効

Adverse Effects and Notes:鎮静、錐体外路症状、tardive dyskinesia、体重増加、代謝障害

 

Antihistamine

Hydroxyzine 50-100 mg 4 times daily

Benefits:GADに関連する不眠に有効

Adverse Effects and Notes:鎮静、口腔乾燥、混乱、尿閉

 

Tricyclic antidepressants

Imipramine 50-200 mg/d

Benefits:鬱病と不安に対する有効性が長く認められてきた

Adverse Effects and Notes:過剰摂取で致死的となるリスク、不整脈、血圧低下、視覚異常、便秘

 

 

 

 

GAD患者は状態が安定するまでは2〜4週間ごと、維持治療に入ってからは3〜4ヶ月ごとに対面あるいは電話にてモニターされる必要がある。GADの評価ツールであるGAD-7が症状の強さおよび治療への反応のモニターに役立つかもしれない(62)。GAD-7の各項目に0〜3点が割り当てられ、スコアの総計で5点、10点、15点、それぞれで軽度、中等度、重度のカットオフとされている。GAD-7に基づく治療の中止あるいは増強に関する正式な推奨はないが、5点以上の低下が意義ある治療の反応と考えられている

 

 

Generalized Anxiety Disorder 7-Item Scale

過去2週間において以下の問題がどれくらいの頻度でありましたか

 

0: 全くない、1: 数日、2: 半分以上の期間、3: ほとんど毎日

 

1、不安になる、気分が過敏になる(feeling nervous, anxious, or on edge) 

2、心配することをやめられない、あるいはコントロールできない

3、異なる事柄で過剰に心配してしまう

4、リラックスすることが困難

5、落ち着かずじっとしている事が困難

6、すぐにイライラしてしまう

7、何か恐ろしい事が起こらないかと不安になる

 

(総計:5-9点:軽度の不安、10-14点:中等度の不安、15-21点:重度の不安 )

 

 

 

 

不安の再発はよく見られ、特に対人葛藤、社会的プレッシャー、他のネガティヴな感情などに反応して起こる。CBTの技法には認知および行動の変化を維持する方法、再発を予期し取り組む方法などが含まれる。不安の再発している期間はCBTの追加によって過去に学んだ知識の再強化や現在の状況に対する対処の修正などに役立つ可能性がある。薬物治療は症状の改善に反応を認めてから6〜12ヶ月は続ける必要がある(64)。薬物治療の中止で20〜40%の患者で6〜12ヶ月後に症状の再発が認められる(65, 66)。重度の慢性的な不安を有する患者では長期の薬剤治療(1年以上)が必要になる場合もある(65)

 

 

 

 

 

 

 

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インザクリニック

アナルズオブインターナルメディシン

2019年4月2日

 

 

 

 

 

避妊

 

米国における全ての妊娠の45%は意図しない、あるいは予定の時期からはずれたものと報告されている

 

 

意図しない妊娠は生殖に関わる健康格差の指標でもある。なぜならこれらは有色の女性や国の定めた貧困レベル以下の人たちにより多くみられ、偏りのある社会経済的因子を反映している可能性が高いからである。これらの格差を認識することが、地域により多く、そしてより有効な生殖に関わるヘルスケアを提供する機会を見つけることの一助となる

 

 

避妊法の不適切な使用あるいは一貫性のない使用による避妊の失敗は意図しない妊娠の重要で修正できうる要因である(1)

 

 

米国における15〜44歳のsexually activeな女性の99%以上は生涯で少なくとも一つ以上の避妊法を使用し、89%の生殖年齢の女性は現在なんらかの避妊法を使用している(2)。生殖年齢の女性へのアクセスおよび教育によって避妊への取り組み、そしてその継続性が向上しうる。プライマリケア提供者は安全で効果的な使用を促す特有の立場にある

 

 

 

 

疫学と有効性

 

妊娠可能で妊娠を望まない全てのsexually activeな女性に避妊法を提供する必要がある。思春期や閉経前の女性では見落とされることがよくみられる

 

 

避妊はホルモンによる方法とそうでないものに分けられる。ホルモンによる避妊はさらにエストロゲン・プロゲスチン併用(combined hormonal contraceptives (CHCs))かプロゲスチン単独の方法に別れる。また短期作用型の可逆的な避妊法か長期作用型の可逆的な避妊法(long-acting reversible contraception (LARC))に分類される。短期作用型の方法は全てホルモンを含み、錠剤、貼付剤、リング、注射によって投与される。長期作用型の方法はホルモンを含むデバイス(contraceptive implant and hormonal intrauterine device (IUD))と含まないIUDがある

 

 

CHC(combined hormonal contraceptive)

米国においてCHCは経口剤、経皮的貼付剤、膣内リングが利用可能である。これら全ての方法は活性型のethinyl estradiolとあるタイプのprogestinを含んでいる。CHCの主な作用機序はプロゲスチンを介する排卵抑制である。エストロゲン成分も排卵抑制に寄与するが、出血のコントロールおよび子宮内膜の安定化がより重要な働きである(3)。錠剤は毎日服用、貼付剤は週毎、リングは月の単位で交換する必要がある

 

 

プロゲスチン単独法

プロゲスチン単独避妊法は四種類ある;経口剤、注射剤、皮下埋め込み、プロゲスチン含有IUD

levonorgestrel IUDを除く全ての方法は排卵抑制およびプロゲスチンによる頸管および子宮粘膜の変化によって妊娠を防ぐ。プロゲスチン単独経口剤は半減期が短いため、伝統的には毎日決まった時間に服用することが推奨されているが、その服用のタイミングと避妊効果の関連性を示すデータはない(4)。注射法(depot medroxyprogesterone acetate)は3ヶ月毎に筋注あるいは皮下注によって投与される

 

LARC法(long-acting reversible contraception)

いくつかのLARC法がU.S. Food and Drug Administration(FDA)に承認されている。hormonoal IUDs(すべてがlevonorgestrelを含む;Liletta、Mirena、Kyleena、Skyla)、etonogestrelを含む皮下プロゲスチン埋め込み(Nexplanon)、nonhormonal copper IUD(Paragard)である

 

levonorgestrel IUDは子宮に挿入され、ブランドによって変わるが3〜5年間の使用がFDAによって承認されている。頸管粘液の粘稠度をあげて精子の移動を抑制し、また子宮内膜を薄くし、卵管の運動性を低下させることで妊娠を防ぐ。エストロゲン濃度は正常に保たれ、月経は排卵を伴う

 

皮下埋め込み型は上腕二頭筋と三頭筋の間から3〜5cm下に留置される。3年間の使用が承認されている。これは主に排卵を抑制することによって効果を発揮する

 

copper IUDは子宮に挿入され、10年間の使用が認められている。無菌性の炎症を惹起させることによって子宮を精子や卵子が宿りにくい環境に変える

 

最近のデータでは全てのLARC法がFDAによって承認されているよりも長い期間有効であることが示されている。52-mg levonorgestrel IUD(Mirena、Liletta)は7年まで、皮下埋め込み型は4年まで、copper IUDは最長12年までの有効性が示唆されている(5, 6)。しかしFDAの承認期間は変更されておらず、それよりも長い期間使用する場合は、慎重なカウンセリングと意思決定の共有を行う必要がある

 

 

永久避妊

この先も妊娠を望まないことが確かな場合は永久避妊が適切な選択の一つになる。卵管結紮は手術を要し、その有効性は手技に依存する。最近の推奨には卵管切除(salpingectomy: removal of the entire fallopian tube)が含まれ、それによって卵巣癌のリスクを減らすが、その方法は完全に不可逆的である(7)。子宮鏡による避妊法(Essure)は術後の慢性疼痛による安全性の問題によって2018年に市場から撤退している

 

精管切除による男性避妊法も優れた選択の一つで、コンドーム以外で男性に有効な唯一の方法である。いくつかの手技があるが、全て両側の精菅を切断する方法がとられる。いくつかのタイプの女性避妊法とは違い、精管切除はすぐには不妊とならない。無精子が確認されるまで、少なくとも術後12週間は他の避妊法を使う必要がある。精管切除は避妊法が女性にとってリスクとなる場合には理想的な選択となる(8)

 

 

バリア法

いくつかのバリア法が利用可能で、コンドーム、膣スポンジ、diaphragm、cervical capなどがある。すべての方法が精子の頸管への侵入を防ぐことによって効果を発揮する。コンドームが性感染症を防ぐ唯一の方法である。膣スポンジとコンドームは市販されている。最近出たCaya diaphragm以外のdiaphragmとcervical capは医師によって装着される必要がある(9, 10)

 

性行為中断(withdrawal)

有効性の低さから撤退は一般的には避妊法と見なされていない。この方法をとる場合20%の女性が1年後に妊娠するとされている(2, 11)。しかし、この方法は広く行われており、65%の女性が行った経験があると報告し、また全く避妊法を取らない場合に比べ妊娠を防ぐことに有効であることを指摘する専門家もいる。この方法はその有効性を高めるためにパートナー間での同意と協力が必要になり、より確立した関係によって効果的となる(2, 12)

 

 

 

有効性

避妊法の有効性はそのタイプと使用者によって変わる。最も効果的な方法は永久避妊とLARC、続いてCHC、続いてバリア法となる

 

永久避妊

永久避妊よる避妊の失敗はタイプによって異なる。精管切除の5年間における失敗率は0.01%である(13)

 

女性における永久避妊の効果はタイプによって異なる。出産直後に行われることが多い部分卵管切除術は最も有効な方法の一つで、失敗率は5年間で1000人に6.3人である。妊娠に独立して行われる卵管結紮(interval tubal ligation)は腹腔鏡下で行われ、バイポーラ焼灼術の場合は5年間で1000人に16.5人、スプリングによるクリッピングでは31.1人の失敗率である(8)。現在の推奨は卵管切除(salpingectomy: removal of the entire fallopian tube)であり、失敗率は理論上0%に近いが、現在のところ失敗に関する統計の出典はない(14)

 

LARC法

LARCの有効性は永久避妊に匹敵する。copper IUDは1年間での失敗率は0.8%で、levonorgestrel IUDは1年間で0.1%である(1)。皮下埋め込み型はより効果的で、1年間における失敗率は0.05%である(1, 15)

 

Short-acting hormonal methods

短期作用型のホルモンによる避妊方法は錠剤(combined and progestin-only)、貼付剤、膣内リング、medroxyprogesterone注射がある。これらの方法は効果がその使用方法によって大きく影響されるのでLARCに比べ有効性が劣る。錠剤タイプの失敗率は平均1年間で7%である(16)。経皮的貼付剤と膣内リングの失敗率は錠剤と同等である(16, 17, 18, 19, 20)。medroxyprogesterone注射の失敗率は短期作用型の中では最も低く、最近では1年間で4%と報告されている(21)

 

バリア法

バリア法は最も効果が低い。男性・女性コンドーム、diaphragm、スポンジ、cervical capがある。コンドームの有効性は使用者のadherenceによって制限され、一般的な失敗率は13%である(22, 23)。男性コンドームは女性コンドームよりも失敗率が低い(13% vs 21%)。その有効性の違いは認知度と男性コンドームの使用の方が簡易であることによると考えられている(9, 22)。両方のタイプは適切に使用されない、あるいはmechanical failure(破損やズレ落ち)によって失敗しうる

 

diaphragmは失敗率が、特に若い女性において、高い(2) 。新しいタイプのdiaphragm(Caya)はオンラインで購入可能で医療従事者による装着を必要としない。失敗率は前世代のものと同等で17%とされている(10)。cervical capと膣スポンジの失敗率は出産経験のある女性で高くなる。なぜなら頸管の変化によってより装着が困難になるからである(9)

 

 

 

 

緊急避妊

緊急避妊(emergency contraception)は性行為後避妊(postcoital contraception)とも呼ばれるものである。緊急避妊は妊娠が確立してしまった場合はそれを中断させるものではない。選択にはcopper IUD、専用の薬剤(levonorgestrel(Plan B)、ulipristal acetate(ella)、COCs(Yuzpe))がある。すべての経口緊急避妊剤は排卵を遅らせることによって妊娠を防ぐ。copper IUDは子宮内膜の炎症によって妊娠を防ぐと考えられているが、その機序はよく理解されていない(24)

 

現在のところ最も効果的な緊急避妊法は性行為後5日以内のcopper IUD挿入である。この方法は妊娠のリスクを99%減らすとされている(24)

 

最近開発された緊急避妊法に選択的プロゲストロン受容体モデュレーターであるulipristal acetateがあり、その有効性はlevonorgestrelの2倍とされている。ulipristal acetateはその有効性(90%)が性行為後5日目まで保たれ、その期間において効果は落ちず、またBMIによってその効果が変わらない。処方によってのみ利用可能である(25)

 

プロゲスチン(levonorgestrel)による緊急避妊は妊娠のリスクを89%まで下げうる(24)。 levonorgestrelは性行為後5日目までに服薬すれば妊娠を防ぎうるとされているが、その効果は服薬が早ければ早い程高い。またBMIが26kg/m2以上の女性では効果が劣る可能性があり、その場合はulipristal acetateかcopper IUDを強く考慮すべきである(26)

  

levonorgestrelは処方箋なしに利用可能である。避妊失敗のリスクのある女性はこの選択肢に関する情報を提供されるべきであり、またそれが必要になる前から購入しておくことも推奨されるべきである。levonorgestrelとulipristal acetateは必要になる可能性を考慮して事前に入手しておくことは、薬局の在庫が一定でない可能性から考えても有効な手段である。性行為後の速やかな避妊措置が極めて重要である(27)

 

 

(注:日本においては日本産婦人科学会によると緊急避妊措置に関してlevonorgestrel(ノルレボ錠)あるいはcopper IUDが推奨されている。levonorgestrelは性行為から72時間以内の服用が推奨され、医師による処方が必要となる。この二つの方法が利用できない場合のみ、従来行われてきたYuzpe法というホルモン配合剤の内服が考慮される)

 

 

 

 

COC(combined oral contraceptive)が緊急避妊として使用される場合は、必要となる錠剤数が薬剤によって変わる。これは他のものに比べより副作用(不正性器出血、嘔気、嘔吐)が多く、効果が劣る。そして72時間以内に服薬しなければならない(24)

 

 

 

避妊法による他の利益

 

CHC(combined hormonal contraceptive)はいくつかのタイプの癌のリスクを下げる。COCを使用している女性は一度も使用したことがない女性に対し子宮内膜癌のリスクを50%減らす。systematic reviewによるとこの利益は使用20年後まで続くとされている(28)。COCを使用すると卵巣癌のrelative riskが5年毎に20%減少すると報告されている(29)。combined methodは大腸癌のリスクも減らすかもしれない(30)

 

ホルモンの変動によって疾患の症状が悪化する女性がたくさんいる(sickle cell crisis、片頭痛など)。ホルモンによる避妊剤の使用によって症状が軽減する女性も存在する

 

CHCと同様に両タイプのIUDも子宮内膜癌のリスクを減らす(31)。現在サーベイランス中だがlevonorgestrel IUDも異型性を伴わない子宮内膜増殖症の治療に使われている(32) 

 

 

 

CHCのリスク 

すべてのCHCは少ないながら深部静脈血栓症のリスク上昇に関連している。特に開始1年目が最も顕著である

 

一般女性における深部静脈血栓症のリスクは1〜5 per 10000 woman-yearsである。妊婦では5〜20 per 10000 woman-years、低用量のエストロゲンを含む避妊剤を使用している女性では3〜9 per 10000 woman-yearsである。このリスクは年齢上昇と肥満でわずかに高くなる。また高血圧と喫煙でリスクは上昇する。しかし、combined methodを中止して30日後にはリスクが通常になる(33)

 

喫煙している、あるいはauraを伴う片頭痛のある女性は脳梗塞のリスクがあるためエストロゲンを含む避妊剤を使用してはならない(11)

 

35歳以上の女性がcombined methods of contraceptionを使用する場合、喫煙している女性は非喫煙女性が使用する場合に比べ15〜20倍脳梗塞のリスクが高くなる。また片頭痛でauraを伴う女性がcombined methodsを使用する場合、auraの経験のない片頭痛を持つ女性に比べわずかに脳梗塞のリスクが上昇する(11)

 

35歳以上で喫煙をし高血圧を伴う女性ではcombined methodsによって心筋梗塞のリスクが上がる。従ってそれらのグループではエストロゲンを含む避妊剤を使用すべきでない。このリスクは35歳以下の女性では、喫煙あるいは高血圧の有無に関わらず上昇しない(11)

 

COC pills使用者における乳癌のリスクを調べた1996年のmeta-analysisよりエストロゲン成分を含むcombined methodsによって乳癌のリスクが上昇すると報告された(34)。しかし、繰り返されたスタディでは低用量のCOC(≦35mcg:1978年以来スタンダード)は乳癌の既往を持たない場合リスクを上昇させない事が示された。9000人以上が参加したmulticenter case-control studyではサブタイプに関わらず、COCと乳癌の関連は認められないと報告された(35)。スタディではさらに、BRCA1あるいはBRCA2 mutationsがある女性、あるいは乳癌の強い家族歴がある場合でも、さらなるリスク上昇が確認されなかったとしている(36)

 

最近デンマークで行われた大きなスタディでは CHCを使用した事がある女性は使用したことにのない女性に比べ乳癌のリスクが上昇し、そのリスクは使用期間が長くなるほど高くなると報告された(37)。このスタディは多くのヘッドラインを飾ったが、そのデータは注意をもって解釈する必要がある。absolute riskは依然とても小さく、スタディの性質上、関連がはっきりしていると断定することは難しい

 

 

 

プロゲスチン単独法とLARC(long-acting reversible contraception)のリスク

注射剤は体重増加に関連する。最近のデータでは5%の体重増加が、特に思春期においては、認められ、最初の3〜6ヶ月は使用とともに体重が増加し続けるリスクがある(21)。また注射剤は一時的で可逆的な骨密度の低下との関連を認めるが、骨折のリスクは上昇しない

 

プロゲスチン単独法は深部静脈血栓症のリスクとは関連しない

 

levonorgestrel IUDおよびcopper IUDは挿入の際にわずかであるがupper genital tract infection(pelvic inflammatory disease)のリスクが上昇する(1 per 1000 women)が、そのリスクは挿入から最初の一ヶ月を過ぎれば減少する(38)

 

 

 

避妊が失敗した場合の経口避妊剤の胎児に対するリスク

経口避妊剤への曝露によって胎児奇形、流産、早産などの合併症リスクが上昇する事を示したエビデンスはない(3)

 

 

 

いつ避妊に関するカウンセリングを行うべきか

米国において最初の性行為を行う平均年齢は17歳である。理想的にカウンセリングは最初の行為の前が望ましいが、女性が助言を求めてきた時期が一番良いタイミングである。避妊のカウンセリングは特に内科疾患を有する女性に、それが未成年であったとしても、関わってくる。新しい薬を開始する、あるいは新たな診断が議論される際には、避妊と妊娠の計画について言及すべきで、必要に応じて専門家への紹介が適切となる

 

 

 

 

妊娠による合併症のリスク

避妊に関する話し合いは既往歴があり妊娠によって健康が損なわれる可能性のある女性では特に重要になる

 

List of Common Medical Conditions That Increase Risk for Pregnancy Complications

乳癌

心臓弁膜疾患(complicated)

糖尿病(1型;腎症、神経症、網膜症、他の血管性合併症、20年以上の罹患)

子宮内膜あるいは卵巣癌

てんかん

高血圧(収縮期血圧≧160mmHgあるいは拡張期血圧≧100mmHg)

2年以内の減量手術歴

HIV/AIDS

虚血性心疾患

悪性妊娠絨毛性疾患

悪性肝腫瘍(hepatoma)、肝細胞癌

周産期心筋症

肺高血圧

肝線維化を伴う住血吸虫症

非代償性肝硬変

Sickle cell disease

Solid organ transplant(過去2年以内)

脳卒中

SLE

Thrombogenic mutations

結核

 

 

 

 

近々に妊娠を考慮している場合の避妊剤は?

多くの避妊剤はその使用を中断することによって速やかに妊孕性が回復する。特にCHCは翌年に妊娠を考慮している場合には適切な選択となる(中断から12ヶ月以内の妊娠が72〜94%)(39)。copper IUD、levonorgestrel IUD、皮下埋め込み型も除去後速やかに妊娠可能になる(39)。medroxyprogesterone acetateのみが妊孕性の回復が遅延する(平均10ヶ月)ため、妊娠を近々に望んでいる場合は適切ではない

 

 

 

費用

避妊剤のコストは種類ごとに大きく異なるが、意図しない妊娠と比較すれば費用対効果が良い。combined methodsは月に0〜80ドルである。medroxyprogesterone注射は3ヶ月毎に0〜75ドルかかる。LARCは保険がない場合800ドルまでかかるが、Lilettaはより低価格である。LARCは初期に費用がかかるが、長期で見れば最も費用対効果がよい。月ごとの再処方(経口剤、膣リング、貼付剤)を要する方法は初期には費用が少ないが、月毎の費用およびその有効性を考慮すると、長期的には費用対効果が低くなる(40)

 

 

 

 

プライマリケア医は生殖年齢女性のケアにかかわる特有の役割を持っている。通常、内科合併疾患を有し、避妊が必要になる女性に最初にかかわる事が多い。妊娠を考慮しているが、それを伝えない女性に催奇形性を有する薬剤を処方してしまう可能性もある。プライマリケア医は生殖年齢の患者と生殖に関わる健康および避妊に関する話し合いが抵抗なくできるようになる必要がある

 

 

 

 

 

 

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インザクリニック

2019年2月5日5 

アナルズオブインターナルメディシン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SMAP理論

 

新専門医制度に変わると自分はどこに入れてもらえるのだろうか、などと考えるこの頃だが、少し前までであれば「一般内科医」と言えばよかったのかもしれない。循環器や消化器などのサブスペシャリティを持たず内科一般の疾患に対応するとされる医師だ

 

今までサブスペシャリティを決めずにここまで来てしまったので、おそらく今後もこのまま行く事になるのだろう

 

いわゆるジェネラリストとして生きていく事を考える時に思い浮かべるグループがある

 

SMAPである

 

解散はしてしまったものの、日本のアイドル史上最も成功したグループの一つだろう

 

その成功の要因を考える時にヒントになると感じる言葉がある

 

「俺たちは何者でもない」

 

一人が確かこんな感じの事を言い、他のメンバー全員が同じニュアンスの表現を異口同音に語っていたのをテレビで見た覚えがある

 

歌っても、踊っても、演技はしても、バラエティーはこなしても、それ一本でやっている人たちには敵わない

 

劣等感

 

それとの闘い、そうはっきり口にしていたメンバーもいたが、それが彼らを突き動かしてきた大きな原動力の一つであったと想像する

 

 

 

劣等感、それをあまり好ましいものではないと考える人もいるかもしれないが、個人的には大事にしたいと思っている感覚だ

 

卑屈になるのではなく、「いつの日か各分野においてスペシャリストに少しでも近づきたい」、オブラートに包まなければ「今に見てろよ」という反骨心

 

カテやERCPもしなければ、経験数でも及ばないので最初から無理な挑戦でもあるし、ジェネラリストにこそ求められる役割も今後ますます大きくなるであろうから実際専門医と同等になる必要など無いのだろう

 

ただ「アイドルだからこれくらい出来れば上等」と自分達自身に制限を設けていたら、おそらく劣等感もなかったが、一時代を築き上げる程の達成もなかったであろう事と同様に

 

自分で限界を決めず「スペシャリストに少しでも近づく」という無謀な理想を持ち続ける

 

自分の場合、目も当てられない無残な結果になるかもしれないが、それでも、その理想を持たなかった時に比べより成長はできる

 

そう信じている

 

 

 

 

また彼らの素晴らしいところはトップアイドルに居続けて何年も経った後に「自分達なんて大したことない」と本心で語っている様に見えたところだ

 

謙虚さ

 

これがなかったら一時成功しても、それを維持することは難しかっただろう

 

 

 

自分なんてちょっとでも人から「Good job」なんて言われようものなら額面通りに受け取ってすぐ調子に乗ってしまうし、低いレベルで恥ずかしげもなく傲ってしまうというのに

  

 

四十過ぎたオヤジがアイドルグループに自分を照らし合わせていて大分キモいのだが

 

 

ジェネラリストとして生きていく上は

 

「俺たちは何者でもない」

 

人から言われると「うるせぇ」なんて思ってしまいそうだけど、自分にかける分には可能性を示唆する結構いい言葉だと感じるが

 

そう自覚し続け、彼らの原動力となった劣等感と謙虚さを見習って、それを維持できるようにしていきたい

 

 

 

 

(念の為お断りしておきますが、芸能評論家を自称しているわけでもなければ、メンバーの顔写真の入ったうちわを大事に所有しているわけでもございません) 

 

 

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関節リウマチ

 

関節リウマチは慢性全身性疾患で米国成人の0.5〜1%、およそ150万人が罹患している(1)

 

女性により多くみられ、全ての年齢で起こるが50〜60歳が発症のピークである

 

 

症状は左右対称性の疼痛、腫脹が手指、手首、足、膝などに多関節炎としてみられるが、他の関節でもおこりえる。単関節炎あるいは少関節炎(4つ以下)でおこる場合もある

 

間質性肺疾患、心膜炎、胸水、気管支拡張症などの他の臓器障害を発症することがある(明らかな関節炎が認められない場合もある)。関節リウマチはおそらく免疫調節不全によるいくつかの疾患群を包含する臨床症候群であり、治療が行われなければ慢性炎症および不可逆的な関節あるいは臓器障害に至る

 

 

以前は関節リウマチは進行性で生命予後が悪い病態だったが、この過去20年間で長期予後が改善した(2, 3, 4)。この改善はおそらく早期の診断、不可逆的な関節および臓器障害の発症前からの積極的な治療、従来の治療薬およびdisease-modifying antirheumatic drugs(DMARDs)の普及およびその治療薬オプションの増加によって可能となった慢性炎症のコントロールに基づいている(5)

 

 

 

リスクファクター

関節リウマチの原因はわかっていないが、進行を促すリスクファクターが確認されている。HLA-DRB1は知られている中で最も強い遺伝的リスクファクターである(6, 7)。seropositiveである関節リウマチの生活習慣リスクファクターで最も確立されているのが喫煙である(8)。BMIの上昇、低量アルコール摂取、不健康な食事、歯科的不衛生、社会経済的に低い状態なども関節リウマチの罹患に影響している可能性がある(9, 10, 11, 12)。男性に比べ女性の方がリスクが高いことより、生殖および閉経などの因子が関わっている可能性も示唆されている(13, 14)。家族歴がある場合、個人のリスクが3倍に増えるが、多くの患者では家族歴が認められない(15)

 

 

 

 

診断

関節のこわばり、疼痛、腫脹が数週間以上持続する場合は関節リウマチの可能性を考慮しなければならない

 

疼痛は通常左右対称性で、多関節に認められるが、発症時には非対称性であったり、または少関節(2〜4つ)あるいは単関節のみに認められる場合もある

 

関節リウマチに特異的なものではないが、1時間以上持続し日中活動とともに改善する朝のこわばりを認め、左右対称性の関節腫脹が特徴的な症状である

 

滑膜炎の確認が関節リウマチの診断および治療の反応評価にとって重要である。滑膜炎は関節包の炎症として定義され、発赤、熱感、疼痛、腫脹を認めることが特徴的である。典型的には身体診察で確認されるが、所見がはっきりしない時は画像検査が有効な場合がある

 

関節痛は痛みとこわばりを認めることが多いが、必ずしも炎症性の関節炎によるものではない

 

滑膜炎と他の症状が6週間以上持続する場合は一過性で自然に改善するものではなく、進行性の病態になる可能性が高くなる

 

手指、手関節、足関節に認められる場合が最も多いが、非典型的な場合として膝などの大関節のみに認められる場合もある

 

遠位指節間関節は典型的には障害されず、dactylitis(指炎:ソーセージ様腫脹)も一般的には認められない。股関節を含むaxial skeleton(体軸にある骨格;頭蓋骨、脊椎、肋骨、胸骨など)は通常障害されないが、重度で長期間関節リウマチに罹患する場合、特に頚椎などに障害が認められる場合がある

 

身体所見では滑膜炎に起因する圧痛を伴う関節および軟部組織の腫脹が確認される。中・大関節では関節穿刺可能な明らかな関節液貯留が認められることもある。軽度の関節腫脹は、特に肥満や線維筋痛症などを伴っている患者の小関節などでは、わずかで認識しにくい場合がある

 

長期間の罹患でかつ適切な治療を受けていない場合は、手の尺側偏位やスワンネック、ボタンホール変形(PIP関節の伸展障害による屈曲位とDIP関節の過伸展を呈する状態)、膝や肘の屈曲拘縮、などを含む関節障害および変形などに発展する。しかし、これらの”古典的”変形はあまり見られなくなってきており、それは積極的な治療による疾患の活動性低下や寛解、およびより多くの標的治療薬が利用可能になったことによると考えられる

 

 

 

関節リウマチは全身性の炎症性疾患であり、関節以外の臓器障害や治療による副作用を合併する場合がある

 

皮膚

リウマチ結節、血管炎、潰瘍、neutrophilic dermatosis、治療関連皮疹、リンパ浮腫

 

角結膜炎(シェーグレン症候群)、上強膜炎、強膜炎、scleromalacia perforans

 

呼吸器

肺線維症、間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia、usual interstitial pneumonia、organizing pneumonia)、結節、胸水、胸膜炎、気管支拡張症、特発性器質化肺炎

 

循環器

早発性アテローム性動脈硬化・冠動脈疾患・末梢血管疾患、心膜炎、心嚢液、弁膜疾患、不整脈、伝導障害、心筋炎、心不全(preserved EF)、心結節

 

消化器

口腔乾燥、胃炎、消化性潰瘍(NSAIDs・グルココルチコイド)、口内炎、粘膜炎(methotrexate)

 

腎臓

糸球体腎炎(mesangioproliferative)、タンパク尿(稀にアミロイドーシス)、治療関連腎障害

 

肝臓

nodular regenerative hyperplasia、門脈線維症、治療関連肝炎・肝硬変

 

神経

頚椎亜脱臼・環軸椎不安定、末梢神経絞扼(手根管症候群)、mononeuritis multiplex(リウマチ血管炎)、brain nodule

 

血液

リンパ節腫脹、脾腫(Felty syndrome)、白血球減少(Felty syndrome)、リンパ腫、アミロイドーシス、クリオグロブリン血症、large granular lymphocyte syndrome

 

 

 

 

 

American College of Rheumatology(ACR)とEuropean League Against Rheumatism(EULAR)は不可逆的な関節障害が起こる前の早期の病態で関節リウマチを特定するための診断基準を作成している(16)。しかし、この診断基準は臨床のためよりもリサーチにおける患者分類のために作られている

 

 

ACR/EULAR 2010 Classification Criteria for Rheumatoid Arthritis

この診断基準は一つ以上の関節腫脹を有し、より可能性の高い他の診断が存在しない患者に限られるべきである

 

6点以上で関節リウマチと診断される

 

A. 関節(0ー5点)

身体診察にて関節の腫脹あるいは圧痛を認める

 

大関節:肩、肘、股関節、膝、足首

小関節:中手指節関節、近位指節関節、2〜4趾の中足指節関節、母指指節間関節、手関節

・1大関節:0

・2〜10大関節:1

・1〜3小関節:2

・4〜10小関節:3

・>10関節(少なくとも1以上の小関節):5

 

B. 血清学検査(0ー3点) 

低陽性(正常上限の1〜3倍)、高陽性(正常上限の3倍以上)

・RF・ACPA陰性:0

・RF低陽性あるいはACPA低陽性:2

・RF高陽性あるいはACPA高陽性:3

 

C. 急性期反応(0ー1点)

・CRP正常かつESR正常:0

・CRP上昇あるいはESR上昇:1

 

D.  症状の期間(0ー1点)

患者の自己申告による関節症状

・6週間以下:0

・6週間以上:1

 

ACPA:anticitrullinated protein antibodies、RF:rheumatoid factor

 

 

 

関節リウマチの可能性を示唆する三つのkey factorsは以下のものである;小関節の左右対称性の関節炎、ACPAあるいはRF陽性(正常上限の3倍以上)、症状が6週間以上

 

2010 ACR/EULARの診断基準はリサーチにおいては関節リウマチの合併症発症前の早期診断に有効であることが認められている。しかし、臨床においてはその診断基準を満たさなくても治療が必要となる患者がいるかもしれない。たとえば、慢性の単膝関節炎、RF・ACPA高陽性、急性反応の上昇している患者では診断基準は満たさないが、関節リウマチの治療が必要となる可能性がある。また、明らかな関節症状はないが間質性肺炎などの関節外症状が主な患者の場合なども同じである(17)。したがって医師は関節リウマチの診断および治療において自らの最良の判断を用い、診断が定かでない場合は専門家コンサルトを考慮すべきである

 

 

 

鑑別診断

Self-limited polyarthritis

病歴:左右対称性の関節炎、疼痛、朝のこわばり、倦怠感

身体所見:左右対称性の関節腫脹および圧痛

コメント:急性多関節炎の40-60%の患者は自然寛解の経過をたどる(ウイルス感染後)、通常8週間以内に消失する

 

線維筋痛症

病歴:広範囲の筋骨格痛、倦怠感、不眠

身体所見:関節および非関節部位の圧痛。腫脹は認めない

コメント:関節リウマチより頻度が高い(40〜60歳女性の5%に認められる)、20〜30%の関節リウマチ患者に合併

 

Erosive hand osteoarthritis

病歴:少関節炎、通常対称性

身体所見:遠位指節間関節かつ、あるいは近位指節間関節の骨増大および圧痛(Heberden's node/Bouchard's node)、中手指節関節は通常障害されない

コメント:手の重度の変形を認める場合があるが通常は関節リウマチに比べ機能が比較的温存される。関節リウマチでは遠位指節間関節は障害されない

 

強直性脊椎炎

病歴:主にaxial skeletonを障害、頸部痛や背部痛

身体所見:頸腰椎、股関節、肩、膝の可動障害、limited chest expansion

コメント:小関節よりも主にaxial skeletonや大関節を障害する

 

乾癬性関節炎

病歴:通常乾癬の既往があるが、関節炎が乾癬に先行する場合もある

身体所見:通常、末梢あるいはaxial skeletonを障害する単・少・多関節炎。乾癬性皮疹が頭部あるいは臀部にみられる

コメント:関節リウマチあるいは強直性脊椎炎に類似するかもしれない。関節リウマチに比べより遠位指節間関節の障害やdactylitisなどが認められる

 

反応性関節炎

病歴:axialあるいは末梢の炎症性関節炎。典型的にはウイルスあるいは細菌による消化管あるいは尿路の感染後に発症

身体所見:末梢あるいはaxial skeletonを障害する単・少・多関節炎

コメント:関節リウマチあるいは強直性脊椎炎に類似するかもしれない

 

リウマチ性多発筋痛症

病歴:50歳以上の患者に急性あるいは亜急性に発症する頸、肩、股関節の疼痛およびこわばり

身体所見:頸、肩、股関節のrotationが制限される

コメント:稀にremitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema(RS3PE)syndromeでは遠位の関節も障害される

 

他の全身性のリウマチ性疾患

(SLE、成人発症Still病、若年性特発性関節炎、強皮症、多発性筋炎、リウマチ熱、全身性血管炎、ライム病、炎症性腸疾患、他の稀な疾患)

病歴:多くは対称性の多関節炎、疼痛、朝のこわばり、倦怠感を有する

身体所見:多くはaxialあるいは末梢の対称性の関節腫脹、圧痛を認める

コメント:診断が不明な場合はリウマチ専門家へコンサルトを検討

 

化膿性関節炎

病歴:外傷、他の感染の存在、gonococcalへの暴露があるかもしれない

身体所見:通常、単関節であるが、稀に一つ以上の関節を含む場合もある、腫脹、熱感、発熱を認める

コメント:疑えば菌血症および関節破壊への伸展を防ぐために緊急関節穿刺による診断が必要となる。general populationに比べ関節リウマチ患者により多く認められる

 

痛風

病歴:通常急性発症だが緩徐あるいは慢性の場合もある

身体所見:痛風結節。腫脹、発赤、単あるいは少関節炎

コメント:正確な診断には結晶の存在を確認する必要がある

 

Calcium pyrophosphate deposition・偽痛風・hydroxyapatite crystal arthritis

病歴:通常急性発症だが緩徐あるいは慢性の場合もある

身体所見:腫脹、発赤、単あるいは少関節炎

コメント:正確な診断には結晶の存在を確認する必要がある

 

悪性疾患に関連

病歴:様々な発症様式

身体所見:関節腫脹

コメント:腫瘍随伴症状として炎症性関節炎を認める場合がある。チェックポイント阻害剤などの免疫制御剤の副作用による関節炎

 

 

 

 

 

検査

関節リウマチ患者の多くでESR、CRP、RF、ACPA、anticyclic citrullinated peptid(anti-CCP)などが上昇あるいは陽性となる。しかし、これらの検査の中で診断を除外できる程感度の高いものはなく、30%の患者では検査が陰性となる(18)

 

seropositive関節リウマチ(RFやACPAが陽性)はseronegative関節リウマチに比べより重篤な臨床経過をたどりやすい(19)

 

フィンランドとアメリカにおいて2500人以上の新規に診断された関節リウマチ患者において行われたobservational studyでは、44%の患者でESRが28mm/h以下、48%でCRPが正常値であった(18)。関節リウマチの初期症状を呈する患者でおこなわれた151のスタディのレビューでは、第二世代anti-CCP antibodiesとRFは同等の感度を認めた(67% vs 70%)が、第二世代anti-CCP antibodiesの方が特異度が高かった(96% vs 86%)(20)。anti-CCPとRFは両方感度が比較的低いため、陰性でも除外診断とならない

 

血液検査

ESR・CRP

全身性の炎症を検知し、ベースラインの確立に有用。しかし特異的でなく値が正常な関節リウマチ患者が存在する。2010 ACR/EULAR criteriaに含まれる

 

RF

関節リウマチ患者の50〜65%で陽性。他の疾患でも陽性になりうる(シェーグレン症候群、SLE、加齢、感染)。2010 ACR/EULAR criteriaに含まれる

 

Anticyclic citrullinated protein(anti-CCP)or  anticitrullinated protein antibodies(ACPA)

関節リウマチ患者の60〜70%で陽性。より特異的であるが陰性である患者も存在。他の全身性リウマチ性疾患、自己免疫性肺疾患、あるいは将来関節リウマチになるリスクのある人でも陽性になる場合がある。2010 ACR/EULAR criteriaに含まれる

 

Antinuclear antibody(ANA)

非特異的。陰性の患者も存在

 

Extractable nuclear antibodies(ENAs)・anti-double stranded DNA(anti-dsDNA)

SLEやシェーグレン症候群などの他の疾患の鑑別診断、あるいはそれらがオーバラップしている場合の診断に有用。関節リウマチによる二次性シェーグレン症候群の診断の補助

 

Hepatitis B surface antigen(HBsAg)、Hepatitis B surface antibody(HBsAb)、Hepatitis core antibody(HBcAb)

B型肝炎のスクリーニング。DMARDの選択にも影響。免疫のない患者ではワクチンも検討

 

Hepatitis C antibody

Hepatitis Cのスクリーニング。DMARDの選択にも影響

 

一般生化(クレアチニンも含む)

電解質、腎機能、ベースラインの評価。DMARDの選択にも影響

 

肝酵素(AST・ALT)

肝機能評価。ベースラインの評価。DMARDの選択にも影響

 

血算(分画)

ベースライン評価。血液疾患のスクリーニング

 

Creatinine kinase

筋炎のスクリーニング。ベースライン評価

 

TSH

自己免疫性甲状腺疾患のスクリーニング。関節リウマチと合併することが多い

 

Interferon-γ release assays(IGRAs)or purified protein derivative(PPD)

潜在性結核のスクリーニング。DMARDの選択にも影響

 

Commercial multi-biomarker disease activity assay

関節リウマチの活動性をモニターする場合に検討。診断および活動性のモニターに有用であるかの議論は続いている 

 

脂質・HbA1c

脂質異常症および糖尿病のスクリーニング

 

14-3-3η(14-3-3 eta)

RFとCCPが陰性の関節リウマチの診断の補助。有用性の議論は続いている 

 

関節滑液検査(血球数・分画、結晶、グラム染色、培養)

中・大関節に中等度から多量の液貯留を認める単・少関節炎などの非典型的な症状の場合は検討

 

他の検査

(interleukin-6、serum protein electrophoresis and immunofixation、angiotensin converting enzyme、25(OH) vitamin D、other vitamins、ionized calcium、uric acid、parathyroid hormone、other hormones、HLA-B27、other genetics、HIV antibody、parvovirus B19 antibody、Lyme antibody、other infection screens、other autoantibodies, etc.)

非典型的な症状やそれぞれ臨床的に示唆される患者では検討 

 

 

 

画像

単純X線検査(手、手首、足、障害を認める他の関節)

関節リウマチによるダメージを評価、ベースライン評価。手、手首、足の写真を症候や症状がない場合でも検討 

 

超音波検査

滑膜炎の評価、ベースライン評価、他の鑑別疾患の検知。関節穿刺の補助。多くのリウマチ専門医が超音波のトレーニングを受け、疾患の活動性モニターに利用 

 

MRI

滑膜炎の評価、ベースライン評価、他の鑑別疾患の検知。所見がはっきりしない滑膜炎および軟部組織の障害を検知

 

CT

骨びらんの評価。ベースライン評価。他の鑑別疾患の検知

 

胸部X線

DMARD治療開始前のベースライン評価。間質性肺疾患、胸水、結節、気管支拡張症などの呼吸器合併症および悪性疾患、結核などのスクリーニング

 

他の画像検査

(positron emission tomography、bone scan、dual-energy X-ray absorptiometry、musculoskeletal dual-energy computed tomography scan、abdominal ultrasound、transthoracic echocardiogram, etc.)

非典型的な症状やそれぞれ臨床的に示唆される患者では検討 

 

 

 

 

 

症状を有する関節のX線検査における変化(関節近接の骨減少、関節間隙狭小化、骨びらん)は関節リウマチの診断あるいは治療開始のために必要ではない。治療の主なゴールは数ヶ月から数年症状を有する患者に起こってくるそれらの変化を防ぐことである。関節リウマチは関節炎症が初期の段階で通常X線検査が正常、あるいは手や足のわずかな関節近接の骨減少を認める時期に診断されることが多い。それらの変化は手よりも先に足に起こる場合もある。たとえ症状がない場合でもスクリーニング、ベースラインの確立、あるいは他の鑑別疾患の評価のために足と手の単純X線写真をとることは理にかなっている

 

 

超音波検査とMRIは骨障害が起こる以前の軟部組織の炎症および滑膜炎 (特に腱滑膜炎)の検知において単純X線より感度が高いが、特異度は比較的低い

 

 

 

 

Synovial fluid

滑膜液を採取することは、特に多関節炎を認める患者の場合、関節リウマチの診断に必要ではない。 しかし、化膿性関節炎、痛風、他の疾患の可能性も考慮される場合は中あるいは大関節(膝、肩、足首、肘など)から採取しなければならない。化膿性関節炎は関節リウマチの患者においてより多く見られ、単関節炎で熱感、発赤、多量の関節液貯留、熱や血圧低下などの全身性の症状を認める場合は疑わなければならない

 

 

 

 

 

治療

 

薬物学的治療は炎症をコントロールし関節リウマチの活動性を低く抑える、あるいは寛解させることがゴールである。methotrexateがそのよく知られた有効性および安全性より関節リウマチの初期治療の主軸と考えられている。中等度から重度の病態において典型的にはmethotrexateが単剤治療薬として開始される。治療の反応が悪い場合はmethotrexateにその効果を増強させ、薬剤に対する抗体形成を減らす目的で他のDMARDsが追加(代替ではなく)される。軽度の関節リウマチでは時にhydroxychloroquineが初期治療薬として使われる場合もあるが、効果が悪い場合はmethotrexateなどの他のDMARDsを開始しなければならない

 

 

NSAIDsはその効果発現の速さより疼痛治療に屯用される。glucocorticoidsは効果発現の速さおよび疼痛・こわばり改善への有効性より、活動性が高い時期に"bridge therapy"として使われる場合がある。しかし長期使用による多くの合併症があるため、DMARDs治療によってglucocorticoidsを完全に撤退、あるいは最低必要量に保つ必要がある。過去には関節リウマチのステップアップ治療としてNSAIDsとglucocorticoidsから開始され、治療反応が悪い場合にDMARDsを後から開始していたが、初期からDMARD治療を開始する方法に比べ効果が劣ることをデータが示している(21)

 

 

ガイドラインでは疾患の活動性を低く保つあるいは寛解を、適切な活動性の評価法を用いながら目指すことを推奨している(22, 23, 24)。関節リウマチの活動性を評価し治療決定を補助するさまざまな活動性評価法が確立され、その有効性が認められている。広く普及しているのがDisease Activity Score 28(DAS28)(25)で、28箇所の関節(手指(10 x 2)・手首(2)・肘(2)・肩(2)・膝(2))の圧痛および腫脹、患者の全身状態の自己評価、急性反応(CRP or ESR)からなる指標で成り立っている。Simplified Disease Activity Index(SDAI)はDAS28に類似しているが、計算がより簡易で血液検査が利用可能であればよりリアルタイムに利用可能である(26)。Clinical Disease Activity Index(CDAI)は関節の圧痛・腫脹と患者の自己評価を使うが血液検査は必要でない(27)。Routine Assessment of Patient Index Data 3(RAPID3)は患者の自己評価のみを使うため、遠隔での使用も可能で、モニターおよび治療決定の補助に容易に利用可能である(28)。超音波検査やMRIなどの画像検査を活動性モニターの指標に組み込むかのリサーチが続いている(29)

 

 

 

関節リウマチの活動性評価方法

関節圧痛の数(✳︎):DAS28(◯)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(X)

関節腫脹の数(✳︎):DAS28(◯)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(X)

医師による全身評価 :DAS28(X)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(X)

ESR or CRP:DAS28(◯)CDAI(X)SDAI(◯)RAPID3(X)

患者による全身評価:DAS28(◯)CDAI(◯)SDAI(◯)RAPID3(◯)

患者によるの機能評価:DAS28(X)CDAI(X)SDAI(X)RAPID3(◯)

患者による疼痛評価:DAS28(X)CDAI(X)SDAI(X)RAPID3(◯)

 

(✴︎)圧痛・腫脹を評価する関節(28関節):手指(10 x 2)・手首(2)・肘(2)・肩(2)・膝(2)

 

 

関節リウマチの活動性分類

高(治療強化が強く必要):DAS28 >5.1、CDAI >22、SDAI >26、RAPID3 >12

中(治療強化を強く考慮):DAS28 3.2〜5.1、CDAI 10.1〜22、SDAI 11.1〜26、RAPID3 6.1〜12

低(治療強化を検討):DAS28 2.7〜3.2、CDAI 2.9〜10、SDAI 3.4〜11、RAPID3 3.1〜6

寛解:DAS28 ≦2.6、CDAI ≦2.8、SDAI ≦3.3、RAPID3 ≦3

 

 

 

 

関節リウマチの活動性評価は客観的データを提供し長期予後を改善する。しかし、ある患者では主観的な疼痛の申告や活動性の関節リウマチに関係ない関節の圧痛(関節破壊による疼痛や圧痛、線維筋痛症、併存する変形性関節症、腰痛、鬱、ストレス、不眠など)などにより活動性が有ると間違って分類される場合がある。反対に、治療の強化が必要であるにも関わらず関節リウマチの活動性が低いと分類されてしまう場合もある(足優位の炎症性関節炎、難治性の単関節炎など)。したがってこれらの評価法は治療の補助に役立つが、それぞれの臨床シナリオに則して治療決定が行われる必要がある

 

 

Traditional DMARDs

 

Methotrexate

関節リウマチと診断された多くの患者の第一選択薬がmethotrexateであり(典型的には1mg dailyで開始)、葉酸と共に投与される(30)。低用量(≦ 25mg/week)では通常白血球や血小板は減少しない。methotrexateで治療されるおよそ半数の患者ではX線上での進行がわずかに、あるいは認められずに抑えられるが、30%の患者ではDMARDsの追加が必要になる(31)。典型的な投与量は週10〜25mgである。副作用の嘔気、下痢、口内炎、脱毛、服用後倦怠感は高用量の葉酸投与(あるいはleucovorinに変更してmethotrexate投与8〜12時間後に投与)、methotrexateの1日投与量を分割投与、皮下注に変更、耐容できる最大投与量に減量する、ことなどによってコントロールできるかもしれない。methotrexateの長期投与は安全で多くの患者で耐容できる(32)。methotrexateには催奇形性作用があるため妊娠可能な女性では避妊薬の使用あるいは産科への紹介が必要になる

 

Hydroxychloroquine

hydroxychloroquineは軽度の関節リウマチ患者に、あるいはSLEなどとオーバラップしている場合に投与される場合がある。単剤投与では中等度から重度の症状をコントロールできないが、他のDMARDsに部分的に反応を示す患者に追加投与することが有効な場合がある。hydroxychloroquineは穏やかな抗炎症作用を有するが、感染のリスクを上げず、耐用性は良好である。重篤な副作用には失明に至る網膜症があるが、比較的稀で投与が5年以上の場合に限られる(33)。他の稀な副作用には色素沈着や皮疹がある。妊婦への投与も可能であるとされている

 

Sulfasalazine 

sulfasalazineはtraditional DMARDの一つでmethotrexateに耐容できない、あるいは禁忌の患者での投与が考慮される。臨床試験では投与1年後の効果はmethotrexateと同等であったが(34)、長期の効果では劣る(35)。副作用は嘔気、下痢、肝酵素上昇などがあるが、これらは投与量に依存しているかもしれない

 

Leflunomide

leflunomideはtraditional DMARDの一つで単剤薬としてmethotrexateの代替、あるいは他のtraditionalあるいはbiologic DMARDsと併用投与として使用される。副作用は嘔気、下痢、肝酵素上昇などがある。leflunomideはおそらく催奇形性があり、比較的半減期が長いので(定常状態に到達してから2年後まで血中に確認された患者も存在)、将来妊娠を希望する可能性の女性では避けるべきである

 

三剤治療

三剤治療とはmethotrexate、hydroxychloroquine、sulfasalazineの併用治療である。leflunomideやazathioprineなどの他のtraditional DMARDsがsulfasalazineやmethotrexateの代わりに投与される場合もある。三剤治療はmethotrexate単剤治療に反応が不良の場合に考慮される。三剤治療はbiologic DMARDsとmethotrexateの併用治療に比べ、費用対効果が高く(36)、効果も同等であるかもしれない。しかしbiologic DMARDsに比べ使用される頻度は低い(37)

 

353人の関節リウマチ患者で行われたrandomized controlled trialでは三剤治療およびetanerceptとmethotrexateの併用治療が比較検討された(38)。24週間後の活動性、X線上での進行、health-related qualith of lifeは両グループ間において同等であった

 

 

 

Biologic DMARDs

およそ30〜50%の患者がtraditional DMARDsに十分な反応を示さない。methotrexateの単剤治療あるいは他のtraditional DMARDsとの併用治療開始2〜6ヶ月後に効果が不十分であった場合biologic DMARDsを考慮する必要がある(22, 23)。現在使用されているbiologic DMARDsは全て炎症あるいは免疫経路に対する抗体からなり、静注あるいは皮下注投与される。biologic DMARDsの開発は過去20年間における関節リウマチ治療の大きな伸展をもたらしている

 

U.S. Food and Drug Administrationは10のbiologic DMARDsを関節リウマチの治療薬として承認している。それらは5つの異なる作用機序を有している。infliximib、etanercept、adalimumab、golimumab、certolizumab pegolはTNF-αを阻害するモノクローナル抗体あるいは受容体阻害剤である。さらなる炎症あるいは免疫経路をターゲットにするbiologic agentsにはT-cell receptor CTLA4(adatacept)、B-cell marker CD20(rituximab)、interleukin-6 recptor(tocilizumabとsarilumab)、interleukin-1 receptor(anakinra)がある。これらbiologic DMARDsのクラス間での効果にはわずかな違いがあるかもしれないが、個人の反応は大きく異なりえる。現在、methotrexateに反応が不良である患者には禁忌でない限り(心不全など)、最初のbiologic DMARDとしてTNF-α阻害剤が開始される場合が多い。biologic DMARDsは、それ同士の併用投与はできないが、その効果を高め、また抗薬剤抗体の産生を減らすためにtraditional DMARDs、特にmethotrexateなどと併用投与されることが多い

 

全てのbiologic DMARDsは免疫機能に影響を与え、よく見られる感染(肺炎、蜂窩織炎、尿路感染など)や比較的少ない感染(結核、真菌感染など)の両方のリスクを高める。biologic DMARDsはactiveで重篤な感染症が起こっている場合は中止しなければならない。結核およびウイルス性肝炎のスクリーニングは薬剤開始前の全ての患者で必須である。禁忌でない限りインフルエンザ、肺炎球菌、帯状疱疹のワクチンを受けるべきである。帯状疱疹に対するワクチンが考慮されるべきだが、biologic DMARDが開始された後では生ワクチンを投与してはならない

 

スウェーデンで悪性疾患の既往がありTNF-α阻害剤を開始された467人の関節リウマチ患者に対して行われたobservational studyでは、同等の悪性疾患の既往を有し、マッチしたコントロール患者2164人と比較検討された(39)。悪性疾患の再発において両グループ間における違いは認められなかった。この結果より、たとえ悪性疾患の既往がある患者においても、biologic DMARDsの長期における安全性に対し好ましいエビデンスが示された

 

 

NSAIDs

関節リウマチ患者においてNSAIDsは疼痛およびこわばりのコントロールに使用される。disease-modifying作用は有していないと考えられているが、およそ半数の患者において屯用投与、時に定期投与されている。症状のコントロールには有用であるが、長期心血管、腎、消化管リスクがある事はよく知られている(40)

 

 

Glucocorticoid

glucocorticoidは関節リウマチの疼痛、こわばり、腫脹のコントロールに対し最も効果があると考えられているが、病態の進行を抑えることにおいては効果が劣る。感染、高血糖、高血圧、骨粗鬆症、体重増加、気分変調、睡眠障害などの副作用がよく知られている。glucocorticoidは関節リウマチの診断時あるいは活動性が高い時にDMARDsが開始される場合の"bridging" therapyとして投与されることが多い。ゴールはglucocorticoidを完全に撤退する、あるいは可能な限り低用量で使用することである。しかし、低用量のprednisone(≦ 5mg/day)は効果を有しながら副作用のリスクが比較的少ないかもしれない(41)

 

DMARD治療にもかかわらず、難治性あるいは再発性の関節炎を有する患者ではglucocorticoid関節内注射が付随治療として効果があるかもしれない。関節内注射は症状緩和の効果発現が早く、耐容性もよく、年に3〜4回以上行われなければ安全であると考えられている(42)。glucocorticoid関節内注射は他に比べ腫脹および圧痛が強い、1つあるいはそれ以上の中〜大関節に対し行われる

 

 

理学療法・作業療法

過去には関節リウマチに対するエクササイズに注意を提唱する医療者もいたが、適切にデザインされたプログラムは一般的に有効であると考えられている。理学療法士と作業療法士は日常生活のパフォーマンスが制限された関節リウマチ患者の機能を向上させうる

 

早期の関節リウマチ患者において行われたrandomized trialでは、有酸素運動フィットネスと筋力増強を目指すエクササイズプログラムによって2年後における筋力の強さおよび全体における活動性評価での改善が認められ、その効果はその後3年間維持された(43)。中等度の強度におけるエクササイズのために関節あるいは骨に障害が起こったというエビデンスは認められず、安全性が認められた

 

 

食事・ビタミン

食事が状態を改善したり、悪化させる重要なファクターであるという患者もいるが、ビタミン剤投与などが関節リウマチ患者の代替治療として有効であるというエビデンスは認められていない(44)。あるrandomized clinical trialではfish oilが病状初期においてある程度の有効性を認めることが示唆されている(45)。必要であれば患者に対し、DMARDs治療の補助療法として減量およびphysical fitnessの維持・改善を奨励するべきである(46)

 

 

 

予後

多くの患者においては関節リウマチはflaresのエピソードや長期の慢性炎症を特徴とする進行性の疾患である。薬剤投与を必要としなくなる長期の寛解を達成する患者は少ない。関節リウマチ患者は感染、骨粗鬆症、心血管疾患、呼吸器疾患、悪性疾患などの合併症リスクが高くなる(47, 48, 49, 50, 51)。全ての原因による死亡率はgeneral populationに比較し50%高くなる(52)。しかし、この死亡率のギャップは改善してきているように見える(2, 4)。それは早期の積極的な治療、治療オプションの増加、および長期の炎症コントロールに基づいていると考えられる

 

 

 

 

 

 

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インザクリニック

アナルズオブインターナルメディシン

2019年1月1日

 

在宅高齢者の転倒予防

 

転倒は70歳以降10歳毎にその発生率が2倍に増えていく

 

 

転倒は意図しない傷害による死亡の3番目に高い原因である(1)

 

 

転倒は高齢者の非致死的および致死的傷害の最も多い原因である(2, 3)

 

 

傷害に至らない転倒であっても、機能低下、精神的ストレス、自立の喪失などをもたらし、老年症候群を悪化させうる(4)

 

しかしながら担当医と転倒についての話し合いをもたれる在宅高齢者は4人に1人のみである(5)

 

 

転倒リスクは介入の種類に依存して20〜40%減らすことが可能であることをエビデンスが示している(6)

 

 

医療従事者は転倒に関する一次的および二次的スクリーニングに対する努力を積極的に行い、エビデンスに基づいた適切な指示を提供する必要がある

 

 

 

リスクファクター

リスクファクターは修正可能なものと修正不能なもの、内因性と外因性に分類される(7)

 

転倒における内因性および外因性リスクファクター

内因性

:視力低下、黄斑変性症、緑内障、白内障、遠近調節機能低下、奥行知覚の低下、失明、網膜症

循環:徐脈、頻脈性不整脈、起立性低血圧、非代償性心不全

神経:認知症、Parkinson病、脳卒中、他の運動性疾患、末梢神経障害、歩行障害、バランス障害

泌尿:失禁、夜間頻尿

精神:不眠、睡眠障害、うつ病

筋骨格:変形性関節症、疼痛、下肢筋力低下、姿勢障害、バランス障害、柔軟性低下

 

外因性

薬剤:抗コリン剤、抗うつ剤、向精神薬、鎮静剤、ベンゾジアゼピン、オピオイド、降圧剤、α-and-β遮断剤、抗不整脈薬、4つ以上の薬剤服用

履物:backlessの靴およびスリッパ、ハイヒール、足の背部、土踏まず、あるいはかかとにサポートがない靴、底が重たい、あるいはつま先が狭い靴

環境: 濡れているあるいは滑りやすい床、手すりの欠如、平らでない床、床の敷物、弱い照明、階段の手すりがない、コードなどの通路の障害

 

 

転倒リスクは一つの因子あるいはいくつかの因子の累積によって推定される。独立した転倒リスク因子としては、転倒の既往(likelihood ratio(LR):3)、椅子から腕を使わずに立てない(LR:4)、遅い歩行(LR:2)、動作に問題があることを自覚している(LR:2)、向精神薬使用(LR:20)、認知症(LR:15)、Parkinson病(LR:5)、脳卒中(LR:3)などがある(8)

 

 

 

転倒のおよそ半数が傷害にいたり(9)、10%が重篤な傷害を起こす(4)

 

 

個々の因子および状況因子の両方の存在が転倒による重篤な傷害のリスクを予測する。重篤な傷害には、骨折、関節脱臼、関節内出血、重度の捻挫、頭部外傷による意識喪失および入院、縫合を要する裂創、入院を要するあるいは活動性低下をきたす内部損傷が含まれる(10)

 

個々の因子としては、女性、低体重(body mass index<22kg/m2)、認知機能低下、がある。状況因子としては、階段での転倒、displacing activity(ドアを開けたり、クローゼットに近づく時などの重心を移動させる動作)、身長と同じ、あるいはそれ以上の高さからの転倒、などが含まれる(10)

 

 

転倒に対する恐怖はその神経精神的重大さにて転倒のリスクを高め、機能低下をもたらす(11)

 

 

在宅高齢者で転倒歴のある21〜85%、転倒歴のない在宅高齢者の33〜46%が転倒に対する恐怖を報告している(12)

 

 

機能レベルでは転倒への恐怖は、姿勢の変化、バランスに対する自信の低下、活動を避ける、運動の低下などと関連を認める(13, 14)

 

 

転倒への恐怖自体が将来の転倒の大きな予測因子となる(15)

 

 

精神心理学的には、転倒に対する恐怖をもつ人は比較的に精神衛生が劣り、自立性が低く、健康に対する自己評価が低い 、とされている(16)

 

 

転倒への恐怖が活動性低下を導き、身体機能低下を促進する。この状況を認識することによって医療従事者が患者に対し転倒予防への努力を促し、自信を取り戻させ、結果以前に勤しんでいた活動を再開させることを可能にする

 

 

 

 

評価

 

転倒のスクリーニングはバランス、下肢筋力低下、歩行に関して自覚している情報を得ることから開始する

 

 

American and British Geriatrics Societies(AGS/BGS)のガイドラインでは65歳以上のすべての高齢者に対し一年毎に以下のことを尋ねることを推奨している;過去1年間のうちで2回以上転倒したか、転倒によって怪我をしたか、歩行あるいはバランスによる問題があるか(17)。これらの質問に対し一つでも「はい」と答えた患者ではさらなる評価が必要になる

 

 

 

プライマリケア医が転倒予防手段を取ることを助けるためにCenters for Disease Control and Prevention(CDC)がStopping Elderly Accidents, Deaths & Injuries(STEADI)tool kitを開発している(18)。それによると以下のkey questionsをスクリーニングとして尋ねることを提案している;過去1年間の間に転倒したか、立ったり歩いたりする時に不安定さを感じるか、転倒しないか心配になるか。またCDCは転倒リスクを減らすための介入による利益があるかを評価するスクリーニング質問事項を作成している。この計14点からなる"Stay Indepedent"質問事項は有効性が認められた転倒リスクの自己評価法として高齢者が自分で回答し、外来受診時に担当医が評価するものである(19)。質問事項のスコアが4点以上、あるいはSTEADI tool kitのkey questionsに一つでも該当すれば、患者は転倒のリスクがあるとされ、さらなる評価が必要になる

 

 

Stay Independent questionnaire 

・過去一年の間に転倒したことがある(2)

・杖や歩行器を使う、あるいは使うよう勧められている(2)

・歩行時に時おり不安定さを感じる(1)

・家の中を歩くときに安定のために家具などにつかまる(1)

・転倒するか心配になる(1)

・椅子から立ち上がる時に腕で押し上げる必要がある(1)

・歩道の縁石を上がることが困難な場合がある(1)

・トイレに急いでいく必要がある場合が多い(1)

・足の感覚が鈍い(1)

・内服すると立ちくらみや疲れやすくなる薬を服用している(1)

・睡眠剤や気持ちを安定させる薬を服用している(1)

・悲しかったり抑うつ気分になることが多い(1)

 

 

 

 

 

 

 

ガイドラインでは転倒の既往がある、あるいはなく、バランスや歩行に問題がある高齢者に歩行、下肢筋力、およびバランスの機能的評価を行うことを推奨している(17)

 

 

いくつかのfunctional performance testが転倒リスク評価として利用可能である。しかし、これらの多くは非実用的で多くのプライマリケアにおいては不必要である。したがってAGS/BGSとCDCは、転倒リスクを有し動作に問題のある高齢者を特定するためにTimed Up-and-Go(TUG)test、Thirty-Second Sit-to-Stand(STS)test、Four-Stage Balance testなどのようなシンプルなテストを行うことを推奨している

 

 

TUG testは歩行、バランス、調整、筋力を評価するもので、施行者に特別なトレーニングを必要とせず、5分間で行うことができる(20)。その転倒に対する予測能力と診断の正確性は中等度である(21)。テストを終了するのに12秒以上かかる高齢者は転倒のリスクがあり、20秒以上かかる場合はよりリスクが高くなる

 

  

 

STS testおよびFour-Stage Balance testは迅速で外来ベースで行われる、下肢の筋力およびバランスをそれぞれ測定するスクリーニングツールで、簡単に施行でき、TUG testを補足する有益な情報が得られる(22, 23)

 

 

 

AGS/BGSのガイドラインでは歩行あるいはバランス障害をもつ全ての人に転倒リスクの評価を行う必要があるとしている

 

 

 

Functional Tests

 

Timed Up-and-Go test

Description

運動、バランス、移動能力、転倒リスクを評価する。硬い背もたれの椅子から腕を利用して立ち上がり、10 feet(3m)歩行し、振り返り、戻って来て椅子に座る。普段から使用している場合は補助用具(杖、歩行器)を使って行う

Comments

転倒のハイリスクを示唆するカットオフスコアはpopulationに依存して変わる。特異度(60〜87%)の方が感度(31〜56%)より良い傾向にある

 

Berg Balance test

Description

14項目の客観的指標によって静的バランスを評価する(座る、立つ、移動、近づく、方向転換など)

Comments

このテストは他のテストに比べより時間を要し、実施にトレーニングを必要とする

 

Four-Stage Balance test

Description

静的バランスを評価する。対象者は四つの状態を順次行っていく;parallel stance(両足底が平行な状態で立つ)、semi-tandem(足底が縦方向にずれて立つ)、full tandem(足底が縦方向に一直線にして立つ)、single leg stance(片足立ち)。ゴールは支えなしに10秒間各状態を保持

Comments

一つのスタディでは転倒再発予測に対する感度45%、特異度74%であった。外来にて簡易に行える

 

Thirty-Second Sit-to-Stand test

Description

下肢筋力評価を行う。対象者は座位から腕を使わずに立ち上がる動作を30秒の間にできるだけ多い回数行う

Comments

正常値は性別および年齢に依存し、性別/年齢に基づく正常値を達成できない場合は転倒リスクがあるとされる。 年齢および性別に関わらず転倒予測のカットオフ値を11とした場合の感度は68%、特異度は54%であった

 

Dynamic Gait Index

Description

歩行中にexternal demandsが存在する時のバランス保持能力を評価する

Comments

施行者のトレーニングを必要としない。10分以内に施行可能。スコア19以上で転倒リスク予測の感度が59%、特異度が64%

 

Four-Square Step test

Description

前方、横方向、後方へステップする能力を評価する

Comments

テスト終了に15秒以上を要する場合転倒リスクがあるとされる

 

 

 

Clinical assessment

 

転倒リスクの評価には問題に焦点をあてた身体診察が必要になる。過去の転倒に関する記載は転倒の防止およびマネージメントの要の一つである(24)

 

転倒歴

症状(前駆症状):めまい、たちくらみ、動悸

場所:寝室、トイレ、浴室、屋外

時間: 食後、1日の時間帯、服薬時間との関係

活動:転倒時の状況;歩行時あるいは立ち上がった時

 

身体診察

頭部・眼・耳・鼻・咽頭:視力、周辺視野

循環器:orthostatic vitals、脈拍、リズム、雑音

神経:認知機能、感覚、深部知覚、バランス、運動機能、反射、小脳機能、歩行

精神:うつ病スクリーニング

筋骨格:立位の姿勢、関節可動域(特に下肢、頭部、頸部、体幹)、筋緊張、筋量、足および履物の評価

 

 

 

処方薬剤の評価は転倒リスクの評価における最重要事項の一つである。全ての薬剤について臨床的に必要かどうか再評価する必要がある。4剤以上の薬剤を服薬している事自体が転倒の独立したリスクとなる(25)。抗コリン剤や鎮静作用を有する中枢神経系に影響を持つ薬剤が転倒と最も強い関連を持ち、可能な限り漸減、減量あるいは中断すべきである(26)。これらの薬剤には向精神薬、三環系抗うつ剤、セロトニン再取り込み阻害剤、中枢作用性降圧剤、オピオイド、鎮静剤、非ベンゾジアゼピンおよびベンゾジアゼピン受容体阻害剤などが含まれる(27)

 

 転倒リスクを上げる薬剤

・向精神薬

・鎮静剤

・降圧剤(中枢作用性)

・利尿剤

・抗不整脈薬

・オピオイド

 

 

転倒リスクの評価に基づいて適切な血液検査と画像検査を選択する必要がある。検査にはヘマトクリット、TSH、ビタミンB12、25-hydroxyvitamin D、dual-energy x-ray absorptiometry(DEXA)scanningなどが含まれるかもしれない

 

 

 

 

転倒に対する恐怖を評価

転倒リスクを認める場合、機能低下の原因となる転倒に対する恐怖、およびその程度を評価する必要がある。その場合、long (16-item) or short (7-item) Falls Efficacy Scale-International (FES-I)を使用して評価することが可能である(28)。この評価によって着替え、食事準備、入浴などの日常動作中の転倒に対する本人の懸念を引き出すことができる。これは転倒に関連する機能低下を評価することで医療補助具、home safety評価、作業療法などから利益を得られる高齢者を同定することに有益である

 

 

 

Home safety assessment

機能評価および転倒歴から環境因子に問題がある可能性が考えられる場合は住居環境の改善や作業療法士への紹介が妥当となる(9)

 

Basic Home Safety Recommendation 

玄関:手すり、および適切な階段、適切な照明

台所:よく使用するものを届きやすい場所に配置、滑りにくいマット

トイレ・浴室:滑り止めを備えたマット、手すり、適切な照明

階段:散らかりを除去、手すり、階段の段ごとにカラーストリップを配置する

廊下:散らかりを除去、夜間の照明

 

 

 

 

 

マネージメント

 

転倒予防のための様々な介入方法がある。その中で運動が最も強いエビデンスを持ち、転倒および転倒による傷害を減らすことが確認されている(6, 29)

 

 

転倒による傷害を減らすかどうかのエビデンスは欠如しているが、住居環境の改善も効果的である(29)。住居環境の改善は視力低下をもつようなハイリスクの人により効果をもたらす。住居環境改善は作業療法士によって行われる場合により有効であるようである(6)

 

 

 

中枢神経に作用する薬剤の中止あるいは減量は転倒を減らすことに有効性が認められている(6, 17)。多くの高齢者は薬剤と転倒の関連に無自覚であるが、一度アドバイスを与えられると服用する薬剤の数や用量を減らす提案を受け入れることが多い。リサーチでも高齢者の薬剤に対するそのような態度が確認され、医師からアドバイスを受けると68%が薬剤の使用を減らしたいと思い、92%が薬剤を中止したいと考える、と報告されている(30)。このスタディでは薬剤を減らすことの重要性、および高齢者における薬剤のリスクと害を医師自身が認識すべきことを強調している(27)。最近のリサーチでは高齢者における向精神薬使用減量の主なバリアとなっているのが医師の薬剤中止に対する消極的な姿勢である、と報告している(31)

 

 

Multifactorial intervention

計41596人の参加者を39の介入方法で評価した54のrandomized trialsにおけるcomprehensive systematic reviewおよびnetwork meta-analysis(29)からのエビデンスでは以下の組み合わせの介入が転倒に関する傷害を減らすと報告している;運動と視力評価およびマネージメント(OR, 0.17 [CI, 0.07-0.38])、運動と視力および住宅環境の評価とマネージメント(OR, 0.30 [CI, 0.13-0.70])、clinic-level quality improvement(医師への情報提供)とmultifactorial assessment and managementとビタミンDおよびカルシウム補足(OR, 0.12 [CI, 0.03-0.55])

 

 

 

Interventions for Fall Prevention and Their Evidence Ratings

筋力およびバランスエクササイズ

USPSTF: B AGS/BGS: A(効果的(16 trials))

 

太極拳 

USPSTF: B AGS/BGS: A(転倒のリスク減少(7 trials))

 

住宅環境改善

USPSTF: I* AGS/BGS: A(効果的(6 trials))

 

向精神薬の減量

USPSTF: I* AGS/BGS: B(2 positive trials) 

 

服薬数の減量および用量減量

USPSTF: ー  AGS/BGS: B 

 

起立性低血圧のマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: C

 

ビタミンD補足

USPSTF: D  AGS/BGS: B(効果は認められない(13 trials))

 

視力スクリニンーグおよびマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: I(Harmful effect in 1 trial)

 

聴力スクリニーングおよびマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: ー

 

足・履物のスクリーニングおよびマネージメント

USPSTF: ー  AGS/BGS: C(転倒のリスク減少(2 trials))

 

患者教育のみ

USPSTF: ー  AGS/BGS: D(1 negative trial)

 

carotid sinus hypersensitivityに対するcardiac pacing

USPSTF: ー  AGS/BGS: B(転倒のリスク減少(3 trials))

 

白内障手術

USPSTF: ー  AGS/BGS: B(1 positive trial)

  

multifactorial interventions

USPSTF: C  AGS/BGS: A(転倒の率を減らすがリスクは減らさない(19 trials))

  

AGS: American Geriatrics Society, BGS: British Geriatrics Society, USPSTF: U.S. Preventive Services Task Force

USPSTF Rating: A=recommended with high certainty of benefit, B=recommended with moderate certainty of benefit, C=selectively offer based on professional judgement and patient preference, D=recommended against based on moderate or high certainty of no benefit or that harms outweigh the benefit, I=insufficient evidence, I*=evidence report finding of insufficient evidence/not part of summary recommendation 

AGS/BGS Rating: A=strongly recommended, B=recommended, C=no recommendation, D= recommended against, I=insufficient evidence

 

 

 

 

 

認知症高齢者の転倒予防 

認知機能の低下した人は転倒および傷害のリスクが高いが、多くの介入がこの特定の集団を対象にしては試験されていない。運動は認知機能が軽度から中等度低下した在宅高齢者の転倒リスクを下げる効果があることが認められている(32)。しかし、認知症の人をエクササイズに従事させる時、無気力、抵抗、行動障害などが見られる場合がある。認知症のナーシングホーム居住者で行われたスタディでは日中および午後に下肢筋力の維持にフォーカスした立ち座りを繰り返す単純な動作を行うことによって移動の能力を維持することに効果的であったと報告されている(33)。自宅で暮らす進行した認知症の高齢者では自立した移動(ベッドへの出入り、トイレに座る・立ち上がる、車への出入り、など)を続けることは家で暮らし続けるために重要であり、また単純な運動を続けることよりも達成することが可能であるかもしれない。自宅で暮らすことを希望するが認知症および他の疾患にて転倒のリスクが高い高齢者をケアする家族へのアドバイスとして単純な立ち座りの動作を勧めることは実用的である

 

 

 

 

運動 

strength and balance exerciseは転倒および転倒による傷害予防に最も効果が認められている。そのようなエクササイズが持続されれば、転倒に対する恐怖も軽減できる可能性がある(34)。多くの高齢者は筋力とバランスを改善するためのエクササイズを行なっていない。転倒リスクの高い高齢者では最初の安全なアプローチとして理学療法士の一対一による運動指導を受け、その後準備ができれば地域のエキササイズクラスや家庭内でのエクササイズプログラムに移行していく事が可能である(35, 36)

Otago Exercise Program(35)で行われたtrialsでは、理学療法士や訓練された看護師によってエクササイズが実施された場合、バランスが改善し、転倒および転倒による傷害が35%減少したと報告されている(fall incidence rate ratio [IRR], 0.65[CI, 0.57-0.75], fall-related injury IRR, 0.65[CI; 0.53-0.81])

 

 

 

 

ビタミンDとカルシウム 

ビタミンDは筋力および機能の維持を助ける。しかし臨床ガイドラインによる転倒予防へのビタミンD3(cholecalciferol)投与に関する推奨は一致していない。AGS(17)とSTEADI initiative(18)では、ビタミンD欠乏はよく見られ、補足が安全で高価でないことより、中等量のビタミンD(800〜1000IU)を毎日投与することを推奨している。Cochrane CollaborationではビタミンD投与が全体としては転倒を減らさないが、ビタミンD値が低い場合は減らす可能性がある、としている(6)。U.S. Preventive Services Task Forceは転倒予防のために骨粗鬆症やビタミンD欠乏のない高齢者へのビタミンD投与をもはや推奨していない(37, 38)。この推奨は最近行われた高用量のビタミンD(500000IU/年一回)投与にて評価されたlarge trialの結果、市中在住のリスクを伴う高齢者において転倒および骨折のリスクが増えたことが認めらた、とのエビデンスに基づいている。しかし、多くの転倒リスクを有する高齢者は骨粗鬆症、ビタミンD欠乏、あるいはその両方を持つため、骨粗鬆症の治療を開始する前にカルシウムやビタミンDの値が十分であることを確認する事は重要である。したがってビタミンDの補足(800〜1000IU daily)は臨床的に合理的であり、professional societiesの推奨に一致している(17, 39, 40)

 

 

 

 

股関節プロテクター 

プラスチック製で硬いシールドのものや柔らかいパッドなどの股関節プロテクターが股関節骨折の予防に有効であるかのスタディが行われてきた。高齢者におけるおよそ全て(>99%)の股関節骨折は転倒に起因している。市中在住高齢者に股関節プロテクターを使用した三つのトライアルにおけるcochrane meta-analysisでは股関節骨折のリスクを減らすエビデンスは認められなかった(RR, 1.14[CI, 0.83-1.57])(41)。股関節プロテクターを装着すること自体が受け入れられづらく、体幹下部に装着しはずすことはチャレンジングである。ヘルメットや肘・膝のプロテクターなどの他の保護具におけるはエビデンスはわずか、あるいは欠如している

 

 

 

 

入院患者の転倒予防

入院中の高齢者は転倒のリスクに晒される。過去に転倒歴があり、いかなる理由による認知機能低下(せん妄、認知症)を認める高齢者は転倒のリスクが最も高い。入院患者の転倒による傷害のリスクを高めるファクターは、関節置換術(OR, 5.58[CI, 1.84-16.9])、向精神薬(OR, 2.23[CI, 1.39-3.60])、男性(OR, 2.08[CI, 1.28-3.45])、過去の転倒歴(OR, 2.08[CI, 1.12-3.85])などである(42)

 

入院中の転倒リスクを減らすことが確認された介入は、薬剤マネージメント、そして認知機能が低下していない患者においてはフォローアップを伴う患者教育であった(43)。 multifactorial interventionsが現在のエビデンスで支持されている(44, 45)

 

環境を一つのみ改善することによる利益は認められていない(低いベッド、ベッドサイドの”クラッシュ”マット、ベッドアラーム、床の素材を修正)。さらにはベッドサイドマットは歩行可能な患者においては転倒のリスクを上げる可能性がある。ベッド柵を評価したrandomized trialは行われていないが、それは抑制とみなされ、転倒予防として使用すべきではない

 

 

 

 

骨粗鬆症スクリーニング

転倒リスクのある多くの高齢者が認識されていない骨粗鬆症を認め、転倒による特定のタイプの骨折(股関節など)は圧倒的にこれらの患者に多く見られる。したがって転倒予防の一環として骨粗鬆症のスクリーニングを行う事は臨床上道理的である。スクリーニング方法としては骨密度を測るDEXA scanやFracture Risk Assessment Tool(FRAX)などを利用したclinical risk assessmentがある。U.S. Preventive Services Task Forceは65歳以上の全ての女性、およびリスクを有する65歳以下で閉経後の女性に骨密度を測定することを推奨している。男性のスクリーニングにおけるエビデンスは不十分であるが、一つ以上の骨粗鬆症リスクを持つ場合は検討すべきである(喫煙、androgen-deprivation therapy、過去あるいは現在のアルコール多飲、性線機能不全、コルチコステロイドや抗てんかん薬長期使用、など)。なぜなら男性における股関節骨折による死亡率が高いからである。T-scoreが - 2.5以下、あるいは - 2.5以上だがFRAX scoreがハイリスクを示唆する場合は治療オプションおよび生活習慣改善に関する話し合いがもたれるべきである

 

 

 

 

患者および家族へのカウンセリング

 

転倒に関する問題を自ら医師に相談してくる患者は少ない

 

患者が推奨された事を実行する事を受け入れること、また進んで取り組むことが必要であることを医療従事者側が認識することは重要である。患者がどんな事を行いたいかに関する開けた議論を持つ事は患者とパートナーシップを結んで現実的なプランを作成することにおいて必要不可欠である

 

リサーチでは医療従事者の推奨によって転倒予防の行動に患者が取り組むことを促すことが確認されている(46)。他には、リスクファクターに取り組むオプションを提供すること(コミュニティあるいは家庭でのエクササイズ)、肯定的な変化を推奨すること(以前に勤しんでいた活動に再び従事して自信を取り戻す事)、ネガティブなものの排除(敷物や背が空いた靴など)、生活が良くなる影響や楽しい活動に参加できる機会が増えることを強調すること(エクササイズクラスへの参加によって人とのコネクションが生まれる)、などである

 

歩行や上半身のストレッチ運動は転倒を予防しない事(47)、バランスの改善が転倒予防に必須であること(48)、効果を維持するためにはバランスエクササイズを立位にて少なくとも週3回以上行う必要があること、その効果が出るまでに数ヶ月かかること(50時間以上)(49)などを患者に知らせる必要がある。バランスエクササイズを継続することの重要性はどんなに強調してもし過ぎることはない。そしてのこの年齢群でそれを継続することが難しいことも認識する必要がある(本人や家族の病気、パートナー、兄弟、友人の死などの人生の急な変化によるストレス、など)。医師は受診のたびにエクササイズの状況を尋ねる必要がある。患者に日常のルーチンの中にエクササイズを組み込む事を提案することはエクササイズを長期継続するための実用的な方法である(歯を磨いている時に片足で立つ、など)(36)

 

環境リスクのマネージメントのために、患者と協力して危険な状況を認識すること、家族の協力を得ながら患者が受け入れそうな変化による改善を達成することが推奨される。危険な行動(食料品の入った複数の袋を運ぶこと、階段昇降時に手すりを使わないこと、など)を認識し、可能な方法(食料品の入った袋を一回に一つ運ぶ、建物の入り口で最も進入が容易な入り口を見つける、など)を推奨することも助けになる(50)

 

 

 

 

 

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2018年12月4日4