レジデントノート

米国にて内科修行中。何ができるか模索している過程を記録していく

診療の風景

 

救急外来で転移が広がっている乳癌の女性を問診していたら、タバコも吸わない、お酒も飲まない、ドラッグもしない、とのことであった

 

「セックスも1人の男性とのみよ。こんな事ならもっと好き放題しとくべきだったわ」

 

と笑いながら言っていたので

 

「ほんとですね」と言って一緒に笑うしかなかった

 

 

 

 

 

 

2型糖尿病

 

糖尿病は内科医が最もよくみる疾患の一つである。米国ではおよそ3030万人(9.4%)が罹患していると推定され、そのうち2310万人のみが診断されている(1)

 

現在のトレンドだと2050年にはおよそ2倍になると予想されている(2)

 

米国において糖尿病は失明、肢切断、末期腎臓病の最たる原因である(3)

 

 

 

 

スクリーニングと予防

 

スクリーニングすべきか

現在のデータでは4人に1人の2型糖尿病患者が診断されていない(1)

 

糖尿病は長く無症状であるが、その間にも早期合併症である背景網膜症や微量アルブミン尿を発症する

 

したがって45歳以上、あるいは45歳以下でもリスクファクターを有する人には3年毎にスクリーニングを行うことを推奨するグループもある

 

 

2型糖尿病のリスクファクター

・45歳以上

・第一親等に2型糖尿病がいる

・African American, Hispanic, Asian, Pacific Islander, Native American

・妊娠糖尿病の既往あるいは体重が9lb (4.08kg)以上の胎児を出産

・多嚢胞性卵巣症候群

・肥満、特に腹部肥満

・心血管疾患、高血圧、脂質異常症、あるいは他のメタボリック症候群の特徴を有する

(4) 

 

 

しかしスクリーニングがhealth outcomeを改善させたという臨床試験はない

 

イギリスの大規模試験ではハイリスクグループにおける糖尿病のスクリーニングが10年間のフォローアップでもアウトカムの変化へと繋がらなかった(5)

 

modeling studiesからのエビデンスは一致せず、スクリーニングが有意にアウトカムを改善するか、あるいは広く行われた場合に費用対効果を発揮するかは不明である(6, 7, 8)

 

したがって誰をスクリーニングするか、その効果があるか、どのくらいの頻度で行うか、に関するコンセンサスは得られていない

 

 

イギリスの33のpracticesにおけるcluster randomized trialでは、質問事項の回答に基づいて糖尿病のリスクが高いとされた15089人に対しスクリーニングへの参加が呼び掛けられた。そのうち73%がスクリーニングされ、3%が以前には分かっていなかった糖尿病と診断された。9.6年間のフォローアップ後ではスクリーニングされたグループとされなかったグループにおける全体死亡(hazard ratio [HR], 1.06 [95%CI, 0.90-1.25])、心血管死亡(HR, 1.02 [CI, 0.75-1.38])、糖尿病関連死亡([HR], 1.26 [CI, 0.75-2.10])において有意差が認められなかった(5)

 

 

糖尿病のスクリーニングは心血管リスクのある患者、特に糖尿病の有無によって治療ゴールが変わる患者においてはアウトカムを改善させる事が予想される。例えば脂質管理のガイドラインではリスクを計算することによって脂質降下剤を開始するアプローチを推奨している。しかし脂質降下剤はリスクファクターに関わらず、糖尿病を有する全ての患者に投与することが推奨されている(9)。したがって糖尿病の有無を認識している事が推奨される治療を変えうるため、糖尿病がなければ脂質降下剤投与を推奨されない患者におけるスクリーニングが議論されるかもしれない。しかし現在のところ、脂質治療推奨のための糖尿病スクリーニングの効果を公式に評価したものはない

 

 

 

糖尿病は防げるか

 

食事と運動を変えることによって空腹時血糖異常あるいは耐糖能異常によって定義される前糖尿病が2型糖尿病へと進展することを有意に減少させる事がいくつかの質の高いrandomized trialsによって示されている。それらのプログラムにおいて達成された減量は控えめではあったが(およそ5〜7%)、それでも効果は非常に大きかった

 

 

耐糖能異常を有するフィンランドの肥満者522人(平均55歳)に対して行われたrandomized, unblinded, controlled trialでは、5%の減量を目指した介入によって3年の期間で新たに2型糖尿病と診断される率を23%から11%に減らした。介入には個人のカウンセリングセッションによって総脂肪および飽和脂肪の摂取を摂取エネルギーのそれぞれ30%および10%以下に減らす、繊維摂取を増やす、少なくとも1日30分以上の中等度の運動を行う事を促すことが含まれる(10)

 

米国における前糖尿病患者3234人(平均51歳、平均BMI 34kg/m2)に対して行われたDiabetes Prevention Programによるrandomized controlled trialでは7%の減量を目指した生活習慣改善プログラムによって糖尿病の累積罹患率が3年間でプラセボの29%と比較して14%と低かった(relative risk, 0.42 [CI, 0.34-0.52])(11)。試験期間後の10年間のフォローアップでも最初の生活習慣改善の影響が維持されたが、利益を維持するためには介入を継続する必要があることも示唆された(12)

 

 

 

薬剤によって前糖尿病患者が糖尿病に進展することを防ぐ可能性もある

 

上記のDiabetes Prevention Programによるスタディの投薬を受けたグループでは、metformin (850mg1日2回) が3年間で糖尿病の累積罹患率を29%から22%に減らす事が確認された(relative risk, 0.69 [CI, 0.57-0.83])。これは有意な減少ではあるが、その減少は生活習慣改善の介入グループに比べるとより少ないものであった(11)。10年間のフォローアップでは、metforminとプラセボの両グループにおいて罹患率は同等であった(12)

 

international STOP-NIDDMによるrandomized, double-blind trialでは耐糖能異常を持つ1429人の患者が調べられ、プラセボに比べacarbose (100mg 1日3回)が糖尿病罹患率を42%から32%に減少させた。relative risk reductionは3年間において25%であった(13)

 

DREAM (Diabetes Reduction Assessment with ramipril and rosiglitazone Medication) trialでは心血管疾患はないが空腹時血糖異常あるいは耐糖能異常を認める5269人の成人をrosiglitazone 8mg/日を投与するグループとプラセボグループに無作為に割り当てて行われた。3年後、rosiglitazoneグループでは11.6%が糖尿病に罹患したことに対しプラセボグループでは罹患率が26.0%であった(HR, 0.40 [CI, 0.35-0.46])。心血管イベントは両グループにおいて有意差がなかった(14)

 

 

予防のための糖尿病スクリーニングの意義は明らかではないが、一般的にはハイリスクの前糖尿病群を同定するスクリーニングは必要であると考えられる。しかし、糖尿病の状態にかかわらず、全ての人において生活習慣および食習慣の改善が有効でありうるため、前糖尿病とラベリングすることの利益があるかは不明である。ハイリスク(複数のリスクファクターを有する)で投薬や生活習慣改善の予防策を行うような患者に対するスクリーニングを行うことを考慮することは道理的である(15)

 

 

 

 

診断と評価

 

典型的な症状(多尿、多飲、体重減少)、あるいは合併症(網膜症、腎症、神経症、インポテンス、黒皮症、繰り返す感染) を認める場合は糖尿病の診断を行う必要がある

 

2型糖尿病を診断する多くのテストがあるが、現在の推奨は簡易性と信頼性よりHbA1cを測定することであり、6.5%以上が基準値となっている(4)

 

他のテストには異なる日にちに測定した空腹時血糖がそれぞれ126mg/dL以上であることが含まれる

 

代替としては典型的な症状を有し、非空腹時血糖が200mg/dL以上である事を確認することである

 

oral glucose tolerance test (OGTT)にて2時間後の血糖値が200mg/dL以上であることも糖尿病の診断となる

 

 

 

前糖尿病はHbA1cが5.7%〜6.4%、空腹時血糖が100〜125mg/dL、 OGTT2時間後血糖が140〜199mg/dLと定義される

 

 

初期評価では食事および運動のレビューを含む詳細な問診、および心血管疾患、脳血管疾患、皮膚、足、インポテンスなどの評価を含む身体診察を行う必要がある

 

血圧測定、HbA1c、コレステロール値、腎症(尿中アルブミン-クレアチニン比と血清クレアチニン)の評価を行う

 

脂質降下剤投与の可能性もあること、および非アルコール性脂肪肝疾患が2型糖尿病患者によく見られることより肝機能検査を考慮すべきである

 

診断時には網膜症の評価のために眼科アセスメントも必要である

 

 

 

 

治療

 

非薬物療法

食事と運動による生活習慣の改善が2型糖尿病の治療の要であり、重度の高血糖で速やかな薬物治療を要する場合でなければ第一選択治療となる

 

一つで全ての糖尿病患者に適切となる食事療法や運動療法はなく、個々人ごとの評価に基づいて実行可能な戦略を立てる必要がある。American Association lifestyle management guidelineが利用可能である(http://care.diabetesjournals.org/content/42/Supplement_1/S46)(16)

 

新たに診断された2型糖尿病患者におけるスタディでは、食事療法によってHbA1cが2.25%低下したが、コントロールが経過とともに悪化し、多くの患者が最終的には薬物療法を必要とした(17)

 

34のrandomized trialsのmeta-analysisでは2型糖尿病患者において運動を行うグループ(aerobic with or without resistance training)と行わないグループで比較された。運動グループでは体重やBMIの有意な改善を認めなかったにもかかわらず、血糖コントロール、腹囲径、血圧を有意に改善した(18)

 

 

 

家庭血糖測定の意義 

家庭血糖のモニタリングは患者および臨床家が血糖コントロールの評価を行うことを可能にし、血糖コントロール治療の効果に対するリアルタイムのフィードバックを提供し、また高血糖や低血糖の症状がある場合には行う必要がある

 

インスリン治療を行っている、特にshorter-actingのインスリンを使用している場合には、投与量調節を可能にするため家庭血糖測定は標準ケアの一部であると考えられている

 

家庭血糖測定の最適な頻度は公式には評価されておらず、通常患者および臨床家の裁量に委ねられている

 

家庭血糖測定の経口治療薬のガイドとしての役割は不明である

 

家庭血糖測定によって6ヶ月におけるHbA1cの少ない低下を認めたが、12ヶ月ではその効果が弱まったというエビデンスがあり、自己血糖モニタリングは長期的な効果がない可能性も示唆されている(19)

 

 

患者は通常空腹時と食前血糖を測定するようにアドバイスされる。しかしHbA1cが上昇しているが、食前血糖が正常の場合は食後血糖測定が役に立つ可能性がある。observational dataでは食後血糖の偏位が心血管リスクと関連する可能性が示唆されている(20)。よってルーチンの食後血糖測定を推奨する専門家もいる。しかしながら、その血糖偏位を減らす治療によって心血管リスクを減少させることを証明した試験はない

 

 

 

目標HbA1c値は 

全ての糖尿病患者が目指すべき一つのHbA1cの値はない。多くの組織とquality measure groupsがUKPDS (U.K. Prospective Diabetes Study)に基づき目標7.0%以下とすることを提唱している(17)。しかしUKPDSと他の血糖強化コントロールのスタディの結果は一致していない

 

UKPDSでは新たに診断された糖尿病患者が強化血糖コンロトールと比較的緩やかなコントロールに無作為に割り当てられて行われた。強化グループでは達成されたHbA1cが7.0%であったのに対し、緩やかなコントロールグループでは7.9%であった。良いコントロールが維持された人では早期で無症状の微小血管アウトカムのリスクが減少したが、心血管アウトカムあるいは失明、肢切断、末期腎症などの有症状の微小血管合併症に対する利益は認められなかった(17)。20年間のフォローアップでは最初に強化コントロールに割り当てられたグループでは血糖コントロールの違いは維持されなかったものの、心筋梗塞(16.8 vs 19.6 per 1000 patient-years)と死亡(26.8 vs 30.3 per 1000 patient-years)において低い値が認められた(21)

 

VADT (Veterans Affairs Diabetes Trial)では糖尿病の退役軍人1791人(平均60.4歳、平均糖尿病罹患期間11.5年、40%が以前に心血管イベントの既往を有する)が調べられた。強化グループではHbA1cがコントロールグループに比べ1.5%低く、達成された値はそれぞれ6.9%と8.4%であった。両者でprimary end point(心血管イベント、心不全、血管手術、肢切断の複合)、総死亡、微小血管イベントに有意差が認められなかった(22)。15年間のフォローアップにおいては強化グループはコントロールグループに比べ、死亡(HR, 1.02 [CI, 0.88-1.18])、心血管疾患(HR, 0.91 [CI, 0.78-1.06])が低くはなかった。しかしHbA1cの違いが認められる7.1年間の期間では、心血管イベントが低い事が認められた(HR, 0.83 [CI, 0.70-0.99])(23)

 

 

これらの結果は完全には一致しないが、HbA1c 7%を達成することで心血管リスクに対する小さな利益がある可能性を示唆している。この利益の可能性および達成されるのに20年以上かかりうる微小血管イベントに対する推定される利益より、American College of Physiciansは多くの患者においてHbA1cのゴールを7%と8%の間にすることを提唱している(24)。しかし前述のエビデンスにもかかわらず、より強化なコントロールによって可能なら血糖正常値近くを目指す(HbA1c < 6%)ことを提唱する専門家も存在する 

 

 

ACCORD (Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes) によるスタディでは米国の10251人の糖尿病患者(平均62.2歳、平均糖尿病罹患期間10年、35%に心血管イベントの既往)がHbA1cのゴールを6%以下にする強化グループと従来のコントロールにて7.0〜7.9%を目指すグループに割り当てられて行われた。達成されたHbA1cの値はそれぞれ6.4%と7.5%であった。強化グループにおいて総死亡率の22%の上昇(5.0% vs 4.0%; P=0.04)が認められたため、このトライアルは早期に終了された。全体でのmain end point(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死)は両グループにおいて有意差が認められなかった。強化グループでは低血糖と体重増加がより多く認められた(25)。この強化グループの長期フォローアップにおいても心血管イベントのリスク上昇が続くことが認められた(26)

 

ADVANCE (Action in Diabetes and Vascular Disease: Preterax and Diamicron - MR Controlled Evaluation)による多国間のスタディでは11140人の糖尿病患者(平均66歳、平均罹患期間8年、32%が心血管イベントの既往) においてHbA1c 6.5%以下を目指す強化グループとコントロールグループに分けて行われた。達成されたHbA1cはそれぞれ6.5%と7.3%であった。強化グループでは腎症の発症が低かった(4.1% vs 5.2%; P=0.006)が、心血管イベントおよび死亡において両グループで有意差は認められなかった(27)

 

 

主要な血糖降下トライアルの結果の解釈および違いの調整は困難である。控えめな血糖コントロール(平均HbA1c 7%)が心血管イベント、死亡、早期の無症候性微小血管アウトカムを減らす利益をもたらす可能性がある。証明されていないが、失明、末期腎症、肢切断などの症状を有する微小血管アウトカムに対する長期的な利益もある可能性があるが、それが起こるのはかなり先でスタディにおける20年のフォローアップでも確認することができなかった。より強化的なコントロール(HbA1c 6.5%以下)は少なくとも短期間では重要な利益をもたらさず、心血管イベントの上昇による死亡を増やす可能性がある。特定の患者グループに限った場合においては強化的な血糖コントロールがより害をもたらすか、あるいは利益となるかは明らかではない

 

 

これらのスタディからもたらされる最も合理的な結論としては中等度の血糖コントロール(HbA1c 7%〜8%(目標値は糖尿病の罹患期間に依存するかもしれない))が多くの2型糖尿病患者に達成可能な利益をもたらすと考えられる。なぜなら多くの患者は65歳以上であり、長期的な視点からも強化コントロールによる利益は得られる可能性が低く、また治療に関連する有害事象も高くなる可能性があるからだ

 

しかし生命予後が長い(20年以上)若い、あるいはそれ以外健康な人においてはより強化的なコントロール(HbA1c 7%以下)による利益がもたらされる可能性もあるため、血糖ゴールは生命予後と併存疾患の状態などによって決められるべきである。modeling studiesからのエビデンスでは利益を目指す長い期間が治療による負担(特に注射剤)をもたらし、多くの2型糖尿病患者においてはその負担が利益を上回る可能性がある事も示されている(28)

 

 

 

 

いつ薬物治療を始めるべきか

HbA1cのゴールが決まり、食事と運動によってそれが達成されない場合は薬物治療を開始する必要がある。一般的に軽度のHbA1cの上昇を認める患者において6〜8週間で食事と運動によって目標の血糖低下を達成できない場合は薬物治療を開始すべきである。重度の高血糖や症状を認める患者においては速やかに薬物治療、時にインスリン治療を開始する必要がある場合もある

 

 

 

 

どのように治療薬を選択するか

 

 

米国で利用可能な非インスリン治療薬

 

Biguanides

Metformin (ID) 500mg 1日2回あるいは850mg 1日1回 (MD) 2550mg (UD) 500-1000mg 1日2回

Metformin extended release (ID) 500mg 1日1回 (MD) 2000mg (UD) 1500-2000mg 1日1回

 

 

Sulfonylureas

Glimepiride (ID) 1-2mg 1日1回 (MD) 8mg (UD) 4mg 1日1回

Glipizide (ID) 2.5-5mg 1日1回 (MD) 40mg (UD) 10-20mg 1日1回 (あるいは1日2回)

Glipizide sustained release (ID) 5mg 1日1回 (MD) 20mg (UD) 5-20mg 1日1回 (あるいは1日2回)

Glyburide (ID) 2.5-5mg 1日1回 (MD) 20mg (UD) 5-20mg 1日1回 (あるいは1日2回)

Glyburide micronized (ID) 0.75-3mg 1日1回 (MD) 12mg (UD) 3-12mg 1日1回 (あるいは1日2回)

 

 

Thiazolidinediones 

Pioglitazone (ID) 15-30mg 1日1回 (MD) 45mg (UD) 15-45mg 1日1回

Rosiglitazone (ID) 4mg 1日1回 (あるいは1日2回) (MD) 8mg (UD) 4-8mg 1日1回 (あるいは1日2回)

 

 

α-Glucosidase inhibitors

Acarbose (ID) 25mg 1日3回 (with meals) (MD) 100mg (1日3回) (UD) 50-100mg 1日3回 

Miglitol (ID) 25mg 1日3回 (with meals) (MD) 100mg (1日3回) (UD) 25-100mg 1日3回 

 

 

Nonsulfonylurea insulin secretagogues

Repaglinide (ID) 0.5mg (食前) (MD) 4mg (食前) (16mg/日) (UD) 0.5-4mg (食前)

Nateglinide (ID) 120mg 1日3回 (食前) (MD) 120mg 1日3回 (食前) (UD) 60-120mg 1日3回 (食前)

 

 

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors

Sitagliptin (ID) 100mg 1日1回 (MD) 100mg 1日1回 (UD) 100mg 1日1回 

Saxagliptin (ID) 2.5mg 1日1回 (MD) 5mg 1日1回 (UD) 5mg 1日1回 

Linagliptin (ID) 5mg 1日1回 (MD) 5mg 1日1回 (UD) 5mg 1日1回 

Alogliptin (ID) 25mg 1日1回 (MD) 25mg 1日1回 (UD) 25mg 1日1回 

 

 

Sodium-glucose contransporter-2 inhibitors

Canagliflozin (ID) 100mg 1日1回 (MD) 300mg 1日1回 (UD) 100-300mg 1日1回 

Empagliflozin (ID) 10mg 1日1回 (MD) 25mg 1日1回 (UD) 10-25mg 1日1回 

Dapagliflozin (ID) 5mg 1日1回 (MD) 10mg 1日1回 (UD) 5-10mg 1日1回 

Ertugliflozin (ID) 5mg 1日1回 (MD) 15mg 1日1回 (UD) 5-15mg 1日1回 

 

 

Glucagon-like peptide-1 agonists(注射剤)

Exenatide (ID) 5mcg 1日2回 (食前60分以内) (MD) 10mcg 1日2回  (UD) 5-10mcg 1日2回 

Exenatide extended release (ID) 2mg 週1回 (MD) 2mg 週1回 (UD) 2mg 週1回 

Liraglutide (ID) 0.6mg 1日1回 (MD) 1.8mg 1日1回 (UD) 1.2mg 1日1回 

Dulaglutide (ID) 0.75mg 週1回 (MD) 1.5mg 週1回 (UD) 0.75-1.5mg 週1回 

Lixisenatide (ID) 10mcg 1日1回 (MD) 20mcg 1日1回 (UD) 20mcg 1日1回 

Semaglutide (ID) 0.25mg 週1回 (MD) 1mg 週1回 (UD) 0.5mg 週1回 

Semaglutide (経口) (ID) 7mg 1日1回 (MD) 14mg 1日1回 (UD) 7-14mg 1日1回 

 

ID: initial dose,  MD: maximum dose, UD: usual dose

 

 

 

 

 

UKPDSでは理想体重より20%以上多い患者では血糖コントロールが同程度であったにも関わらず、metformin投与グループががsulfonylureas投与グループやインスリン投与グループよりも死亡率が低かった事が確認された(29)。metforminはインスリンやsulfonylureasと比べ低血糖と体重増加との関連がより低くかった。metforminは重度の腎障害(GFR < 30mL/min/1.73m2)、急性非代償性心不全、重度の肝疾患では使用すべきでない

 

 

 

metforminが禁忌あるいは耐容不能の場合には薬剤選択は副作用、効果、費用などに基づく患者の好みによって決定されるべきである。今まで薬剤クラス間での効果の違いはあまり知られていなかったが、より最近のデータではある薬剤クラスは心血管および腎アウトカムに利益をもたらす事が示されている。この利益は血糖コントロールとは必ずしも関連を認めていない(30)

 

 

EMPA-REG trialでは2型糖尿病で心血管リスクの高い患者7020人が無作為にプラセボとsodium-glucose cotransporter-2 (SGLT-2) inhibitorであるempagliflozin 10mgあるいは25mgを投与されるグループに割り当てられて行われた。empagliflozinグループでは複合心血管リスクが10.5%であったのに対しプラセボグループでは12.1%であった(HR, 0.86 [CI, 0.74-0.99])。また全ての原因による死亡も有意に低かった(5.7% vs 8.3%; HR, 0.68 [CI, 0.57-0.82])。これは主に心血管死亡の低下によって説明される(31)。血清クレアチニンが2倍になる事や腎代替治療を開始する割合が低く、腎アウトカムの改善も認められた(32)

 

 

CREDENCE (Canagliflozin and Renal Events in Diabetes With Established Nephropathy Clinical Evaluation) trialでは2型糖尿病でGFRが30〜89mL/min/1.73m2に値し、アルブミン尿を認め、レニンアンギオテンシン阻害剤を使用している患者4401人をcanagliflozinとプラセボに無作為に割り当てて行われた。末期腎症、血清クレアチニンが2倍に上昇、腎あるいは心血管に起因する死亡のcomposite end pointがcanagliflozinグループにおいて有意に低かった(43.2% vs 61.2% per 1000 patient-years; HR, 0.70 [CI, 0.59-0.82])。末期腎症を含む腎アウトカムと心血管アウトカムにおいて減少が認められた(33)

 

DECLARE-TIMI 58 (Dapagliflozin Effect on Cardiovascular Events-Thrombolysis in Myocardial Infarction 58) trialでは2型糖尿病患者17160人(10186人はベースラインの心血管疾患なし)がdapagliflozinとプラセボに無作為に割り当てられて行われた。primary safety outcomeは心血管死、心筋梗塞、脳卒中とされ、primary efficacy outcomeは心血管死、心不全による入院とされた(34)。secondary efficacy outcomeは腎不全と全ての原因による死亡とされた。結果、primary outcomeにおいては有意差が認められなかったが、心不全による入院(HR, 0.73 [CI, 0.61-0.88])と腎end pointの低下(HR, 0.76 [CI, 0.67-0.87])が認められた

 

 

2型糖尿病で心血管リスクの高い患者9340人がglucagon-like peptide-1 (GLP-1) receptor agonistであるliraglutideとプラセボに無作為に割り当てられてトライアルが行われた。3.8年間でliraglutideグループの方が複合心血管イベントが低く(13.0% vs 14.9%; HR, 0.87 [CI, 0.78-0.97])、それには総死亡(8.2% vs 9.6%; HR, 0.85 [CI, 0.74-0.97])と心血管死亡(4.7% vs 6.0%; HR, 0.78 [CI, 0.66-0.93])の低下が含まれる(35)

 

3297人の2型糖尿病で心血管リスクの高い患者(83.0%が心血管疾患あるいは慢性腎臓病の既往を有する)がsemaglutide 週1回投与とプラセボ投与に無作為に割り当てられてトライアルが行われた。semaglutideを投与された群では複合心血管end pointが低かった(6.6% vs 8.9%; HR, 0.74 [CI, 0.58-0.95])。死亡率は両群で有意差がなかった。腎症はsemaglutide投与群で低かった(3.8% vs 6.1%; HR, 0.64 [CI, 0.46-0.88])が、治療を要する網膜症は増えた(2.0% vs 1.8%; HR, 1.76 [CI, 1.11-2.78])(36)

 

経口semaglutideとプラセボを比較したトライアルでは複合心血管end pointは有意差がなかったが、総死亡ではsemaglutideグループが低く(1.4% vs 2.8%; HR, 0.51 [CI, 0.31-0.84])、それは主に心血管死亡の低下によってもたらされている(37)

 

 

REWIND trialでは2型糖尿病で心血管リスクが高い9901人(31.5%が心血管イベントの既往)がdulaglutideとプラセボの投与によって比較検討された(38)。primary outcomeは非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合とされた。dulaglutideグループでは心血管アウトカムの低下(HR, 0.88 [CI, 0.79-0.99])が認められた。post hoc exploratory analysisでは、主に新たに発症する微量アルブミン尿の低下による腎end point(HR, 0.85 [CI, 0.77-0.93])の改善も確認された(39)

 

 

これらのデータより新たな治療薬、特にSGLT-2 inhibitorsとGLP-1 receptor agonistsが主に心血管死亡の低下による総死亡率の低下をもたらすことが示されている。したがってこれらの治療薬がmetforminを使用できない場合の第一選択薬として強く考慮される必要がある。それらの薬剤の選択においては患者の好み(注射剤 vs 経口剤、副作用)と個々人のリスクファクターによって検討されるべきである。例えばliraglutideはFDAによって減量薬として承認されたものであり、特に肥満患者に有用であるかもしれない(40)

 

 

多くの糖尿病患者では経過とともに血糖コントロールが悪化する。一般的に投与中の経口剤の投与量増量が最初のステップであるが、増量による反応は限られることが多い。したがって一つあるいは複数の他剤の追加が通常必要となる

 

前述のトライアルより、SGLT-2 inhibitorsとGLP-1 receptor agonistsが第二あるいは第三選択薬として考慮される必要がある

 

dipeptidyl peptidase-4 inhibitorsは血糖コントロールのオプションとしてreasonableであるが、トライアルにてmetformin、SGLT-2 inihibitors、GLP-1 receptor agonistsとの併用による心血管利益が確認されなかった(41, 42, 43)

 

sulfonylureasは低血糖と体重増加の原因となりうる(17)。また他の薬剤と比べエビデンス上は心血管利益が弱い

 

thiazolidinedionesはおそらく総心血管イベントを増やさないであろうが、心不全と骨折のリスクを上げる可能性がある(44, 45)

 

α-glucosidase inhibitors (acarbose, miglitol)やnonsulfonylurea insulin secretagogues (nateglinide, repaglinide)などの短期作用型薬剤は食前に投与され、食事時間が一定でない人には有用であるかもしれない

 

いくつかの経口薬剤の複合剤が利用可能であり、一定の患者においては便利であり、あるいは費用面で利益があるかもしれない。また薬剤を選択する際は副作用についても検討する必要がある

 

 

 

いつインスリン治療を考慮するか

 

非インスリン治療薬にて血糖ゴールを達成できない場合はインスリン単独あるいは併用治療が考慮される。他の適応としては強い症状があり血糖の速やかなコントロールを望む場合などがある。診断時にHbA1cが非常に高い場合はβ細胞機能の温存の可能性も考慮して早期にインスリン治療開始を推奨する専門家もいる(26)

 

多くのインスリン製剤が利用可能であり、主に効果発現と持続期間による違いがある。特定のレジメンが他のものより優れているというものはない。一つのrandomized trialでは2型糖尿病の患者で1日2回投与、1日3回食事投与、持続型インスリン1日1回投与が比較された。結果HbA1cは三者間で同等であったが、低血糖の発生は持続型インスリン投与グループにおいて最も低かった(46)。インスリン治療開始後、多くの患者でHbA1cが1〜2%低下する(47, 48)。強化血糖コントロールを行う場合は、目標空腹時血糖は120mg/dL以下が妥当となる。インスリン治療の主要リスクは低血糖と体重増加である(17)。患者はその可能性を知らされておく必要があり、低血糖の治療に関する教育がされるべきである

 

 

 

インスリン製剤

Rapid-acting (insulin analogues lispro, aspart, glulisine) (OS) < 30min (PA) 0.5-3h (DA) 3-5h

Short-acting (human regular) (OS) 0.5-1h (PA) 2-5h (DA) Up to 12h

Concentrated insulin (U-500) (OS) 0.5-1h (PA) 6-8h (DA) Up to 24h

Intermediate-acting (human NPH) (OS) 1.5-4h (PA) 4-12h (DA) Up to 24h

Long-acting (insulin analogues glargine, detemir, degludec) (OS) 0.8-4h (PA) Relatively peakless (DA) Up to 24-42h

Ultra-long-acting (glargine U-300) (OS) 6h (PA) Relatively peakless (DA) Up to 5 days to steady state

Human insulin mixtures

 70% NPH / 30% regular (OS) 0.5-2h (PA) 2-12h (DA) Up to 24h

 50% NPH / 50% regular (OS) 0.5-2h (PA) 2-5h (DA) Up to 24h

Analogue mixtures

 75% lispro protamine / 25% lispro (OS) <15min (PA) 1-2h (DA) Up to 24h

 50% lispro protamine / 50% lispro (OS) <15min (PA) 1-2h (DA) Up to 24h

 70% aspart protamine / 30% aspart (OS) 10-20min (PA) 1-4h (DA) Up to 24h

Inhaled insulin (Afrezza [MannKind]) (OS) 12-15min (PA) 1h (DA) 2.5-3h

 

 

OS: Onset of Action,  PA: Peak of Action,  DA: Duration of Action

 

 

 

 

インスリン治療を開始する際、多くの患者が1日1回投与で開始される。低血糖がない場合、metforminなどの経口薬と共に、通常neutral protamine Hagedorn (NPH)あるいはbasal analogue insulinを睡眠時1回投与を行う。これによってインスリン投与を1日1回に減らせ、たいてい患者がより受け入れやすくなる(49)

 

空腹時血糖が正常あるいは低血糖リスクが高い場合は、basal analogueが第一選択になるかもしれないが、NPHに比べ費用が高くなる。basal analogues、特にdegludecなどの新しいlong-acting analoguesが低血糖の可能性が最も低いというエビデンスが示されている。典型的な開始量は体重当たり0.1〜0.2 U/kgである

 

目標血糖値を達成するために1日2回投与が必要になる患者も中にはいるが、2型糖尿病の患者の多くは頻回の投与(食前投与)を必要としない。しかし空腹時血糖が正常であるにも関わらずHbA1cが高いままの場合は食前投与も検討されるかもしれない。高量のインスリン投与を必要とする場合はU-500(highly concentrated)を使用することも可能である 

 

basal insulinとGLP-1 receptor agonsitsの合剤も利用可能であり、basal insulinと食前insulin投与の併用と同等の血糖コントロールを達成でき、かつ低血糖の頻度が比較的低く、通常インスリンによる体重増加を防げる可能性がある(50)

 

 

 

血糖コントロール以外に合併症を減らす介入は 

 

高血圧は糖尿病合併症の主要なリスクファクターである。しかし120/80mmHgを目指す強化的な血圧治療は140/90mmHgをターゲットする時に比べ糖尿病アウトカムの改善へとつながらない(51)。にも関わらずAmerican College of CardiologyとAmerican Heart Associationの現在のガイドラインは糖尿病患者の血圧目標を130/80mmHgとしている(52)。しかしAmerican College of Physicianを含む他の組織は140/90mmHgを推奨している(53)

 

 

血圧コントロールの最適な治療薬選択に関するエビデンスは現在のところはっきりしていない。全てのクラスの治療薬が有効ではあるが、多くの患者が腎保護作用より初期治療薬としてACE inhibitorsあるいはARBsが使用される。血圧目標が達成されない時は併存疾患、副作用、患者の好み等に基づいて他の薬剤が追加投与される

 

 

脂質降下剤の投与も糖尿病患者にとって重要である。現在のガイドラインは一次予防としての脂質降下剤をリスクに基づくアプローチによって適応を決める事を推奨している。40歳以上の糖尿病患者のほぼ全員が治療の適応を満たすためLDLの値に関わらずスタチン治療による利益があると考えられている(9)。最適な目標LDL値は、特に一次予防としては、確立していないが、多くのトライアルが2型糖尿病患者に対する中等量のスタチン投与を推奨するエビデンスを示している(54)。二次予防としてはほぼ全ての患者にスタチン投与が推奨される。冠動脈疾患を有する患者では低量よりも高量のスタチン(例えばsimvastatinあるいはatrovastatin, 80mg)投与の方が有効である可能性が示されている(55, 56)。スタチンとフィブレートの併用は糖尿病患者の心血管アウトカムを改善することが証明されていないが(57)、ezetimibeはスタチンを既に投与されているハイリスク患者において小さいながらさらなる利益をもたらす可能性が認められている(58)。proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 inhibitorsなどの新しい薬剤も最大耐容量のスタチンを既に投与されている患者において控えめではあるが利益を追加する可能性があるが、その薬剤は注射剤であり高価でもある(59)

 

 

2型糖尿病患者におけるaspirin投与が心血管疾患の予防に有効であるかは不明である。2型糖尿病患者にaspirinを投与して行われた最近のrandomized controlled studyでは重篤な血管イベントのabsolute reductionが1.1%であったが、出血のリスクが0.9%上昇し利益は相殺されると考えられている(60)。エビデンスは不明であるが、心血管リスクと出血リスクを考慮することによってaspirin投与による利益を得られる可能性が高い患者を同定できるかもしれない(61)。心疾患の既往のある患者はaspirin 75〜325mgを投与されるべきである

 

網膜検査は2型糖尿病患者における失明のリスクを減らす。ハイリスクである網膜病変を認めない患者では網膜検査の頻度をリスクに基づいて1〜3年毎の範囲にできるかもしれない(62)

 

尿中微量アルブミン-クレアチニン比の測定によって早期の糖尿病性腎症の検知ができる。アルブミン尿は心血管疾患のリスクファクターでもある。ACE inhibitorsあるいはARBsによるアルブミン尿の治療が末期腎症への進展リスクを減らすエビデンスが認められている(63, 64, 65)。SGLT-2 inhibitorsなどの新しいクラスの血糖降下剤も腎疾患アウトカムを減らす事が示されている(32, 33)

 

神経症スクリーニングおよびフットケアが肢切断のリスクを減らす事に不可欠である

 

痛みの強い神経症は2型糖尿病では多くないが、様々な薬剤によって治療可能である

 

 

神経症治療薬

三環系抗うつ剤

RCTによるエビデンスが認められている。睡眠時に少量から開始し効果に基づいて投与量調整。抗コリン作用による副作用がよくみられる。高齢者では注意が必要

 

Duloxetine

FDAによって糖尿病神経症への投与が承認されている。肝疾患や重度のアルコール疾患では不適切

 

Capsaicin cream

RCTにて効果が認められている。灼熱感の原因となるが通常経過とともに減少

 

抗てんかん剤

carbamazepine, gabapentin, pregabalinなどがRCTによって効果が認められている

 

 

 

2型糖尿病患者のフォローアップの頻度は

2型糖尿病患者の理想的な外来受診頻度を示すエビデンスはない。専門家の意見および推奨されるHbA1cのモニター頻度より、年4回の受診が妥当とされている。安定した患者では6ヶ月毎に減らせるかもしれない(3)

 

 

 

 

 

 

 

 

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58. Cannon CP,  IMPROVE-IT Investigators Ezetimibe added to statin therapy after acute coronary syndromes N Engl J Med 2015;372:2387-97

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アナルズオブインターナルメディシン

インザクリニック

2019年11月5日

 

 

 

 

 

 

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喘息

 

喘息は最も多くみられる呼吸器疾患で、気道炎症と気道過敏性を伴う可逆的な気道閉塞を特徴とする

 

世界中で3億人以上が罹患し、米国には2600万人存在する(1)

 

喘息による健康および経済的な負担は非常に大きく、米国では毎年1100万件の外来受診および100万に10人の死亡をきたす(2)

 

 

診断

喘息を疑わせる症状は喘鳴、呼吸困難、咳嗽、息を吸い込みにくい、胸部圧迫感などである(3, 4)

 

診断の鍵となる特徴は症状の重度が時間によって変わることであるため、問診の際に症状と時間の関係を注意深く聞くことが大切である。症状が間欠的であったり、自然にあるいは短期作用型気管支拡張剤によって改善する、などの特徴がある。さらには、1日のうちの時間帯で症状が変化することが多く、夜間や早朝に悪化しやすい

 

また季節ごとに変化したり、冷気、運動、動物の皮や毛、花粉、職業的暴露、食物、アスピリン、NSAIDsなどの特定の誘因にも関連する

 

ウイルス気道感染は多くの場合に強い誘因となる

 

職場に起因する症状の場合、週末や休みの期間に改善することがよく見られる

 

第一親等に喘息、湿疹、アレルギー性鼻炎などがいる場合は診断の補助となる

 

慢性の咳嗽を認める、特に夜間、季節、職場、あるいは他の活動などに関連する場合にも喘息を考慮しなければならない

 

 

National Heart, Lung, and Blood Institute Expert Panel Report 3(4)、Global Initiative for Asthma (GINA) guidelines(5)および他のガイドラインは喘息を疑う5歳以上の全ての人に客観的な評価となる呼吸機能検査を行うことを推奨している

 

最初の評価にはスパイロメトリーによってFEV1、FVC、FEV1-FVC ratioを測定する必要がある。そして気道閉塞の可逆性を評価するために、気管支拡張剤投与後に再度それらを測定しなければならない

 

気管支拡張剤投与後にFEV1が12%以上および200mL以上増加することが気道閉塞の可逆性があるとみなされ(6, 7)、その可逆性の存在が喘息の診断をサポートする 

 

気管支拡張剤投与後、4週間の抗炎症薬治療後、あるいは異なる日に測定して自然に上記の値以上の改善が認められる場合も可逆性があると考えられる

 

 

スパイロメトリーで気道閉塞の可逆性が確認できれば喘息の診断となるが、測定結果が正常であっても除外診断とはならない。スパイロメトリーは包括的な病歴聴取、身体診察、および血液検査などの診断手段とともに最もよく使われるものである

 

 

 

 

誘発試験

喘息の診断にgold standardはない。しかしメサコリンあるいはヒスタミンによる吸入誘発試験は、症状から喘息が疑われるがスパイロメトリーが正常である患者の診断確立の助けとなる

 

安全と見なされているが、FEV1が予測値の65%以下の場合には一般的に推奨されない(8, 9)

 

標準量のメサコリン投与後にFEV1が20%低下することが、喘息の特徴の鍵である気道過敏性の証明となる

 

メサコリン誘発試験に関するスタディでは、誘発試験によって多くの喘息患者が同定でき、また陰性の時は多くの場合が喘息でないことが示されている(8, 9)

 

 

代替としては、患者によるピークフロー測定を最低2週間、1日のうちで複数回行って記録させ、有意な日内変動が確認できれば喘息の診断の補助となる。しかしピークフロー測定は本人の努力に強く依存し、質が評価できないため信頼性が相対的に低くなる(10)

 

 

 

 

喘息の鑑別診断は広い。喘息がコントロール困難である、あるいは患者が非典型的な症状や所見を有する、特にスパイロメトリーで診断を示唆しなかった場合は他の疾患の可能性を考慮する必要がある 

 

 

 

鑑別診断

COPD

気道閉塞の可逆性は少なく、典型的には喫煙歴のある成人にみとめられる

 

vocal cord dysfunction

症状の発症と改善が突発的である。monophonic wheeze(単一の喘鳴音)。より若年の患者にみられる。videostroboscopyやフローボリューム曲線によって診断される

 

心不全

呼吸困難、喘鳴、聴診にてcracklesを聴取、喘息治療への反応不良、心拡大、浮腫、BNP上昇、他の心不全の特徴

 

気管支拡張症

咳嗽、多量の膿性痰、通常rhochiやcracklesを聴取、喘鳴や撥指が認められる場合もある、CTにて診断

 

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症

胸部レントゲンにて再発性の浸潤影、好酸球増多、IgE高値、アスペルギルス抗原感作

 

Cystic Fibrosis

咳嗽、多量の膿性痰、通常rhochiやcracklesを聴取、著明な撥指、喘鳴が認められる場合もある

 

機械的閉塞

より限局的な喘鳴、位置がより中枢である場合はフローボリューム曲線が手がかりになる場合がある

 

 

 

 

 

気道閉塞の可逆性の欠如はCOPDの可能性を示唆し、FEV1およびFVCは低下するがFEV1-FVC ratioが正常である拘束性パターンの場合は間質性肺疾患を示唆する

 

喘息とCOPDを鑑別する重要な因子は喫煙歴である

 

COPDは多くの場合、重大な喫煙歴のある比較的年齢の高い患者に起こり、慢性気管支炎や肺気腫によって特徴づけられる

 

COPD患者は呼吸機能検査において気管支拡張剤投与で可逆性を示す場合もあるが、その程度がより少なく、またコンスタントに認められる頻度がより少ない(11)

 

喘息と間質性肺疾患を合併することもあり、また喘息とCOPD両方を罹患している事も珍しくない

 

 

 

 

血液および他の検査

 

呼吸機能検査

スパイロメトリーで気道閉塞の可逆性が確認できれば喘息の診断がサポートされるが、正常の場合でも除外診断はできない。lung volumeとフローボリューム曲線を評価して他の鑑別診断を除外しなければならない

 

吸入誘発試験

検査が陽性の場合は喘息の特徴である気道過敏性の診断となるが、他の呼吸器疾患でも認められる場合がある。検査が陰性の場合は基本的に喘息の除外診断となる

 

胸部レントゲン

他の疾患の除外診断に有効である。肺過膨張の所見は喘息に一致するが急性増悪の際の一時的な現象として認められる

 

アレルギー試験

治療抵抗性の患者において抗原の役割を評価する際に皮膚およびin vitroでの感受性試験を行うことは有用であるかもしれない。しかしdiagnostic valueははっきりしていない

 

血算および分画

軽度の好酸球増多は喘息でよくみられる。好酸球の値は生物学的治療の反応予測となりえる

 

喀痰検査

初期評価においてルーティンでは適応とならない

 

IgE

軽度の上昇はアレルギー性の喘息においてよく認められる。omalizumab治療の評価に使われるかもしれない。しかし初期評価においてはルーティンでの測定は推奨されない

 

呼気中一酸化窒素測定 

値の上昇は2型気道炎症およびステロイド反応性の同定に有用であるかもしれない。現在のところ診断のための測定は推奨されていない

 

 

 

 

 

 

治療

 

アレルゲン暴露に関するアドバイス

およそ喘息患者の半数がアトピーであるため、環境的アレルゲンへの暴露を減らすことで症状が改善することがよくみられる。誘因を避けることが喘息の非薬物療法的治療の要であり、臨床家は患者に誘因に関する質問を行い、その暴露を減らす方法を提供しなければならない

 

成人の喘息の約15%が職業に関連しているため、職場での誘因について確認する必要がある

 

典型的な誘因には動物や植物のアレルゲン、ラテックス、穀物、ポリウレタン製品の製造に使用するジイソシアネートなどがある

 

農家、動物をケアする人、医療従事者、ラテックス手袋使用者、パン類製造業者、ポリウレタン製造業者などがリスクとなる

 

他のよく見られる誘因にはアスピリン、NSAIDs、保存剤に使用される亜硫酸塩などがある

 

一旦感作されると、たとえ非常に小さな誘因への暴露にも患者は反応しうるようになる。誘因への暴露を制限することが難しい場合でさえも、たとえ少しでもその暴露を減らすことで利益が得られる場合もある

 

 

 

環境的アレルゲンへの暴露を減らすための手段

・湿度を50%以下に維持してエアコンを使用する

・カーペット除去

・布・織物張りの家具、ドレープ、柔らかい玩具などの室内品の制限

・マットレスや枕に不浸透性カバーを使用

・毎週130°F(54℃)以上の水による寝具の洗濯

・適度な換気

・ゴキブリの除去

・猫の排除

・家の中の湿気を減らす

・薪による、あるいは非換気型の暖炉やストーブを避ける

・タバコの煙を避ける

 

 

 

 

 

タバコの煙への暴露は喘息急性増悪の原因であることが多く(12)、いくつかのスタディでは喫煙および受動喫煙が喘息患者の呼吸機能低下の原因となることが示されている(13, 14)

 

タバコの煙に暴露される喘息患者は、暴露されない患者に比べ疾病罹患率および死亡率が高くなる

 

喫煙は気道炎症のタイプおよび程度を変化させて吸入ステロイド薬の治療効果を減らす可能性がある(15)

 

あるスタディでは164人の非喫煙喘息患者が家でタバコの煙に暴露されると、活動が制限される日にちがより多くなり(オッズ比 1.61 [95% CI, 1.06-2.46])、より症状が増える可能性が高くなる(オッズ比 2.05 [95% CI, 1.79-2.40])ことが示された(16)

 

 

 

 

空気清浄機器に関するアドバイス 

空気清浄機は理屈的には喘息患者の助けになりそうである(17)。しかし室内のエアダクトの清掃や高性能微粒子エアフィルターが喘息の症状を和らげるというエビデンスはほとんどなく、Institute of Medicineはアレルゲン暴露を減らすために空気清浄機器を使用することを推奨していない(18, 19)

 

 

加湿器は頻繁に清掃する必要があるが、それにもかかわらずアレルゲンレベルを上げる可能性がある。専門家は除湿機あるいはエアコンディショナーにて室内湿度を50%以下に保つことを推奨している。それによって喘息の症状および薬剤需要を減らすからである(4, 5, 20)

 

 

 

 

喘息の評価 

Global Strategy for Asthma Management and Preventionは喘息の評価および管理に関するガイドラインを毎年アップデートしてGINA reportを出している(5)

 

現在のガイドラインではAsthma Control TestやAsthma Control Questionnaireを利用して医療機関受診毎に症状のモニタリングを行うことの重要性を強調している 

 

症状がない、あるいはほとんどない、活動制限がない、レスキュー薬剤を必要としない、あるいはほとんど必要としない場合には喘息がよくコントロールされているとみなされる

 

夜間の症状は特に重要であり、それを認める場合はたとえ頻度が少なくてもコントロールがされていない事を示唆する

 

 

 

喘息アセスメント

 

症状

以下の場合は喘息がコントロールされているとみなされる

・症状の頻度が週に2回未満

・夜間に目覚めることが月に2回未満

・通常活動の妨げが起こらない

・短期作用型βアゴニストの使用が週に2回未満

・Asthma Control Testの結果が20より高い

・Asthma Control Questionnaireの結果が0.75より高い

 

急性増悪および有害事象のリスク

以下の場合は急性増悪および有害事象のリスクがあるとされる

・短期作用型β2アゴニストの使用が週2回以上

・吸入ステロイドの不使用あるいは不適切な使用

・FEV1が予測値の60%未満

・気道閉塞の可逆性レベルが高い

・重大な精神科的あるいは社会的な問題

・タバコの煙への暴露

・食物を含むアレルゲンへの感作

・肥満あるいは慢性鼻炎

・喀痰あるいは血液中好酸球増多

・吸入ステロイド使用中の呼気中一酸化窒素上昇

・喘息による挿管あるいはICU入院の既往

・過去12ヶ月以内に重度の急性増悪が1回以上

 

呼吸機能のレベル

診断時、コントローラー治療開始後、急性増悪後、および定期的にスパイロメトリーを施行してトレンドをフォローしていく

 

 

 

 

 

Asthma Control Test

1、 過去4週間に喘息で職場、学校、家庭で思うように作業がはかどらなかったことはどれくらいありますか

いつも(1)、かなり(2)、時々(3)、少し(4)、全くない(5)

2、過去4週間にどれくらい息苦しくなりましたか

1日に2回以上(1)、1日に1回(2)、1週間で3〜6回(3)、1週間に1〜2回(4)、全くない(5)

3、過去4週間に喘息の症状(喘鳴、咳、呼吸困難、胸部圧迫感、痛み)によって夜間あるいはいつもより朝早く目覚めてしまうことはどれくらいありますか

1週間に4回以上(1)、1週間に2〜3回(2)、1週間に1回(3)、1〜2回(4)、全くない(5)

4、過去4週間にレスキューの吸入あるいはネブライザーをどのくらい使いましたか

1日に3回以上(1)、1日に1〜2回(2)、1週間に2〜3回(3)、1週間に1回以下(4)、全くない(5)

5、過去4週間に喘息をどの程度コントロールできたと思いますか

全くできなかった(1)、あまりできなかった(2)、まあまあできた(3)、十分できた(4)、完全にできた(5)

 

項目の合計点が19点以下の場合は喘息のコントロールが不十分と評価される

 

 

 

 

 

 

有害事象を予測する多くの因子の中で最も重要なものは低い呼吸機能、過去12ヶ月以内の1回以上の重度の急性増悪、過去の挿管あるいはICU入院の既往である

 

したがって呼吸機能検査はアセスメントの継続において重要である。ガイドラインでは診断時、治療によって安定した後、長引く増悪後、進行的あるいは慢性的に悪化していく時、そして毎年のルーティンのモニタリングとしてスパイロメトリーを行うことを推奨している(4, 5)

 

 

 

受診毎に治療のレビューを行う必要がある。多くの患者が吸入薬を使用しており、適切に使用できていることを確認することが重要である

 

スタディでは多くの患者において吸入の手技が適切でないことが示されている(21)

 

受診時に実際に患者が吸入するところを観察し、フィードバックを与えることが理想的である

 

適切な薬剤投与のために必要な吸気流量が吸入器ごとにかなり異なるため、処方の際にそのことを考慮する必要がある(22)

 

スペーサーを使って加圧式定量噴霧吸入を行えばエラーを減らすことができる

 

鼻炎、副鼻腔炎、逆流性食道炎、肥満、睡眠時無呼吸、うつ病、不安症など喘息に影響しうる合併症を同定し、対応することも重要である。スタディではスタンダードな方法に基づいてこれらの疾患の評価を行う事で喘息のコントロールが改善することが示されている(23, 24)

 

 

 

 

治療薬剤選択

 

治療のゴールは症状のコントロール、患者の活動レベルの維持、そして急性増悪による有害事象のリスク、呼吸機能低下、薬剤副作用などを減らすことである

 

したがってアセスメントは継続的に行う必要があり、治療は最も近位のアセスメントを反映させて調整する必要がある

 

 

患者のアセスメントに基づく連続的なステップ毎に異なる治療薬を使用するアプローチが取られる。症状の短期的な改善のための薬剤(レスキュー治療)と長期的なコントロールのための薬剤が使用される

 

間欠的にのみ症状を有する患者でも重度の急性増悪をきたすことがあるため、レスキュー薬は重症度に関わらず全ての患者に必要とされる

 

症状が持続する、あるいは間欠的だが強くなる場合はレスキュー薬に加え、長期のコントローラーが必要となる

 

患者の症状、リスクファクターによって予想される増悪時の症状の重症度、推奨(★)、薬剤情報(☆)等に基づいて治療を開始する

 

 

 

 

 

喘息のステップ治療 

Step 1

好ましいコントローラー:ー

代替:低量ICSを考慮

リリーバー:必要に応じてSABA

 

Step 2

好ましいコントローラー:低量ICS

代替:LTRA、低量テオフィリン 

リリーバー:必要に応じてSABA

 

Step 3

好ましいコントローラー:低量ICS/LABA

代替:中等量ICS、低量ICSプラスLTRAあるいはテオフィリン 

リリーバー:必要に応じてSABAあるいは低量ICS/formoterol

 

Step 4

好ましいコントローラー:中等量あるいは高量ICS/LABA

代替:tiotropiumを追加、高量ICSプラスLTRAあるいはテオフィリン

リリーバー:必要に応じてSABAあるいは低量ICS/formoterol

 

Step 5

好ましいコントローラー:追加薬剤(tiotropium、anti-IgE、anti-IL-5など)に関して専門家紹介

代替:低量OCS追加

リリーバー:必要に応じてSABAあるいは低量ICS/formoterol

 

(ICS:inhaled corticosteroid、SABA:short-acting β2-agonist、LTRA:leukotriene-receptor antagonist、LABA:long-acting β2-agonist、OCS:oral corticosteroid)

 

 

 

 

 

初期治療選択(★)

症状:月に2回未満

リスク:なし

ー>SABA(step 1)

 

症状:月に2回未満

リスク:あり(上記参照)

ー>SABAプラス低量ICS(Sstep 2)

 

症状:月に少なくとも2回

リスク:あり

ー>SABAプラス低量ICS(Sstep 2)

 

症状:多くの日に起こる

リスク:あり

ー>低量ICS/LABAあるいは中等量ICS(strep 3)

 

症状:夜間の症状が少なくとも週に1回

リスク:あり

ー>低量ICS/LABAあるいは中等量ICS(strep 3)

 

症状:重度でコントロールできない症状あるいは急性増悪

リスク:あり

ー>oral corticosteroidプラス中等量ICS/LABA(strep 4)

 

(ICS:inhaled corticosteroid、SABA:short-acting β2-agonist、LABA:long-acting β2-agonist)

 

 

 

 

 

 

治療を開始した後は喘息コントロールのレベルに基づいて継続的に治療のアセスメントと調整を行わなければならない

 

もしコントロールが不良であればより強化的な治療にステップアップしなければならない。これは吸入ステロイド薬の投与量を増やす、あるいは第二のコントローラー薬を追加することなどである

 

もし症状が3ヶ月以上良好にコントロールされれば、より軽度の治療にステップダウンする必要がある。これは第二のコントローラー薬を中止する、あるいは吸入ステロイド剤の投与量を減量することなどである

 

吸入ステロイド剤の投与量を25〜30%減量することが最初の目標として適切である

 

この過程において患者に症状が悪化した場合は臨床家に速やかに報告するように伝えておくことも重要である(25)

 

臨床家は治療開始後1〜3ヶ月、あるいはステップアップおよびステップダウンした後1〜3ヶ月における変更の影響をレビューする必要がある。フォローアップの頻度はコントロールのレベルに依存する

 

 

 

 

レスキュー治療

間欠的な症状の場合は即効性の薬剤のみが屯用として必要であるかもしれない。安全性と耐容性より短期作用型β2アゴニストが気道攣縮の改善薬として使用される。長期コントローラー治療を受けている持続性の症状を持つ患者(軽度、中等度、重度)にも短期作用型β2アゴニストを処方すべきで、急性の症状の場合にすぐに利用できるよう準備しておくことも伝えておいた方がよい

 

 

 

長期コントローラー治療

コントローラー治療薬は持続する症状を改善し、増悪を防ぐ目的で使われる。コントローラーとしていくつかのクラスの薬剤が存在し、喘息の特性となる異なる機序をターゲットとしている。異なるクラスの薬剤を併用することによって良きコントロールが得られる可能性がある

 

吸入ステロイドはコントローラー治療薬の中で最も効果の高いものである(26, 27)。気道粘膜の浮腫、粘液の過分泌、気道炎症などの喘息反応の病理学的変化を改善する。様々な力価と製剤が利用可能で、個人間で反応が異なるため、治療効果が十分でない場合は同じクラスの他の製剤を試してみることは意義があるかもしれない

 

副作用は用量と関連し製剤ごとに異なる。最も多いものは口腔カンジダ症、発声障害、局所沈着などである。他には副腎抑制、骨密度減少、白内障などがある。budesonide 400mcg以下および等力価以下の他の吸入ステロイドでは通常それらの全身性の副作用は起こらない(28)。高用量で高力価の吸入ステロイドにて肺炎の率が増えるとの報告がある(29)。喫煙者では吸入ステロイドの効果が減少し、より多くの用量を必要とするかもしれない。臨床家は吸入ステロイドのリスクは経口ステロイドの有害事象に比較し、非常に小さなものであることも認識しておく必要がある

 

 

1日1回あるいは2回の投与で気道拡張を維持する吸入長期作用型β2アゴニスト(LABA)も重要である。吸入ステロイドに追加されると、喘息コントロールが改善し増悪のリスクを減らす。中等量の吸入ステロイドにて喘息のコントロールが不十分である場合はその吸入ステロイドをLABAとステロイドの合剤である1つの吸入薬に変更する必要がある(5, 30, 31)。1つの吸入薬にすることでアドヒーランスが向上し、コストが下がる

 

ステロイドなしでLABAを使用すると喘息関連死のリスクが上がり、2003年にU.S. Food and Drug Administration(FDA)がLABAとステロイドの合剤も含む全てのLABAを有する吸入剤に対しblack box warningを発表した(32)。しかし新たな5つの臨床試験によって吸入ステロイドと併用すればLABAは喘息に関連する入院、挿管、死亡のリスクを上げず、その併用によって増悪を少なくすることが示され、2017年にFDAはLABAとステロイドの合剤をblack box warningから外した(33, 34, 35)

 

ロイコトリエン受容体拮抗薬はゆるやかな気管支拡張作用を持ち、アレルギー性鼻炎などの上気道疾患の治療薬として使用される。アスピリンによって悪化する気道疾患の患者はこの薬剤によく反応することが多い。特にzileutonは同じクラスの他の薬剤に比べ、炎症経路に含まれるcysteinyl leukotrienをより効果的にブロックすることがわかっている(36)

 

 

経口ステロイドは急性増悪時にルーティンで使用されるが、長期の使用にてよく知られた有害事象のリスクに晒される

 

 

長期作用型ムスカリン受容体拮抗薬は持続する気管拡張効果をもたらす。たとえばtiotropiumは症状コントロールが不十分の患者においてステロイドとLABAの合剤と併用することで呼吸機能を向上させ、増悪を減らす。さらに重大な副作用でLABAの使用ができない場合はその代替として使用できる。しかし長期作用型ムスカリン受容体拮抗薬は長期気道拡張薬としてLABAより先にルーティンで使用されるべきではない

 

 

 

間欠的な症状の患者ではstep 1として必要に応じて短期作用型β2アゴニストを使用して治療する。しかし間欠的な症状であっても増悪のリスクファクターを有する場合はコントローラー治療を行うことによる利益がある(5)。持続する症状をもつ全ての患者(step 2以上)においては長期コントローラー治療が必要となる。step 2で推奨される治療は低量吸入ステロイドであり、増悪、気道過敏性、レスキュー治療使用のリスクを減らす。step 2で吸入ステロイドの代替となるのはロイコトリエン受容体拮抗薬かテオフィリンである

 

推奨される治療はstep 3では低量吸入ステロイドとLABA併用、step 4では中等量あるいは高量吸入ステロイドとLABA併用である。長期作用型気管支拡張剤を追加することで、吸入ステロイドのみの用量を2倍に増やすことに比べ、レスキュー薬使用および症状を減らし、呼吸機能を改善させる(33)。各ステップに代替となる併用法が利用できるが、これらの選択をガイドするスタディは少ない。たとえば高量の吸入ステロイド薬はmontelukastなどのロイコトリエン受容体拮抗薬に比べより効果的であるが、montelukastを高量吸入ステロイドに追加することで、ステロイドの用量を減らせる可能性がある(37)

 

 

中等量あるいは高量吸入ステロイドとLABAの併用でも症状が持続する場合は第3のコントローラー治療薬が必要になるかもしれない(step 5)。病状がこのレベルの患者では非常に増悪しやすく、強い炎症が起こっていると考えられる。薬剤オプションには吸入ステロイドとLABA併用に追加することで呼吸機能を改善し、増悪を減らすtiotropiumの追加(38)、あるいは生物学的療法を開始することが含まれる

 

 

あるrandomized trialでは症状を有し、FEV1が予測値の80%以下でかつ過去1年間に少なくとも1回以上の急性増悪があった患者において、吸入ステロイドとLABA併用にtiotropiumを追加した場合、プラセボに比べて次の急性増悪までの期間が長くなり、またFEV1がより改善したことが示された(38)

 

 

各ステップアップする前に、患者の吸入技術、アドヒーランス、並存疾患、修正できうるリスクファクターを再評価することが重要である。スタディでは50%以上の患者において吸入治療を指示された通りに使用していないことが示されている

 

 

 

 

 

 

喘息治療薬(☆)

 

短期作用型β2アゴニスト吸入薬

副作用

振戦、頻脈などの交感神経症状、低カリウム血症、高血糖、過敏性反応

注意

心血管疾患、甲状腺機能亢進症、糖尿病、緑内障、てんかんなどの既往の時

臨床使用

軽度、間欠的症状の第一選択

 

Albuterol (Proventil HFA, Ventolin HFA, Proair HFA, Accuneb)

MDI (90mcg/吸入):必要に応じて4〜6時間毎に2吸入

ネブライザー:必要に応じて6〜8時間毎に2.5mg吸入

(急性増悪時にはMDIを1〜4時間毎に4〜8吸入、ネブライザーを1〜4時間毎に2.5〜10mgへ増量可能)

 

Levalbuterol (Xopenex, Xopenex HFA)

MDI (45mcg/吸入):必要に応じて4〜6時間毎に2吸入

ネブライザー:必要に応じて8時間毎に0.63〜1.25mg吸入

(急性増悪時にはMDIを1〜4時間毎に4〜8吸入、ネブライザーを1〜4時間毎に1.25〜5mgへ増量可能)

 

 

吸入ステロイド薬

副作用

口腔乾燥、紅潮、白内障、緑内障、口腔カンジダ症、嗄声、皮疹、低い頻度だが視床下部-下垂体-副腎抑制、骨量減少

注意

糖尿病の既往の時

臨床使用

軽度から重度の喘息

 

Beclomethasone (QVAR)

インヘイラー(40,80mcg/inh): 40-160mcg1日2回

 

Budesonide (Pulmicort Flexhaler, Pulmicort Turbohaler)

DPI (90,180mcg/inh) : 360mcg1日2回

DPI (200mcg/inh) : 200-400mcg1日2回

 

Ciclesonide (Alvesco)

MDI (80, 160mcg/inh): 80-320mcg1日2回

 

Fluticasone propionate (Flovent HFA, Flovent Diskus)

MDI (44, 110, 220mcg/inh): 88-440mcg1日2回

DPI (50, 100, 250mcg/inh) : 100-1000mcg1日2回

 

Fluticasone furoate (Arnuity Ellipta)

DPI (50, 100, 200mcg/inh) : 1吸入1日1回

 

Mometasone (AsmanexTwisthaler, Asmanex HFA MDI)

DPI (110, 220mcg/inh) : 220mcg1日1回午後、維持220-440mcg1日2回, HFA (100 or 200mcg)

 

 

ロイコトリエン調整薬

副作用

稀に神経精神的イベント

臨床使用

軽度から中等度の喘息の代替治療

 

Montelukast (Singulair) 10mg 1日1回午後

副作用

稀に全身性の好酸球増多

 

Zafirlukast (Accolate) 20mg 1日2回

副作用

肝酵素上昇、過敏性反応、稀に全身性の好酸球増多

注意

肝疾患では避ける、CYP1A2, 2C8, 2C9, 3A4を阻害、ワーファリン併用でINR上昇

 

Zileuton (Zyflo CR) 長期作用型: 1200mg 1日2回 食後1時間以内

副作用

肝酵素上昇、インフルエンザ様症状

注意

肝疾患では避ける、ベースラインと治療開始後定期的に肝酵素をチェック、CYP1A2を阻害

 

  

長期作用型β2アゴニスト吸入薬

Salmeterol (Serevent Diskus)

50mcg 12時間毎 

副作用

震戦や頻脈などの交感神経症状、paradoxical bronchospasm、過敏性反応、低カリウム血症、高血糖(稀)

注意

喘息関連死のblack box warning、心血管疾患、甲状腺機能亢進症、緑内障、てんかんなどの既往のある時、時間とともに耐性獲得

臨床使用

中等度から重度の喘息、コントローラーと併用しなければならない

 

  

経口ステロイド薬 

副作用

長期使用で視床下部-下垂体-副腎抑制、免疫抑制、高血圧、神経症状、耐糖能、体重増加、筋障害、白内障、骨粗鬆症

臨床使用

急性増悪時、一般的に長期使用には使われない

 

Prednisone

1日総量40-80mg 1-2回に分けて、計3〜10日間、漸減も考慮

 

Prednisolone (Prelone, Flo-Pred, Orapred)

1日総量40-80mg 1-2回に分けて、計3〜10日間、漸減も考慮

 

Methylprednisolone (Medrol)

1日総量40-80mg 1-2回に分けて、計3〜10日間、漸減も考慮

 

 

メチルキサンチン

Theophylline (Theo-Dur, Theochron, Theo-24)

用量は個人ごと、血中濃度を5-15μg/mLに調整

静注: 0.2-0.4mg/kg/h

intermediate-release: 初回1日総量300mg, 6-8時間毎に分けて、1日総量400-1600mg, 6-8時間毎に分けて, へ増量可能

extended-release: 初回1日総量300mg, 8-12時間毎に分けて、1日総量400-1600mg, 8-12時間毎に分けて, へ増量可能

controlled-release (Theo-24): 初回300-400mg 1日1回, 400-1600mg, 12-24時間毎に分けて, へ増量可能

副作用

消化器および心血管作用

注意

狭い治療域、CYP450代謝のため多くの薬剤と相互作用、肝疾患、心不全、高齢者では低量投与、心血管、甲状腺疾患、消化性潰瘍、前立腺肥大、てんかん、喫煙などの既往のある時

 

 

吸入抗コリン薬

副作用

口腔乾燥、抗コリン作用

注意

緑内障、膀胱閉塞、前立腺肥大の既往の時

 

Ipratropium (Atrovent, Atrovent HFA)

MDI (17mcg/吸入):2-3吸入1日4回

ネブライザー:500mcg 1日3-4回

臨床使用

重度の急性増悪時に吸入β2アゴニストとの併用で多くの利益 

 

Tiotropium (Spiriva Handihaler, Spiriva Respimat)

Handihaler: 18mcg 1日1回(powder in capsules)

Respimat: 2吸入1日1回

 

 

硫酸マグネシウム

2g静注 

注意

房室ブロックの際は避ける、CKDの既往のある時

臨床使用

他の薬剤に反応しない重度の急性増悪時

 

 

合剤(ステロイドと長期作用型β2アゴニスト吸入薬)

Budesonide-formoterol (Symbicort)

80/4.5mcg, 160/4.5mcg: 2吸入1日2回

 

Mometasone-formoterol (Dulera)

100/5mcg, 200/5mcg: 2吸入1日2回

 

Fluticasone-salmeterol (Advair DIskus, Advair HFA)

DPI: 100/50mcg, 250/50mcg, 500/50mcg: 1吸入1日2回 

MDI: 45/21mcg, 115/21mcg, 230/21mcg: 2吸入1日2回

 

Fluticasone furoate-vilanterol (Breo Ellipta)

DPI: 100/25mcg, 200/25mcg: 1吸入1日1回 

 

 

(CYP: cytochrome P450 isoenzymes,  DPI: dry powder inhaler, HFA: hydrofluoroalkane, MDI: metered-dose inhaler)

 

 

 

 

 

 

喘息反応の特定のメディエーターに対する新しい抗体治療薬が標準治療にて適切にコントロールされない重度の喘息患者に使用することができる。これらの抗体治療は特定の患者においては大きく治療を変える場合がある

 

様々なタイプの生物学的療法が現在利用可能であり、またさらに多くのものが現在開発されている

 

現在利用できるものはIgEを産生する経路や好酸球を活性化する経路をターゲットとし、サイトカインであるインターロイキン4(IL-4)、IL-5、IL-13などに作用を及ぼす。これらのサイトカインは主に2型ヘルパーT細胞によって分泌され、このクラスの喘息気道炎症が2型と称される。少なくとも喘息患者の半数は2型炎症を有し、重度の喘息患者ではさらに多い可能性がある(39)

 

認識できる臨床的特徴とバイオマーカーによって患者が特定の生物学的療法による利益がある2型炎症を有するかどうかを決定する。この過程がphenotypingと呼ばれる

 

そのようなphenotypeを示唆するよくある臨床的特徴はアトピー、季節に関連して増悪、hay fever、アレルゲンへの感作などである。これらの患者を評価するバイオマーカーは血清あるいは喀痰中の好酸球増多、高IgE値、呼気中一酸化窒素上昇などである(40)

 

皮膚テストにて確認された、あるいは総IgE高値とともに特定のアレルゲンIgE値の上昇によって確認されたアトピーを有する場合はomalizumabによって利益が認められる可能性がある。omalizumabはIgEに結合するモノクローナル抗体であり、高量吸入ステロイドとLABAの併用、あるいは他の薬剤治療にもかかわらず重度の喘息症状が続く患者における急性増悪を減らすことが確認されている(41)

 

アトピーの特徴の有無に関わらず好酸球上昇を認める患者には好酸球を呼び寄せて成熟させるIL-5の阻害剤が治療薬として使われる。これらの薬剤にはIL-5に直接結合するmepolizumab、reslizumab、そしてIL-5受容体に結合して好酸球のアポトーシスを誘導するbenralizumabがある(42)

 

 

dupilumabはモノクローナル抗体であり、IL-4とIL-13からのシグナルを阻害し、結果2型炎症を抑える(43, 44)

 

 

2型炎症をターゲットとする全ての薬剤は中等度から重度の喘息を有するtype 2 phenotypeの患者に効果が認められる。その効果には症状および呼吸機能の改善、経口ステロイド薬の必要性および急性増悪の減少、などがあるが薬剤ごとにその効果は異なる

 

副作用には過敏性反応があり、アナフィラキシーのリスクのため2剤(omalizumab、reslizumab)はblack box warningが与えられている

 

薬価が非常に高いため、現行の治療の注意深いレビューと最適化を行った後においてのみ限られた重症の患者に対し考慮する必要がある

 

あるスタディでは重症の喘息と考えられた患者の半数以上が、診断、並存疾患、薬剤へのアドヒーランスをシステマティックな段階を踏んで確認すると重症度が再分類され直した、と報告している(45)

 

step 5治療にて入院を防ぐ、あるいは減らすことができれば、重症で2型炎症を持つ喘息患者に対する生物学的療法は費用対効果的であると言えるかもしれない(41)

 

3つのrandomized, double-blind, placebo-controlled trialsのpooled analysisでは吸入ステロイド薬を使用している1405人の喘息患者が調べられた。omalizumabにて治療された場合、プラセボに比べ、入院、救急外来受診、予定外の外来受診を減らすことが示された(41)

 

 

 

 

生物学的療法 

 

Omalizumab (Xolair)

75-375mg: 2週毎あるいは4週毎に皮下注射(用量および投与頻度を血清IgE値にて決定)

機序

Anti-IgE、Fc受容体に結合

適応

IgE値が30-1300IU/mLのアレルギー性喘息でaeroallergen skin testが陽性あるいは特定のaeroallergen IgE値が上昇

副作用

Black box warning (アナフィラキシーのリスク)

  

Mepolizumab

100mg: 4週毎に皮下注射

機序

Anti-IgE、IL-5 ligandに結合

適応

好酸球性喘息で好酸球数>0.15-0.3 x 10⁹cells/L

副作用

稀にアナフィラキシー

 

Reslizumab

3mg/kg: 4週毎に静注

機序

Anti-IgE、IL-5 ligandに結合

適応

好酸球性喘息で好酸球>0.4 x 10⁹cells/L

 

Benralizumab

300mcg: 3ヶ月毎に皮下注、その後8週毎

機序

Anti-IgE、IL-5 ligandに結合

適応

好酸球性喘息で好酸球>0.3 x 10⁹cells/L

  

Dupilumab

初期量400 or 600mg皮下注、その後300 or 200mg 2週毎に皮下注

機序

Anti-IL-4 and anti-IL-13、IL-4受容体に結合

適応

好酸球性喘息で好酸球>0.15 x 10⁹cells/L

 

 

 

 

 

 

 

非薬物療法

包括的な喘息治療はアレルゲンの管理とともに誘因を除去すること、タバコの煙のある環境に晒されることを減らすこと、健康的な食事、減量を促す運動プログラムなどが含まれる

 

肥満は喘息の重要なリスクファクターであり、減量は喘息コントロールおよび呼吸機能を改善し、急性増悪および入院を減らす(46, 47)

 

 

気管支サーモプラスティは気管支鏡を使用したラジオ波による気道治療であり、注意深く選ばれた患者においては急性増悪を減らし、QOLが向上する。気道の平滑筋量を減らすことによって気道攣縮を防ぐようデザインされた治療である。適応となるのはFEV1の予測値が60%以上で、高量吸入ステロイドとLABAの併用にも関わらずコントロール不良な重度の喘息患者である。現在のガイドラインでは長期的な効果を調べるためのスタディに登録する場合においてのみサーモプラスティを行うことを提案している(48)

 

 

多くの患者が鍼灸やハーブ療法などの代替治療に興味を持っている。喘息のマネージメントにおいてそれらの役割をサポートする、あるいは否定するのに十分なエビデンスはないが、ガイドラインでは鍼灸を推奨しないことが示されている(4)

 

 

 

 

運動誘発性喘息

運動誘発性気管支攣縮は喘息患者の症状の最もよくみられる誘因である

 

高い強度の運動中では喘息のない患者やアスリートにも起こりえる

 

環境的因子が症状の発症に重要な役割を果たしている。冬や室内アイスリンクなどの冷たく乾いた空気の中での運動、プールでの高い濃度のトリクロラミンへの暴露、空中の微粒子やオゾンの吸入、などが関与している

 

運動誘発性気管支攣縮のために活動を制限しなければならない、ということはない。呼吸機能は正常だが、咳、呼吸困難、喘鳴などの運動誘発性の症状を持つ患者では運動開始5〜20分前にalbuterol吸入を行うことによって効果的にコントロールすることができる

 

もし運動誘発性の症状が持続する場合は追加で吸入ステロイドやロイコトリエン受容体拮抗薬などを日々使用することで助けとなりえる。あるスタディでは軽度の安定した喘息を持つ患者にmontelukastを1日1回投与することで運動誘発性気管支攣縮を防ぐことに効果的であったことが報告されている(49)

 

運動前にはウォームアップエクササイズを行う、寒い環境で運動する場合はマスクを使用する、あるいは吸い込む空気を温め加湿するような装置を利用することなどを考慮すべきである

 

臨床家は運動誘発性気管支攣縮も治療の一環として考慮しなければならない

 

 

 

 

専門家紹介

step 5の治療を必要とする場合は通常専門家へ紹介すべきである

 

その他の患者で専門家紹介によって利益があるのは致死的に近い喘息発作を認めた、年のうちに経口ステロイドによる治療を行うことが2回以上あった場合などである

 

これらの患者ではphenotypingによる気道炎症の分類が必要になり、それに準じた適切な治療薬を使う必要がある。この場合2型炎症の患者では生物学的療法が最もよく使われる

 

 

 

 

患者が知っておくべきこと

患者はセルフマネージメントするために急性増悪も含め喘息症状をよく知っておく必要がある(4, 5)。早い対応が救急外来受診や入院を防ぐ可能性があるため、悪化時の初期のサインや症状、適切な取るべき行動を知っておくべきである

 

臨床家と患者は日々のマネージメント、悪化のサインや症状をどのように認識するか、急性の症状やピークフローの結果によってどのように薬剤を調整するか、などが書かれたアクションプランを共有する必要がある

 

中等度から重度の喘息患者では自宅で急性増悪に速やかに対応できるように薬剤(経口ステロイドなど)や装置(ネブライザーなど)などが利用できるようにしておく必要がある

 

 

 

外来における経口ステロイド治療

急性増悪を認める限られた患者では適切な治療の強化と、症状が持続あるいは悪化する場合は緊急受診を行うよう指示しておく事によって外来にて管理ができる場合がある

 

書かれたアクションプランに基づいて、全ての患者が悪化した症状に対して短期作用型β2アゴニストを使用すべきであり、患者によってはコントローラー薬剤もセットアップする必要がある場合も存在する

 

もし症状のコントロールが24〜48時間後にも不十分であった場合は、中等量の経口ステロイド(prednisoneあるいはprednisoloneを1日40〜60mg)を5〜7日間投与する必要があるかもしれない

 

症状が持続したり悪化する場合、また短期作用型β2アゴニストを4時間毎より多く使用しなければならない場合は速やかに医療機関を受診するように指示しておく必要がある

 

 

 

 

入院

中等度から重度の急性増悪で治療に十分な反応を示さない場合は入院が必要になるかもしれない。中等度から重度の増悪の症状は言葉を文で話せない、強いair hunger、臥位になれない、などである。身体所見では意識混乱、著明な頻呼吸や頻脈、補助呼吸筋の使用、などがある。呼吸苦がある患者の胸部診察にて喘鳴の低下あるいは消失を認める場合は悪いサインあるいは差し迫る呼吸不全の兆候である可能性がある

 

もし可能なら症状よりも客観的に呼吸機能を測定することの方が急性増悪の重症度評価はより正確にできる。FEV1が予測値の40-69%、あるいはピークフローが個人ベストの40-69%の場合は中等度、FEV1あるいはピークフローが40%以下の場合は重度と評価される

 

治療後のピークフローが40%以下のままである場合にはICU入院が必要になるかもしれない

 

救急外来退院時の適切な酸素飽和度やピークフロー値が良きアウトカムの予測指標になるという十分なデータはない

 

 

 

 

急性増悪による致死的あるいはそれに準じたイベントのリスク

喘息の病歴、社会経済的因子、並存疾患などは患者が急性増悪時に致死的あるいはそれに近いイベントが起こる高いリスクを有するかを同定する指標となる。多くの因子の中で悪いアウトカムを予測するものとして最も重要なものが、低い呼吸機能、過去12ヶ月のうちの1回以上の重度の急性増悪、挿管あるいはICU入院の既往である

 

 

 

 

フォローアップの頻度

フォローアップの頻度をガイドするための決定的なスタディはないが、新しく診断されて治療を開始した1〜3ヶ月後、そしてその後は症状の反応に基づいて3〜12ヶ月ごとにフォローすることが妥当であるとのコンセンサスが得られている。GINAガイドラインでは急性増悪の治療後7日以内にフォローすることが推奨されている(5)

 

 

 

 

 

 

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インザクリニック

アナルズオブインターナルメディシン

2019年10月1日

 

 

 

 

 

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認知症

 

認知症は二つあるいはそれ以上の認知機能の低下と定義され、覚醒や注意ではなく機能の障害を呈する

 

 

認知能力の低下は、出生時から存在し子供の時に症状が確認されその後終生みられる intellectual disability(知的障害)(以前はmental retardation (精神遅滞)と呼ばれていた) や単一の学習障害とは異なる

 

 

二つあるいはそれ以上の認知機能が障害される認知症は、amnestic mild cognitive impairment (MCI) (健忘型軽度認知機能障害)、健忘症候群(以前はKorsakoff syndromeと呼ばれていた)、単一の脳病変などとは区別される

 

 

注意と覚醒が正常であることがせん妄と区別される

 

 

認知症は特定の疾患ではなく症候群である

 

 

最も一般的なものがアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症である

 

 

認知症を呈する1〜2%の患者では正常圧水頭症、薬剤による認知機能障害、甲状腺機能低下症、うつ病などの疾患が原因となる

 

 

認知症は小児期以降のいつの時点でも起こりえるが、主には人生の後半期に起こり、およそ71歳以上の14%、90歳以上の37.4%で認められる(1)

 

 

認知症患者のケアは家族や社会にとって感情的にも経済的にも負担となりえる。患者は最初は自宅でケアされるが、最終的には多くが施設に入り、67%がナーシングホームで亡くなる(2)

 

 

非公式なケアをどのように評価するかにもよるが、2010年における認知症のyearly per-person costは$41689〜$56290であった(3)

 

 

 

 

 

 

予防およびスクリーニング

 

認知症あるいは認知機能低下を予防することができるか?

Lancet Commissionによる最近の報告では認知症の9つの修正できうるリスクファクターが同定され、population-attributable fraction(もしそのリスクファクターが除去されれば、一定の期間内で新しく確認された認知症が減る率)が計算された。人生の初期(18歳以下)においては少ない教育(7.5%)、人生の中盤(45〜65歳)においては、高血圧(2.0%)、肥満(0.8%)、聴覚喪失(9.1%)、人生の晩期(65歳以上)においては喫煙(5.5%)、うつ病(4.0%)、少ない身体活動(2.6%)、社会的孤立(2.3%)、糖尿病(1.2%)とされた。これらのリスクは人生の各ステージにおいて分類されているが、生涯のどの時点においても重要であることを認識することが大切である(4)

 

 

修正できうるリスクファクターに対する介入が認知機能低下を防げるかどうかは明らかでない

 

2017年にNational Institute on AgingはAgency for the Healthcare Research and Qualityに介入によって認知機能低下を遅らせる事ができるか、あるいは認知症の発症を防げるかに関するエビデンスを調べさせた。このsystematic reviewではあらゆる介入も認知機能低下を遅らせる、あるいは認知症発症を防ぐ強いエビデンスは認められなかった。しかし、高齢者に対する認知トレーニングが特定の領域における認知パフォーマンスを向上させるエビデンスが確認された。さらには、スタディではほとんどの身体活動による介入では介入群とコントロール群における認知パフォーマンスの重大な差は認められなかったが、結果パターンからエアロビックおよびレジスタンストレーニングまたmulticomponent physical activityなどの有効性が示唆された(5)。FINGER (Finnish Geriatric Intervention Study to Prevent Cognitive Impairment and Disability)は4つの要素(栄養、運動、認知トレニーング、社会活動)を同時にターゲットとすることが高齢者における認知機能の向上および維持に有効であることが確認された(6)。このことより複数のリスクファクターに同時に取り組むことが認知機能低下を防ぐ事に有効である可能性が示唆された

 

より最近ではSPRINT-MIND (Systolic Blood Pressure Intervention Trial - Memory and Cognition in Decreased Hypertension)において50歳以上 (平均67.9歳)の成人の血圧目標を強化グループ (120mmHg以下)と通常グループ (140mmHg以下)に無作為に割り当てて行なった結果、primary outcomeである認知症のリスク低下に有意差は認められなかったものの(7)、secondary analysisでmild cognitive impairmanet (MCI)のリスク低下が認められ、より長期のフォローアップでは認知症発症のリスクを低下させる可能性が示唆された

 

 

重要なこととして臨床家はベンゾジアゼピン、抗コリン剤、バルビツール、その他の鎮静・催眠剤などの認知機能に影響を与える薬剤処方を最小限に止める、あるいは中止することによって影響を及ぼすことができる。スタディではベンゾジアゼピンや他の鎮静・催眠剤を使用している高齢者は、使用していない高齢者に比べ、認知機能テストの結果が悪いことが示されている(8)。それらの薬剤を中止することが認知機能を最適化することにとって重要である

 

 

疫学的なエビデンスでは中年期におけるエストロゲンの使用が後期における認知症の低い発症率との関連が示されているが(9)、WHIMS (Women's Health Initiative Memory Study)を含む前向き予防試験ではプラセボに比べ、エストロゲンとプロゲスチンの併用が認知症および他の合併症の発症率上昇との関連が示された(10)

 

WHIMSは65歳以上の女性における認知症予防にエストロゲン・プロゲスチン併用(n=2229)とプラセボ(n=2303)を比較したplacebo-controlled, randomized controlled trialである。試験期間内において平均4年間のエストロゲン使用が認知症の相対危険度 2.05 (95% CI, 1.21-3.48)との結果が示された

 

 

最近のAgency for Healthcare Research and Quality systematic reviewでは、オメガ3脂肪酸とginkgo biloba(イチョウ)はアルツハイマー認知症を防がず、ビタミンEは女性における認知パフォーマンスに効果をもたらさないことが確認された。ビタミンB12と葉酸の併用におけるエビデンスは混在している(5)

 

 

 

認知症をスクリーニングすべきか?

U.S. Preventive Services Task Forceは認知症の全般的なスクリーニングを推奨していない(11)

 

 

IU-CHOICE (Indiana University Cognitive Health Outcomes Investigation of the Comparative Effectiveness of dementia screening)では65歳以上のプライマリケア患者4005人を認知症スクリーニングをするグループとスクリーニングしないグループに無作為に割り当てて調べられた。スクリーニンググループで認知症の可能性があると同定された患者はCollaborative Dementia Care Programに紹介され、さらなる診断的評価、カウンセリング、マネージメントが行われた。結果、この両グループでは12ヶ月でprimary outcomes (health-related quality of life、うつ病、不安)およびsecondary outcomes (ヘルスケアの利用およびadvance care planning)において有意差が認められなかった。死亡率および重大な有害事象も両グループで差が認められなかった(12)

 

しかしながら、全般的なスクリーニングとターゲットを絞ったスクリーニングあるいは個々の同定を行うことを区別することは重要である。なぜなら認知症は広く存在しているが、プライマリケアにおいて認識されていない事がよくあるからである(13)

 

一つのスタディでは、297人の患者のプライマリケア記録が調べられた結果、認知症の基準を満たす65%が認知症と記載されておらず、その中には重度認知症の20%も含まれていた(13)

 

他のスタディでは鬱血性心不全で入院した患者の元々ある認知機能障害の影響が調べられた。認知機能障害を持つ心不全患者における30日再入院率は認知機能障害を持たない患者に比べ、非常に高かったことが認められた。このスタディでは、認知機能障害を持つ心不全患者のcaregiverに対する教育が行われた場合、再入院率が低いことが確認され、認知機能障害の認識および退院時のcaregiverに対する教育がアウトカムの向上に繋がる可能性が示された(14)

 

したがって臨床家はあらゆる年代の成人における日常機能に支障をきたす記憶障害、説明できない機能低下、衛生状態の悪化、薬剤アドヒーランス低下、新たな精神科的症状、新たな、あるいは繰り返す入院、などをきたす鑑別疾患として認知症を考慮する必要がある。急性期疾患に伴う新たなせん妄の発症が認知症の最初の症状である場合もある

 

 

高齢者の認知症を評価する場合、患者からと患者をよく知る情報提供者からの病歴聴取を行うと共に、標準化されたスクリーニング法を使用する必要がある。スクリーニング法は簡易で、感度が高く、広く利用可能で、患者に関連する人口集団のデータに裏打ちされたものであるべきである。Mini-Mental State Examination (MMSE) (15)が広く使われてきたが、現在は著作権による制限が存在する。代替法としてはMini-Cog(16)、St. Louis University Mental Status Exam (SLUMS)(17)、Montreal Cognitive Assessment (MoCA)(18)がある。Mini-Cogは簡潔さが良く、SLUMSはMMSEに最も類似し(19)、MoCAは感度が最も高いが特異度が低い(20)。MoCAはもともとMCIを同定するために作られたもので、中等度か重度の認知症患者には困難である可能性がある。以前にMMSEによって認知機能を評価されていた場合は、MMSEスコアをMoCAスコアに換算するツールが利用可能である(21)

 

 

 

Mini-Cog

ステップ1:Three Word Registration

(三つの言葉を言い(Ver 1:banana, sunrise, chair,  Ver 2: leader, season, table, Ver 3: ・・・  )、それを復唱させる。そして記憶するよう伝える)

ステップ2:Clock Drawing

(円が描かれた紙に時計を描かせる。まず時刻の数字を入れさせる。続いて11時から10分過ぎた時刻をさす針を描くように伝える)

ステップ3:Three Word Recall

(ステップ1の三つの言葉を言わせる)

Scoring

Word Recall(0-3 points):ヒントなしで言えれば各語1点ずつ

Clock Draw(0 or 2 points):全ての時刻の数字が間違いなく、かつおよその正しい位置に書け、針が11と2(11時10分、針の長さは問わない)にあれば2点。正しく描けなかった、あるいは拒否した場合は0点

Total Score(0-5 points)

認知症スクリーニングのcut pointは3点未満。臨床上有意な認知機能障害を持つ患者の多くはこれ以上の点数を獲得する場合があり、より感度を高くしたければcut pointを4点未満にすることが望ましい

 

 

 

 

 

 

診断

 

臨床家は患者の特徴的な認知機能障害の病歴を使って鑑別疾患をあげ認知症の原因を確定する必要がある

 

認知機能に困難がある場合、患者をよく知る情報提供者から情報を得ることが大切になる。その際、患者がいない場所で情報を集める方が容易であることが多い

 

病歴を取る場合、医師は鑑別診断とよくあるタイプの認知症の自然経過を知っている必要がある

 

 

 

アルツハイマー病

特徴

初期は緩徐な記憶喪失、意識レベルは保たれる、IADLパフォーマンスの障害、言語の間違い、視覚空間認識の悪化。中期では失行(運動可能であるが合目的な運動ができない)、見当識障害、判断の障害。病期が進むと、失語、失行、失認(形態と意味の連合が不良)、注意の低下が起こる。終盤ではIADL/ADLを依存しなければならず、歩行や嚥下機能が失われる

ノート

医師に提示される症状は認知に関連しないものである可能性もある。最も初期の症状が妄想や抑うつであるかもしれず、後に認知症症候群の一つの症状であったと認識される場合がある。転倒、振戦、筋力低下、反射異常などの神経学的症状は初期には典型的ではない。それらの症状が早期から認められる場合はアルツハイマー病以外の可能性が示唆される

(アルツハイマー病の臨床診断基準はNational Institute on Aging and the Alzheimer's Associationから利用できる)(22)(★)

 

血管性認知症

特徴

機能の喪失が脳血管イベントと時間的に一致しておこるものとされている。段階的な悪化が認められうる。silent stroke、多発性の小さな脳卒中、重度のびまん性脳血管疾患などが見られるかもしれない

ノート

たとえ身体診察から脳卒中が示唆されない場合でさえも、脳血管疾患リスクファクターを持つ患者では可能性を考慮する必要がある

 

レビー小体型認知症

特徴

病状の初期には軽度のパーキンソニズム、説明のつかない転倒、幻覚、妄想。抗精神薬に極端に敏感に出やすい錐体路外副作用、歩行障害、転倒、認知の変動

ノート 

認知症全体の20%にまでのぼる可能性がある。 血管性認知症でないが神経学的異常を認める場合は疑う必要がある

  

前頭側頭型認知症

特徴

60歳前の発症。言語の障害がよく見られる。初期には記憶が保たれる。著明な人格の変化。多くの場合、過食、衝動性や攻撃性の悪化、無気力などの行動障害が伴うことが多い

ノート 

進行性核上性麻痺、原発性進行性失語、意味性認知症、認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、などの疾患を含む。機能的神経画像は前頭葉あるいは側頭葉の機能不全を示すことが多い

 

せん妄

特徴

急性の発症で症状が変動する。不注意、意識レベルの障害、思考の混乱(見当識障害、記憶障害、言語に対し不注意)を示唆する認知の障害が認められる

ノート

認知症を診断する際には除外診断する必要がある。せん妄は代謝性障害、薬剤副作用、感染などの重大な全身性障害を反映しているかもしれないので診断は非常に大切となる

  

うつ病

特徴

気分の低下、快感の喪失、自己価値感の低下、希望の欠如、食欲・性欲・睡眠の変化、体性症状の増加、神経過敏、希死念慮

ノート

認知機能の障害は単にうつ病によるものである可能性がある。またうつ病が認知症の最初の症状である場合もある

 

薬剤

特徴

よく原因となるものにはベンゾジアゼピン、バルビツール、抗コリン剤、他の鎮静・睡眠剤がある

ノート

認知症患者の認知機能障害が薬剤によって悪化する場合も考えられる

  

軽度認知障害(mild cognitive impairment)

特徴

他の認知機能障害あるいは機能低下を伴わない記憶障害

ノート

多くの患者が認知症へと進む(およそ年12〜15%の割合で)

 

硬膜下血腫

特徴

転倒や頭部外傷に伴う場合もあれば伴わない場合もある。非特異的な頭痛。意識の変動

ノート

古典的な症状が見られるのはむしろ例外的である。神経学的異常は軽度であるかもしれない

 

外傷性脳損傷

特徴

臨床症状は部位によって異なるかもしれない。人格や気分の変化がよく見られる

ノート

脳震盪後症候群は注意低下を認める場合もある

  

正常圧水頭症

特徴

認知症、歩行障害(緩慢、大きな歩幅、方向転換障害)、尿失禁。認知症はよく精神運動遅延や無気力と関連する場合がある

ノート

もし疑いが強ければ、腰椎穿刺を行い、その前後で歩行をモニターする。脳室腹腔シャントによって改善する患者もいる

 

ビタミンB12欠乏

特徴

緩徐な発症。うつ病と関連する場合もある。神経学的所見で固有受容感覚や振動覚の低下、運動失調、バビンスキー反射陽性などが見られるかもしれない

ノート

もしビタミンB12レベルが正常低値で、メチルマロン酸とホモシステインレベルの上昇が認められれば、細胞内のビタミンB12が低値である事を示唆している可能性がある。貧血は伴わない場合がある

  

慢性的なアルコール使用

特徴

慢性的なアルコール使用は中等度から重度の認知症をきたしうる。禁酒の期間によって戻る場合がある

ノート

これは全般的な認知症を伴わない短期記憶の単一的な喪失であるコルサコフ症候群とは異なる

 

トキシン

特徴

芳香族炭化水素、溶剤、重金属、マリファナ、オピオイド、鎮静・催眠剤

ノート

尿あるいは血液検査、重金属スクリーニングは有用である

 

パーキンソン病

特徴

皮質下認知症(感情や行動に変化が現れやすい)、皮質性認知症(言語、思考、社会的行動などに問題が生じやすい)、あるいは両方を有する。再認記憶(情報が記憶として保持されていたか参照)は保たれるが自由再生(保持されていた情報を自由に再生する)は障害されるかもしれない。視覚空間機能が障害されるかもしれない

ノート

レビー小体型認知症に対し、パーキンソン病と認知症を有する患者は認知症が発症するだいぶ前から運動症状を持ち、著明な精神症状あるいは意識の変容は認めないことが典型的である。

  

他の原因

進行した肝臓あるいは腎臓疾患、脳腫瘍、慢性中枢神経感染症、中枢神経血管炎、クロイツフェルト・ヤコブ病、電解質異常、HIV関連認知症、ハンチントン病、多発性硬化症、神経梅毒、神経サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、甲状腺疾患、ウィルソン病

 

 

 

 

(★)全ての原因による認知症およびアルツハイマー病の臨床診断

全ての認知症は認知的な、あるいは行動的(神経精神的)な症状が認められる:

・職場あるいは通常の活動における機能に支障をきたす

・以前の機能レベルに比べ低下を認める

・せん妄や主要な精神疾患によるものではない

・病歴、臨床学的評価、標準的な手段によって診断される

・二つ以上の認知領域を障害する

 

おそらくアルツハイマー病である:

・認知症の基準を満たす

・緩徐な発症

・進行的な認知の低下

・学習・記憶の認知機能障害と、あるいは言語、視覚空間機能、遂行機能の障害

・以下の追加的因子は診断の補助に役立つかもしれない:

 家族歴、神経画像にて脳萎縮、脳波と腰椎穿刺所見が正常

 脳脊髄液amyloid-β 42、amyloid positron emission tomography、18 F-labeled fluoro-2-deoxyglucose positron emission tomographyなどのバイオマーカーなどもアルツハイマー病の病理学的経過の可能性を高めるかもしれないが、ルーチンでの利用は推奨されていない

 

 

 

 

 

認知機能あるいは全般的な機能の変化を有する患者を評価する場合、急性に発症する注意と認識の障害を特徴とするせん妄の可能性を考慮する必要がある。認知症と違って、せん妄は通常、急性な発症で、分あるいは時間単位で変動することが一般的である。興奮や精神病的症状(過活動型せん妄)を呈する場合もあれば、緩慢で鈍く、軽度のうつ病や引きこもった様に見える場合(活動低下型せん妄)もある。せん妄は感染、代謝障害、薬剤の影響、悪性疾患などの全身性の状態を反映している場合が多く、速やかな診断が重要になる。せん妄の評価には、混乱の評価を行える3-Minute Diagnostic Confusion Assessment Method(23)、せん妄の同定を行う4 A's Test(24)あるいはConfusion Assessment Method for the Intensive Care Unit(25)などがある

 

 

 

4AT

(1)ALERTNESS(覚醒)

傾眠が強い(起こすことが困難、あるいは評価を行なっている間中、明らかにうとうとしている)あるいは興奮/過活動が認められるかもしれない。寝ている場合は言葉や肩を優しく揺すって起こすことを試みる

 正常(評価中に完全に覚醒していて、かつ興奮していない)  0点

 起こした後に軽度の傾眠を認めるが(10秒以下)、その後正常になる 0点

 明らかな異常  4点

 

(2)AMT4

年齢、生年月日、場所(病院の名前)、現在の西暦

  間違いなし 0点

  間違いが一つ 1点

  間違いが二つ以上 2点

 

(3) ATTENTION(注意)

一年の月を12月から反対に言わせる

  月を7つ以上正しく言える 0点

  開始するが正しく言える月が6つ以下/開始することを拒否する 1点

  テスト不能(状態が不良、うとうとしている、注意散漫で開始できない) 2点

 

(4)ACUTE CHANGE OR FLUCTUATING COURSE(急な変化あるいは変動する経過)

 覚醒、認知、他の精神機能の明らかな変化あるいは変動が認められる 

  はい  0点

  いいえ 4点

 

4点以上:せん妄の可能性 +/- 認知障害

1−3点:認知障害の可能性

0点: せん妄あるいは重度の認知障害は否定的((4)の情報が不完全である場合は依然せん妄の可能性がある)

 

 

 

 

 

身体診察を行う際は血管性および神経疾患に重きを置きながら、認知機能障害の原因となる、あるいは悪化させる状態を評価する必要がある

 

 

認知機能の評価にはSLUMS(5分かかる)やMoCA(10分かかる)などの標準的なツールを使用すべきである

 

 

American Academy of Neurologyのガイドラインによれば、認知機能異常を評価する場合は一般的な疾患に対する血液検査と、状況によっては選択的な追加検査を行うことが推奨されている(26, 27)  

 

血液検査

認知機能障害の評価における基本的な血液検査

 一般生化学(低ナトリウム血症、低血糖、腎機能異常、肝機能異常)

 血算(感染、貧血)

 TSH(甲状腺機能異常)

 ビタミンB12(ビタミンB12欠乏)

以下の検査も必要になる場合がある(暴露歴等にて)

 Rapid plasma reagin test(神経梅毒の可能性が高ければfluorescent treponemal antibodyも調べる)

 HIV test(HIV-associated dementia)

 Toxicology screen(アルコール、ドラッグ)

 ESR(血管炎)

 重金属スクリーニング(砒素、水銀、アルミニウム、リチウム、鉛)

 サイアミン(サイアミン欠乏)

 Paraneoplastic panel(腫瘍)

 胸部レントゲンあるいはCT(感染、腫瘍)

 尿検査(感染)

 

 

 

画像検査 

認知機能異常を認める期間が3年以下の場合はCTあるいはMRIによる頭部神経画像検査を行い、脳血管障害、出血、腫瘍、膿瘍、クロイツフェルト・ヤコブ病、水頭症などを除外診断する必要がある。早期の発症、早い進行、局所神経障害、脳血管障害のリスクファクター、最近の転倒、中枢神経感染症、説明のつかない意識の変動、早期の人格変化などのアルツハイマー病に非典型的な症状などがある場合は画像検査の有用性が高まる

 

glucose or amyloid positron emission tomography(PET)のルーチンでの使用は推奨されないが、アルツハイマー病と前頭側頭型認知症を鑑別する時などには役立つかもしれない(28, 29)

最近のIDEAS (Imaging Dementia - Evidence for Amyloid Scanning) studyでは認知症の評価にamyloid PET imagingの有用性が11409人の参加者によって調べられた。画像検査の前後において、アルツハイマー病あるいはその他の認知症に対する薬物治療の処方、認知症と診断された人の安全および将来のプランに対するカウンセリングが63%の増加を認めた(CI, 62.1% to 64.9%)。このスタディはこれらの変化が臨床的アウトカムの向上に関連するかを同定するようにはデザインされていない(30)

 

 

遺伝検査はハンチントン病の疑いがない限り認知症評価の適応とならない。現在のところApoE4 alleleをルーチンで検査することをサポートするエビデンスは存在しない(31)。家族性のアルツハイマー病や前頭側頭型認知症に認められる常染色体優性遺伝子変異の検査は、家族に複数の患者が認められる、臨床徴候と検査所見がこれらの疾患を示唆する、かつ患者の発症が60歳より若い時のみに考慮される。遺伝検査を行う前には遺伝カウンセリングを行うことが推奨される(31)

 

 

他の検査は特定の状況において考慮される

 

脳波はせん妄、痙攣、脳炎、クロイツフェルト・ヤコブ病などが疑われる時には有効であるかもしれない

 

腰椎穿刺は患者が55歳以下で、進行の速い認知症、RPRが陽性、急性あるいは慢性の中枢神経感染症、paraneoplastic syndrome、中枢神経悪性疾患、免疫不全、などを認める場合には適応となるかもしれない

 

 

 

 

 

治療

 

一般的な健康および衛生に関するアドバイス

認知症の初期の段階では、患者はメディカルケアの詳細を理解すること、ケアをコントロールすること、外来受診日や服薬を把握することが難しい可能性がある。臨床家はこれらの制限に注意を払い、それらを補うケアプランを準備する必要がある。病状の後期では、患者は便秘、排尿時痛、歯痛、視力低下、聴力低下などの症状を認識できない可能性があり、臨床家はそれらの問題を積極的に探しに行かなければならない

 

認知症がない患者と同様に、一般的なメディカルケアや予防的ケアに注意を払うことが重要である。血圧コントロール不良による脳卒中や心筋梗塞は認知症それ自体と同等に患者の機能およびQOLを障害しうる。慢性疾患のコントロール不良がさらなる認知機能低下に繋がる可能性があるため、血圧、糖尿、コレステロール、抗血小板治療、ワクチンなどに注意を向けることが大切である。認知症のステージに基づいて治療ゴールを患者ごとに設定し、議論することも重要である。認知症がさらに進んだ患者では、栄養、スキンケア(特に会陰部)、排泄スケジュール、デンタルケアなどに注意を払うことの重要性が増していく

 

 

 

 

監督が必要になる可能性のある運転、調理、他の活動などの安全に関するアドバイス

進行した認知症患者では運転能力が最終的に失われる。しかし、いつ運転を中止すべきかを予測することは、特にその制限が本人および家族の負担になるような場合などは、困難である。しかしながら、多くのスタディが疾患の早い段階で運転能力が障害されていることを示しているため、これは避けられない問題である

 

患者に最近の交通事故、ニアミス、運転能力の変化などについて尋ねなければならない。この質問は情報がオープンに交換されるような状況で行われる必要があり、また患者のいないところで情報提供者とのミーティングを設定しなければならない場合もある。病状の早期で既に運転能力が障害されている場合は、速やかに運転を中止するよう指示しなければならない。初期の認知症で運転に関する問題歴がない患者では、運転教習所や病院の職業訓練プログラムなどで運転技術の評価を受ける必要がある。もし運転能力に問題がなく運転を継続する場合は、運転能力に悪化がないかの情報を定期的に更新していく必要がある。American Academy of Neurology Evidence-Based Practice Parameterは認知症患者の運転の評価に関するアウトラインを提供している(32)

 

オフロードとオンロードを含むWashington University Road Testを使ったprospective case-control studyでは、テストに落ちた割合が、コントロール群では3%、非常に軽度のアルツハイマー病患者では19%、軽度のアルツハイマー病患者では41%であった。過去の運転経験はテストの落第に対し有効には働かなかった(33)

 

医師による推奨は利益的および不利益的なアウトカム両方を有する。カナダのスタディでは、様々な疾患で医師から運転を中止するように告げられる事で衝突事故が45%減少(4.76 vs 2.73 per 1000 patients)(P < 0.001)したが、その医師のもとに戻ってくる患者の数も減少し、鬱による救急外来受診が上昇したと報告されている(34)

 

他の事柄の安全に関しても患者および家族と共に継続的に評価していく必要がある。進行した認知症患者では最終的に服薬、調理、電気機器、草刈機、銃器などの使用ができなくなる

 

家の中での安全も、どの活動が依然可能で、またどの活動が制限あるいは監督を要するかが職業訓練士によって評価されることが可能だ。屋外への徘徊もよくみられ、定期的に評価される必要がある

 

 

 

 

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンはいつ処方すべきか

donepezil、galantamine、rivastigmineなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬が症状を有するアルツハイマー病に処方できる。これらの薬剤はターゲットの用量に向けてゆっくり調整していけば、比較的耐容性が良好である。memantineは中等度から進行したアルツハイマー病の治療に承認されており、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬と併用して投与できる。効果が明らかでない場合は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬やmemantineは中止されるかもしれないが、急性に認知機能が悪化する場合は再処方すべきである。これらの薬剤に対する患者や家族の期待を現実的なものにするように助ける必要があるかもしれない。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の副作用は嘔気、嘔吐、下痢、徐脈、失神、体重減少、異常な夢などである

 

あるスタディでは少なくとも3ヶ月以上donepezilを投与されている市中に住む患者295人に対し、1年後のアウトカムが調べられた(35)。プライマリアウトカムはMMSEによって評価される認知機能とBristol Activities of Daily Living Scale (BADLS)によって評価される日常生活機能である。donepezilを中止するように割り当てられたグループに比べ、継続したグループではMMSEのスコアが1.9ポイント(1.4ポイントが臨床的に有意な差とされる最低値)(CI, 1.3 to 2.5 points) 高く(高い方がより認知機能が良い)、BADLSスコアは3.0ポイント(3.5ポイントが臨床的に有意な差とされる最低値)(CI, 1.8 to 4.3 points) 低かった(低い方が支障が少ない)。プラセボでなくmemantine服用を割り当てられたグループではMMSEのスコアが1.2ポイント (CI, 0.6 to 1.8 points; P<0.001) 高く、BADLSスコアは1.5ポイント (CI, 0.3 to 2.8 points; P=0.02) 低かった。donepezilとmemantineでは統計学的に有意差を認めず、donepezilにmemantineを追加投与した場合はどちらか一方のみを投与している場合に比べ、利益は認められなかった

 

 

 

Donepezil

機序:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

用量

5mg/dから開始。耐容できればターゲット用量である10mg/dに1ヶ月過ぎてから増量

利点

軽度、中等度、進行したアルツハイマー病のそれぞれの段階において症状の進行を遅くする

副作用

嘔気、嘔吐、下痢、食欲不振、徐脈、失神

ノート

高用量は耐容性が低くなるかもしれない。10mg/dより多い投与は推奨されない

 

Galantamine

機序:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

用量

4mg1日2回から開始。ターゲット用量は24mg/d。ターゲット用量になるまで1ヶ月毎に4mg1日2回ずつ増やしていく

利点

軽度、中等度、進行したアルツハイマー病のそれぞれの段階において症状の進行を遅くする。ケアする人に関連するQOLの向上が認められている

副作用

嘔気、嘔吐、下痢、食欲不振、徐脈、失神

ノート

長時間作用型(1日1回)galantamine 8mg/dから開始。ターゲット用量24mg/dになるまで1ヶ月毎に8mg/dずつ増やしていく

  

Rivastigmine

機序:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬

用量

1.5mg1日2回から開始。ターゲット用量は6-12mg/d。ターゲット用量になるまで1ヶ月毎に1.5mg1日2回ずつ増やしていく

利点

軽度、中等度、進行したアルツハイマー病のそれぞれの段階において症状の進行を遅くする

副作用

嘔気、嘔吐、下痢、食欲不振、徐脈、失神

ノート

高用量は耐容性が低くなるかもしれない。貼付剤(1日1回)のrivastigmine 4.6mg/dで開始。 耐容できればターゲット用量の9.5mg/dに1ヶ月以降に増量する

 

Memantine

機序:NMDA受容体拮抗薬

用量

5mg/dから開始。ターゲット用量である10mg1日2回になるまで1週毎に5mg/d 増量していく

利点

機能低下が少なくなる。認知機能が向上し、中等度から進行したアルツハイマー病患者をケアする人の負担が減少する。軽度のアルツハイマー病に対する効果をサポートするエビデンスは不十分

副作用

めまい、混乱、頭痛、便秘

ノート

ジェネリック薬剤が利用可能。ブランド薬剤は長期作用型のみ利用可能。錠剤あるいは液状薬が利用可能。長期作用型(1日1回)のmemantineを7mg/dで開始。耐容できればターゲット用量の28mg/dになるまで1週毎に7mg/dずつ増やしていく。amantadineとの併用は避ける

 

 

 

 

 

 

特定の認知症に対する薬剤

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるrivastigmineはアルツハイマー病で使う同等量の投与によって軽度から中等度のパーキンソン病患者における認知機能向上に有効性が認められている。これは他のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬についても同様の効果があると信じられている(36)。レビー小体型認知症ではデータがはっきりしていない(37)。血管性認知症の患者においてはこれらの薬剤の使用が推奨されていない

 

 

 

 

効果の認められない薬剤 

イチョウ(ginkgo biloba)は認知症の進行を遅めない。NSAID、エストロゲン、ergoloid mesylateは認知機能低下に対する薬剤として処方されるべきではない。サプリメントとして広く使われているココナッツオイルやcaprylideneを推奨できるだけのエビデンスは認められていない。最近、U.S. Food and Drug Administration (FDA) は認知症に対する商品として安全性および有効性が認められていない物を、アルツハイマー病を防ぐ、改善する、治す、と称して販売している企業に対する警告を出している。医師は効果が認められず、害にすらなり得るこれらの商品に関する情報を患者に提供する重要な役割を担う(38)

 

 

 

 

認知症患者への抗うつ薬処方

およそ3分の1の患者が認知症の発症後にうつ病のエピソードを有する(39)。しかし、抗うつ薬の有効性に関するエビデンスは混在している(40)。体重減少や不眠などのうつ病の症状は認知症のみによるものである可能性があり、診断を複雑にしていることが原因として考えられるかもしれない。臨床家は常にうつ病に対する可能性を疑って診療すべきである

 

 

 

 

睡眠の問題、行動の問題、精神症状に対する非薬物療法的アプローチ

抑うつ、不安、睡眠異常、興奮、幻覚、妄想などの精神症状はよく見られ、介入が必要になる場合が多い(41)。様々な非薬物療法的アプローチが効果的であり、症状が差し迫る危険や強い苦痛を生み出さない限りにおいては、まずそれらを先に試みるべきである(42)。これらのアプローチは、多くの感情や行動障害は”decoded (解読) ”できること、あるいはそれらを起こす内的あるいは環境的要因に基づくものとして理解することができる、という考え方を強調している。このdecodingプロセスは4-D (Describe, Decode, Devise, Determine)(43)やDICE (Describe, Investigate, Create, Evaluate) (44)などのシステマティックなアプローチを使って行うべきである。Decodingには行動の詳細を記述し、行動の起きる特徴、1日のうちの時間帯、場所、先行する要因、特定の人がいる場合あるいはいない場合、食事あるいは他のキーとなる活動との近接性、およびその結果起こる行動などに気づくことが含まれる。行動障害の起因となるよくある環境的要因としては、患者に空腹、疲れ、プレッシャー、痛み、孤独などがある場合に興奮が起こりやすい事などが含まれる。施設で見られるよくある例では、シフトの交代時、あるいは特定のスタッフが存在する場合、などのケアが提供される時に興奮がおこりやすい事などがある。そのパターンが認識されれば、ターゲットとする介入が作成され、施行し、そして改善を行える。このような行動障害によるアプローチによって抗精神薬使用を避けられる場合が多い

 

 

行動および精神科的障害に対する評価と治療のアプローチ(43)

 

Disturbance

繰り返す叫びや怒鳴り

Define and Describe

何を言っているか、いつ言うか、叫びや怒鳴りに続いて起こることは何か(患者や他の人に)

Decode (What Causes the Problem?)

忘れやすさ、恐れ(おそらく精神症状からの)、痛み、シフトチェンジ、騒音、他の不快な刺激、特定の人の存在あるいは不在

Devise a Treatment Plan

精神科あるいは内科的なコンディションを治療する、環境を変える、患者の居場所を変える、redirect、安心させる話しかけ、投薬する

Determine Whether the Treatment Has Worked

介入後の叫びや怒鳴りの頻度をモニターする

 

 

Disturbance

抑うつ気分

Define and Describe

患者の気分を描写する、1日のうちのどの時間帯に起きるか、どの環境で起きるか、どの人の周りにいる時に起きるか、明らかな誘因があるか

Decode (What Causes the Problem?)

忘れやすさから来る苦悩、せん妄、うつ病、薬剤の影響、内科的疾患、環境(最近の移動、ケアする人がいなくなる、何らかの刺激)

Devise a Treatment Plan

安心を与えるような話しかけ、あるいは注意を外らせる、うつ病の治療(内服、電気痙攣療法)、内科的なコンディションの治療、服薬の調整、アクティビティー内容の改善、その他の調整

Determine Whether the Treatment Has Worked

介入後の患者の気分をモニターする、治療による副作用をモニターする、治療プラン施行の妨げとなる事を同定する

 

 

 

 

 

非薬物療法的アプローチにて改善しない場合の治療オプション

幻覚、妄想、興奮などの精神症状は、まず重大な有害性が少ない非薬物療法的にて治療すべきである(42)。なぜなら全ての抗精神薬は死亡のリスクを有するからである(45, 46, 47) 。症状が患者に重大な苦悩をもたらす、あるいは危険な状況を生み出す場合には、非薬物療法的介入とともに薬物治療を行うことが適応となる。抗精神薬を始める前に、アルツハイマー病患者の興奮を減らすことが確認されている、citalopramなどのSSRIを試すことが必要かもしれない(48)。しかし、QT延長のリスクがあるため、FDAは60歳以上の患者には1日20mgを超えないことを推奨している

 

抗精神薬による治療を考慮する場合は、第一世代に比べ遅発性ジスキネジアなどのリスクが比較的低い第二世代の薬剤が通常推奨される。全体としてこれらの薬剤の効果はmodestである(49)。risperidoneやolanzapineを支持するエビデンスが増えているものの、同等の薬剤も使われている。これらの薬剤はできる限り低用量で、かつできる限り短い期間の投与にする必要がある。薬剤が続けられる場合は定期的なモニターが必要になり、用量を減らす、あるいは開始3ヶ月以内に中止する試みをすべきである。死亡率の上昇、脳血管イベントの上昇などのためにFDA は第二世代抗精神薬に対するblack box warningを出している。このアウトカムの原因は不明であるが、転倒、感染、心血管イベント、脳血管イベントなどが寄与しているかもしれない。また抗精神薬はメタボリック症候群、体重増加、脂質上昇、糖尿病などとの関連が認められている

 

 

 

 

睡眠の問題に対する治療

薬物治療を行う前にまず非薬物療法的手法を試みるべきである。カフェインの使用、日中の睡眠、午後や夜間の薬剤、その他の基本的な睡眠衛生的な要素などの睡眠環境に注意を払う必要がある。メタアナリシスではどの薬物療法による介入も有効性が認められなかった。もし必要であれば、trazodone 25-50mgを注意深くモニターしながら使用できるかもしれない(50)

 

 

 

 

他にQOLを最大化させる手段は

QOLに重大な影響を与える可能性のあるものに積極的にアプローチしていく必要がある。眼鏡、補聴器などの感覚補助具、デンタルケア、騒音、照明、温度、十分な社会的あるいは認知的な刺激、衛生、痛み、便秘などである

 

 

 

 

いつ入院を考慮するか

認知機能を評価する際、危険な行動、安全でない生活環境、低下した栄養状態、ネグレクトされた内科的コンディション、協力の欠如などによって外来にて安全に、あるいは包括的に評価できない場合は入院が考慮されるべきである。重度の精神症状のために精神科入院が必要になる場合もある。例えば、患者が自殺企図を示す、食べ物や水分摂取の低下、妄想、抑うつ、動けない、内科的コンディションをケアできない、あるいは電気痙攣療法が必要になる場合などである。行動障害のある患者で、徘徊、暴力、叫び、過食、睡眠覚醒サイクルが重度に乱れるなどの理由で患者自身に危険がある、あるいは外来にて安全に治療できない場合なども入院が必要になる

 

 

 

 

家族が施設入所を決断することをどのように援助するか

認知症が進むと、よりニーズが増えていく患者に適切に対応するための環境(assisted-living facility or nursing home)への移動を考慮しなければならない場合が多い(51)。家での適切なサポートが少ないために移動しなければならない患者もいる。一般的に、身体的あるいは認知機能的な制限によって移動、歩行、排泄、食事など全てに介助が必要になり家での対応ができなくなる場合はnursing homeへの移動が必要になる。精神症状がコントロールできない、あるいはケアする人の負担が大きい場合も移動が必要になる場合がある

 

ケアする家族の休息期間が与えられると施設への移動の時期を遅らせられるかもしれない。家族はこの難しく痛みを感じえる決断の過程をサポートされ、ガイドされるべきである。突然の内科的疾患や事故などの場合に速やかに決断ができるように、家族には積極的に近隣で施設を探しておくようにアドバイスを与えられてもよいかもしれない

 

 

 

 

 

ケアする人に対するアプローチ

認知症患者をケアすることは肉体的にも精神的にも大変であり、認知症ケアにおいてケアを行う人が良い状態にあることが非常に大切な要素になる。ケアを行う人のよくある症状は罪悪感、怒り、悲しみ、疲れ、孤独、士気の低下、抑うつなどである。時間とともに患者の症状とケアを行う人に対する負荷が変わっていくため、外来受診の度にケアを行う人の状態を評価する必要がある

 

ケアを行う人への認知症に対する教育、ケア技術の訓練、ケアする人の健康状態に対する介入が多くの場合利益に繋がる(42)。Alzheimer's Associationや他の情報源から多くの冊子、本、教育に関するウェブサイトなどが利用できる。患者とケアする人の安全が受診毎に評価されなければならず、地域にあるケアの休息プログラムに関する情報が提供され、長期間のケアプランがサポートされなければならない

 

ケアを行う人には多くの地域で利用可能なサポートグループに関する情報が提供される必要がある。問題解決、コミュニケーション、行動障害への対応、感情的なサポートにフォーカスするグループはnursing homeへの移動を1年に及ぶまで遅らせ、患者とケアする人のうつ病を減らし、患者の興奮や不安を減らすことが、いくつかの適切に行われた規模の大きい試験によって確認されている(42, 52, 53, 54)

 

 

 

 

終末期ケアのオプション

一つのobservational studyでは、入院や手術が考慮される患者の81%において、最終的には代理人よって意思決定が行われていたと報告されている(55)。疾患の全経過を過ごす程長く生きる場合、認知症患者が判断能力を失うことは避けられないため、早い段階において事前指示を確認しておくことで終末期における患者の希望を実行する可能性を最大化することができる。医師がその意思決定をサポートすること、および事前指示に関する認識を促すことはこの意思決定の過程において中心的な役割を果たす

 

observational studiesでは認知症患者がホスピスケアを受けることでQOLが向上し、痛みの治療がより行われやすくなる、と報告している(56,  57)。専門家は短期的利益がない薬剤、例えばコレステロール降下剤などの中止を考慮することを推奨している(55)。進行した認知症では経口摂取の低下はよくあることである。経管栄養でなく、hand-feedingを多くの専門家が推奨している。また無症候性細菌尿に対する抗菌薬投与も避けることが推奨されている(58)が、コミュニケーションの取れない終末期の認知症患者では実行が難しい場合がある

 

 

 

 

 

 

 

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アナルズオブインターナルメディシン

インザクリニック

2019年9月3日

 

 

 

虚血性心疾患

Stable Ischemic Heart Disease 

 

 

 

Stable ischemic heart disease(虚血性心疾患)は多くの国で死亡原因の第一位であり、多大な医療費を要し、米国では年間およそ数千億ドルにものぼる(1)

 

酸素需要と血液供給の不均衡によって起こる虚血性心疾患は通常medium-sized血管の動脈硬化性閉塞に起因するが、微小血管の機能不全によっても引き起こされる

 

 

 

診断

安定狭心症は典型的には労作や感情の高ぶりによって惹起され、安静やニトログリセリンによって緩和される。それに対し、不安定狭心症は安静時に明らかな要因なく起こり得る。急性冠症候群には不安定狭心症と心筋梗塞が含まれ、冠血流の急な減少あるいは心筋酸素供給と需要のミスマッチによって起こされる(2)。トロポニンの連続的な測定によって心筋梗塞と不安定狭心症の鑑別が行われる(3)

 

 

 

不安定狭心症

安静時狭心症:安静時に起こり、通常20分以上持続

新たに起こる重度の狭心症:2ヶ月以内の重度な発症

増悪する狭心症:以前に診断された狭心症の発症パターンが増悪(強さ、持続時間、頻度)

(2)

 

 

冠動脈疾患の可能性を推定する意義は、狭心症の可能性の低い(通常5%以下)患者を同定することによって、胸痛の原因を冠動脈疾患以外の疾患にフォーカスした評価を行うことで利益が得られることである。まず患者の年齢、性別、狭心症のタイプを評価する事から始めるが、喫煙歴、脂質異常症、高血圧、冠動脈疾患早期発症の家族歴(55歳以下の男性、65歳以下の女性)、これら全ても冠動脈疾患の可能性を高める(4)

American College of Cardiology online calculator(http://tools.acc.org/ASCVD-Risk-Estimator-Plus)(5)

 

 

 

症状を有する患者の冠動脈疾患検査前確率(男/女)

30-39歳 NC:4%/2% AA:34%/12% TA:76%/26%

40-49歳 NC:13%/3% AA:51%/22% TA:87%/55%

50-59歳 NC:20%/7% AA:65%/31% TA:93%/73%

60-69歳 NC:27%/14% AA:72%/51% TA:94%/86%

 

NC: Nonangina Chest pain、AA: Atypical Angina、TA: Typical Angina

(6)

 

 

 

胸痛

典型的狭心症(Typical angina)

・性質および持続時間が典型的な胸骨下の不快感

・労作や感情によって惹起される

・安静あるいはニトログリセリンによって緩和される

 

非典型的狭心症(Atypical angina)

 上記基準の二つを満たす

 

非狭心症性胸痛(Nonangina chest pain) 

 上記の基準を満たすものが一つ以下

(4)

 

 

 

胸痛の原因となる他の疾患

非虚血性心血管疾患

 大動脈解離

 心膜炎

 血栓症

 気胸

 肺炎

 胸膜炎 

消化器

 食道

 ・食道炎

 ・痙攣

 ・胃酸逆流

 胆道

 ・疝痛(colic)

 ・胆嚢炎

 ・胆石

 ・胆管炎

 消化性潰瘍

 膵炎

胸壁

 肋軟骨炎(costochondrosis)

 線維炎(fibrositis)

 肋骨骨折

 胸鎖関節炎(sternoclavicular arthritis)

 帯状疱疹(皮疹発症前) 

精神

 不安障害

  ・過換気

  ・パニック障害

  ・不安

 情動障害 (affective disorder)(うつ病)

 身体表現性障害 (somatoform disorder)

 思考障害 (thought disorder)(固定妄想)

(4) 

 

 

 

 

予備検査

 

心電図

虚血性心疾患を疑う全ての患者に安静時心電図を行う必要がある(4)。多くの患者では正常であるが、病理学的Q波は以前の梗塞を示唆し、また特定の心電図異常はどのストレス試験を行うかの決定の助けとなる 

 

胸部レントゲン写真

心臓以外に起因する胸痛かが明らかでない場合は胸部レントゲン写真を撮る必要がある。狭心症患者では多くの場合正常であるが、予後を悪くする鬱血性心不全を示唆する所見や、狭心症以外による胸痛の原因を示唆する所見が確認できる場合がある

 

心臓超音波検査

心臓超音波検査は虚血性心疾患を疑う全ての患者には適応とならない。 しかし、心不全や弁膜疾患を示唆する症状や所見、心筋梗塞の既往、心電図上、心筋梗塞の既往を示唆する病理学的Q波や心筋症の可能性を示唆する心室性不整脈(complex ventricular arrhythmia)などを有する場合は考慮しなければならない(4, 7)

 

 

 

 

診断的検査

虚血性心疾患を疑う患者のさらなる診断的検査の選択はいくつかの因子によって影響される。患者の運動耐容性、検査結果の評価に影響しうる安静時心電図異常の有無、患者の虚血性心疾患の可能性(検査前確率)が考慮されなければならない(6)。非侵襲性検査の目的は虚血性心疾患の患者を同定し、予後を評価することである。検査の価値は診断がより不確かな場合に高くなる(例えば検査前確率が20〜80%の時)。検査前確率が非常に低い場合はさらなる診断的検査は一般的に適応とならず、偽陽性の可能性を生み出す

  

 

 

ストレステストは非侵襲的検査で最もよく行われる検査である。ストレスの種類(運動か薬物)および虚血を評価する方法(心電図、超音波、SPECT、PET、MRI)を選択しなければならない

 

運動可能で心電図が評価可能である中等度リスクの患者では画像検査を伴わない運動負荷心電図から開始することを現在のガイドラインは推奨している(Class I, level of evidence: A)(4)

 

評価可能な心電図とは、左室肥大とそれに伴う再分極異常、左脚ブロック、心室ペーシング、ジギタリス効果、Wolff-Parkinson-White syndrome、安静時の1mm以上のST低下、これらを認めないものとされる

 

 

運動負荷心電図は最大運動量の間にJ pointから80ms後のST部分が水平型あるいはダウンスロープ型に1mm以上低下すれば虚血陽性と評価される

 

運動負荷心電図の閉塞性冠動脈疾患に対する感度は61%であり、逆に言えば39%の冠動脈疾患患者が陰性となる

 

感度は疾患が重度なほど高くなり、軽度なほど偽陰性となりやすい

 

男性に比べ女性の方が感度が低くなる

 

上記などの理由によって、運動負荷心電図のみでなく画像検査を追加することを好む循環器科医師もいるが、ガイドラインでは強くは推奨されていない(class IIa)(4)

 

運動負荷心電図は冠動脈疾患の可能性を示唆するのみでなく、冠動脈疾患がある場合の予後に関する情報も提供する。症状を認めない運動時間が長いほど心血管死亡率が低くなり、またST部分の低下の程度に比例して、あるいはST部分の上昇を認める場合は予後が悪くなる(8)

 

 

Duke Treadmill Score

(運動時間 (分)) ー(ST部分の最大偏位 (mm) X 5 )ー (0 (胸痛なし) あるいは 4 (運動時に胸痛) あるいは 8 (胸痛によって運動を停止) )

 

点数が5点以上の場合は低リスク(1年死亡率 0.25%)、4 〜 −10点は中等度リスク(1年死亡率1.25%)、− 11点以下は高リスク(1年死亡率5.25%)

(8)

 

 

運動不能な、あるいは適切な検査結果を得られる程十分な運動ができない患者ではストレステストとして画像検査を伴う薬物学的負荷が行われる

 

心臓超音波が画像検査として使われる場合は負荷としてdobutamineがよく使用され、SPECTが使われる場合は血管拡張薬としてregadenoson (Lexiscan)やdipyridamoleが使用される

 

画像検査の選択は多くの因子に影響される。超音波は被曝が避けられ、弁膜機能やfilling pressureに関する情報が得られる。一方SPECTの方が肥満患者ではより質の高い画像情報が得られる

 

検査の感度は超音波とSPECTでそれほど大きな差はなく、公開されている感度(published values of test sensitivity) よりも、各施設での技術や経験の利用可能度に基づいて検査を選択することが妥当である(4)

 

Nuclear PET perfusionは従来のSPECTよりも感度が高く、coronary flow reserveを推定することで予後に関する情報をもたらす(9, 10)

 

左脚ブロックを認める、あるいは心室ペーシングを行なっている患者では超音波検査は推奨されない。なぜなら心臓の電気活動の異常が心室中隔(左前下行枝領域)における虚血の評価を妨げるためである

 

 

冠動脈CT血管造影(coronary computed tomography angiography (CCTA))はストレステストの代替となる非侵襲的検査で心機能でなく解剖学的情報が得られる。この検査は運動不能な患者に使用でき、先天的な冠動脈奇形などの非閉塞性冠動脈疾患の評価も行える利点がある

 

二つの大きなrandomized controlled trialsで症状を有する虚血性心疾患のマネージメントとしてCCTAを使うことが評価された。PROMISE (Prospective Multicenter Imaging Study for Evaluation of Chest Pain) trialでは平均年齢60.8歳、閉塞性冠動脈疾患の検査前確率53% ± 21%の症状を有する10003人(53%が女性)の患者を無作為にCCTAとストレステストに割り当てて行われた。両群において死亡、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、検査の主要な合併症に有意差が認められなかった(11)

 

SCOT-HEART (Scottish Computed Tomography of the Heart) trialでは平均年齢57.1歳で安定した症状を有する4136人(44%が女性)が標準的治療にCCTAを追加するグループと追加しないグループに無作為に割り当てられて行われた。5年間において、CCTAが追加されたグループではcombined primary end point(冠動脈疾患による死亡あるいは非致死的心筋梗塞)が低いことが確認された(12)

 

 

 

虚血性心疾患を疑う患者における非侵襲的検査の選択

虚血性心疾患の疑い

ー>急性冠症候群の疑い①

① Yes ー> ACC/AHA NSTE-ACS guideline

① No ー> 胸痛の性状や併存する心疾患や他の疾患を含むリスクアセスメント

ー> 患者は運動できる②

② No ー>虚血性心疾患が既に診断されている③

③ No ー> CCTA

③ Yes or No ー> pharmacologic echo

③ Yes or No ー> pharmacologic MPI

② Yes ー> 虚血性心疾患が既に診断されている④

④ Yes ー> exercise with MPI or echo

④ No ー> 安静時心電図は評価可能⑤

⑤ No ー> exercise with MPI or echoあるいはCCTA

⑤ Yes ー> 虚血性心疾患の検査前確率⑥

⑥ 低〜中 ー> standard exercise ECG

⑥ 中〜高 ー> exercise with MPI or echoあるいはCCTA

 

ACC: American College of Cardiology, AHA: American Heart Association, CCTA: coronary computed tomography angiography, MPI: myocardial perfusion imaging

 

 

 

 

 

侵襲的冠動脈造影

狭心症症状を有し、症状およびリスクファクターに基づいて評価された虚血性心疾患の可能性が高い(90%以上)患者においては非侵襲的検査の意義は低くなる。その場合においては、非侵襲的検査の感度および特異度は検査結果が陰性であっても虚血性心疾患を除外できる程十分ではない。そのような患者においては、特に狭心症治療がすでに行なわれている場合は、侵襲的冠動脈造影検査を直接行うことが適切となる(13)。また致死的不整脈や理由が明らかでない左室駆出率低下を認める場合も虚血性心疾患診断の最初の検査として侵襲的冠動脈造影を行うことが適応となる

 

 

既に冠動脈疾患の診断がついている患者においては、特に最大限の抗狭心症治療を受けている場合は、画像を伴うストレス検査を行うことで、血管再建のターゲットとなる可逆的な虚血を認める心筋部位を同定することが可能となる(13)。この場合は心臓MRIやPETがCCTAよりも有効である

 

 

 

 

冠動脈閉塞を認めない虚血性心疾患

狭心症を有する患者の30%までが冠動脈閉塞を認めない。これは特に女性に多く認められる(14)。これらの患者のうち50〜65%が微小血管機能障害(microvascular dysfunction)と考えられている。心臓MRIやPETによってその診断能力が向上した(15)。狭心症を有するがストレステスト陰性の患者、およびストレステスト陽性であるが侵襲的冠動脈造影やCCTAにて冠動脈閉塞を認めない患者においては、虚血イベントのリスクが高くなる可能性があり、薬物的治療が考慮されるべきである(15, 16, 17)

 

 

 

 

 

治療 

治療ゴールを虚血イベントの予防(心筋梗塞や脳卒中など)と狭心症の緩和の二つに分けることは有用である。なぜなら全ての治療が心筋梗塞や脳卒中を減らすわけではないからだ。たとえば、安定した病変に対する経皮的冠動脈再建術は症状は緩和しても、心筋梗塞を予防しないことがrandomized trialsによって示されている

 

全ての虚血性心疾患患者にとって重要な最初のステップで、かつ継続していくマネージメントの中核をなすものは患者教育と生活習慣の改善である。薬物治療および侵襲的治療は補助的な役割を果たすものである

 

 

 

患者教育

虚血性心疾患を理解することは難しい。患者は病気の経過と治療ゴールおよび治療オプションに関する教育を受ける必要がある。個々人に対する教育が薬物治療へのアドヒーランスや患者満足度を高めるため、その教育は生活習慣の改善、行動の変容、リスクファクターを減らす治療などに強調をおきながら、患者の予後、リスクファクターなどにフォーカスして行われるべきである

 

安定虚血性心疾患においては性行動も含め身体活動の制限は基本的には必要でない

 

患者は安定虚血性心疾患による狭心症症状は速やかな治療を必要とする不安定狭心症ではないことを知っておく必要がある

 

また患者は急性冠症候群の症状を認める際に何をすべきか知っておく必要がある

 

 

患者教育のポイント 

・安定虚血性心疾患と急性冠症候群の違いを理解

・注意すべき急性冠症候群の症状は安静時や少しの労作で起こる典型的な胸痛であることを強調

・その状況では下記の行動を取ることを説明

 - aspirin 325mgを噛む(あるいは81mgを4錠)

 - nitroglycerin舌下錠を5分おきに3錠まで服用(phosphodiesterase type 5 inhibitorsを24時間以内に服用している場合を除く)

 - 最も近い緊急心血管治療を24時間提供している病院へ急行

・患者家族への心肺蘇生術のトレーニングを提案

 

 

 

 

 

 

Guideline-Directed Medical Therapy (GDMT)

リスクファクターを修正することは行動変容や生活習慣を改善させること以上に重要となる。それぞれのリスクファクターに特有の治療が存在するが、それらの治療を併用することが適切となり、Guideline-Directed Medical Therapyとして知られている

 

 

虚血性心疾患に対するguideline-directed medical therapy

ー>教育および行動変容

 

・血栓症リスク

ー> aspirin 75-162mg/d (clopidogrel 75mg/d if allergic)

ー>残存リスクおよび出血リスク?、最近の心筋梗塞?①

① Yes ー> P2Y12 inhibitorを考慮

① No ー> rivaroxaban 2.5mg 1日2回を考慮

 

・脂質

ー> high-potency statin (atorvastatin ≧40mg/d, rosuvastatin ≧20mg/d)

  LDL≧70mg/dL ー> high riskの場合はezetimibe or PCSK9 inhibitorを追加

  空腹時TG≧150mg/dL ー> icosapent ethyl追加を考慮

 

・血圧

ー> 130/80mmHg以下にコントロール(BB (not atenolol) or ACEI/ARBが好まれる)

ー> 依然BP 130/80mmHg以上

ー> 薬剤追加(狭心症がある場合はamlodipineが好まれる)

 

・血糖

ー> HbA1c≧5.7%?②

② eGFR ≧ 45mL/min/1.73m2

ー> metformin開始 ー>HbA1c≧7.0%? ー> SGLT2 inhibitor or GLP-1 agonistを考慮

② eGFR<45mL/min/1.73m2 ー> HbA1c≧7.0%? ー> 専門家紹介を検討

 

・肥満

ー> BMI≧35kg/m2? ー> 減量手術を考慮

 

・睡眠時無呼吸

ー> CPAPを考慮

 

 

 

 

 

脂質

虚血性心疾患と診断された場合、ガイドラインでは75歳以下の全ての患者に対しhigh-potencyスタチン(atorvastain 80mg/d or rosuvastatin 20-40mg/d)を投与することが推奨されている。75歳以上の患者はmoderate-potencyスタチンを考慮すべきである

 

2018年のガイドラインでは、特によりリスクの高い患者に対し、LDLゴール70mg/dL以下を達成するためにezetimibeを追加投与することが推奨されている

 

複数回の心血管イベントがある、あるいは1回の心血管イベントと複数のリスクファクター(高血圧、糖尿病、喫煙、65歳以上、腎疾患)がある患者においてhigh-potency statinとezetimibeでLDL 70mg/dL以下を達成できない場合は、proprotein convertase subtilisin/kexin type 9 inhibitorsを追加することを考慮する必要がある

 

niacinはもはやLDL低下のために投与することが推奨されていない(5)

 

 

fish oilが心血管疾患に対し利益があるか長い間議論が行われてきた

 

市販のfish oilは比較的用量が低く、スタディにおいて一定して利益を示す結果が得られていないため、心血管疾患の治療として推奨されていない(18)

 

しかし、最近発表されたREDUCE-IT (Reduction of Cardiovascular Events With EPA-Intervention Trial)では高用量の純粋で安定したfish oil(icosapent ethyl)は既にaspirinとスタチンを服用していてLDLが41〜100mg/dL、空腹時triglycerideが135〜499mg/dLの範囲にある虚血性心疾患患者において心血管イベントの相対的リスクを25%減らすことが示された(19)

 

icosapent ethylはU.S Food and Drug Administrationに承認されており、高用量での多くの試験が行われることが期待されている

 

 

 

高血圧

高血圧は冠動脈疾患イベントの重要で独立したリスクファクターである。スタディでは血圧と心血管リスクの連続的な相関関係が示され、収縮期血圧が20mmHgあるいは拡張期血圧が10mmHg上がるごとにリスクが2倍に増えていく(20)

 

17のplacebo-controlled trialsでは拡張期血圧が5-6mmHg、あるいは収縮期血圧が10-20mmHg下がると、心血管死亡率の低下を認め、脳卒中は40%、冠動脈イベントは20%、それぞれ減少することが示されている(21)

 

SPRINT (Systolic Blood Pressure Intervention Trial)では50歳以上の虚血性心疾患患者において降圧剤で収縮期血圧を135mmHgから121mmHgに低下させることによって、主要な心血管イベントを31%減少させることが認められた(22)

 

現在のガイドラインでは安定虚血性心疾患患者に推奨されている血圧のゴールは130/80mmHg以下である(23)

 

狭心症を有する患者では、過度な拡張期血圧の低下は避けるべきである。なぜなら狭心症頻度の増悪との関連が認められているからである(24)

 

 

降圧剤の選択は他の疾患の適応に依存する

 

虚血性心疾患の患者では、狭心症治療としてのcalcium-channel blockers や β blocker(atenololを除く)は血圧コントロールの助けともなる

 

β blockersによる利益は駆出率の低下した患者や心筋梗塞後の患者に限られる。現在のガイドラインにおいては心筋梗塞後3年を超えてβ blockersを継続することは必須とされていないが、考慮されてもよい(23)

 

 

SOLVD (Studies of Left Ventricular Dysfunction) prevention trialでは左室機能の低下した無症状の患者においてenalapril(titrated to 20mg/d)投与によって鬱血性心不全による死亡、鬱血性心不全による入院、死亡と鬱血性心不全のcomposite outcomeを減少させることが示された(25)

 

HOPE (Heart Outcomes Prevention Evaluation) trialでは心血管疾患あるいは、糖尿病と他の一つ以上の心血管リスクファクターを有する患者に対し、ramipril 10mg/d(平均投与期間4.5年)を投与した結果、心血管イベントのリスクを減少させることが認められた(26)

 

上記のtrialsに基づき、ACEIは虚血性心疾患患者の、特に糖尿病、左室機能が低下(EF 40%以下)、慢性腎臓病などの場合は、高血圧治療の第一選択薬となる。ACEIが使用できない場合はARBが投与されるべきである(27)

 

 

 

糖尿病

1型および2型糖尿病は虚血性心疾患のリスクを高め、また他のリスクファクターを増強させる。たとえば、糖尿病患者での冠動脈イベントによる死亡のリスクは以前に心筋梗塞を起こした患者と同等とされている。糖尿病の早期診断、最適血糖値を目指す積極的なコントロール、脂質および他のリスクファクターのマーネージメントが重要となる

 

従来、ヘモグロビンA1c降下治療は小血管合併症(網膜症、神経障害、腎障害)を減少させることには成功してきたが、大血管合併症(脳卒中と心筋梗塞)を減少させることが示されてこなかった。しかし、最近二つのクラスの血糖治療薬が虚血性心疾患および糖尿病を有する患者での心血管利益が認められた

 

sodium-glucose cotransporter-2 inhibitorsで尿路からのグルコース排出を促すempagliflozinとcanagliflozinは心血管イベントを減らすことが示された

 

インスリン分泌を促すglucagon-like peptide-1 receptor agonistsであるliraglutideとsemaglutideは虚血性心疾患患者における虚血イベントを減らすことが認められた(28)

 

2019年のStandards of Medical Care in Diabetesは虚血性心疾患と2型糖尿病を有する患者でmetformin投与にも関わらず血糖ターゲットが達成されない場合はこれらの治療薬を第一選択薬とすることを推奨している(29)

 

American Medical Associationはempagliflozinとliraglutideをこの適応として投与することを推奨している(28)

 

 

 

肥満

食事の改善と運動が行動変容の要であるが、これらが必ずしも体重減少へとつながらない。さらには積極的な生活習慣への介入が肥満患者の、特に2型糖尿病がある場合でさえも、心血管イベントアウトカムを向上させるかは明らかでない(30)

 

肥満を心血管疾患の従来のリスクファクターとして治療できるかの議論が行われている。あるスタディでは中心性肥満が冠動脈疾患のアウトカムを悪くすることが示されている(31)。他のスタディではoverweight (BMI 25-30kg/m2)と一定のobesityの方がアウトカムが良いという”obesity paradox”も示されている。ただそのデータではBMIが35kg/m2以上の場合は最もアウトカムが悪いことも示唆されている(32)。従ってこのグループの患者では、特に2型糖尿病を合併している場合は減量手術に関する話し合いをする必要がある。Roux-en-Y gastric bypassがそのグループにおいて心血管イベントの頻度を減らすことが確認されている(33)

 

 

 

閉塞性無呼吸

continuous positive airway pressureは心血管アウトカムに対し生物学的には利益がありそうだと考えられるが、まだ証明されていない。最近のスタディでも利益が認められなかったが、アドヒーランスのために制限されている可能性も考えられる(34)

 

 

 

 

心筋梗塞および死亡を予防する治療

 

抗血小板薬

血小板凝集がプラーク崩壊に対する血栓反応の中心を担うため、血小板阻害治療は虚血性心疾患患者に推奨される(4)

 

2920人の虚血性心疾患患者でのmeta-analysisではaspirin投与によって重要な血管イベントのリスクが33%低下することが認められた。そのリスク低下には不安定狭心症のリスクが46%下がること、冠動脈再建が必要となるリスクが53%下がることが含まれている(35)

 

従って禁忌がない限り、虚血性心疾患の全ての患者がaspirin投与を受けるべきであり、その投与は無期限に継続される必要がある。投与量は75〜162mg/dが高用量と同等の効果を認め、かつ出血のリスクが比較的低いとされている。aspirinが禁忌の場合はclopidogrel 75mg/dにて治療される

 

 

抗凝固薬

aspirinとwarfarinの併用にて心血管疾患患者の心血管イベントを減らすことが知られているが、出血のリスクがその利益を上回る(36)

 

同様にfactor Xa inhibitorであるrivaroxabanが虚血性心疾患患者での心血管死亡率を下げることが認められたが、出血のリスクも上昇させる(37)。末梢動脈疾患に対するrivaroxabanの他のスタディにおいて、イベントは減らすが出血リスクを上昇させることが認められた(38)

 

これらおよび他のスタディの結果に基づき、虚血性心疾患患者に対し抗凝固薬を使用する場合は注意が必要であり、その期待される利益と出血リスクを注意深く比較する必要がある

 

 

インフルエンザワクチン

虚血性心疾患患者は毎年インフルエンザワクチン接種を受けなければならない(4, 39)

 

 

抗炎症薬

炎症、特にinterleukin-1β / interleukin-6 pathwayが虚血に関与することが知られている。canakinumabはこの経路をターゲットとし、心血管イベントアウトカムを改善することが確認されている。しかし致死的感染およびsepsisのリスクを高める。他のスタディではmethotrexateの心血管疾患に対する利益が認められなかった。FDAはどちらの薬剤も虚血性心疾患治療薬としては承認していない(40, 41, 42)

 

 

代替治療

ビタミンとミネラル投与は冠動脈イベントの予防に推奨されていない(43, 44)。2012年の虚血性心疾患のガイドラインではEDTAキレーション治療(Chelation therapy with EDTA)はclass III(利益なし)とされたが(4)、TACT (Trial to Assess Chelation Therapy) では利益が確認され、2014年にはclass IIaにアップグレードされた(13, 45)

 

 

 

症状緩和治療

β blockers、calcium-channel blockers、nitratesを含むいくつかの薬剤が症状緩和のために利用できる。これらの薬剤は抗狭心症効果としては大きな違いがなく、安全性と耐容性で受け入れられている(46)

 

β blockerが心筋梗塞後の予後を改善し、臨床で使われてきた歴史が長いことより、狭心症症状治療の第一選択薬と考えられている。β blockerに耐容できない、あるいは効果が適切でない場合はcalcium-channel blockerやlong-acting nitrateが代替として使われる、あるいは追加される(47)

 

 

short-acting nitrate

nitroglycerin舌下錠あるいはnigroglycerin sprayが狭心症症状を速やかに改善させるために使用される。舌下のしびれや頭痛などがよく起こるが、それは薬が作用している事の現れであることを患者に伝えておく必要がある

 

 

β blocker 

β blockerが症状緩和の最初の治療薬として投与される。安静時心拍数が55-60beats/minになるようにβ blockerの投与量を調整することを提唱する専門家もいる。全てのβ blockerが症状を緩和すると考えられているが、末梢動脈疾患患者などでは、carvedilolやlabetalolなどのα阻害作用も有する薬剤が、α刺激による血管収縮を防ぐために選ばれるかもしれない(4)。左室駆出率の低下した患者ではcarvedilol、metoprolol succinate、bisoprololが好まれる(48)

 

 

calcium-channel blocker / long-acting nitrate

calcium-channel blockerやlong-acting nitrateはβ blockerが使用できない場合(重度の気管支攣縮)に処方される。nondihydropyridine calcium-channel blocker (diltiazemやverapamil)はその陰性変力作用より左室駆出率の低下した患者では避けるべきである。amlodipineなどのdihydropyridine calcium-channel blockerが好まれる

 

 

ranolazine

ranolazineはlate sodium currentに対する作用を通じて狭心症症状を緩和する。QTc intervalを延長させるため、他のQTを延長させる薬剤を使用している患者では注意を要する。ranolazineは血圧や心拍数に対する作用が少ない。消化器症状が主な副作用である

 

ranolazineはamlodipineに追加した場合に狭心症症状の頻度をおよそ週に1イベント減らすことがERICA (Efficacy of Ranolazine in Chronic Angina) trialで確認されている(49)

 

ranolazineは狭心症症状がコントロールされない場合の追加薬として、あるいは副作用でβ blocker、calcium-channel blocker、nitrateなどが使えない場合などに投与される

 

 

 

冠動脈再建術(revascularization)

冠動脈再建術は虚血症状が悪化する、あるいは薬物治療に抵抗性を示す時に適応となる

 

guideline-directed medical therapy (GDMT)と冠動脈再建術を併用して治療を開始することの方が、まずGDMTから開始し冠動脈再建術をそれに反応しない場合のために温存して治療を行う事に比べ、死亡率あるいは虚血イベントを減らすかどうかははっきりしていない(50)

 

心死亡率と虚血症状のレベルに相関関係を認めたスタディがあり、GDMTと冠動脈再建術を併用した治療の方がGDMTのみの治療よりも虚血症状を改善することを示したスタディもある(51, 52)

 

これらの結果に基づいて、虚血症状を有し左前下降枝近位病変あるいは虚血負荷の大きいmultivessel diseaseを持つ患者に対し、冠動脈再建術とGDMTの併用して治療を開始する専門家もいる。この場合は多くの専門家がpercutaneous coronary intervention (PCI)よりも、より生存率を改善するcoronary artery bypass grafting (CABG)を選択する(4)

 

この論争に決着をつけるのに十分なデータはまだ存在しない。より積極的な薬物治療が行われる昨今において、GDMTのみの治療に比べPCI plus GDMTで治療を開始した方が利益が大きいことを示すrandomized trialはない(53)

 

現在行われているISCHEMIA (International Study of Comparative Health Effectiveness With Medical and Invasive Approaches) trialがその答えを示すかもしれない。このスタディは中等度から重度の症状を有する患者に対し、GDMTと冠動脈再建術の併用、あるいはGDMTのみで治療を開始した場合の比較を調べている。結果は2019年あるいは2020年に出ることが予想されている(54)

 

 

GDMTと冠動脈再建術を併用した方がGDMTのみで治療した場合に比べ、最初は狭心症症状およびQOLをより改善する(50) 。GDMTのみで治療を開始した患者が抵抗性の症状に対して冠動脈再建術を行っていく事で、その当初の違いは時間とともに狭まっていく

 

 

ORBITA (Objective Randomised Blinded Investigation with optimal medical Therapy of Angioplasty in stable angina) trialでは、modest frequencyの頻度の症状を持つ患者をPCIと偽の処置、それぞれを受けるグループに無作為に割り当てて行われた。結果、両者で狭心症の頻度および運動時間に有意差が認められなかった(55)

 

 

これらの結果よりどのように治療を開始するかの問題は解決していないが、適切なGDMTにも関わらず耐容できない症状がある場合には冠動脈再建術を行うことが広く受け入れられており、ガイドラインでも推奨(class IA)されている(4)

 

 

 

 

 

女性

女性は一般的に高齢になるまでは虚血性心疾患の頻度が男性に比べ低いが、心筋梗塞後のアウトカムは男性より悪い。microvascular diseaseや冠動脈攣縮がより多い。安定狭心症症状が最初の症状としてより多く見られ、逆に男性では心筋梗塞や突然死が多い。非典型的狭心症や、呼吸困難などの狭心症を示唆する症状が女性でより多い。女性はaspirinや他の抗血栓治療薬を受ける頻度が男性に比較して低く、冠動脈再建術の頻度も比較的低い

 

 

 

 

高齢者

75歳以上の成人では冠動脈狭窄がより広範囲で重度になる傾向で、3枝病変と左主幹病変が多い。呼吸器、消化器、筋骨格器などの他の疾患の併発が多いため、胸痛の評価が、虚血性心疾患の診断がついている場合でさえ、困難になる。心拍出量の低下、筋力低下、神経障害、呼吸器疾患、関節疾患などの老化に伴う生理学的変化のためにストレステストを行うことがより困難になる。心電図変化、不整脈、左室肥大がより多く見られ、画像を伴わない負荷心電図による評価は難しくなる。これらの理由よりストレステストは画像を使って行うことが一般的に多い。スタディでは高齢者に対しエビデンスに基づく治療が行われる頻度が比較的少ないことが示されており、これはおそらくこの患者群では薬物治療がより複雑になるためであると考えられている。冠動脈再建に関しては合併症のリスクから、より非侵襲的な治療が選ばれる。CABGによる合併症や死亡は高齢者で高くなる

 

 

 

慢性腎臓病 

慢性腎臓病は虚血性心疾患それ自体、虚血性心疾患の増悪、心筋梗塞に対する治療後の悪いアウトカム、などのリスクを高める。このため、薬物の選択および投与量を決める時のクレアチニンクレアランス、contrast-induced nephropathyのリスクスコア、血管造影中の腎保護治療などを考慮する必要がある

 

 

 

 

 

 

 

 

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インザクリニック

アナルズオブインターナルメディシン

2019年8月6日

 

 

 

 

明日からできる医師の働き方改革

 

日米両国で臨床に携わって感じていることを端的に言うと

  

アメリカで働くのは楽である

 

これは限られた経験に基づく個人的な見解ではあるが、経験者に確認すれば多少の同意を得られるのではないかと思っている

  

もちろん働き始めた時は吐きそうになるくらい緊張したし、いつ首になるかヒヤヒヤする毎日を送っていた。ただそれは主に言語に基づく問題であって、それさえなんとかクリアされれば、いっその事ここに骨を埋めてもいいのではないか、という誘惑にさえかられてしまう

 

なぜそう感じるのか

 

その鍵を握るのが勤務時間”空気”であると考えている

  

とりあえず事を単純にするため研修医に限った話をする

  

研修医がマンパワーとして重要な役割を果たすのはどこの国でも同じであろうが、その労働力が過剰に使われて研修に支障をきたさないように勤務時間が厳密に管理されている

 

全米の研修プログラムの質を維持するための監督機関であるACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education)という組織が存在し、研修医の勤務時間を監視している。80-hour ruleというものがあり、研修医は週に最大80時間以上働いてはいけない規則が設けられている。なんらかの理由でそのルールが破られたことが発覚した場合、その研修プログラムは認証を取り消される可能性まである

 

実際、その規則が破られて一時停止させられるプログラムに所属する困惑した研修医と話をする機会があった。「現場の混乱を避けるため、とりあえず今回は注意勧告に留めておきます」などという生易しいものではなく奴ら本気でやるんだ、と驚いた記憶がある

 

監督機関にそれぐらい強い権限が与えられているため病院やプログラムは当然そのルールを遵守しており、研修医が過剰労働をさせられる事はほぼ無いのである

 

実際に三年間の研修は肉体的には楽だと感じた

 

 

そしてもう一つ重要なポイントがいわゆる”空気”である

 

それは医師と医師の間での患者の引き継ぎにおける空気、いわば「期待感」みたいなものの事を指しているつもりだ

 

おそらくこれはcontroversialでデリケートな問題なので表現に注意しながら説明したいと思う

 

そのためにはアメリカにおける患者の引き継ぎの有様を理解する必要があるのだが、まずそれに関連する研修医の勤務形態について述べる

 

研修医の勤務はcall scheduleというものに基づいて日毎に勤務時間が決められている

 

プログラム毎に多少の違いはあるだろうが、具体的な例で自分が研修したプログラムのスケジュールを挙げれば、朝7時勤務開始は毎日同じなのだが、Short call、これが通常勤務の日だが、夕方5時まで、Long callが夜9時まで、Post call、これが長時間勤務の翌日は休息のため昼1時まで、というようなスケジュールになっており、Short  call -> Short call -> Long call -> Post call -> Short call ->・・・というように順番に日替わりで勤務時間が変わっていく

 

基本的に土日は休みだが、土日がLong callあるいはPost callに当たる場合は勤務を行わなければならない。つまりこの順番で回ることで1ヶ月の間で土日ともに休みになることが1回、土日の両日とも勤務で休みがなくなる週が1回、土日のどちらかが休みの週が2回というような休日のスケジュールになっていた

 

ちなみに当直はNight floatと呼ばれる研修ローテーションがあり、それに当たる1ヶ月は夜9時から朝7時までの当直勤務だけに専念し、それ以外の一切のdutyが免除されるため、当直明けに続けて日中勤務というような事は起こらない

 

 

研修医は自分の日毎の勤務時間が終了するとLong callの研修医に、あるいはNight floatの研修医に必ず担当患者全員の申し送りを行わなければならない

 

申し送りをしない限り仕事が終了したとみなされず帰れないからだ

 

逆に一旦申し送ってしまえばその時点から責任が申し送られた側に移行するため、その後担当患者のことで呼び出されることはない

 

そしてこの申し送りはそれぞれの勤務時間終了予定の定刻通りに行われることが多い

 

たとえ自分の担当患者の状態が不安定であったり、その日に出るであろう大切な検査結果がまだ戻ってきていない時でも、あるいは病状説明を聞きに患者家族が遅くに訪れるような場合でさえも、それを待つ必要はなく基本的には次の担当医に指示を申し送って勤務を終えるのだ

 

つまり

 

「自分の患者が落ち着かないにも関わらず帰ってしまうのか」

 

「患者に関する大切な要件を主治医が責任を持って片付けないのか」

 

などという空気がなく、時間になったら終了することが当然のことと共通認識されているのだ

 

こちらで働き始めた時は感覚の違いに戸惑ったことを覚えている

 

こんな途中で丸投げしていいのか、と

 

 

ただ考えればこれはアメリカでは当たり前のことで、文化や考え方の異なる人たちが一緒に働く場合は明確な決まりがないとシステムが維持できない。「主治医として当然のことを終わらせてから帰ってくださいね」などと期待されても、どこまでが”当然”かが曖昧で混乱をきたしてしまう。そう言った意味で誰にでも分かりやすい”時間”で勤務を区切るのが合理的になるのだろう

 

 

日本を離れて少し時間が経つので現状を把握してはいないものの、おそらく勤務交代のこれほど明確な線引きが行われることは少ないのではないかと想像する

 

 

勤務時間外でも常にどこかで患者のことが頭にあるし、実際、当直医や日直医がいるにも関わらず夜中や休日に主治医に電話がかかってきたり、あるいは呼び出されることもあり得るだろう。夏休みでしばらく離れる場合なんかに担当を引き継ぐ際もどこか申し訳ない気持ちになったりしうる

 

これがアメリカではないのだ

  

ない、と言い切るのは少し誇張し過ぎかもしれないし、自分の時間が終わった途端に患者のことを気に留めなくなると言うと語弊があるだろう。それにこれは主に内科入院患者の話で科が異なれば事情も違うかもしれない

 

 

ただ乱暴に言ってしまえば

 

「この患者の責任は何時も主治医である私にあります」

「私の勤務時間内においてはこの患者の責任を持ちます」

   

それぞれの国が100%どちらか側だけ、という事ではないだろうが、一方により傾いているかという違いはあると感じる

  

どちらの方が良くて優れているという話をしたいのではない

 

自分が患者側だったら、やっぱり担当医がコロコロ変わるよりも一人で責任を持ってくれる医師に診てもらいたいと思ってしまう気がする

 

申し送られる側の医師であったら、主治医が不安定な自分の患者を遅くまで残って診療してくれて助かる、なんて思ってしまうかもしれない

 

 

常に自分の患者の責任を担い、次に働く同僚のことを思いやる

 

これは日本の素晴らしいところだと思う

 

医師の理想的な形とさえ言えるかもしれない

 

 

が、もしその理想が高いために、疲弊し持続性が担保されなくなるのであれば、やはりどこかで妥協点を見つけなければならないのかもしれない

 

働く個々人の善意に比重が大きくかかるシステムはシステムとして脆弱だろう

 

もし提唱されている医師の休息、これのみを最大目標にするのであれば、日本のやり方だとやはり劣ってしまう気がする。実際両方を経験してみてアメリカの方がオンオフが明瞭で働きやすいと感じるからだ

 

 

ではどうすればいいか

  

日本には日本特有の文化背景があるのだから従来通りの方法を続け、理想を維持していく

 

というのも一つ

 

あるいは、もし改革が必要であると感じるならば

 

まずは医師自身の意識を改革する

  

「私も残ってでも仕事をきっちり終わらせて迷惑をかけないようにするから、あなたもそうしてください」

 

から

 

「後は私が引き受けるから、あなたはしっかり休みを取ってください。その代り私が休みを取る時はよろしくお願いします」

 

 

具体的に言えば

 

勤務時間を明確にして時間外には診療に関わらないようにしオンオフをはっきりさせる

 

 

これは言うのは簡単だが、実際に行うと痛みを伴う

 

申し送られる側、つまり当直医や日直医の負担が増える

実際こちらでも前医から申し送られて自分の勤務が始まった瞬間病棟からの呼び出しが鳴り止まない、なんてことはザラだ。突然、転院や退院の手続きを全てしなければならない事もしょっ中ある

 

患者も主治医にあっさり撤退されてしまって辛いかもしれない

 

ドライ過ぎてどこか良心が痛む、なんて感じる医師もいるかもしれない

  

 

ただデメリットが皆無の方法なんてないだろう

 

比べてみてメリットの方が多そうであれば試してみるのも一つの方法だろう

 

 

申し送られる側の負担が増えても、それはお互い様でその分明日の自分の休みが保証される

 

たとえ勤務中の瞬間風速が増えてもオフが保証されていればよりリフレッシュされて、次の活力へと繋がりやすい

 

定時で帰れることが分かっていれば、夕方からジムやヨガに通い始められるかもしれない、保育園のお迎えの時間でヒヤヒヤすることも少なくなる、予定していた子供の誕生日祝いを逃して悲しむ顔を見なくて済む

 

患者もその時は少し辛い思いをするかもしれないが、大局で見れば、システムが持続することで長く安定したケアを受けられるかもしれない

 

(良心に関しては自分で折り合いをつけるしかないだろう)

  

 

もし勤務を時間ではっきり区切ることを実行するのならトップが旗を振って号令をかけなければならないだろう

 

「俺たちが研修医の時は病院に泊まって患者を診たもんだ、休みなんて返上して診療するのが当たり前だった」

 

という抵抗勢力が出てくる可能性があり、申し送りがし辛くなるからだ

 

あるいは研修医自身も

 

「早く一人前になりたいから、少しでも長く病院にいたい」

「気になったんで休日だったけど診に来てしまいました」

 

なんて言い出しかねない

 

これはもちろん悪いことではないし、自分も経験があるからその気持ちは理解できる

 

ただそれだと責任の所在が曖昧になってしまうし、オンオフがはっきりしなくなる

 

研修医の時ぐらいはそれでいい、という考え方もあるかもしれないが、例外を設けるとシステムが働きにくくなる事が予想される

 

それに病院にいる時間が比較的短いアメリカの研修医の方が劣っているかと言えば、必ずしもそうとは言えず、ただ長く居ればいいというものでもないだろう

 

  

 

本当に実行するのであれば例えば朝礼で以下のように発表してみる

  

・明日から17時に勤務終了にします

 

・その際、各自居残り医に担当患者全員の申し送りをしてください。申し送り用紙も準備して渡してください(フォーマットは配布します)

 

・17時にはPHSを返却してください

 

・17時以降病棟への出入りを禁止します

 

・居残り医は19時に当直医に申し送り用紙を渡して申し送りをしてください

 

・休日病院への出入りを禁止します

 

・夜間・休日の主治医への電話も余程の事がない限り控えるようにしてください

 

・各自の申し送りの実際の時間を記録していきます。定刻に遅れる回数が多い場合は個人面談をし、必要あれば勤務負担の調整も検討します

 

・不平・不満がある場合は直接院長に掛け合ってください

 

 

これは極端なものだが、これくらいの決まりを作らないと、隙あらば患者を診る人が出てきてしまう心配があるからだ

  

これは実際やろうと決めれば出来ないことではないだろう

 

実行してみてみんながハッピーになるなら続ければいいし、上手く行かなければ「やっぱり日本向きではなかったね」という事が確認でき元に戻せばいいだけだ

  

万が一これが定着したら

  

「あの研修医は夜遅くまで残って患者を診て偉い」

「あの研修医は休日も患者を診に来て素晴らしい」

 

という評価軸が(もちろんアメリカではそんな評価は皆無であるが)

 

「あの研修医はきっちり時間内に仕事を終えて偉い」

「休日の申し送りも全く漏れがなくて素晴らしい」

 

こんな風に評価される日が来るかもしれない

 

そうなれば仕事の風景も変わってくるかもしれない

 

 

 

 

 

 

 

 

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Preventing Firearm-Related Death and Injury

 

米国において銃器に関連した死および傷害はpublic healthに関わる重大な問題である。データが利用できる最近10年、2008年から2017年の間で米国における銃器に関連した死亡者数は342439人であり、第二次世界大戦中の銃創による米国人死亡者数をも上回る。また非致死的な銃器による傷害は870000件と推定されている

 

 

インザクリニック

2019年6月4日

 

 

 

内科雑誌にこの題のレビューが出されるのは、さすがアメリカといった感じだが、これを訳す意義があまり感じられないことは幸いなことだと感じる